東久留米 学習塾 塾長ブログ

東京都東久留米市滝山の個別指導型学習塾 塾長白井精一郎のブログ

平成28年度都立高校入試問題(11)【御三家】

2016-04-30 12:25:09 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

昨日の強風が治まって過ごしやすい日になりました。しばらくの間、高気圧に覆われ暖かい晴れの日が続くようです。

さて、今回は平成28年度都立高校数学入試問題を取り上げます。

問題は、日比谷高など都立御三家で出題された大問2の2次関数グラフ問題で、それは、
「下の図1で、点Oは原点、曲線fは関数y=1/4・x^2 のグラフ、曲線gは関数y=ax^2 (a>1/4)のグラフを表している。
 点A、点Bはともに曲線f上にあり、点Aのx座標はt (0<t<6)、点Bのx座標は t-6 である。
 点Cは曲線g上にあり、x座標は負の数である。
 点Oと点A、点Oと点B、点Aと点C、点Bと点Cをそれぞれ結ぶ。
 次の各問に答えよ。

▲図1.問題図(1)

[問1]a=5/4のとき、次の(1)、(2)に答えよ。
(1)t=4、点Cのx座標が-2のとき、2点A、Cを通る直線の式を求めよ。
(2)四角形OABCが平行四辺形となるとき、tの値を求めよ。
   ただし、答えだけではなく、答えを求める過程が分かるように、途中の式や計算なども書け。

[問2]下の図2は、図1において、t=3、点Cのx座標が-3/2のとき、点Oと点Cを結んだ場合を表している。
    △OACの面積と△OCBの面積の比が2:1のとき、aの値を求めよ。」

▲図2.問題図(2)

です。

まず図3のように、本問全体に共通する条件を書き入れましょう。


▲図3.本問全体に共通する条件を書き入れました

それでは、[問1]の(1)に取り掛かりましょう。

ここで図4のように、[問1]の(1)に与えられた条件を書き入れます。


▲図4.[問1]の(1)に与えられた条件を書き入れました

t=4なので、点Aのx座標は4、点Aがy=1/4・x^2上にあるので、そのy座標は4、つまり、点A(4,4)になります。

一方、点Cのx座標は-2、点Cがy=5/4・x^2上にあるので、そのy座標は5、つまり、点C(-2,5)になります。

ここで、2点A、Cを通る直線をy=px+qとすると、p=(4-5)/(4-(-2))=-1/6で、
y=-1/6・x+q
になります。

また、この直線は点Aを通るので、
4=-1/6・4+q
q=4+2/3
 =14/3
になり、求める直線の式は、
y=-1/6・x+14/3
で、これが答えです。

次の[問1]の(2)です。

点AとBのx座標はそれぞれtとt-6で、これらの点はy=1/4・x^2上にあるので、それらのy座標はそれぞれ1/4・t^2、1/4・(t-6)^2です。

つまり、点AとBの座標は、それぞれ、
点A(t,1/4・t^2)
点B(t-6,1/4・(t-6)^2)
です。

次に点Cの座標を求めます。

与えられた条件から、四角形OABCは平行四辺形なので、
OA=BC
OA//BC
が成り立ち、OAのx変化量がBCのx変化量に等しいので、点Cのx座標は2t-6で、また、点Cはy=5/4・x^2上にあるので、そのy座標は、5/4・(2t-6)^2です。

つまり、点Cの座標は、
点C(2t-6,5/4・(2t-6)^2)
です。

ここで、点A、点B、点Cの座標を図5に書き入れましょう。


▲図5.点A、点B、点Cの座標を書き入れました


あとは、これらの座標から四角形OABCが平行四辺形になる条件を立式すればOKです。

そこで、点Cのx座標を求めるときOA=BCを使ったので、OA//OB、つまり、直線OAと直線BCの傾きが等しくなる条件を立式するのが簡単でしょう。(最後に記したように、平行四辺形になるための5つの条件のどれを使ってもOKです)

そこで、それぞれの直線の傾きを求めて等式をつくると、
    [1]
になります。

そして、これを整理して因数分解すると、
    [2]
です。

[2]から、t=2または4ですが、それぞれの場合の点Cのx座標を計算すると、
t=2のとき、2×2-6=-2
t=4のとき、2×4-6=2
となり、点Cのx座標が負の数であることから、t=2で、これが答えです。

続いて[問2]です。

まず、与えられた条件で、点A、点B、点Cの座標を計算し、図6に書き入れましょう。


▲図6.点A、点B、点Cの座標を書き入れました

このとき、直線OCの式は、
     [3]
です。

また図6に示すように、点Aと点Bを結んだ直線と、点Oと点Cを結んだ直線との交点をM、点Aから直線OCに下ろした垂線の足をN、点Bから直線OCに下ろした垂線の足をLとします。

すると、△OACの面積S(A)と△OCBの面積S(B)は、それぞれ、
S(A)=OC×AN×1/2
S(B)=OC×BL×1/2
になり、その面積比は、
S(A):S(B)=OC×AN×1/2:OC×BL×1/2
         =AN:BL
です。

また、与えられた条件からこの面積比が2:1になので、
AN:BL=2:1
になります。

一方、△ANM∽△BLMから、
AN:BL=AM:BM
なので、
AM:BM=2:1
です。

ここで、点Aと点Bのy座標はどちらも9/4で、点Mは直線AB上にあるので、点Mのy座標は9/4です。

さらに、線分ABの長さは6で、点Mは線分ABを2:1に内分するので、点Mのx座標は-1です。

つまり、点Mの座標は(-1,9/4)になります。

そして、点Mは直線OC上にあるので、[3]に(-1,9/4)を代入すると、
9/4=-3/2・a・(-1)
a=3/2
で、これが答えです。


[問1]の(2)は、平行四辺形になるための5つの条件
・2組の対辺がそれぞれ平行
・2組の対辺がそれぞれ等しい
・2組の対角がそれぞれ等しい
・対角線がそれぞれの中点で交わる
・1組の対辺が平行で長さが等しい
のどれを使ってもOKです。(ここでは、最後の「1組の対辺が平行で長さが等しい」を使いました)

また、[問2]は、点(x1,y1)から直線ax+by+c=0に下ろした垂線の長さがlax1+by1+cl/√(a^2+b^2)になることを利用する方法もあります。

興味のある人は調べてみてください。

平成28年度都立高校入試問題(10)【国立高】

2016-04-29 11:32:02 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

今日からのGWは晴れのスタートになりましたが、冬型の西高東低の気圧配置のため、少し強めの北風が吹いています。これからさらに強くなりますが、明日には治まるようです。

