東久留米 学習塾 塾長ブログ

東京都東久留米市滝山の個別指導型学習塾 塾長白井精一郎のブログ

日本数学オリンピックの難しい問題(4)

2016-06-30 12:18:56 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

東久留米の気温は25℃と過ごしやすい日になりました。しかし明日から気温が上がり、土曜日は30℃、日曜日には32℃に達する予報です。その対策の一環で、朝、スーパーマーケットでビール(正しくは発泡酒)を買いました。冷蔵庫で冷やして、週末に飲む予定です。

さて、今回は2010年日本数学オリンピック本選に出題された図形問題を取り上げます。

問題は、
「AB≠ACなる鋭角三角形ABCがあり、AからBCにおろした垂線の足をHとおく。点P、Qを、3点A、B、Pと3点A、C、Qがともにこの順に一直線上に並ぶようにとると、4点B、C、P、Qは同一円周上にあり、HP=HQが成り立った。このときHは三角形APQの外心であることを示せ。ただし、XYで線分XYの長さを表すものとする。」
です。

早速、図1のように、問題の図を描きましょう。


▲図1.問題の図を描きました

まず、図1から簡単に得られる情報について調べてみましょう。

仮定からB、P、Q、Cが同一円周上にあるので、
∠CQP+∠CBP=180°
∠CQP=180°-∠CBP          (1)
です。

一方、仮定からA、B、Pは一直線上にあるので、
∠ABC+∠CBP=180°
∠ABC=180°-∠CBP          (2)
です。

したがって、(1)(2)から、図2のように、
∠ABC=∠CQP=∠AQP          (3)
が成り立ちます。(∠ACB=∠APQも同じです)


▲図2.∠ABC=∠AQP(∠ACB=∠APQ)です

それでは問題に取り掛かりましょう。

Hが△APQの外心であることを示すためには、HA=HP(HQ)←△HAP(△HAQ)が二等辺三角形←∠HAP=∠HPA(∠HQA)を示せばOKですが、これより、新たに点Rをおいて、四角形APQRが同一円周上にあることを示す方法(よく使う方法です)のほうが簡単そうです。

このとき図3のように、RはAHを対称軸としてPと対応する点がよいでしょう。


▲図3.対称軸をAHとしてPの対応する点をRにしました

初めに、PとRを直線で結ぶと直線PRは直線AHと直交し、∠AHB=∠AMPなので、
BC//PR
です。

そして、平行線の同位角は等しいので、
∠ABC=∠APR               (4)
です。

一方、△APRは二等辺三角形なので、
∠APR=∠ARP               (5)
です。

すると(3)(4)(5)から
∠AQP=∠ARP
が成り立ち、円周角の定理の逆から、A、P、Q、Rは同一円周上にあることが判りました。

ところが、HP=HQ=HRから、P、Q、Rは中心をHとする円周上にあるので、A、P、Q、Rも同じ円周上にあることになります。

したがって、Hは△APQの外心です。


対称の点をおくテクニックは、以前にも取り上げています。(例えばジュニア数学オリンピックの難しい問題(4)) 頭にいれておくと役に立つかもしれません。

日本数学オリンピックの簡単な問題(20)

2016-06-29 12:32:01 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

天気図を見ると、梅雨前線を挟んで北と南の高気圧がにらみ合っていますが、週末には南の高気圧が前線を押し上げ、しばらく晴れ間が続くようです。梅雨明けももう直ぐです。

さて、今回は2010年日本数学オリンピック予選に出題された図形問題を取り上げます。

問題は、
「三角形ABCの内部に点Pがある。AP=√3、BP=5、CP=2、AB:AC=2:1、∠BAC=60°であるとき、三角形ABCの面積を求めよ。
 ただし、XYで線分XYの長さを表すものとする。」
です。

早速、図1のように、問題も図を描きましょう。


▲図1.問題の図を描きました

この△ABCは、∠A=60°、AB:AC=2:1から、三角定規の一方(内角が、30、60、90°)と相似で、∠C=90°です。

そこで図2のように、A、B、Cをそれぞれy軸上、x軸上、原点に置いて、解析的に解くのが簡単そうです。


▲図2.A、B、Cをそれぞれy軸上、x軸上、原点に置きました

図2で、Pの座標を(p,q)、p>0、q>0とします。

また、CA=a(a>0)とすると、CA:CB=1:√3なので、CB=√3・aです。

そして、Pからx軸、y軸に垂線を下ろし、それらの足をそれぞれD、Eとします。

そこで、△PCD、△PBD、△PAEに三平方の定理を適用して、
PC^2=CD^2+PD^2 ⇒ 4=p^2+q^2           (1)
PB^2=BD^2+PD^2 ⇒ 25=(√3・a-p)^2+q^2   (2)
PA^2=PE^2+AE^2 ⇒ 3=p^2+(a-q)^2       (3)
が成り立ちます。

あとは(1)(2)(3)を解くだけです。

まず、(2)(3)を展開、整理して、
25=3a^2-2√3・ap+p^2+q^2             (4)

3=a^2-2aq+p^2+q^2                  (5)
とします。

次に、(4)(5)に(1)を代入して、p、qをaで表すと、
25=3a^2-2√3・ap+4
2√3・ap=3a^2-21
p=3(a^2-7)/(2√3・a)                (6)

