とどちゃんの縁側でひとり言・・・。

日々の生活の中で見たこと感じたことを記録していきます。

生霊~第5章~

2009-06-16 20:48:47 | 怪談・不思議
「ちょっ・・・何なのこれは・・・」

彼女は思わず言葉を失った・・・。

案内されたトイレ・・・。
扉を開けると、そのトイレの壁には・・・。

無数のお札・・・。
それも、統一性もなく、色んな文字が書かれている・・・。
中には鬼のような絵が書かれているものもある・・・。

お札の事など何も解らない彼女は、ただ、その数の多さに恐ろしくなり、何だかどこで用をたしたのかも解らぬままトイレを出た・・・。

あまりの恐ろしさに、後輩にもお札の理由を聞く事もできず、とにかく帰りたい気持ちで一杯だった・・・。

そんな彼女の気持ちをよそに、後輩は楽しげに部屋を案内してる。

「しっかし、暗い家だなぁ・・・」

とにかく、どの部屋を見せられても「暗いなぁ」という印象しか受けなかった・・・。
後輩の話も自分でもどこまで聞いてるんだか、自分でも帰りたくてソワソワしてるのが解る・・・。

そんな彼女をあざ笑うかの様に、最後の部屋を案内した時、後輩は、こう言い放った・・・。


「ここ、客間なんです。今晩は、ここに泊まってもらいます」


一瞬、背筋が凍りついた・・・。

「泊まる?いつからそんな話になってるのよ!」

もう頭が一杯で、どうしていいか解らなくなってしまった・・・。

そんな彼女を察したのか、先輩が・・・。

「あっ、ごめんね、ちょっと今日はこれから業者と打ち合わせもあるし、明日も早くから色々あるのよ、今度時間をとってゆっくり来る様にするから」

と、助け舟を出してくれた・・・。

後輩は不満そうだが、今はそれで乗り切るしかない。
とにかく帰らなければ・・・。
単なる恐怖心だけじゃない。
何か胸騒ぎがする・・・。
ここに長くいてはいけない。
今すぐ帰らなければ・・・。

もう、頭の中は帰る事しかなかった・・・。

先輩が、何とか後輩をなだめすかし、車に乗り込み帰り道・・・。

彼女は、先輩にトイレの事を話した・・・。

「トイレもそうだけど、あの家そのものが怖いよね・・・」
「あの子もどうしちゃったんだろう」

彼女が後輩に嫌がらせを受けている事はそれとなく知っていたけれど、大人なんだし、店を辞めたらその心配もないわけなので、先輩としては、あまり重大な事とは思っていなかったのだけれど、さすがに今日の様子がただ事ではない事を感じたらしい・・・。
また何か変な事があったら相談してね。と先輩は気使ってくれた・・・。



「ホント、そういうわけでさぁ、大変なのよ・・・」


さっきから何度も話題を変えようとした・・・。
それなのに、結局彼女は、全部話し終えてしまった・・・。

「空気が変わった・・・」

普段、霊感なんかとは無関係と思っていた事務の子でさえも判ったと言う。
何より、顔つきがみるみるうちに鬼のような形相になっていく・・・。


おまけに、さっきからやたらフードメニューを注文している。
普段あまり食べない子なのに・・・。

単に怖い話をして、興奮気味でそうなのか、事務の子は分からなかったが、そこでふと、いつだったか私が言った言葉を思い出した・・・。

「悪いのに憑依されると、すんごい食べるようになるよ」


霊感が無くても、憑依されてると確信できる顔つきだった。

その場にいた誰もが、目でサインを送り始めた・・・。
コメント (2)
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