さて、今回は平成28年度都立高校数学入試問題を取り上げます。

問題は、国立高で出題された大問4の立体問題で、それは、
「下の図1で、△ABCは、1辺の長さが6cmの正三角形である。
 頂点Aを通り辺BCに垂直な直線を引き、辺BCとの交点をDとする。
 次の各問に答えよ。

▲図1.問題図(1)

[問1] 下の図2は、図1の△ABCを線分ADを軸として1回転させてできる円すいを表している。
     次の(1)、(2)に答えよ。

▲図2.問題図(2)

(1)図2の円すいの展開図はおうぎ形である。このおうぎ形の中心角の大きさは何度か。

(2)下の図3において、図形Sは図1の△ABCの辺ABの中点をMとし、点Mを線分ADを軸として1回転させてできる円周であり、2点E、Fは図2の円すいの底面の円周上の点で、点Eと点Fを結んでできる線分EFは底面の円の直径である。
 図形S上にある点をPとし、点Eと点P、点Fと点Pをそれぞれ結ぶ。
 △PEFの面積が最も大きくなるとき、△PEFの面積は何cm2か。

▲図3.問題図(3)

[問2] 下の図4で、点Oは図1の△ABCの辺AB、辺BC、辺CAとそれぞれ接する円の中心であり、点Dは辺BCと円Oとの接点である。
     点Gは線分ADと円Oとの交点のうち点Dとは異なる点である。

▲図4.問題図(4)

下の図5は、図4の△ABC及び円Oを線分ADを軸にして1回転させたときにできる立体を表している。

▲図5.問題図(5)

下の図6は、図5において、円すいの底面の円周上にある点をQとし、点Gと点Qを結んだ場合を表している。
点Rは線分GQ上の点で、点Gとは異なる球面上の点である。
このとき、線分QRの長さは何cmか。
ただし、答えだけではなく、答えを求める過程が分かるように、途中の式や計算なども書け。」

▲図6.問題図(6)

です。

長い問題です。早速、取り掛かりましょう。

[問1]の(1)は、頻繁に見かける基本問題です。

展開図は図7のようになり、ここで底面の円の円周とおうぎ形の弧の長さが等しくなることを使えば簡単に中心角を求めることができます。


▲図7.円すいの展開図

底面の円の直径は6cmなので、その円周は6πcmで、それはおうぎ形の弧の長さと等しくなります。

一方、おうぎ形をその一部として含む円は、円すいの母線を半径とする円なので、その直径は12cmで、円周は12πcmです。

したがって、おうぎ形の中心角をa°とすると、
a:360=6π:12π
が成り立ち、
a=360×6π/12敗
 =180(°)
で、これが答えです。 

次に[問1]の(2)です。

△PEFの面積を計算するとき、線分EFを底辺とすると、高さは点Pから線分EFに下ろした垂線の長さになります。

このとき、線分EFの長さは底面の円の直径なので6cmですから、その垂線の長さが最大のときに△PEFの面積が最大になります。

そこで図8のように、図形S上の点Nと点N’から線分EFに下ろした垂線の足が、それぞれ底面の円の中心Dになる場合と、点Dとは異なる線分EF上の点D’なる場合を比べます。


▲図8.点Nと点N’から線分EFに下ろした垂線の足をそれぞれ点D、点D’としました

このとき、(線分NDの長さ)=(線分N’Dの長さ)>(線分N’D’)なので、点Pが点Nと一致するとき、線分EFを底辺とした場合の△PEFの高さが最大になります。

そして図9のように、平面ADPで切った円すいの断面を調べると、中点連結定理から、PD=1/2・AB’=1/2×6=3cmです。


▲図9.PD=1/2・AB’です

したがって、△PEFの面積が最も大きくなるとき、その面積は、6×3×1/2=9cm2 で、これが答えです。

続いて[問2]です。

図10に、円すいを平面GDQで切った断面を示します。このとき、線分GD上に点A、点Oがあり、線分GQ上に点Rがあるので、図10に示した断面上に、点A、点O、点Rが存在します。


▲図10.円すいを平面GDQで切った断面です

図10で、円Oは辺QC’’と辺AQにそれぞれ接するので、∠ODQ=∠OHQ=90°です。

さらに、線分GDは円Oの直径なので、∠GRD=90°です。

あとは、三平方の定理や相似を使って計算すればOKです。(ここから、ODなどは線分ODの長さとします)

まず、△ODQは、∠OQD=30°の直角三角形なので、(△ODQ≡△OHQ⇒∠OQD=∠OQH、∠DQH=2∠OQD=60°)
OD:OQ:DQ=1:2:√3
で、DQ=3cmから
OD=√3cm
OQ=2√3cm
です。

すると、DG=2OD=2√3cmで、直角三角形GDQに三平方の定理を適用すると、
GQ^2=DQ^2+DG^2
   =3^2+(2√3)^2
   =9+12
   =21
から
GQ=√21cm
です。

ここで、△GQD∽△DQRなので、
GQ:DQ=DQ:RQ=DQ:QR
から
QR=DQ^2/GQ
です。

これに、GQ=√21cm、DQ=3cmを代入すると、
QR=3^2/√21
  =9/√21
  =9√21/21
  =3√21/7cm
で、これが答えです。


最後の線分QRの長さの計算は、三平方の定理を使っても可能です。興味のある人は調べてみてください。

平成28年度高校入試問題(6)【開成高】

2016-04-28 13:01:31 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

明日からGWは、3日の憲法記念日と4日のみどりの日が曇りや雨模様ですが、その他は好天で、行楽日和の連休になりそうです。

さて、今回は平成28年度開成高校入試問題です。

問題は、6つの小問からなる大問1の1つで、
「次の連立方程式の解がないとき、定数aの値を求めよ。
   」
です。

まず、代数的に解いてみましょう。

2x+ay=a              (1)
(-1+4a-a^2)x+ay=1     (2)
として、(1)-(2)から
(3-4a+a^2)x=a-1
(a-1)(a-3)x=a-1      (3)
です。

ここで、a=1のとき、(3)はどのようなxについても成り立つので、不定になります。

一方、a≠1のとき、(3)は、
(a-3)x=1             (4)
になり、ここで、a=3のとき、(4)の左辺は0、右辺は1で、(4)は成立せず、不能になります。

さらに、a≠3のとき、(4)から、
x=1/(a-3)
で、これを(1)に代入して、
2/(a-3)+ay=a
ay=a-2/(a-3)          (5)
になります。

