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【cinema】『鰻の男』(カリコレ2015 オンライン上映)

2015-07-11 03:13:12 | cinema

'15.06.27 『鰻の男』@青山シアター ~カリコレ 2015 オンライン上映~

 

キム・ギドク作品ということで、見たいと思ってた! 青山シアターで有料視聴があったので購入して見てみた~

 

 

ネタバレありです! 結末にも触れています!

 

「水銀が検出され輸入禁止となった鰻を再検査してもらうため、中国から韓国へ密航したチェン。食品安全省のミに再検査してもらうが結果は同じだった。ミの家に居候しながら鰻料理店で働きだしたチェンは、店のある秘密を知ってしまう・・・」という話。うーん・・・ まぁ、見ている間はおもしろかった。社会派ドラマだと思っていたのだけど、終わってみればラブストーリーだったなという感じ(笑) 社会派な部分もあったけれど、期待していたほどではなかったなという印象。

 

第27回東京国際映画祭上映作品で、第4回ロッテルダム国際映画祭招待作品。2015年5月16日から6週間にわたって開催されたカリコレこと、カリテ・ファンタスティック! シネマコレクション2015上映作品。カリコレと青山シアターの連動企画で、オンライン視聴可能。高画質1,500円と通常画質1,300円が選択できたのだけど、ちょっとケチって1,300円で視聴(笑) 結果、1,300円で良かったかなというのが正直な感想。好みの映像もあったけれど、高画質で見なくてもいいかも。

 

これ全く勘違いしてて、以前記事(コチラ)まで書いちゃったのだけど、キム・ギドクは脚本と製作総指揮で、監督は『レッド・ファミリー』(感想はコチラ)のキム・ドンフだった なるほど、だからバイオレンスやエロ少なめなのね(笑) その分、社会派メッセージも薄めになってしまった印象かな。キム・ギドクが監督していたらどうだったのか不明だけど、監督ご本人としては、社会派映画を撮りたい時には、自分が脚本を書いて他の監督に委ねる形をとりたいのかな?と思うので、きっと撮らないのでしょうね。自分が撮りたいものと、作りたいものを分けている感じ。好みの問題はあるけれど、『レッド・ファミリー』ではそれは成功していたように思うけれど、今作は個人的にはあまり響いてくるものはなかったかな。それは多分、キム・ギドク監督が「食物に対する偏見は、食物が作られた国に対する偏見でもあるのではないかと思います。」語ったように、描きたかったであろう"他国に対する偏見"が、今まさに日韓関係を悪化させている要因だと思うけれど、正直自分はその問題について辟易している部分があるので・・・ でも、なんとなく韓国人は中国人のことは好きなのかな?と思っていたので、この中国人差別についてはビックリした。まぁ、この問題は根深いので、この辺で(o´ェ`o)ゞ

 

映画は密航船の中から始まる。暗い船底では食べ物も足りず、不満を募らせた男たちが、同乗していた若い女性を襲う。止めに入ったチェンは逆にボコボコにされてしまうが 、彼を助けてくれた男性がいた。その男性とお互い密航の目的を語る。中国で鰻の養殖をしていたチェンの父親は、検査で水銀が検出されたため輸出禁止となり、心労から倒れてしまった。鰻の再検査を依頼するため、中国から鰻3匹を携えてやって来たのだ。男性は韓国に出稼ぎに行った妻が、韓国人男性と浮気をし、自分を捨てて帰ってこないため、2人を殺すために密航するのだという。うーん。チェンの理由もスゴイが、この男性の理由も(笑) しかも、この男性は自分が死んだら代わりに2人を殺してくれるよう依頼し、その約束がその後のチェンの滞在理由ともなる。ちょっとあり得ない設定だけど、キム・ギドク脚本ならありでしょう(笑) ホメてます! ちなみに、この時助けた女性も、後にチェンに関わることになる。男性の助言に従い、港に入る前に海に飛び込む。なんとか陸地に着くが沿岸警察(?)に見つかってしまい、チェンを逃がした男性は射殺されてしまう。いろいろツッコミどころもあるけれど、このオープニングはおもしろかった。

