静 夜 思

挙頭望西峰 傾杯忘憂酒

≪ 山崎正和氏の逝去を悼む ≫    日本社会における 私と公の対峙;  問い続けた『個の確立』

2020-08-22 08:29:57 | 時評
◆ 山崎正和さんが死去 劇作家・評論家、86歳 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62891170R20C20A8AC8000/?n_cid=NMAIL007_20200821_Y

★ 戯曲に馴染みが薄いからか、劇作家/脚本家としての山崎氏より、日本の中世から近代にいたる文学/文明文化評論の著作に、私は共感と親しみを
 覚えてきた。 また、世界が大きく変化した1990年代以降、其の変質についての歴史評論も示唆に富み、とても参考になった。

◆ 深い感銘を受け得ながら読んだ記憶がある著作を挙げるなら「柔らかい個人主義の誕生」と「不機嫌の時代」。
 この2作に共通するテーマは『私と公の対峙における個人の不在』であろう。無論、此のテーマは山崎氏の他の作品を貫く大きな底流でもある。
  1960年代半ばのイエール大学留学が、恐らく同氏のテーマ形成に大きく与ったのでは? と私は想像する。
 
 生まれは京都市だが、旧満州国で育ち、引揚者となった生い立ちもまた、(国家と個人/公と私)を劇作・評論双方で、氏の表現テーマとなさしめた
 のではないか。 (満州に限らず)敗戦後の引揚体験者全員が同じテーマを抱き続けたとは言えないが、山崎氏のように巧く表現できずとも、
 心の底に同氏と似た情感は多くの人にあったように、周囲の引揚体験者を視ていると私は思う。

● 多くの引揚者は80代以上であり、あとの世代に語り継ぐ機会は減るばかり。願わくば、『不戦の誓い』に終わる国策被害者の体験談だけでなく、
 山崎氏が問い続けた≪明治以来、日本が未だに果たし得ていない社会における個の確立≫についても、想いを語り継いで戴きたい。   合掌。。
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