ここで、a=0のとき、(5)の左辺は0、右辺は2/3で、(5)は成立すず、不能になります。

以上から、与えられた連立方程式が解を持たないのは、a=0または3のときで、これが答えです。

続いて、2元1次連立方程式の解が平面上の2つの直線の交点になることを使って解いてみましょう。

(1)(2)もxy平面上の2直線を表しますが、(1)(2)が解を持たないということは、直線(1)、(2)が平行で、かつ一致しないということになります。

一方、直線px+qy=rとp’x+q’y=r’が平行で、かつ一致しない条件は、
p/p’=q/q’≠r/r’
です。

そこで、(1)(2)にこの条件を適用すると、
(-1+4a-a^2)/2=a/a≠1/a    (6)
になります。

ここで、a≠0のとき、(6)の等式から
-1+4a-a^2=2
a^2-4a+3=0
(a-3)(a-1)=0
a=1、3
です。

ところが、a=1のとき、(6)の非等号(≠)の式が成り立たない(→1=1になってしまう)ので、直線(1)と(2)は一致します。

したがって、直線(1)と(2)が平行になるのはa=3のときで、2つの直線は、図1のようになります。


▲図1.a=3のときの2つの直線

一方、a=0のとき、(1)(2)はそれぞれ、
2x=0→x=0
-x=1→x=-1
になり、図2のように、直線(1)と(2)は平行で交点を持ちません。


▲図2.a=0のときの2つの直線

以上から、与えられた連立方程式が解を持たないのは、a=0または3のときになります。


後半では、(1)(2)を馴染み深いy=Ax+Bのように変形して、それぞれの傾きが等しく切片が異なる、という条件で解いてもOKです。興味のある人は調べてみてください。

まだ因数分解できるのか?

2016-04-27 12:09:39 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

今夜から雨で明後日までぐずつき、その後3日間ほど晴れて、その後再び下り坂になるようです。「春に3日の晴れなし」です。

さて、今回も因数分解について取り上げます。

例えば、

を整数係数の範囲内で因数分解せよという問題が出題されたとしましょう。

そこで、因数定理などを使って、
    (1)
と因数分解できたとします。

すると次に、右辺の2番目の(  )内の式、
    (2)
が因数分解できるかが問題になります。

(2)が2次式であれば、解の公式を使って簡単に調べることができますが、3次式となると大変です。(3次、4次式の解の公式はありますが、使いこなせる人は少ないでしょうし、5次式以上ではお手上げです)

そこで、(2)を
    (3)
とおいて、これを満たす整数a、b、cがあるかを調べることにします。

ここで(3)の右辺を展開して整理して、
    
とし、左辺と右辺のxのn乗の項の係数から、
a+b=0       (4)       
ab+c=-3     (5)
ac=1        (6)
を得ます。

このとき(6)からa、cの組合せは、a=1,c=1 または、a=-1,c=-1 で、これらを(5)に代入すると、
a=1,c=1のとき、b=-4、つまり、a+b=-3、
a=-1,c=-1のとき、b=2、つまり、a+b=1
です。

ところが、(4)からa+b=0なので、(4)(5)(6)を満たすa、b、cはありません。

したがって、(2)はこれ以上因数分解できないことが判り、答えは(1)になります。

続いてここから(2)が因数分解できないことをアイゼンシュタインの判定条件を利用して調べてみましょう。

その判定条件は、
「整数係数の多項式
  
で、次の[1][2][3]を満たす素数pがあれば、f(x)は整数係数の範囲でこれ以上因数分解できない。

[1]a0 はpで割り切れるが、p^2で割り切れない
[2]ak(k=1,2,・・・,n-1)は、pで割り切れる
[3]anはpで割り切れない               」
です。

ここで(2)の定数項は1なので、少し工夫する必要があります。

f(x)がg(x)h(x)と因数分解できたとすると、f(x+1)はg(x+1)h(x+1)と因数分解できるので、f(x)が因数分解できるかどうかを調べることは、f(x+1)が因数分解できるかどうかを調べることと同じです。

そこで、(2)定数項を1以外の数にするため、xをx+1に置き換えてみると、

と、今度は定数項が-1になってしまいました。

さらに、xをx+2に置き換えると、

と、定数項が3になり、これで判定条件が使えそうです。

そこで、[1][2][3]を一つずつ確認していきましょう。

[1]は、「a0=3は素数p=3で割り切れるが、p^2=9では割り切れない」となり、[1]はOKです。

[2]は、「a1=9、a2=6は素数p=3で割り切れる」となり、[2]もOKです。

[3]は、「a3=1は素数p=3で割り切れない」となり、[3]もOKです。

以上から、[1][2][3]を満たす素数3が存在するので、(2)はこれ以上因数分解できないことが判りました。


アイゼンシュタインの判定条件は、多項式がそれ以上因数分解できないための十分条件で必要条件ではありません。つまり、判定条件を満たす素数pがないからといってその多項式が因数分解できることにはなりませんが、この点に注意して利用すれば便利な判定方法です。

式が簡単なわりにあまり見かけない因数分解

2016-04-26 12:56:51 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

昨日と同様、いい天気になりました。昼過ぎに郵便局に行ったのですが、上着なしでも暑いくらいでした。明日からの3日間は曇りや雨のようですが、その後は晴れて、GWの前半は行楽日和になりそうです。

さて、前回まで平成28年度開成高入試の因数分解の問題を取り上げましたが、今回は、式の形が簡単なわりにあまり見かけない因数分解の問題です。

問題は、
「次の式を因数分解しなさい。

です。

与式の+が-であれば、よく見かける形で、

と和と差の積の形に簡単に因数分解できるのですが、与式の因数分解はあまり見かけません。

そこで、手元の公式集を調べてみると、複2次式の因数分解の方法が載っていて、そこには、

の形は、
(1)

とおいて、

の因数分解を考える。

(2)

のような2乗の差に導くことを考える、
とあります。

ここで、(1)は上手くいきそうもないので、(2)を調べてみると、

と上手く因数分解できます。


これは、

のように表すことができます。この形の式が因数分解できることを頭に入れておくと役に立つことがあるかも知れません。

平成28年度高校入試問題(5)のつづき【開成高】

2016-04-25 11:41:16 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

久しぶりに朝から晴天で、風もなく最高気温も23℃と過ごしやすい日になりそうです。明日も好天が続きますが、明後日から下り坂になるようです。

さて、今回は前回平成28年度開成高入試問題の因数分解の問題です。

問題は、6つの小問からなる大問1の1つで、
「次の式を因数分解せよ。

でした。

このとき、与式の定数項を「分数でない」2つの因数の積に分解する候補を調べることによって、

と、上手く因数分解することができました。

そこで今回は、
     [1]
のように、xの項の係数に分数がある場合、つまり、与式の定数項を2つの因数の積に分解するとき「分数の」候補も調べなければならない場合について調べていきます。

この場合、B=-1/2・bとおくと、


と分数のない式に変形できます。

そこで前回のように、定数項を「分数でない」2つの因数の積に分解する候補を挙げて、それらの和または差が[1]のxの項の絶対値と同じになる組合せを探すと、Bと12(a-3)を見つけることができます。