 

無事ソウルにたどり着いたチェンは、タクシー運転手の協力(お金は払ったと思うけど)により、食品安全省に向かう。ちょっとご都合主義な気もするけど、ここはスッキリとしていて良かったと思う。その後「鰻の再検査を」と手書きのプラカードを掲げたチェンが、何度も警備員に追い帰されるシーンや、食品安全省に勤める女性検査官ミがチェンを気にするものの、結果素通りするシーンがかなり繰り返される。ここはちょっと長かった気もするけれど、この後のミの謎行動について説得力を持たせる意味もあったのかも? 3匹いた鰻も最後の1匹となってしまった頃、根負けしたミが鰻を再検査を承諾する。言葉の壁があるせいもあるけれど、ミはほとんど喋らず表情も変わらない。同僚の女性と話すシーンもあるけれど、韓国人独特のオーバーな表情で話す同僚に対し、表情一つ変えないミはミステリアスでありつつ、人生に疲れているような印象。この感じも、後につながる感じで良かった。再検査の結果は同じで、高い水銀の数値が検出される。チェンは自分の腕にメスを突き刺し、肉片を取り出して検査するシーンはここだっけ? もう少し後だったかな? 彼からも水銀が検出されてしまうのは恐ろしいけれど、これも後にミからも水銀が検出されることにより、食にまつわる闇を見せるとともに、同じ穴の狢であるという描写でもあるのかなと考えると、これは良いシーンだったと思う。見ていて痛かったけど

 

チェンをかわいそうに思ったのか、、ミは彼を自宅に連れて帰る。そんなにスタイリッシュとも思わなかったけれど、さすがエリートらしく高級マンション。ここからビックリ展開なのだけど、ミはいきなりチェンにキスをし始めて、そのまま2人はそういう関係に。まぁ、ここまで唐突じゃなくても2人がそういう関係になるのは、ありうる展開ではある。ただ、この段階ではミはチェンに恋しているわけでも、愛しているわけでもないと思うので、やっぱりこれはミの自虐的行為というか、そんな気がする。後に判明するミの秘密も関係しているのかもしれない。罪滅ぼし的な・・・ とはいえ、水銀が検出されたのはミのせいではないのだけど。ただし、セックスシーン自体はなし。それが見たいわけではないので別にいいけど、キム・ギドク監督作品だと思って見ていたので、意外に思っただけ(笑) 一応、脚本は書いているのだから、そういうシーンを入れようと思えば出来るわけで、やっぱりこれはあえて入れていないのかな? まぁ、別にいいけど←しつこい

 

ミは行きつけの鰻料理店にチェンを連れて行く。そこでは密航船で助けた女性が働いていて、その後彼女が度々通訳をしてくれることになる。鰻の養殖場の近くに工場がないか?って聞いたのはこの時だっけ? チェンはミから近くに工場があるなら水銀は出るわよ的なことを言われてしまう。その時、彼女が中国人であることを知った客が差別感丸出しで絡み出し、これまでの憤りも加わったチェンの怒りが爆発し、客と乱闘騒ぎを起こしてしまう。あれ? このシーンの方がミの家に行くより先だったっけ? ちょっと記憶が(笑) こんな乱闘騒ぎを起こした割に、ミはここの社長と懇意らしくチェンを雇ってくれるように依頼。さらに、この店にその後何度も食事をしに来る。これはまぁ、中国人女性店員に通訳して欲しいという部分があるからだと思うけれど、そういう普通あまりないなって思う展開が気になるけれど、ちょっとした強引さみたいなものは、どの映画でも多少あることなのでOK。ただし、今作に関して言えば、この店でなければならない理由がある。

 

