(© ITmedia NEWS Telexistenceの佐野元紀氏と遠隔操作ロボット)
① ""テレポーテーションを実現? 遠隔操作で“分身”のように動くロボットの仕組み""
2018/10/19 20:38
遠隔操作で人間の代わりに行動するロボットが「CEATEC JAPAN 2018」(千葉・幕張メッセ)のKDDIのブースに登場した。離れた場所にいる操作者の動きに合わせて、来場者にお辞儀をしたり手を振ったりしてみせる様子は、さながら“分身”のようでもある。
ブースでは、ロボットがカフェの店員という設定のデモンストレーションも披露。操作者が「いらっしゃいませ」と言うと、ロボットがその声を再生する。客がロボットにかけた「水をください」という言葉は操作者にも届く。ロボットが客に手渡したペットボトルの冷たさや重さは、操作者にも感じられるという。
いったいこのロボットにはどんな技術が使われているのか。開発を担当したTelexistence(東京都港区)に聞いた。TelexistenceはKDDIが「KDDI Open Innovation Fund」を通じて出資したベンチャー企業。同社の佐野元紀氏は「クラウド越しにロボットが人間に五感を提示することで、テレポーテーションを実現している」と話す。
遠隔操作ロボットは、VR HMD(ヘッドマウントディスプレイ)やトラッカーで検知した操作者の動きをクラウド経由で送信し、ロボットにも反映させる仕組み。ロボット側が得た情報も、同様にクラウド経由で操作者に届ける。
VR HMDはHTCの「VIVE Pro」を使用。操作者の頭の向きや声はヘッドセットで、上半身の動きは胸に付けたトラッカーで検知する。トラッカーは左右の手の甲にも取り付け、胸のトラッカーとの距離をもとにロボットの腕を動かす。
さらに、操作者の指の動きを手にはめたグローブで検知。グローブの親指と人差し指には、ロボットから送られてきた振動や温度を感じるための触覚デバイスも取り付けてある。
一方、ロボットの頭部にはカメラやマイクを搭載。操作者がVR空間で指示を出すと、ホイールで動き回り、周りの風景や音を伝える。指には温度、振動、圧力を検知するセンサーが取り付けてあり、つかんだ物の重さや質感などを操作者の触覚デバイスに反映する。
離れた場所で動くロボットを分身のように感じさせるには、動きや感覚のタイムラグをできるだけ減らさなければならない。しかし、現在は「180ミリセカンドほどのタイムラグがある」(佐野氏)という
。
「研究では125ミリセカンドまで縮められた。将来的には100を切るのが目標だ。今はWi-Fiや4G LTEを使って伝送しているが、5Gが実装されれば解決されるだろう」(佐野氏)
現時点で一番の課題は伝送技術だが、実用化に向けてロボットの改良も進めるという。将来的にはバーチャル旅行を体験したり、離れた場所で働いたりするために遠隔操作ロボットを活用する考えだ。
「一瞬で遠い場所にワープできるというのは、1つの価値になると考えている。また、ロボットを通じてスキルのある人の知識や技能を伝送することで、遠方に派遣するコストを下げ、労働格差の解決につなげたい」(佐野氏)
※ このような複雑な多機能なロボットでなく、医療の分野で外国など遠隔地の患者を
手術するという特化されたロボットは、プロトタイプが出来たというニュースが前に
ありました。