つまり、[1]は(x*12(a-3))(x*B) (*は+または-)という形で、符号を合わせて、

になります。

そして、最後に、B=1/2・bを代入して、

と因数分解できました。

さらに、
     [2]
のように、変数変換で分数を避けることのできない場合を調べてみましょう。

この場合は、[2]を2倍して、

     [3]
と、分数を除きます。

この[3]の因数分解は、高校で勉強する「たすき掛け」を使うものですが、x^2の項の係数が1から2になったので、これを2つの因数に分解した組み合わせ(この場合は1と2)と、定数項を2つの因数に分解した組合せのすべての場合を調べなければなりません。(煩雑そうですが、a、bの係数や定数項を調べると簡単に絞り込めます)

実際に調べてみましょう。

x^2の項の係数は2なので、その因数の組合せは、1と2です。

定数項の組合せは、
(1)   1  と 12b(a-3)
(2)   2  と  6b(a-3)
(3    3  と  4b(a-3)
(4)   4  と  3b(a-3)
(5)   6  と  2b(a-3)
(6)  12  と   b(a-3)
(7)   b  と 12(a-3)
(8)  2b  と  6(a-3)
(9)  3b  と  4(a-3)
(10) 4b  と  3(a-3)
(11) 6b  と  2(a-3)
(12)12b  と    a-3
になります。

そこで、x^2の項の係数の組合せ1と2を、(1)から(12)までの各組合せの式に乗じて和と差をすべての場合について計算すると、
(1)  1+24b(a-3)、-1+24b(a-3)、±2+12b(a-3)
(2)  ±2+6b(a-3)、±4+6b(a-3)
(3)  ±3+4b(a-3)、±6+4b(a-3)
(4)  ±4+3b(a-3)、±8+3b(a-3)
(5)  ±6+2b(a-3)、±12+2b(a-3)
(6)  ±12+b(a-3)、±24+b(a-3)
(7)  ±b+24(a-3)、±2b+12(a-3)
(8)  ±2b+6(a-3)、±4b+6(a-3)
(9)  ±3b+4(a-3)、±6b+4(a-3)
(10) ±4b+3(a-3)、±8b+3(a-3)
(11) ±6b+2(a-3)、±12b+2(a-3)
(12) ±12b+(a-3)、±24b+(a-3)
になります。

これらのなかから[3]のxの項の係数の絶対値と同じものを探すと、(1)の-1+24b(a-3)=24ab-72b-1を見つけるとができます。

これは、1×1(x^2の項の係数の因数1×定数項の因数1)と2×12b(a-3)(x^2の項の係数の因数2×定数項の因数12b(a-3))の差なので、[3]は、(2x*1)(x*12b(a-3))(*は+または-)という形になり、符号をあわせて、

     [4]
と因数分解できました。

最後に、[2]から[3]にするとき2倍しているので、[4]を1/2すると、

になり、これが[2]を因数分解したものです。


もちろん、[1]も[2]のように式を2倍して因数分解することができます。興味のある人は調べてみてください。

平成28年度高校入試問題(5)【開成高】

2016-04-24 12:23:19 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

昼前に雨が上がり、段々明るくなってきました。明日、明後日の予報も、昨日までとは異なり、晴れ時々曇りに変わりました。変わりやすい時期の予報は難しいようです。

さて、今回は平成28年度開成高校入試問題です。

問題は、6つの小問からなる大問1の1つで、
「次の式を因数分解せよ。

です。

ちょうど中3と高1の塾生が因数分解を勉強しているので、取り上げました。

与式の形から(x+a)(x+b)のようになることが容易に予想できます。

そこで、定数項(xのない項)を共通因数の6bで括って

としましょう。

ここから、6b(a-3)を2つの因数の積に分解するのですが、分数ではない考えられる候補は、
(1)1 と 6b(a-3)
(2)2 と 3b(a-3)
(3)3 と 2b(a-3)
(4)6 と  b(a-3)
(5)b と 6(a-3)
(6)2bと 3(a-3)
(7)3bと 2(a-3)
(8)6bと a-3
の8通りあります。

次に、これらの8つの場合について、2つの因数の和と差を調べると、
(1)6ab-18b+1、6ab-18b-1
(2)3ab-9b+2、 3ab-9b-2
(3)2ab-6b+3、 2ab-6b-3
(4)ab-3b+6、  ab-3b-6
(5)6a+b-18、  6a-b-18
(6)3a+2b-9、  3a-2b-9
(7)2a+3b-6、  2a-3b-6
(8)a+6a-3、   a-6b-3  
になります。

そして、このなかから与式のx項の係数2a-3b-6と絶対値が同じものを探すと(7)に見つけることができ、その因数は3bと2(a-3)です。

つまり、与式は、(x*3b)(x*2(a-3))[*は+または-です]というように因数分解できて、最後に符号を合わせると、

と因数分解できました。


与式の定数項を2つの因数の積に分解するとき「分数でない」候補を調べて上手くいきましたが、例えば、

のような場合は、そうはいきません。次回は、このような場合について調べてみたいと思います。因みに、これを因数分解すると、

になります。

平成28年度高校入試問題(4)【開成高】

2016-04-23 10:59:08 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

予報通り雲の多い天気になりました。これは来週の半ばまで続きますが、気温のほうは22℃前後で、過ごしやすい日が続くようです。来週末からのGWは晴れるといいですね。

さて、今回は平成28年度開成高校入試問題です。

問題は、
「関数y=x^2 のグラフ上に2点A、Bがあり、Aのx座標は1/2-√3、Bのx座標は1/2+√3である。線分ABの中点をMとし、Mを通りABに垂直な直線と関数y=x^2 のグラフとの交点のうち、x座標が負である方の点をCとおく。

(1)点Mの座標と線分ABの長さを求めよ。
(2)点Cの座標を求めよ。
(3)三角形ABCの3辺の長さの比AB:BC:CAを求めよ。」
です。

いままでエクセルで放物線を描く方法を知らなかったので、2次関数の問題はあまり取り上げませんでしたが、今回ネットで調べて、図1のように本問のグラフを描いてみました。


▲図1.問題のグラフを描きました

問題は簡単で面白味がないのですが、まず(1)から片付けましょう。

AもBもy=x^2 上の点で、それらのx座標が与えられているので、それらをy=x^2 に代入すれば、y座標を求めることができます。

つまり、Aのy座標yAは、
yA=(1/2-√3)^2
  =1/4-√3+3
  =13/4-√3
で、Bのy座標yBは、
yB=(1/2+√3)^2
=13/4+√3
です。

