まりっぺのお気楽読書

読書感想文と家系図のブログ。
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『アップダイク自選短編集』離婚について考えてみた

2010-01-18 01:00:47 | アメリカの作家
SELF-SELECTED STORIES OF JOHN UPDIKE 
1959年~ ジョン・アップダイク

作者自身が日本向けに14篇を選んだという短篇集だけあって
日本を舞台にした物語も収められています。

日本向けの一篇は『本州のキリスト(Jesus on Honshu)』という物語で
キリストは実はエルサレムで亡くなってはいなくて、日本の本州まで逃げのび
富山県、続いて青森県で106歳まで生きたと言うおはなし…
真偽のほどはともかく、なんだかわくわくするエピソードですよね。

さて、年代順に収められているというこの1冊、
最初の方の信仰や死をテーマにした物語は話しがややこしくなりそうなので
後半の離婚をテーマにしたものをいくつかご紹介します。

『孤児になったプール(The Orphaned Swimming Pool)』
ターナー夫妻が離婚することが決まった夏、留守になって打ち捨てられた庭のプールに
近所の人たちが集まり始め、いつしか町の社交場になってしまいました。
ある日夫が離婚の原因となった女性と帰ってきたのですが…

勝手に入り込むあたり、アメリカらしいオープンさが…違うでしょ!
いくら留守とはいえ人の庭、日本なら大事だと思うんですけどね。
家主がいなくなった家が急激に寂しさを醸し出すあたりが絶妙です。

『ネヴァダ(Nevada)』
妻のセアラが離婚を待ちかねたように新しい恋人とハネムーンに行くというので
カルプはふたりの娘を引き取りに行きましたが、すでに妻は出発した後でした。
道中、妹のポリーはスロットに夢中で姉のローラは母の悪口三昧、
カルプはカジノにいた両替係の女性の熱い視線に応えようと考えます。

こんなに自分の気持ちに正直な両親に育てられた娘たちの行く末が心配です。
目の前でけんかばかりされるよりはいいのかしら?

『アメリカの家庭生活(Domestic Life in America)』
いつものように別れた妻のジーンと子供たちのもとを訪問したフレイザーは
その後恋人のグレタの家を訪れました。
しかしグレタは別れた夫への怒りを口にし、子供たちはなついてくれません。
翌日フレイザーは再びジーンたちを訪ねて行きます。

別れた後も前の伴侶と定期的に会わなきゃいけないなんて、変なお約束。
たった二日間のお話なんだけど、どうみたって再婚がうまくいくとは思えませんがね。

以上、離婚調停中、離婚直後、離婚からしばらくたって…の物語でございました。

現在の離婚は、手続きや世間の風潮からみれば簡単になったかもしれないけど
昔よりめんどくさくなっているのかもしれない… カードとかパスワードの変更とか。
子供がいたら離婚後の取り決めなんかもすごそうよね!
考えただけで疲れてしまいますわ。

そんなこんなを考えた上で「別れたい!」と奥さんが言い出したら
もう取り返しがつかないと覚悟した方がいいかもよ

この作者は、なんというか、どうしたら読者が喜んで、ちょっとハッとして、
物議は醸さない… そういうことがちゃんと分かっていて書いている感じがします。
ひとつひとつの短篇の中でも硬軟のエピソードを取り混ぜていますし
知的欲求を満たしてくれる上にホッと息を抜く場も用意している、そのバランスが絶妙。

どう言ったらいいか迷いますが “ 職業意識が高い作家 ” とでも言いましょうか?
さすがピュリッツァ賞受賞の腕前。
でも…口あたりが良い文章だけに口どけも早いっていうか…
分かっていただけます? この感じ

アップダイク自選短編集 
新潮社


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