チェンの仕事はトラックで運ばれてくる鰻を入れておく倉庫の見張り。チェンと先輩(?)の2人で見張るが、2人は下っ端のため中に入れてもらえず、覗くことも許されない。料理屋でそんなに厳重に?とも思うけど、社長も含めて倉庫周辺の従業員が、ほぼ全員ヤクザ風情という時点で怪し過ぎ|д´) チェンはこの仕事をしつつ、密航時に助けてくれた男性との約束を果たすため、彼の妻を探し始める。いくら恩に感じたからといって、そもそも約束の内容が内容なのだから、無理に果たす必要もないと思うけれど、チェンとしても自暴自棄になっている部分はあるのだろうし、それがソウルに留まっている理由にもなっている。よく考えるととんでもない設定でも、感動させるためなら多少の強引さはOKというのは、韓国映画の持ち味だし(笑)

 

一方、ミとチェンは言葉が通じないながらも恋人のような雰囲気に。ミの指示で買い物をして食事の支度をしていると、ただいまとばかりに後ろから抱きついたりする(ノ∀\*)キャ ただし、スーパーでは、手にしたお菓子が中国産だという理由で、怒られてしまう少女の姿が映るし、チェンの料理の材料や冷蔵庫内の食材が全て中国産だと知ると、ミが嫌悪感をあらわにして捨ててしまうシーンもある。これに怒ったチェンが自らを指さして、原題である「メイド・イン・チャイナ!」と叫ぶのは確かに悲しいけど、中国産が信用できないことは検査で明らかなのだし、そのことと中国人を差別することは別であることは分かり切っているわけで、その後、ミが中国産食材をむきになって食べるというのは、仮にお詫びを込めた行動だとしても、何の解決にもなっていないような・・・ 

 

ある日、チェンは搬入に来たトラックが落としたラベルを拾い驚愕する。それはチェンの会社の物だった! この店で出されていたのは、廃棄処分になったはずのチェンの鰻だったのだ。倉庫に乱入して乱闘の末、上司(?)に銃をつきつけ鰻入りトラックを奪うと、郊外へ向けて鰻を川に放す。この場面ではてっきり鰻を捨てようとしたのだと思っていたけど、後のシーンでチェンの真意と、邦題の意味が分かる。これは良かった。日本でもそうだけれど、いわゆる産地偽造とは違い、例えば中国産のアサリを千葉の海岸に撒いて、それを出荷すると"国産"ということになるらしい。いわゆる"国産"と"国内産"の違い。要するにこの業者もこのカラクリを行っているらしいのだけど、廃棄品を出荷するのはさすがにダメだよね? どういう法律に触れるのかは分からないのだけど・・・ 水銀が検出されたこと自体は、チェンが持ち込んだ鰻からも検出されているので、そこから偽造ということではないと思うけれど、そんな鰻を店で出すのは違法だよね? しかも、食品安全省にも関わっていること。ミはここまで深い事情は知らなかったようだけれど、何らかの不正に関わっていることは承知していた様子。

 

戻らないチェンを探すミ。彼は密航船の男性の妻が不倫相手と暮らす家に来ていた。仲睦まじい2人の様子。不倫は良くないけれど、韓国人男性が妻を中国人と承知で愛しているのであれば、チェンが散々感じてきた中国人差別をしていないわけで、理想的な形であるのだけど・・・ 密航男性との約束を果たそうとしたことには、自暴自棄になった部分もあるのでしょうけれど、ギリギリで踏みとどまったのは単純に撃てなかったというだけではないはず。その辺りは良かったと思う。ただし、韓国人男性の脚を撃ってしまって我に返ったというのが本当のところではあるのだけど(笑)  慌てて外に飛び出すと、ミが車で待っていた。一度、チェンの後をつけて来たことがあったように思うけれど、どうしてここだって分かったんだろ? まぁ、それしかないか(o´ェ`o)ゞ 

 