一方、Mは線分ABの中点なので、Mのx座標xM、y座標yM はそれぞれ、
xM=(xA+xB)/2
  =(1/2-√3+1/2+√3)/2
  =1/2
yM=(yA+yB)/2
  =(13/4-√3+13/4+√3)/2
  =13/4
です。

したがって、Mの座標は、M(1/2,13/4)です。

次に、線分ABの長さは、
AB=√((xA-xB)^2+(yA-yB)^2)
  =√((1/2-√3-1/2-√3)^2+(13/4-√3-13/4-√3)^2)
  =√(12+12)
  =√24
  =2√6
です。

続いて(2)です。

図2のように、初めに直線ABの傾きpを求め、それから直線MCの式を求めます。


▲図2.直線ABの傾きから、直線MCの式を求めます

まず、直線ABはAとBを通るので、その傾きpは、
p=(yA-yB)/(xA-xB)
 =(13/4-√3-13/4-√3)/(1/2-√3-1/2-√3)
 =-2√3/(-2√3)
 =1
になります。

したがって、直線MCと直線ABが直交することから、直線MCの傾きは-1です。

そこで、直線MCの式を y=-x+q とすると、これはMを通るので、
13/4=-1/2+q
q=15/4
で、直線MCの式は、y=-x+15/4 になります。

ここで、Cは、関数y=x^2 のグラフと 直線y=-x+15/4 のグラフの交点なので、
x^2=-x+15/4
x^2+x-15/4=0
(x-3/2)(x+5/2)=0
から、Cのx座標は-5/2です。

これをy=x^2 に代入して、Cのy座標を求めると、
y=(-5/2)^2
 =25/4
で、Cの座標は、(-5/2,25/4)です。

最後に(3)です。

図3のように、線分MCは線分ABの垂直二等分線なので、△CABは二等辺三角形で、CA=CBです。


▲図3.△ABCは二等辺三角形です


つまり、△ABCの3辺の長さの比を求めるには、AB:CAが判ればOKで、さらに(1)からAB=2√6なので、CAの長さ求めればよいことになります。

そこで、CAの長さを計算すると、(Cのx座標xC、y座標yCです)
CA=√((xC-xA)^2+(yC-yA)^2)
  =√((-5/2-1/2+√3)^2+(25/4-13/4+√3)^2)
  =√((-3+√3)^2+(3+√3)^2)
  =√(9-6√3+3+9+6√3+3)
  =√24
  =2√6
になり、AB:BC:CA=2√6:2√6:2√6=1:1:1 で、これが答えです。


簡単な二次関数のグラフの問題でした。

平成28年度高校入試問題(3)【開成高】

2016-04-22 12:41:14 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

昨日の予報とは違って、晴れのよい天気になりました。明日は曇りで、明後日から雨が降ったり止んだりのぐずついた天気が続くようです。

さて、今回は平成28年度開成高校入試問題です。

問題は、
「下の図のように、1辺の長さが2の正方形ABCDの辺AD上に点Eをとり、Bを中心とする半径2の円と線分BEの交点をFとする。また、点Fにおけるこの円の接線と辺CD、DAとの交点をそれぞれG、Hとする。AE:ED=3:1の場合について、以下の問いに答えよ。

(1)線分EFの長さを求めよ。
(2)A、B、C、・・・、Hを頂点とする三角形のうちで、△DEGと合同なものをひとつ挙げよ。ただし、△DEG自身は除くものとする。
(3)線分FHの長さを求めよ。
(4)直線GEと直線BDとの交点をIとして、直線HIと直線GDの交点をJとするとき、線分JGの長さを求めよ。」
です。

▲問題図


(1)から(3)は(4)の誘導問題になっているので、それに従って進んでいきましょう。

まず図1のように、与えられた条件を書き入れましょう。


▲図1.与えられた条件を書き入れました

ここで、円Bが点A、F、Cでそれぞれ辺AD、線分HG、辺CDと接するので、AH=FH、CG=FGになります。

それでは、(1)から取り掛かりましょう。

図2のように、線分EFの長さは、線分BEの長さから線分BF(=2)を引いたものです。つまり、線分BEの長さが判れば線分EFの長さが判ります。


▲図2.直角三角形ABEに着目します

一方、辺ABの長さは2、線分AEの長さはAE:ED=3:1からAE=2×3/4=3/2なので、線分BEの長さは、直角三角形ABEに三平方の定理を使えば計算できます。

つまり、
BE=√(2^2+(3/2)^2)
  =5/2
EF=BE-BF
  =5/2-2
  =1/2
で、これが答えです。

次に(2)に進みます。

△DEGと合同そうな三角形を探すと、図3に示すように、△FEGが見つかります。(手元の問題図では少し歪めて描いてありますが)


▲図3.△DEG≡△FEGぽいです

そこで、これを調べてみると、
∠EDG=∠EFG=90°
EGは共通
なので、直角三角形の斜辺が等しくなっています。つまり、あと辺か角の一つが等しければ、2つの三角形は合同になります。

ところが、(1)でEF=1/2を求めたので、線分EDの長さを求めたくなり、それはAE:ED=3:1から簡単に計算できて、ED=2×1/4=1/2になります。

したがって、
EF=ED=1/2
から、直角三角形の斜辺と他の1辺がそれぞれ等しいので、△DEG≡△FEGです。

次に(3)です。

ここは、AH=FHを利用するのが良さそうです。図4のように、AH=FH=xとして、直角三角形EFHに三平方の定理を使いましょう。


▲図4.AH=FH=xとしました

すると、
FH=x
EH=AD-AH-DE
  =2-x-1/2
  =3/2-x
EF=1/2 ((1)から)

EH^2=FH^2+EF^2
に代入して、
(3/2-x)^2=x^2+(1/2)^2
9/4-3x+x^2=x^2+1/4
3x=2
x=2/3
です。

したがって、線分FHの長さは2/3で、これが答えです。

最後の(4)です。

新たに何本かの直線が引かれので、それらを図5に示します。


▲図5.新たに引かれた直線を書き入れました

図5を眺めると、直線BDと直線GEは、それぞれ∠ADCと∠DGHの二等分線であることが判ります。((2)から△DEG≡△FEG)

つまり、点Iは△DGHの内心です。

すると、直線HJも∠DHGの二等分線になるので、△HDGに角の二等分定理を使って簡単に線分JGの長さを計算できそうです。

そこで図6のように、△EFH∽△GDHを利用して、線分HGと線分DGの長さを求めます。


▲図6.△EFH∽△GDHを利用して、線分HGと線分DGの長さを求めました

あとは図7のように、角の二等分線定理から
HG:HD=JG:JD
     =JG:(DG-JG)
に、HG=5/3、HD=4/3、DG=1 を代入して、
5/3:4/3=JG:(1-JG)
4JG=5-5JG
9JG=5
JG=5/9
で、線分JGの長さは5/9になり、これが答えです。