3=a^2-2aq+4
2aq=a^2+1
q=(a^2+1)/2a                      (7)
です。

さらに、(6)(7)を(1)に代入して、
4=(3(a^2-7)/(2√3・a))^2+((a^2+1)/2a)^2
で、これを整理して、
4=9(a^2-7)^2/12a^2+(a^2+1)^2/4a^2
48a^2=9a^4-126a^2+441+3a^4+6a^2+3
12a^4-168a^2+444=0
a^4-14a^2+37=0                    (8)
になります。

(8)を解の公式を使って解くと、
a^2=7±√(49-37)
  =7±2√3
です。

ここで、a^2=7-2√3を(6)に代入すると、
p=3(7-2√3-7)/(2√3・a)
 =-3/a
になり、a>0からp<0です。

ところが、Pは△ABCの内部の点なので、p>0でなければならず、
a^2=7+2√3                        (10)
になります。

最後に、△ABCの面積Sは、
S=a×√3・a×1/2
 =√3/2・a^2
なので、これに(10)を代入して、
S=√3/2・(7+2√3)
 =3+7√3/2
で。これが答えです。


他には△PABと相似の三角形をABとACが対応するように作る方法やヘロンの公式を利用する方法(計算が大変そうです)がありますが、解析的に解くのが計算するだけなので簡単そうです。興味のある人は調べてみてください。

日本数学オリンピックの簡単な問題(19)

2016-06-28 13:45:01 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

昨夜遅に音を立てて降っていた雨は、昼過ぎには止んで、涼しくて過ごしやすい日になりました。今日はこのまま曇りが続き、明日、曇りから雨に変わるようです。

さて、今回は2011年日本数学オリンピック予選に出題された図形問題を取り上げます。

問題は、
「∠ABC=90°である三角形ABCの辺BC、CA、AB上に点P、Q、Rがあり、AQ:QC=2:1、AR=AQ、QP=QR、∠PQR=90°が成立している。CP=1のときARを求めよ。ただし、XYで線分XYの長さを表すものとする。」
です。

早速、図1のように、問題の図を描きましょう。


▲図1.問題の図を描きました

図1を見て目立つのが、△AQRが二等辺三角形であることと四角形BPQRが円に内接するということですが、これらは、大切なCP=1と少しばかり離れていて役に立ちそうもありません。

そこでCP=1を使いやすそうな位置に移動することを考えます。

このときQP=QRから、△QPCと合同になりそうな三角形QRSを思い付けば、あとは簡単です。

それでは、図2のように線分BR上にCP=SRとなるようにSをとり、△QPCと△QSRとが合同かを調べましょう。


▲図2.△QPCと△QSRとが合同かを調べます


仮定から
QP=QR          (1)
CP=SR          (2)
です。

また、四角形BPQRで、∠RBP=∠PQR=90°なので、
∠BPQ+∠BRQ=180°
で、
∠BRQ=180°-∠BPQ
    =∠CPQ       (3)
です。

ここで、∠BRQ=∠SRQなので、(3)から
∠SRQ=∠CPQ       (4)
です。

したがって、(1)(2)(3)から2組の辺とその間の角が等しいので、
△QPC≡△QSR
です。

すると図3のように、QC=QSから
AQ:QS=2:1
さらに、∠CQP=∠SQRから
∠CQS=90°
です。


▲図3.AQ:QS=2:1、∠CQS=90°です

そこで、直角三角形AQSに三平方の定理を適用すると、
AS^2=AQ^2+QS^2
が成り立ち、これにAS=AQ+1、QS=AQ/2を代入すると、
(AQ+1)^2=AQ^2+(AQ/2)^2
AQ^2+2AQ+1=AQ^2+AQ^2/4
AQ^2-8AQ-4=0      (5)
です。

ここで(5)を2次方程式の解の公式で解くと、
AQ=4±√(4^2+4)
  =4±√20
  =4±2√5
で、AQ>0なので、
AQ=4+2√5
です。

最後に、仮定からAR=AQなので、ARの長さは4+2√5で、これが答えです。


ここでは、△QCP≡△QRSになるように補助線QSを引きましたが、図4のように、Qから辺AB、辺BC上に垂線を下ろしても大丈夫です(少し煩雑になるようですが)。


▲図4.Qから辺AB、辺BCに垂線を下ろしました

興味のある人は調べてみてください。

ジュニア数学オリンピックの簡単な問題(16)

2016-06-27 12:18:56 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

雲は多めですが晴れて明るい日になりました。昨日の天気予報では、明日からぐずついた日が続くはずでしたが、今日の予報では、週末の金、土曜日は晴れになるようです。天気図を眺めていると毎日ダイナミックに変わるので、この時期の予報が難しいのがよく判ります。

さて、今回は2009年ジュニア数学オリンピック予選に出題された整数問題を取り上げます。

問題は、
「3桁の正の整数が2つあり、どちらも一の位と十の位がともに9である。このような2つの数の積の千の位としてありうる値をすべて求めよ。」
です。

早速、取り掛かりましょう。

2つの3桁の整数をA、Bとすると、どちらも下2桁は99なので、
A=100a+99                         (1)
1≦a≦9、aは整数                         (2)
B=100b+99、                        (3)
1≦b≦9、bは整数                         (4)
と表すことができます。

