WALKER’S 

歩く男の日日

6月10日 ②

2010-06-16 | 10年日帰り遍路



 12:18
幅の広い林道に出てきた。こういう新しい道は歩きやすいけれど、最後まで残った空海の道、と言うにはちょっとね、

ほぼ平坦な道だったから、先の道しるべから600mを6分で来た。でもスピードほどには好調な感じはしない、暑さでじわじわ体力が奪われている。


 12:21
撮影はしているけれど、距離表示は全く見ていない。調子が良くて余裕のあるときなら、「1kmを10分で行けばベストタイムと同じ、でも、最後は下りが続くとはいえ時速6kmはちょっと無理かもしれない」、などと考えたかもしれないけれど。


 12:30
眼下に柳水庵の手前にある建物が見える。ここから柳水庵まで急な下り坂が続く、しかも足元はゴロゴロした大きな石ばかりでちょっと危険な所もある。いつも以上に慎重にそろりそろりと下っていく。


 12:32
藤井寺からちょうど90分、ベストタイムより1分遅れで中間地点、柳水庵に到着した。昨年よりはだいぶいい感じだったけれど、ベストの時ほどではないと思っていたので、ちょっとびっくりした。びっくりしたと同時にちょっと安堵した、でもこの安堵が油断だったと気がつくのは数十分後のこと。8分の休憩で出発する。時間の余裕はほとんどない。家で予定を立てているときと、実際現場で歩いてみて時間と向き合うのとではかなりのギャップがあることを感じたのもこの後のこと。


 12:40
少し下りてきた所に休憩所(簡易宿泊所)がある。3年前ぼくが泊まったときは座布団しかなかった。中をのぞくと毛布が数枚積んであった。一人で泊まるのであれば寝袋がなくても充分だ。


 12:41
広い道に出てきた。これは県道245号、この道を左の方へ下りていくと、焼山寺から下って10km地点、植村旅館の近くに出てくる。藤井寺と焼山寺の中間の山の中ではあるけれど車で来ることができる。2年前、朝の早い時間に3kmほど先で団体の歩き遍路に出会ってびっくりしたことがあるけれど、あれはバスで柳水庵まで来て、そこから焼山寺まで歩くという、部分的にへんろ道を歩くバスツアーだったのだと思われる。部分歩きのバスツアーはそれ以外にも2度出会ったことがある。


 12:42
県道を横断して林道に入っていく。その入り口の道しるべにすだち館のプレートが掛かっていた。ここにはお接待所と書かれているけれど、善根宿(2食付き3000円)もやっている。
 ここからの林道は幾分傾斜もあるけれど、比較的歩き易くスピードも乗りやすい。でも全然力が入らない。思っている感じのスピードではない。初めて来た時ですらかなりいい調子だったのに・・・。このような楽な所で動けないと浄蓮庵の手前の急坂ではどうなるのか。バスの時間に間に合うのか、かなり微妙な感じになってきた。


 12:54
林道から別れて登山道にはいる。


 12:55
一旦林道に合流、ぐるっと回っている林道を短絡してきた。


 12:56
浄蓮庵まで0.9kmとある。地図でもそうなっている。でもこの標高差は160m、ここまで500m以上登っているから、さほど恐れることもないけれど、今回はもうここまででスタミナが完全に枯渇してしまっている。出せるだけの汗は出してしまった感じもする。昨年以上に体が重い、もしかしたら彷徨っていた最初の時と同じくらい気力も体力も萎えているかもしれない。


 13:01
へんろころがし4/6、どうやら6つある内の4つ目ということらしい。3/6は見逃してしまった。あるいは立てられたけどなくなってしまったか。


 13:14
登り口から18分かかって、息も絶え絶えでなんとか一本杉のお大師さんの前まで辿り着いた。時速にすれば3kmだからこれだけの勾配が続く山道であればそんなに遅くはないといえる。でも、本当にひどかった。2年前の鶴林寺を登ったときのように、5歩進んで5秒休む、ということを繰り返しながら登り続けた。それでも息切れと動悸は過去経験したことがないくらいひどくて、そのまま倒れ込んでもおかしくないくらいだった。柳水庵からここまでのタイムはベストより4分遅れだったけれど、体調からすれば10分以上遅れたような感じがしていた。


 13:16
石段を登って浄蓮庵の前へ出てきた、時間がないので休むつもりはなかったけれど、息を整えなくては先へ進めない。水を飲んでキャラメルを口の中へ入れる。石段の下に着いてから6分で庵の前を発つ。不本意ではあるけれど、これ以上休むとバスの時間に間に合わない。