▲図7.角の二等分線定理で線分JGの長さを求めました


(4)は三平方の定理を使って求めることもできます。興味のある人は調べてみてください。

一筆書きの問題(3)

2016-04-21 11:57:34 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

西から前線を伴った低気圧が次から次へと現れて、この1週間の天気予報に晴れマークがありません。明日の気温は少し高くなるようですが、それ以降は20℃前後と過ごしやすくなりそうです。

さて今回は、ずっと以前に取り上げた中学生でも解ける東大大学院入試問題(34)の一筆書き問題を、漸化式で調べてみたいと思います。

その問題は、
「(1)下の(a)の図形を、点Aを始点、点Bを終点として一筆書きする方法は何通りあるか。

(2)下の(b)の図形を、点Cを始点、点Dを終点として一筆書きする方法は何通りあるか。」


▲問題図

です。

前回は、一筆書きの場合の数を直接数え上げたのですが、今回は漸化式を使うので、図1のように、n個のセル(円と水平方向の直径を組み合わせた図形)に、もう1つセルを加えた図形を考えます。


▲図1.n+1個のセルを並べた図形を描きました

このとき、図1のn+1個のセルからなる図形と右側にあるn個のセルからなる図形を一筆書きする場合の数を、それぞれa(n+1)、a(n)とし、a(n+1)とa(n)との関係式を求めます。

まず、始点Pを出発してRに向かうとき、取り得る経路は、Cn+1の上側、直径、下側の3通りです。

その後Rからの進み方は、[1]RからCn+1の残りの経路を通り終える、と、[2]Rから右側に進む、の2つががあります。

[1]の場合、図2のように、Cn+1に2本の経路が残っている(図2では、直径と下側)ので、それらを周回する場合の数は2通りで、その後、再びRに戻ることになります。


▲図2.Cn+1の残った2本の経路を周回する場合の数は2通りです

ところが、再度Rに戻ったとき、Cn+1の3本の経路は通り終わっているので、残りは右側のn個のセルを並べた図形で、この図形の一筆書きの場合の数はa(n)です。

つまり、始点P→R→Cn+1の残った2本の経路→R→右側のn個のセル と進むときの場合の数は、3×2×a(n)(通り)になります。

続いて[2]の場合ですが、Rから右側に進んでn個のセルを一筆書きする場合の数はa(n)通りで、この右側のn個のセルを一筆書きしている途中に必ず一度だけRに来ることがあります。

そして、そのとき必ずCn+1の残った2本の経路を通りRに戻ることになります。

つまり、始点P→R→右側のn個のセル→R→Cn+1の残った2本の経路→R右側のn個のセルの続き と進むときの場合の数は、3×a(n)×2(通り)になります。

したがって、漸化式は、
     <1>
となります。

あとは、漸化式を計算するだけです。

<1>から、
a(n+1)=12a(n)
で、ここで、
a(n)  =12a(n-1)
a(n-1)=12a(n-2)
    ・・・・・
a(2)  =12a(1)
とし、これらの左辺を右辺に代入していくと
a(n)=12^(n-1)・a(1)        <2>
になります。

ここで、a(1)=6(通り)なので、
a(n)=6・12~(n-1)
になり、前回直接数え上げた答えと同じです。

因みに、冒頭の問題の答えは、(1)が6通り、(2)がa(3)=6×12^2=6×144=864(通り)です。


直接数え上げるより漸化式を利用する方が簡単だったようです。勉強になりました。

一筆書きの問題(2)

2016-04-20 12:02:13 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

今日からしばらくの間、最高気温が20℃前後の過ごしやすい日が続きますが、明日から曇りや雨のぱっとしない天気になるようです。

さて今回は、先日取り上げた平成20年度京大入試問題(前期、文系)を、漸化式を使って調べてみたいと思います。

まず問題は、
「正n角形とその外接円を合わせた図形をFとする。F上の点Pに対して、始点と終点がともにPであるような、図形Fの一筆がきの経路の数をN(P)で表す。正n角形の頂点をひとつとってAとし、a=N(A)とおく。また正n角形の辺をひとつとってその中点をBとし、b=N(B)とおく。このときaとbを求めよ。
 注:一筆がきとは、図形を、かき始めから終わりまで、筆を紙からはなさず、また同じ線上を通らずにかくことである。」
というものです。(前回は、図1のように、正n角形の頂点PnをA、折り返す頂点をPkとして、直接数え上げました)


▲図1.正n角形の頂点PnをAとした場合の図を描きました

今回は漸化式を使って、a=N(A)を調べます。

そこで、図形Fを一筆書きする描き方の場合の数をa(n)としましょう。

すると、図形Fの正n角形の頂点を1個増やした図形をF’したとき、図形F’を一筆書きする描き方の場合の数は、正n+1角形とその外接円を合わせた図形を一筆書きする書き方の場合の数と同じになり、それはa(n+1)と表すことができます。

そこで図2のように、P1とPnとの間にPn+1を増やすことにして、Pn+1を通過する場合とPn+1で折り返す場合に分けて調べます。


▲図2.Pn+1を増やしました

・Pn+1を通過する場合
図2の図形Fでは、P1とPnの間の経路は2通りですが、図形F’では、それが2×2=4通りになります。

したがって、図形F’でPn+1を通過する場合の一筆書きの描き方の場合の数は、図形Fを一筆書きする描き方の場合の数の4/2=2倍、つまり、2a(n)(通り)になります。

・Pn+1で折り返す場合
Aが始点から時計回りにPn+1に移動するとき、通過した頂点の個数がm個とすると、その経路は2^m(通り)で、AがPn+1で折り返して始点に戻るまでの経路は1通りです。

さらに、始点から反時計回りにPn+1に移動するとき、n+1-m個の頂点を通過するので、その経路は2^(n+1-m)(通り)で、AがPn+1で折り返して始点に戻るまでの経路は1通りです。

したがって、Aが始点から時計回りにスタートしてPn+1で折り返す場合の一筆書きの描き方の場合の数は、2^m×2^(n+1-m)=2^(n+1)(通り)で、Aが始点から反時計回りにスタートする場合とあわせると、2^(n+2)(通り)になります。

以上から、漸化式を立式すると、
a(n+1)=2a(n)+2^(n+2)     (1)
になります。

あとは、(1)を解くわけですが、ここは(1)の両辺を2^(n+1)で割ると簡単です。

つまり、
a(n+1)/2^(n+1)=2a(n)/2^(n+1)+2
          =a(n)/2^n+2
として、b(n)=a(n)/2^nと置くと、
b(n+1)=b(n)+2         (2)
と簡単な漸化式になりました。