ここで、AとBとの積Pに(1)(3)を代入して、
P=AB
 =(100a+99)(100b+99)
 =10000ab+9900a+9900b+9801
 =10000(ab+a+b)+9801-100a-100b    (5)
です。

(5)の右辺の第1項目の千の位は0なので、Pの千の位の数は、第2、3、4項目の和の千の位の数と同じになります。

そこで、
P’=9801-100a-100b
とすると、(2)(4)から
8001≦P’≦9601
です。(左の等号はa=b=9のとき、右の等号はa=b=1のとき、成り立ちます)

つまり、P’の千の位の数は8または9になり、Pの千の位の数も同じです。

したがって、2つの数の千の位としてありうるのは8と9で、これが答えです。     


簡単な問題でした。

ジュニア数学オリンピックの簡単な問題(15)

2016-06-26 11:55:20 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

今朝、ラジオの天気予報で、湿度が下がってさわやかな暑さになると言っていたのですが、確かにここ数日と比べて湿度が低いものの、十分に蒸し暑く感じます。南下している梅雨前線は明日もそのままですが、明後日には戻ってきて、それからしばらく梅雨らしい天気が続くようです。

さて、今回は2013年ジュニア数学オリンピック予選に出題された図形問題を取り上げます。

問題は、
「∠BACが直角である二等辺三角形ABCがある。辺BC上に点D、辺CA上に点Eがあり、∠ADE=45°となっている。BD:DC=1:5のときAE:ECを求めよ。ただし、XYで線分XYの長さを表すものとする。」
です。

まず図1のように、問題の図を描きましょう。


▲図1.問題の図を描きました

図1を一見すれば、△ABDと△DCEが相似ということが判るので、これを利用すれば簡単に解けそうです。

そこで、△ABD△DCEを示しましょう。

図2のように、△ABCは∠A=90°の直角二等辺三角形なので、
∠B=∠C=45°                 (1)
です。


▲図2.△ABD△DCEを示します

また、∠ADCは△ABDの1つの外角なので、
∠ADC=∠B+∠BAD
    =45°+∠BAD
で、
∠BAD=∠ADC-45°             (2) 
です。

一方、
∠CDE=∠ADC-∠ADE
で、仮定から∠ADE=45°なので、
∠CDE=∠ADC-45°             (3)
です。

したがって、(2)(3)から
∠BAD=∠CDE                 (4)
で、(1)(2)から2組の内角が等しいので、△ADC△DCEです。

あとはABの長さの比を計算して、ECの長さの比を求めればお仕舞いです。

△ABCは直角二等辺三角形ですから、
AB:AC:BC=1:1;√2
で、図3のように、BC=BD+DC=(1)+(5)=(6)なので、
AB=AC=(3√2)
です。ここで、( )はBDを1としたときの割合を表します。


▲図3.ABとECの長さの比を計算します

そして、△ABD△DCEから
AB:BD=DC:CE
で、AB=(3√2)、BD=(1)、DC=(5)を代入して、
(3√2):(1)=(5):CE
CE=(5)/(3√2)
  =(5√2/6)
です。

ここで、AE=AC-CEから
AE=(3√2)-(5√2/6)
  =(13√2/6)
です。

したがって、
AE:EC=AE:CE
     =(13√2/6):(5√2/6)
     =13:5
で、これが答えです。


図を描けば簡単に解ける問題でした。

ジュニア数学オリンピックの簡単な問題(14)

2016-06-25 12:04:01 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

東久留米の気温は30℃で蒸し暑い日になりました。西から来る高気圧が梅雨前線を押し下げるので、久しぶりに明日、明後日は晴れるようです。

さて、今回は2010年ジュニア数学オリンピック予選に出題された整数問題を取り上げます。

問題は、
「3桁の整数m、nがあり、mとnとはちょうど1つの桁の数字が異なる。またnはmの倍数である。考えられる組(m,n)は何通りあるか。」
です。

早速、取り掛かりましょう。

m、nは3桁の整数なので、
100≦m、n≦999           (1)
です。

また、mとnは互いに異なり、かつ、nはmの倍数なので、
n=km、kは2以上の整数         (2)
で、
n≧2m                  (3)
が成り立ちます。

すると、(1)(3)から
100≦m≦499             (4)
100≦n≦999             (5)
になります。

次に、「mとnとはちょうど1つの桁の数字が異なる」という条件について調べましょう。

(4)からmの3桁目の数は、1、2、3、4で、そのときnの3桁目の数は、(3)から、それぞれ2以上、4以上、6以上、8以上になります。

つまり、mとnとでちょうど1つの数字が異なる桁は、3桁目になります。

すると、nとmの差は、100の倍数になるので、
n-m=100a、1≦a≦8、aは整数   (6)
が成り立ちます。

そこで、(6)に(2)を代入して、
km-m=100a
(k-1)m=100a
ですから、mは、100(a=1)、200(a=2)、300(a=3)、400(a=4)、500(a=5)、600(a=6)、700(a=7)、800(a=8)の約数になります。

