東久留米 学習塾 塾長ブログ

東京都東久留米市滝山の個別指導型学習塾 塾長白井精一郎のブログ

中学生でも解ける東大大学院入試問題(146)

2015-03-21 10:13:55 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

昨日と比べて気温が下がりましたが寒いということはありません。明日は暖かさが戻ってくるようです。

さて、今回は平成26年度東大大学院新領域創成科学研究科情報生命科学の入試問題です。

問題は、
「表が出る確率がp(0<p<1)、裏が出る確率が(1-p)のコインを独立にN回(N>1)投げ、得られる表と裏の列を考える。以下の問に、式の導出も含めて答えよ。

(1)N=5とする。列「表表裏表裏」が得られる確率を求めよ。
(2)最初のl個(0≦l≦N)がすべて表になる確率を求めよ。
(3)初めて裏がでるまでの、表の数をmとする。ただし、裏がひとつもない列ではm=Nとする。(0≦m≦N)。mの期待値を求めよ。
(4)表をn個(0≦n≦N)、裏を(N-n)個持つ列が得られる確率P(nlN,p)を求めよ。
(5)(4)において、nの期待値を求めよ。
(6)nとλ=Npを固定し、N→∞の極限をとると、(4)の確率分布P(nlN,p)はポアソン分布P(nlλ)=(1/n!)λ^n・e^(-λ)に近づくことを示せ。必要であれば、等式lim(1+x/N)^N=e^xを使ってよい。(N→∞のとき(1+x/N)^N→e^x を表します)  」
です。

(3)以降は期待値とか極限が出きて中学数学を逸脱していますが、取りあえず解いていきます。

まず(1)ですが、表と裏の出る確率がそれぞれpと(1-p)なので、「表表裏表裏」となる確率P(1)は、
P(1)=p・p・(1-p)・p(1-p)
    =p^3・(1-p)^2
になり、これが答えです。

次に(2)の最初のl個がすべて表になる確率P(2)は、
P(2)=p・p・・・p [pがl個]
    =p^l
になり、これが答えです。

(3)の期待値というのは、例えば、くじを引くときの賞金などのように、その値をとる確率が与えられている変数に各々の確率を掛けて和をとったものです。

つまり、求める期待値E(3)は、
E(3)=1・p+2・p^2+3・p^3+・・・+m・p^m            (1)
になります。

(1)×pを作ると、
pE(3)=p^2+2・p^3+3・p^4+・・・+(m-1)p^m+m・p^(m+1)      (2)
で、(1)-(2)から
(1-p)E(3)=p+p^2+p^3+・・・+p^m-mp^(m+1)
         =p(1-p^m)/(1-p)-mp^(m+1)  ←(等比数列の和の公式を使いました)
         =p(1-p^m-(1-p)(mp^m))/(1-p)
         =p(1-(1+m)p^m+mp^(m+1))/(1-p)
なので、
E(3)=p(1-(1+m)p^m+mp^(m+1))/(1-p)^2
となり、これが答えです。

(4)は表・裏がN個並んだ列からn個の表を選ぶ場合の数が、N!/n!(N-n)!になり、表がn個出る確率はp^n、裏が(N-n)個出る確率は(1-p)^(N-n) なので、求める確率P(nlN,p)は、
P(nlN,p)=N!/n!(N-n)!・p^n・(1-p)^(N-n)
になり、これが答えです。(普通、NCn・p^n・(1-p)^(N-n)と表します)

(5)については総和の記号Σを使うと、求める期待値E(5)は、
E(5)=Σk・NCk・p^k・(1-p)^(N-k) (k=1からn)
    =nΣ(N-1)C(k-1)・p^k・(1-p)^(N-k)   ←(r・nCr=n・(n-1)C(r-1)を使いました)
    =npΣ(N-1)C(k-1)・p^(k-1)・(1-p)^(N-k)
    =npΣ(N-1)Ck・p^k・(1-p)^(N-1-k) (k=0からn-1)
    =np(p+(1-p))^(N-1)   ←(二項定理です)
    =np
となり、これが答えです。

最後の(6)は、P(nlN,p)を次のように変形します。

P(nlN,p)=N!/(n!・(N-n)!・p^n・(1-p)^(N-n)
       =N(N-1)(N-2)・・・(N-n+1)p^n・(1-p)^(N-n)・1/n!   (3)

ここで、(3)の前の部分を
N(N-1)(N-2)・・・(N-n+1)p^n=N/N・(N-1)/N・・・(N-n+1)/N・(Np)^n
                       =(1-1/N)(1-2/N)・・・(1-(n-1)/N)・(Np)^n
と変形します。

これに、与えられた式λ=Npを代入し、N→∞とすると、
N(N-1)(N-2)・・・(N-n+1)p^n→λ^n
となり、目標の式の一部が出てきました。

次に(1-p)^(N-n) は、λ=Npから
(1-p)^(N-n)=(1-λ/N)^(N-n)
        =(1+(-λ)/N)^N/(1+(-λ)/N)^n
と変形し、与えられた等式lim(1+x/N)^n=e^x (N→∞)を使って、
N→∞のとき、
(1-p)^(N-n)=(1+(-λ)/N)^N/(1+(-λ)/N)^n→e^(-λ)/1==e^(-λ)
です。

以上から、N→∞のとき、
P(nlN,p)→λ^n・e^(-λ)・1/n!=1/n!・λ^n・e^(-λ)
となることが判りました。


この問題は、よくある二項分布とポアソン分布の関係についてのもので、式を変形するパターンを知っていればそれほど難しくはありませんが、中学数学を大いに逸脱してしまいました。申し訳ありません。    

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1 コメント

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問題(3)の解答方針について (ham)
2021-05-14 15:49:32
はじめまして.

私の理解が間違っていたら恐縮なのですが、問題(3)について

$$
E(m) = \sum_{k=0}^{N-1}kp^k(1-p) + Np^N
$$

という式になるのではないでしょうか?
これを解くと、計算間違いしているかもしれませんが

$$
\frac{p(1-p^N)}{1-p}
$$

となります。

[理由]
(1) 初めて裏が出るまでの表の枚数をkとしたとき、全事象は{0, 1, 2,..., N} s.t 一回も裏が出なかったときは k = Nとする
(2) 初めて裏がでるまでなので, 表がk枚(N未満)出たとき、k+1回目の試行で裏が出なくてはならない
(3) N回表が出た場合はm=Nなので, Np^N

ご検討よろしくおねがいします.
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