イージス艦は、ミサイル迎撃ミサイルを搭載し、北朝鮮や中国から日本・アメリカに向けて飛来する核ミサイルなどを撃ち落とすべき使命を持つ。アメリカとの共同実験では、見事、高速のミサイルを撃ち落としている。残念ながら、この度の漁船との衝突は、単に漁船を破壊しただけでなく自衛隊の信頼や威信を破壊することになった。うっかりすると最も破壊力を示したのが唯一今回の事件のみということにもなりかねない。
私はミサイル迎撃能力の強化は軍事的な観点から極めて重要であると考えている。いかなるミサイルでも撃ち落とすことが出来れば、核の現実的な脅威も殆どなくすことができる。10兆円や20兆円をこの開発に使っても、完全なミサイル迎撃ミサイルを開発できればその価値は十分ある。無意味な核開発競争も無力化できる。理解されていないが、実は世界は軍事戦略で動いており、平和や経済発展も軍事戦略の中で実現するのである。
自衛隊について指摘されているのが、自衛隊は嘘を言うので信用できない、一般の人を見下す官尊民卑である。防衛省の発表を時系列で追うと、内容がころころ変わっている。既得権組織に見られる典型的なパターンだ 。事実がどうであるかよりも、自分達の既得権をいかに守るかに全ての労力が費やされている。完璧なロジックを組み立てたつもりが、漁船側からの指摘に、あっさり撤回となって来る。表に出ていない事実は相当のものだろう。明らかな証拠を示さない限り、嘘でも何でもついて隠し通す。
官尊民卑について経験のない人は分からない。しかし、官僚の官尊民卑の感覚は長い歴史で培われた、ベーシックなもので、彼らにとってそれはごく当り前である。最新鋭のイージス艦だからレーダー等で漁船が遠距離からでも分からないはずはない。そこのけそこのけ、イージス艦あたごが通る。漁船に衝突するまでの直線的な軌跡をみるとそんな感じを受ける。
民主党の石破大臣への辞任要求が来週にかけて、強まるであろうが、本人は辞任を言外に滲ませているので、ここは武士の情けとして、本人の発表を待つべきだ。それよりも、自衛隊の組織に潜在する問題点をこの際、徹底的に洗い直し、改革することに精力を注ぐべきだろう。とてもじゃないが、自衛隊が国民を守るべき組織ではないことがはっきりしてきた。
シビリアンコントロールの文民統制の意味が、防衛省の背広組の管理であることも、国民を無視した詭弁である。背広組は自分では一切現場に行かず、制服自衛官をしもべ、踏み台にして自らの権力と懐に入る金を増やそうとする。制服組も自分の地位を上げるべく、上司の気を引く努力を重ねていると聞く。上官の靴でも舐めろと言われれば、躊躇なく舐めるだろうと、実態を知る人が私に伝えた。
戦うことの無い軍隊だから、おかしくもなるのだろうが、アメリカのように優れた軍隊組織がアメリカ社会の模範として、社会全体の規律や正常化に貢献していることを思うと、今からでも正常化への改革を確実に進めて欲しい。重要なことは正しい評価だ。努力が客観的に正しく評価されることを担保することが自衛隊のみならず、あらゆる社会や組織で、発展を導く。