そこで、
b(n)  -b(n-1)=2
b(n-1)-b(n-2)=2
  ・・・・・
b(4)  -b(3)  =2
とし、これらの辺々を足し合わせると、
b(n)-b(3)=2(n-3)     (3)
です。

ここで、a(3)=64なので、b(3)=64/8=8を(3)に代入して、
b(n)=2(n-3)+8
    =2(n-3+4)
    =2(n+1)
から、
a(n)=2(n+1)2^n
    =(n+1)2^(n+1)
と前回の答えと一致しました。


一筆書きの問題は、中学生でも解ける東大大学院入試問題(34)でも取り上げているので、これも調べてみたいと思います。

一筆書きの問題(1)

2016-04-19 13:09:15 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

天気図を見ると、高気圧や低気圧が日々刻々と西から東に移動していて、昨日のような、午前は晴れて、午後は雲が多くなるといった天気が続くようです。

先日、中学生でも手が届く京大入試問題(28)で、一筆書きの問題を取り上げましたが、「ジュニア数学オリンピック2009-2013」に、一筆書きの場合の数を漸化式を使って求める方法があったので、それを紹介したいと思います。

問題は、
「次の図形を一筆書きで描くとき、描き方は何通りあるか」
です。

▲問題図

問題図では正三角形が6個ですが、ここでは図1のように、n個の正三角形を組み合わせた図形を調べます。


▲図1.n個の正三角形を組み合わせました

図1の図形を一筆書きするとき、A、Xから奇数本の辺が出ているので、A、Xが始、終点になります。

そこで、Aが始点、Xが終点になる描き方の場合の数f(n)について漸化式を立式します。このとき、Aからの最初の移動先によって場合分けをします。

(1)A→Bでスタートする場合
この場合、B→Cと移動せざるおえません。

つまり、A→Bでスタートした場合の描き方の場合の数は、図2にあるn-1個の正三角形を組み合わせた図形で、Cを始点、Xを終点とする描き方の場合の数f(n-1)になります。


▲図2.A→Bでスタートする場合


(2)A→Cでスタートする場合
図3のように、Cに移動したとき、経路C-B-Aは、経路C-Aと同じですから、(1)と同様に、A→Cでスタートした場合の描き方の場合の数は、Cを始点、Xを終点とする描き方の場合の数f(n-1)になります。


▲図3.A→Cでスタートする場合


(3)A→Dでスタートする場合
図4のように、正三角形ABCを除いてできる、n-2個の正三角形を組み合わせた図形で、Dを始点、Xを終点とする描き方の場合の数はf(n-2)で、さらに正三角形ABCを周回する方向が2通りあるので、A→Dでスタートした場合の描き方の場合の数は、2f(n-2)になります。


▲図4.A→Dでスタートする場合

以上から、
f(n)=f(n-1)+f(n-1)+2f(n-2)
    =2(f(n-1)+f(n-2))
が成り立ちます。

問題では、n=6なので、f(1)=2、f(2)=6から
f(3)=2(f(2)+f(1))=16
f(4)=2(f(3)+f(2))=44
f(5)=2(f(4)+f(3))=120
f(6)=2(f(5)+f(4))=328
になり、328(通り)で、これが答えです。(AとXを区別するときは、328×2=656(通り))


次回は、初めに紹介した京大の入試問題に漸化式を使う方法を調べてみたいと思います。

平成28年度高校入試問題(2)【開成高】

2016-04-18 12:14:34 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

暖かいというより暑いといった感じで、教室の掃除をしていたら汗が吹き出てきました。これから雲が多くなるようですが、明日は晴天になるようです。

さて、今回は前回と同じく、平成28年度開成高校入試問題です。

問題は、6つの小問からなる大問1の1つで、
「正六角柱の8つの面を紫、白、青、緑、橙、黄、赤の7色を使って塗ることを考える。
 赤で2つの面を塗り、残り6色は必ずしようするものとするとき、2つある正六角形の面の少なくとも一つを赤で塗る塗り方は何通りあるか。ただし、ひっくり返したり回転させたりすると一致するような塗り方は同じ塗り方と考える。」

▲問題図

場合の数の問題です。早速、取り掛かりましょう。

問題に、「2つある正六角形の面の少なくとも一つ」とあるので、2つの正六角形を赤で塗った場合と1つの正六角形を赤で塗った場合に場合分けして調べましょう。

・2つの正六角形を赤で塗った場合

このとき、6つの側面は、紫、白、青、緑、橙、黄の6色で塗られることになるので、その場合の数は、6×5×4×3×2×1=720(通り)になりそうですが、例えば、図1に示すような左側の塗り方(左から、紫、白、青、緑、橙、黄)と右側の塗り方(左から、白、青、緑、橙、黄、紫)は同じ塗り方になるので、それらを除く必要があります。


▲図1.2つの正六角形を赤で塗った場合の側面の塗り方(1)


そこで、側面の1つを、例えば、紫で塗って、その右側に並ぶ5つの側面に5種類の色を塗ることを考えると、その場合の数は、5×4×3×2×1=120(通り)になります。(円順列といいます)

さらに、図2のように、上下を逆さまにしたときも同じ塗り方になるので、1/2する必要があります。(数珠順列といいます)


▲図2.2つの正六角形を赤で塗ったときの側面の塗り方(2)

したがって、2つの正六角形を赤で塗った場合の色の塗り方は、120÷2=60(通り)です。

・1つの正六角形を赤で塗った場合

1つの正六角形を赤で塗った場合、もう一つの正六角形の色の塗り方は、紫、白、青、緑、橙、黄の6通りになります。


▲図3.1つの正六角形を赤で塗った場合

そして、6つの側面は、赤でない正六角形に塗った色(図3では紫)以外の5色に赤を加えた6色で塗ることになり、この場合も先ほどと同じように、例えば、側面の1つを赤で塗って、その右側に並ぶ側面に5種類の色を塗ることを考えればOKです。(上下を逆さまにしたときは、異なった塗り方になります)

したがって、正六角形の1つの面が赤で塗られる場合の塗り方は、5×4×3×2×1×6=720(通り)です。

以上から、2つある正六角形の面の少なくとも一つを赤で塗る塗り方は、60+720=780(通り)で、これが答えです。


簡単な色の塗り分け問題でした。

平成28年度高校入試問題(1)【開成高】

2016-04-17 12:44:45 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

日本海にある低気圧の影響で、昨晩から強い南風が吹いています。午前中は、雨が降ったり晴れ間が見られたりと変わりやすい天気でしたが、これから徐々に晴れてくるようです。

さて、今回は平成28年度開成高校入試問題です。(開成高の問題の一部が掲載された2月16日の朝刊が机の上にほったらかしになっていました)