ここで、mは499以下の3桁の整数ですから、100a(a=1、2,3、・・・、8)に対してmが取り得るのは、
・100のとき、m=100
・200のとき、m=100、200
・300のとき、m=100、150、300
・400のとき、m=100、200、400
・500のとき、m=100、125、250
・600のとき、m=100、120、150、200、300
・700のとき、m=100、140、175、350
・800のとき、m=100、160、200、400
になり、これをまとめると、mは、
100、120、125、140、150、160、175、200、250、300、350、400
です。

そして、これらのmに対して、可能なnを調べると、(5)からnは999以下の整数なので、
・m=100のとき、n=200、300、400、500、600、700、800、900の8通り
・m=120のとき、n=720の1通り
・m=125のとき、n=625の1通り
・m=140のとき、n=840の1通り
・m=150のとき、n=450、750の2通り
・m=160のとき、n=960の1通り
・m=175のとき、n=875の1通り
・m=200のとき、n=400、600、800の3通り
・m=250のとき、n=750の1通り
・m=300のとき、n=600、900の2通り
・m=350のとき、なし。0通り
・m=400のとき、n=800の1通り
で、考えられる組(m.n)は、22通りになり、これが答えです。


少し具体例を調べてみれば、mとnで1つの数字が異なる桁が3桁目ということが直ぐに判ります。見通しが悪いときには、具体例を調べてみましょう。

日本数学オリンピックの難しい問題(3)

2016-06-24 12:48:05 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

昨日より気温が下がって蒸し暑さが和らぎ、過ごしやすい日になりました。今は雨は降っていませんが、これから降り始めて、明日も雨模様です。明後日、明々後日は晴れ間が見られるようです。

さて、今回は2009年日本数学オリンピック本選に出題された図形問題を取り上げます。

問題は、
「三角形ABCの外接円をΓとする。点Oを中心とする円が、線分BCと点Pで接し、Γの弧BCのうちAを含まない方と点Qで接している。
 ∠BAO=∠CAOのとき、∠PAO=∠QAOであることを示せ。」
です。

早速、図1のように問題の図を描きましょう。


▲図1.問題の図を描きました

図1では手掛かりが少ないので、この図形の特徴を少し詳しく調べてみましょう。

まず図2のように、直線AOの延長と円Γの交点をRとすると、与えられた条件∠BAO=∠CAOから弧BR=弧CRなので、Rと円Γの中心Dを結んだ直線は直線BCと直交します。ここで、直線RDと円Γの交点でRでない方の点をSとしました。


▲図2.直線BCと直線RDは直交します

さらに、円Γと円OはQを相似の中心とする相似図形で、Sでの円Γの接線と直線BCが平行であることから、PとSが互いに対応する点になります。

したがって、図3のように、Q、P、Sは同一直線上にあります。(Qを固定して円Oを拡大して円Γに一致させるとPはSと一致します。そのときのPは直線QP(QS)上を動きます)


▲図3.Q、P、Sは同一直線上にあります

ここで転じて、問題の∠PAO=∠QAOをどのようにして示すことができるかを調べてみましょう。

例えば、図4のように、直線APの延長と円Γの交点をTとして、
(1)弧RT=弧RQ
を示すことができればOKです。

また、
(2)4点A、P、O、Qが同一円周上にある
ことを示す手もありそうです。


▲図4.弧RT=弧RQか4点A、P、O、Qが同一円周上にあることを示せば∠PAO=∠QAOです

ここで(1)を示す場合、Tが、直線RSを対称軸としてQに対応する点であることなどを示せばよいのですが、このときPが円Oと直線BCの接点という条件を使うのが大変そうです。

それに比べて(2)の場合、直線POが直線RSと平行になるといったように、Pが円Oと直線BCの接点という条件を自然に取り込めて都合が良さそうです。

そこで図5のように、PとOを結んで直線POを引き、円Γとの交点をU、Vとします。


▲図5.直線POと円Γとの交点をU、Vとしました

次に、4点A、P、O、Qが同一円周上にあることを示すのですが、
(3)隣り合う2点の弧に対する2つの円周角が等しい
(4)四角形APOQの対角の和が180°
のどちらかを示すのが常套手段です。

ここでは(3)を示しましょう。

まず、RS//UVで、その錯角は等しいので、
∠OPQ=∠RSQ             [1]
です。

また、円周角の定理から
∠RSQ=∠RAQ
で、∠RAQ=∠OAQなので、
∠RSQ=∠OAQ             [2]
です。

[1]と[2]から
∠OPQ=∠OAQ
で、円周角の定理の逆から、4点A、P、O、Qは同一円周上にあることが判りました。

ここで、OPとOQは円Oの半径なのでOP=OQです。

したがって、円周角の定理より∠PAO=∠QAOです。


実際にこの問題を解いたときは、結論が成り立つ場合、他の部分がどのようになっていなければならないかを調べて、4点A、P、O、Qが同一線上にあることを導きました。このように結論から違う目標を導くと見通しがよくなることもあります。頭にいれておくと役に立つかもしれません。

ジュニア数学オリンピックの簡単な問題(13)

2016-06-23 13:54:11 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

東久留米ではこのところ、午前中に小雨が降って、午後からときどき晴れるといった天気が続き、特に午後は蒸し暑くなります。体調に気をつけて過ごしましょう。

さて、今回は2009年ジュニア数学オリンピック予選に出題された図形問題を取り上げます。

問題は、
「下図において、三角形OAB、OBC、OCDはそれぞれ∠OAB、∠OBC、∠OCDを直角とする直角二等辺三角形である。
 三角形OCDの面積が12のとき、三角形OABの面積を求めよ。」
です。