ミはチェンをホテルに連れて行き、その間に偽造パスポートと航空券、新しいスーツ、そして大金を用意する。ここまでお膳立てしてもらったのだから、そのまま空港に向かえばいいものを、何故かあのウナギ料理の店に向かうチェン。そこで働くあの中国女性にミからもらった大金を渡す。以前、彼女がお店を持ちたいという夢を語っていたのを思い出し、この金でお店を出せ、そうしたら自分が汚染などされていない鰻を出荷すると言う。お店ってそんなに簡単に出せるものじゃないよね?というツッコミはなしにしても、急激なこの展開について行けないということはないけれど、感動というのとはちょっと違ったかな? ただ、後のシーンも含めてチェンの純粋さが感じられるシーンではあった。むしろ"ウナギバカ"というか(笑) 

 

ウナギ料理店であの騒動を巻き起こしてしまったのだから、お店現れたら見つかってしまうわけで、当然ボコボコにされてしまう。そこに現れたのはまたしてもミ。彼女は彼の命と引き換えに、今後もウナギ料理店に便宜をはかるという契約書にサインさせられてしまう。まぁ、1人の人間の命がかかっているのだから他に選択肢もないような気がするけれど、ミがそこまでするのは一体何故なのか? もちろんチェンを愛しているのだと思うし、彼に対する罪滅ぼし的な部分もあったのかもしれない。どちらにしても、チェンの純粋さにうたれたというか・・・ まぁでも、女性に被虐的要素があるのはキム・ギドク節だからね。ミはチェンを車に乗せてあの川に向かう。チェンが逃がしたあの鰻は大部分が死んでしまっていた。号泣するチェン。なるほど"鰻の男"だね。ラストシーンは、空港近くの道路と思われる道に車を止め、自分の上を飛び立っていく飛行機を見送るミの姿で終わる。

 

余韻のある終わりは良かったと思うけど、よく考えると何も解決してないよね?(笑) まぁチェンが無事(?)に帰国できたし、今後彼が水銀の出ない鰻を生産できればいいわけなのだけど、要するに水銀汚染されてしまっている川が問題なのであって、日本でも大変なのにあの中国でたった1人でなんとかできるものなのだろうか? 新幹線事故ですら隠蔽しようとする体質だからねぇ・・・ チェンに渡した大金がミにとってどのくらいのお金なのかは不明だけど、これからも不正に手を貸すと約束してしまった件はどうなるのか? 単純に食品安全省を辞めれば済む問題でもない気がするのだけど? 相手はヤクザだからねぇ・・・ しかも、中国産の安全性については結局ダメという結果だし、韓国の食品偽造問題もそのまま。中国人差別については根深いものがあるし、簡単に解決できるものではないから、問題提起と、人種を越えての密航男の元妻、そしてミとチェンのエピソードがあればOKかもしれないけれど、キム・ギドク脚本×キム・ドンフ監督コンビの『レッド・ファミリー』の若い2人が語る理想論の方が、まだ希望が持てたのはなぜだろう?

 

キャストは全く知らなかった。チェンはてっきり中国人俳優が演じているのかと思ったら、パク・ギウンって韓国人俳優さんだよね? セリフはほとんどなくて、喋っても中国語。もともと中国語を話せる人なのか分からないけど、言葉以外の感情表現としては、ほぼ無表情ながらチェンの憤りや悲しみが伝わってきて良かった ミのハン・チェアは美女という感じではないけれど、ミステリアスな雰囲気が良かった。見ず知らずの男性を自宅に泊めるのもビックリだけど、自ら進んで行為におよぶとはさらにビックリだけど、不思議と色情狂的な感じがしないのは、ハン・チェアの知的な感じによるものかも。鰻料理店の中国人女性役の女優さんもかわいらしい顔立ちで、好演していたのだけど名前が分からず・・・

 

カリコレで公開されただけで、一般公開はされないのかな? DVD以外で見れる機会があるのか不明だけど、バイオレンス&エロ控えめの韓国映画見たい方オススメ。なんだそれ?(笑) キム・ギドク作品と思って見ると肩すかしかも? パク・ギウン、ハン・チェア好きな方是非!

 

『鰻の男』Official site

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