問題は、6つの小問からなる大問1の1つで、
「2つの数a、bがあって、a は -1≦a≦1.5 を満たし、bは小数第1位で四捨五入すると4となる。
 
 とおくとき、xのとり得る値の範囲を不等式で表せ。」
です。

x=f(a)+g(b)、f(a)=√(-a)^2、g(b)=-1/2・b
という形をしていて、aとbは独立なので、xの最小値はf(a)の最小値とg(b)の最小値の和、xの最大値はf(a)の最大値とg(b)の最大値の和になります。

一方、aとbのとり得る値の範囲は、それぞれ
-1≦a≦1.5  ⇒ -1≦a≦3/2           (1)
3.5≦b<4.5 ⇒ 7/2≦b<9/2          (2)
です。(分数に直しましたが、小数のままでもOKです)

そこで、まず、f(a)=√(-a)^2 のとり得る値の範囲を調べましょう。

(1)から
0≦(-a)^2≦9/4
なので、
0≦f(a)≦√(9/4)=3/2              (3)
です。

[ここで、f(a)の根号を外すのであれば、a<0とa≧0の場合に場合分けしましょう。
a<0のとき⇒-1≦a<0のとき、f(a)=-aで、0<f(a)≦1
a≧0のとき⇒0≦a≦3/2のとき、f(a)=a、0≦f(a)≦3/2
になり、(1)の範囲でf(a)がとり得る値の範囲は、
0≦f(a)≦3/2
と、(3)と同じになります。]

続いて、g(b)=-1/2・bのとり得る範囲を調べます。

(2)から
-9/4<g(b)=-1/2・b≦-7/4           (4)
です。

あとは、f(a)とg(b)の最大値同士の和と最小値同士の和を計算して、
0+(-9/4)<x=f(a)+g(b)≦3/2+(-7/4)
-9/4<x≦-1/4
になり、これが答えです。


四捨五入(小学校)、2次関数の変域と値域(中3)、不等式の取り扱い(中1)などの基本事項を試す問題でした。これらについて曖昧な人は早めに確認しておきましょう。

中学生でも手が届く京大入試問題(28)

2016-04-16 11:18:47 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

一昨日以来、熊本では大きな地震が続いているようです。地震が早く収束し、被災された方々が早く日常の生活に戻られることを心からお祈り申し上げます。

さて、今回は平成20年度京大入試問題(前期、文系)です。

問題は、
「正n角形とその外接円を合わせた図形をFとする。F上の点Pに対して、始点と終点がともにPであるような、図形Fの一筆がきの経路の数をN(P)で表す。正n角形の頂点をひとつとってAとし、a=N(A)とおく。また正n角形の辺をひとつとってその中点をBとし、b=N(B)とおく。このときaとbを求めよ。
 注:一筆がきとは、図形を、かき始めから終わりまで、筆を紙からはなさず、また同じ線上を通らずにかくことである。」
です。

まず図1のように、正n角形の頂点のひとつをAとした場合の図を描いてみましょう。(ここで、頂点PnをAとしました)


▲図1.正n角形の頂点PnをAとした場合の図を描きました

図1で、Aからの可能な経路は時計回りの2本と反時計回りの2本の合わせて4本ありますが、ここは、初めの移動方向を時計回りに決めて経路数を計算し、最後に2倍する(反時計回りを加える)のが良さそうです。

また、正n角形の頂点間の経路はすべて2本なので、図形Fを一筆がきするためには、
(1)同じ方向に2周する
(2)1周目にどこかの頂点Pkで折り返し、その後再度頂点Pkで折り返す
しかありません。

そこで、初めの移動方向を時計回りとして、(1)と(2)の経路数を調べていきましょう。

まず(1)は、1周回って再度Aに到達するまでの各頂点で可能な経路が2本なので、経路数は 2^n です。

そして、2周目では各頂点で可能な経路が1本になるので、経路数は1になり、したがって、(1)の経路数は 2^n になります。

次に(2)です。

図1のように、折り返す頂点をPkとすると、1≦k≦nです。

Aから頂点Pkまで移動(時計回り)する経路数は 2^kで、頂点Pkで折り返してAに移動(反時計回り)する経路数は1です。

さらに、Aから頂点Pkまで移動(反時計回り)する経路数は 2^(n-k) で、頂点Pkで折り返してAに移動(時計回り)する経路数は1です。

つまり、頂点Pkで折り返した場合、その経路数は、2^k×2^(n-k)=2^n です。

ここで、頂点Pkはn通りあるので、(2)の経路数は n2^n になります。

したがって、初めの移動方向が時計回りのときのすべての経路数は、2^n+n2^n=(n+1)2^n で、これに初めの移動方向が反時計回りの場合を加えると、
a=(n+1)2^n×2
 =(n+1)2^(n+1)
で、これが答えです。

続いて図2のように、正n角形の辺PnP1の中点をBとした場合です。


▲図2.正n角形の辺PnP1の中点をBとした場合の図を描きました

図2で、BPnとBP1の経路は、1番最初と1番最後に通らなければなりません。つまり、同じ方向に2周回るときも、頂点Pkで折り返すときも、頂点Pnと頂点P1を移動するときの経路は1本になるので、bはaの1/2になります。

したがって、
b=a÷2=(n+1)2^n で、これが答えです。

ついでにbを、先程のaと同じように調べてみましょう。

まず、時計回りに2周する経路数です。

Bを出発してから始めて頂点Pn-1に到達するまで、各頂点で可能な経路は2本なので、その経路数は 2^(n-1) で、それ以降、各頂点で可能な経路は1本になるので、時計回りに2周する経路数は 2^(n-1) になります。

次に、頂点Pkで折り返す場合の経路数です。

図2のように、折り返す頂点をPkとすると、1≦k≦nです。

Bから頂点Pkまで移動(時計回り)する経路数は 2^(k-1) で、頂点Pkで折り返して頂点Pnに移動(反時計回り)する経路数は1です。

さらに、頂点Pnから頂点Pkまで移動(反時計回り)する経路数は 2^(n-k) で、頂点Pkで折り返してBに移動(時計回り)する経路数は1です。

つまり、頂点Pkで折り返した場合、その経路数は、2^(k-1)×2^(n-k)=2^(n-1) です。

ここで、頂点Pkはn通りあるので、(2)の経路数は n2^(n-1) になります。

したがって、初めの移動方向が時計回りのときのすべての経路数は、2^(n-1)+n2^(n-1)=(n+1)2^(n-1) で、これに初めの移動方向が反時計回りの場合を加えると、
b=(n+1)2^(n-1)×2
 =(n+1)2^n
で、先ほどの答えと同じになりました。


各頂点間の経路が2本なので簡単な一筆がきの問題でした。