▲問題図

図1のように、△OCDを△OABと合同な4つの三角形に分割すると、12÷4=3から、△OABの面積が3であることが直ぐに判ります。


▲図1.△OCDは△OABと合同な4つの三角形に分割されます

相似を利用する場合、図2のように、OCの長さをaとして、OC:OB=√2:1からOB=√2/2・aで、さらにOB:AB=√2:1からAB=1/2・aです。


▲図2.△OCDと△OABの相似比を求めます

つまり、△OCDと△OABの相似比は、a:1/2・a=1:1/2で、それらの面積比は1:(1/2)^2=1:1/4です。

したがって、△OABの面積は、(△OCDの面積)×1/4=12×1/4=3になります。


とても簡単な問題でした。

日本数学オリンピックの簡単な問題(18)

2016-06-22 13:30:38 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

朝から降っていた細かい雨が止んだり降ったりと、今日も梅雨らしい天気になりました。予報によると、梅雨前線が日本の南に停滞するようで、鬱陶しい日がしばらく続くようです。

さて、今回は2010年日本数学オリンピック予選に出題された図形問題を取り上げます。

問題は、
「四角形ABCDは半径1の円に内接し、対角線どうしのなす角は60°である。対角線の交点をPとすると、AP=1/3、CP=2/3である。このときBPとDPの差の絶対値としてありうるものをすべて求めよ。ただし、XYで線分XYの長さを表すものとする。」
です。

まず図1のように、問題の図を描きましょう。


▲図1.問題の図を描きました

ここで忘れてはならないのは、問題に「対角線どうしのなす角は60°」とあるので、図1のように、∠APB=60°になる場合と、図2のように、∠CPB=60°になる場合の2通りがあるということです。


▲図2.∠CPB=60°の場合です

ここでは初めに図1の∠APB=60°の場合を調べましょう。

図1から方べきの定理で、BP・DP=AP・CP=1/3・2/3として、さらにもう一つの条件、∠APB=60°からBPなりDPについての情報を引き出すといった作戦もあるのかもしれません。

しかし、ここではAP+CP=1/3+2/3=1=(円の半径)に着目し、いくつかの正三角形を並べるのが簡単そうです。

そこで図3のように、1辺の長さが1の3つの正三角形(△OAC、△OAF、△OEF)を描き入れましょう。


▲図3.3つの正三角形を描き入れました

図3で、CEは円Oの直径で、∠OCA=∠APB=60°からCE//DBです。さらに、Oを通りCEと直交する直線(赤色の線)は対称軸です。

つまり、DP=BQなのでBPとDPの長さの差は、PQの長さになり、これはRSの長さと同じです。

そこで、△PCRと△QESに着目すると、これらの三角形は三角定規の一方(内角が30、60、90°)と相似で、PC:CR=2:1、QE:ES=2:1なので、CR=ES=1/3です。

ここで、CEは円Oの直径(=2)なので、
RS=CE-(CR+ES)
  =2-2/3
  =4/3
です。

したがって、BPとDPの差の絶対値は4/3です。

続いて、図2に示した∠CPB=60°の場合を調べましょう。

先ほどと同じく図4のように、3つの正三角形(△OAC、△OCH、△OGH)を描き入れます。


▲図4.この場合も3つの正三角形を描き入れます

すると先ほどと同じように、BPとDPの長さの差はUVの長さになり、AU=GV=1/6から
UV=AG-(AU+GV)
  =2-1/3
  =5/3
です。

したがって、BPとDPの差の絶対値は5/3です。

以上から、BPとDPの差の絶対値としてありうるものは4/3と5/3で、これが答えです。


ACの長さが1になっていることに気が付けば簡単な問題です。

ジュニア数学オリンピックの簡単な問題(12)

2016-06-21 13:35:49 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

昼過ぎまでは梅雨らしい小雨が降っていたのですが、その後晴れて、さらに蒸し暑くなりました。天気図では、本州の南岸にある梅雨前線がしばらくじっとしていて、今週一杯は雨が降ったり曇ったりといった天気になるようです。

さて、今回は2011年ジュニア数学オリンピック予選に出題された整数問題を取り上げます。

問題は、
「xを2桁の正の整数、yを1桁の正の整数とする。xの十の位、xの一の位、yがすべて異なるとき、xyとしてありうる最大の値を求めよ。」
です。

この手の問題と出くわすと反射的に、x=10a+b、y=cとおいてしまいますが、この場合、a、b、cの条件が、
a≠b≠c
1≦a,c≦9、0≦b≦9、 a、b、cは整数
だけなので、行き詰ってしまいます。

このようなときには、少し具体例を調べてみるのがよいでしょう。

例えば、x=56とすると、56×yが最大になるのですから、y=9と判ります。

さらに、y=9とすると、x×9が最大になるのですから、x=87と判ります。

つまり、xyが最大になるのは、xの十の位の数、一の位の数とyは、9、8、7の組合せということが判ります。(具体例を調べなくてもピンとくる人も多いと思いますが)

そこで、
(1)98×7
(2)89×7、
(3)97×8
(4)79×8
(5)87×9
(6)78×9
の6通りのうち、最大のものを求めます。

まず、(1)>(2)、(3)>(4)、(5)>(6)なので、
(1)98×7
(3)97×8
(5)87×9
の3つに絞り込むことができます。

続いて、(1)-(3)、(3)-(5)を計算すると、
(1)-(3)=98×7-97×8
       =98×7-97×7-97
       =(98-97)×7-97
       =7-97
       =-90
       <0
(3)-(5)=97×8-87×9
       =97×8-87×8-87
       =(97-87)×8-87
       =80-87
       =-7
       <0
で、(5)>(3)>(1)が判ります。

したがって、xyの最大値は、
87×9=87×(10-1)
    =870-87
    =783
で、これが答えです。


行き詰ったときには具体例を調べてみると手掛かりを見つけることができるかもしれません。試してみてください。

ジュニア数学オリンピックの簡単な問題(11)

2016-06-20 12:41:06 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

曇りの予報ですが、晴れ間の多い天気になりました。天気図では梅雨前線がしっかりしてきて、今週は梅雨らしくなりそうです。

さて、今回はジュニア数学オリンピック予選に出題された図形問題を取り上げます。

問題は、
「一辺の長さが3の正方形ABCDがある。ABを2:1に内分する点をPとし、CDを1:2、2:1に内分する点をそれぞれQ、Rとし、DAを1:2、2;1に内分する点をそれぞれS、Tとする。直線PRと直線QTの交点をUとし、直線SUと直線BCの交点をVとするとき、線分BVの長さを求めよ。」
です。

▲問題図

まず図1のように、与えられた条件を書き入れましょう。条件は比で与えられていますが、正方形の1辺の長さが3と判っているので、長さに換算して書き入れました。


▲図1.与えられた条件を書き入れました

相似図形を利用しますが、求める線分の長さがBVなので、図2のように、線分PRと線分QTを延長して互いに相似の三角形△UWXと△UYTを作るのがよさそうです。


▲図2.相似三角形△UWXと△UYTを作りました

図2で、中点連結定理から、
WB=BC=3
DY=AD=3
で、△CQXは直角二等辺三角形なので、
CX=1
です。

ここで、△UWX△UYTで、その相似比は、
WX:YT=7:5
です。

さらに、△UVX△USTで、その相似比はUX:UTになり、これは△UWXと△UYTの相似比と同じです。

つまり、
UX:UT=ST:VX=7:5
が成り立ち、これにST=1を代入して、
VX=5/7
になります。

すると、
BV=BC-CV
  =BC-(VX-CX)
  =3-(5/7-1)
  =13/5
で、これが答えです。

他に解析的に解く方法もあります。

図3のように、与えられた図形をBを原点としてxy平面上に置きます。


▲図3.与えられた図形をBを原点としてxy平面上に置きました

まず、Uの座標を求めるため、直線PRと直線QTの式を求めます。

直線PRは、P(0,1)とR(3.2)を通るので、
y=1/3・x+1      (1)
です。

直線QTは、Q(3,1)とT(1,3)を通るので、
y=-x+4         (2)
です。

ここで、Uは(1)と(2)の交点なので、(1)と(2)の連立方程式を解いて、
U(9/4,7/4)
です。

すると、直線SUは、S(2,3)とU(9/4,7/4)を通るので、
y=-5x+13      (3)
です。

そして、Vはx軸と(3)の交点ですから、(3)でy=0として、
0=-5x+13
x=13/5
で、V(13/5,0)です。

したがって、BV=13/5になります。


相似を利用するか解析的に解くかは好みの問題ですが、解析的に解くほうが計算だけすればいいので楽かもしれませんね。

日本数学オリンピックの簡単な問題(17)

2016-06-19 13:00:42 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

太平洋上の高気圧が、西にある梅雨前線を北に押し上げていて、まるで梅雨明けのような状況です。ただ、来週は低気圧が東北地方を横断するのでぱっとしない天気になるようです。

さて、今回は2012年日本数学オリンピック予選の図形問題を取り上げます。

問題は、
「三角形ABCの外心をOとする。線分AB上に点D、線分AC上に点Eをとると、線分DEの中点がOと一致した。AD=8、BD=3、AO=7のとき、CEを求めよ。ただし、XYで線分XYの長さを表すものとする。」
です。

まず図1のように、問題の図を描きましょう。


▲図1.問題の図を描きました

さらに、Oは外心なのでOB=OC=7です。図2に、これらを書き入れましょう。


▲図2.Oは外心なので、OB=OC=7です

ここで△OABに着目すると、3辺の長さが決まっているので、この三角形についての情報はすべて計算できて、線分ODの長さを求めることができます。

そこで図3のように、Oから辺ABに垂線を下ろしその足をFとすると、△OAF、△ODFは直角三角形になり、それらに三平方の定理を適用します。

▲図3.△OAFと△ODFに三平方の定理を適用します

まず、△OAFでは、
OA^2=OF^2+AF^2
です。

ここで、OA=7、AF=AB/2=11/2ですから、
OF^2=7^2-(11/2)^2
   =49-121/4
   =75/4
です。

次に、△ODFでは、
OD^2=OF^2+DF^2
です。

ここで、OF^2=75/4、DF=11/2-3=5/2ですから、
OD^2=75/4+(5/2)^2
   =75/4+25/4
   =25
で、
OD=5
です。

続いて、△OADに着目すると、この三角形も3辺の長さが決まりました。

つまり、図4のように、Aから辺ODに下ろした垂線の足をGとすると、AGとOGの長さが判るということです。


▲図4.△OADに着目し、Aから辺ODに下ろした垂線の足をGとします


△OAGと△ADGに三平方の定理を適用して、
OA^2=OG^2+AG^2             (1)
AD^2=AG^2+DG^2             (2)
です。

OA=7、AD=8、DG=OD-OG=5-OGを(1)と(2)に代入して、
7^2=49
  =OG^2+AG^2              (3)
8^2=64
  =AG^2+(5-OG)^2
  =AG^2+25-10OG+OG^2
から
10OG=OG^2+AG^2-39         (4)
です。

ここで(3)を(4)に代入して、
10OG=49-39
    =10
OG=1
です。

これを(3)に代入して、
AG^2=49-1^2
   =48
AG=4√3
です。

次に図5の△AEGに着目すると、これも直角三角形なので、三平方の定理が適用できます。


▲図5.△AEGも直角三角形です

つまり、
AE^2=AG^2+EG^2
が成り立ちます。

これに、AG=4√3、EG=OE+OG=5+1=6を代入して、
AE^2=48+36
   =84
AE=2√21
です。

ここまでで、随分と求めたい線分CEに近づいてきました。もう一息です。

さらに、3辺の決まっている三角形を探すと、△OAEがありました。

これまでと同様、図6のように、Oから辺AEに垂線を下ろしその足をHとします。


▲図6.△OAEに着目し、Oから辺AEに下ろした垂線の足をHとします


そこで、△OAHと△OEHに三平方の定理を適用して、
OA^2=OH^2+AH^2            (5)
OE^2=OH^2+EH^2            (6)
です。

OA=7、OE=5、EH=AE-AH=2√21-AHを(5)と(6)に代入して、
7^2=49
  =OH^2+AH^2             (7)
5^2=25
  =OH^2+(2√21-AH)^2
  =OH^2+84-4√21AH+AH^2
から
4√21AH=59+OH^2+AH^2      (8)
です。

ここで、(8)に(7)を代入して、
4√21AH=59+49
      =108
AH=27/√21
  =9√21/7
です。

最後に、AC=2AHからAC=18√21/7で、
CE=AC-AE
  =18√21/7-2√21
  =4√21/7
になり、これが答えです。


合同条件を満たしている三角形では、それに関するすべての情報を求めることができるということ(一般の角(90°などでない角)については高校で勉強する三角関数が必要です)を頭に入れておくとよいでしょう。また、他の解き方としては、△ABCの外接円があるので、方べきの定理やトレミーの定理を利用することができそうです。興味のある人は調べてみてください。

ジュニア数学オリンピックの簡単な問題(10)

2016-06-18 11:47:04 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

太平洋高気圧が元気よく梅雨前線を分断して真夏のような天気になりました。月曜日には再び前線が本州を横断するので、梅雨らしい天気に戻りますが、今年の梅雨は明けるのが早そうです。

さて、今回は2012年ジュニア数学オリンピック予選に出題された整数問題を取り上げます。

問題は、
「1桁の正の整数の組(a,b,c,d)のうち、a+bcd=ab+cd をみたすものは何組あるか。」
です。

前回取り上げた問題と同じように、与えられた式を因数分解しましょう。

すると、
a+bcd-ab-cd=a(1-b)-cd(1-b)
           =(a-cd)(1-b)
           =0                    (1)
となります。

そこで、(1)を満たすa、b、c、dを調べていきます。

まず、b=1のとき、a、c、dは任意の数でOKです。

ところが、a、c、dは1桁の正の整数なので、それぞれ9通りの数を取ることができます。

したがって、その組合せの個数は、9×9×9=729通りです。

次に、b≠1のとき、
a=cd                             (2)
です。

ここで、aについて場合分けして勘定していきます。なお、(2)を満たすc、dの組合せを(c,d)とします。

・a=1の場合
(1,1)の1通りです。

・a=2の場合
(1,2)、(2,1)の2通りです。

・a=3の場合
(1,3)、(3,1)の2通りです。

・a=4の場合
(1,4)、(2,2)、(4,1)の3通りです。

・a=5の場合
(1,5)、(5,1)の2通りです。

・a=6の場合
(1,6)、(2,3)、(3,2)、(6,1)の4通りです。

・a=7の場合
(1,7)、(7,1)の2通りです。

・a=8の場合
(1,8)、(2,4)、(4,2)、(8,1)の4通りです。

・a=9の場合
(1,9)、(3,3)、(9,1)の3通りです。

以上から(2)を満たすa、c、dの組合せは、1+2+2+3+2+4+2+4+3=23通りです。

一方、bは2から9までの8通りの数を取ることができるので、(1)を満たすa、b(≠1)、c、dの組合せは、23×8=184通りです。

したがって、(1)を満たすa、b、c、dの組合せは、729+184=913通りで、これが答えです。


簡単な問題でした。

日本数学オリンピックの簡単な問題(16)

2016-06-17 12:45:57 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

天気予報が外れて、青空に小さい雲の塊がぽつぽつ見られるような夏空になりました。東久留米は、気温30℃、湿度82%と蒸し暑く、この週末も同じような天気が続くようです。水分補給を十分にして熱中症に気をつけましょう。

さて、今回は2009年日本数学オリンピック予選に出題された整数問題を取り上げます。

問題は、
「次の2つの式をみたす正の整数の組(a,b,c)をすべて求めよ。ただし、3つの数の並ぶ順番が異なる組は区別する。
  ab+c=13
  a+bc=23  」
です。

早速、取り掛かりましょう。

整数問題を解くテクニックの一つに、未知数を含む式を因数分解して、それらの因数が整数の約数であることを利用する方法がありますが、ここでは、これが使えそうです。

まず、
ab+c=13                  (1)
a+bc=23                  (2)
とします。

(1)の左辺も(2)の左辺も因数分解できないので、(1)と(2)の辺々の和と差を作ってみましょう。

和は、
ab+c+a+bc=36
で、左辺を整理すると、
a(b+1)+c(b+1)=(a+c)(b+1)
と上手く因数分解できました。

したがって、
(a+c)(b+1)=36            (3)
です。

差は、
a+bc-ab-c=10
で、左辺を整理すると、
a(1-b)-c(1-b)=(a-c)(1-b)
と、これも上手く因数分解できました。

したがって、
(a-c)(1-b)=10            (4)
です。

ここまでくればあとは簡単で、(3)と(4)の右辺の36と10の約数を調べればお仕舞いです。36と10では後者のほうが約数が少ないので、ここでは(4)から手をつけましょう。

10の約数は、±1、±2、±5、±10なので、(4)から
a-c=±1, 1-b=±10
a-c=±2, 1-b=±5
a-c=±5, 1-b=±2
a-c=±10,1-b=±1
(複号同順)
です。

ここで、bは正の整数なので、
a-c=-1, b=11             (5)
a-c=-2, b=6         
a-c=-5, b=3              (6)
a-c=-10,b=2              (7)
です。

そこで、これらのbの値を(3)に代入して、
(a+c)(11+1)=36⇒a+c=3     (8)
(a+c)(6+1)=36 ⇒a+c=36/7   (9)
(a+c)(3+1)=36 ⇒a+c=9     (10)
(a+c)(2+1)=36 ⇒a+c=12    (11)
です。ここで、aとcは正の整数なので、(9)は不適です。

そこで、(5)と(8)、(6)と(10)、(7)と(11)を組み合わせてa、cを計算すると、
(5)と(8)から、 a=1、c=2
(6)と(10)から、a=2、c=7
(7)と(11)から、a=1、c=11
で、a、b、cの組合せ(a,b,c)は、(1,11,2)、(2,3,7)、(1,2,11)で、これが答えです。


他にもいろいろな解き方がありそうです。興味のある人は調べてみてください。

日本数学オリンピックの簡単な問題(15)

2016-06-16 12:36:35 | 数学・算数の話
こんにちは。東久留米市の学習塾塾長です。

今は曇りですが、西から低気圧が近づいてきて夕方から雨になるようです。明日は曇りときどき雨のぱっとしない天気ですが、明後日は晴れて真夏日になるようです。

さて、今回は2009年日本数学オリンピック予選に出題された図形問題を取り上げます。

問題は、
「半径2の円O1と半径4の円O2が点Pで外接している。O1、O2の周上にPと異なる点A、Bをそれぞれとったところ、A、P、Bが一直線上に並んでいた。線分ABの長さが4であるとき、線分PBの長さを求めよ。」
です。

▲問題図

問題図を眺めると、線分ABの長さ4と円O2の半径4が大分違っているようですが、そこは気にしないことにしましょう。

まず、与えられた条件を書き入れましょう。とは言っても、円O1、O2 の半径を書き入れるところがないので、図1のように、円O1とO2の中心をそれぞれC1およびC2とし、PとC1、C2を結んでそれぞれの半径を作りましょう。


▲図1.円O1、O2の中心をC1、C2とし、PとC1、C2を結びました

このときPを通る円O1、O2の接線をtとすると、∠C1Pt=90°、∠C2Pt=90°なので、∠C1PC2=180°になり、C1、P、C2は一直線上にあることが判ります。

それでは図2のように、与えられた条件を書き入れましょう。


▲図2.与えられた条件を書き入れました

あとは簡単で、図3のように、AとC1、BとC2を結んで△C1AP、△C2BPを作ります。


▲図3.△C1APと△C2BPを作りました


すると、これらの三角形は二等辺三角形で(どちらも2辺が半径です)、
∠C1AP=∠C1PA
∠C2BP=∠C2PB
です。

さらに、対頂角は等しいので、
∠C1PA=∠C2PB
です。

したがって、
∠C1AP=∠C1PA=∠C2PB=∠C2BP
で、
△C1AP△C2BP
です。

すると、
C1P:C2P=AP:BP
      =(AB-BP):BP
が成り立ち、ここに、C1P=2、C2P=4、AB=4を代入して、
2:4=1:2=(4-BP):BP
BP=2×(4-BP)
BP=8/3
で、これが答えです。


円の中心と周上の異なる2点(それらが直径にならないもの)を結ぶと二等辺三角形ができるので、それらを結ぶ補助線は役に立つことが多いです。