 13:32
浄蓮庵からは標高差340m下の谷まで一気に下っていく。最初の方は緩やかでものすごくスピードの乗る歩きやすい道だけれど、相変わらず調子が悪い。下りだけに息切れはなくなったけれど、足取りはやや重く時速6kmは出ていない。坂が急になる所に「へんろころがし5/6」があった。考えればころがることは圧倒的に下り坂での方が多い。登り坂がへんろころがしと一般的に言われるけれど、実際に登り坂ではあまりころばない。この立て札こそ最も意味のある有効なものだと気がついた。
 ここから少し下りた所で男の人に追いついた。昨年もほぼ同じ時間にこの近くの所で夫婦遍路に追いついた。足の遅い人は藤井寺からこのあたりまで6時間近くかかるということらしい。追い抜いてそのまま行こうとしたけれど、思い返して遍路宿情報を手渡した。


 13:38
谷の集落が見えてきた。この少し手前の所でも、男性二人連れを追い越した。今度は迷わず遍路宿情報を手渡す。この前の方の広い道には女性の二人連れが歩いているのが見える。谷の下までには追いつけるだろう。


 13:39
ちょっとほっとする谷間の風景。


 13:40
この先でいつも犬に吠えられる、でも今回は珍しくおとなしかった。


 13:43
右の舗装道ではなく、左の側溝の上がへんろ道。このちょっと手前で女性二人連れを追い抜いた。もちろん遍路宿情報を渡す。


 13:45
渓流に架かる小橋を渡る。ここが谷底でここから焼山寺まで300mの標高差を登ることになる。スタミナはさらに切れてこの先どうなるか見当もつかない。

6/6、当然最後のへんろころがし。この坂が一番長く、標高差も一番。


 13:48
眼前に立ちはだかる岩壁、これは山道でも坂道でもない。四元さんが叫び声をあげて立ち止まってしまったのはここだったかもしれない。ぼくも一旦覚悟を決めてからよじ登り始める。


 14:01
調子のいいときには全く気にならず無視する町石が、やけに気になる。1丁(町)は109mだからあと1200mということか。


 14:13
ようやく明かりが見えた。あそこから幅の広い林道が始まる、傾斜は緩やか。あと1km、いつもならあと10分だけど・・・。


 14:20
林道が県道に合流する所。林道に上がってくるとそれまでどんなに疲れていても、元気に時速6kmくらいで歩けてしまうのに、今回は全く違った。自分の身体ではないような感じだった。どんなに力を入れてもよたよたとふらふらと夢遊病者の様にしか歩けなかった。前を行く男の人を追い抜いたけれど、挨拶する余裕も遍路宿情報を渡す余裕もなかった。坂道でのひどい歩き様よりも、林道に上がってから思うように歩けなかったことの方がショックだった。昨年でもこんなにはひどくなかった。

県道から参道に入る。参道はほとんど平坦なのにやはり身体は思ったように動いてくれない。スピードは半分くらいしか出ていないような感じだ。この参道を落ち込みながら歩くのは初めてかもしれない。


 14:26
やっとのことで12番焼山寺に到着。山門から石段を下りてきた所(おへんろキティちゃんが立っていた所)で男の歩き遍路さんとすれちがった。遍路宿情報を渡す余裕はなかった。柳水庵からここまで100分もかかる、ベストタイムより15分も遅れてしまった。最悪だった昨年よりも3分遅い。藤井寺からのトータル(休憩時間も含む)をみると、2回目=3時間15分、3回目=3時間11分、4回目=3時間13分、5回目=3時間13分、6回目=3時間14分、7回目=3時間34分、今回=3時間24分。1回目は記録をとらなかったので不明、7回目だけ異常に遅くなったのは理由がある。2回目から6回目は鴨島駅の近く、藤井寺の近くの宿から出発した(5回目は柳水庵に泊まった)のに対して、7回目は藤井寺まで17km以上歩いた後で登り始めた。そして今回が昨年までと明らかに違っていたのは季節、昨年まではすべて4月中旬から下旬だった。今回だけ6月で、気温は平年を上回る29℃、もう少しで真夏日になるほどだった。真夏のウォーキングは危険だと重々承知しているつもりだったけれど、甘く見てしまった。真夏には1ヶ月半以上あるし、山の中で木陰もあるからさほどでもないだろうと、軽く考えてしまった。焼山寺+暑さ=この体たらく。


 14:38
計画では14時15分に焼山寺着く予定だった。遅くても20分までに着けば何とかなると思っていた。それが6分も遅れて、山門をくぐるときは半分パニックだった。水屋に寄る前にトイレの横の流し台で水を補給する、500ccを一気に飲み、下山の時のためにペットボトルに詰める。それからすぐに本堂の前へ、蝋燭、線香をあげ、納め札、お賽銭を入れる。でもさすがに般若心経を詠む余裕はなかった。手を合わせて一礼するにとどめるしかなかった。大師堂でも同じことを繰り返し、休憩なしでそのまま山門に向かった。山門を出たのは14時37分、35分に出ればいいと思っていたから、これで何とかなりそうだ。前回、前々回以上のバタバタになってしまった。


 14:41
自動車道に合流。下り坂でだいぶ楽には歩けているけれど、例年のようなしっかりした歩きはできていない。足首が気になって無理にスピードを出すこともできない。

県道を横断してすぐ歩き道にはいる。


 14:43
また県道を横断する、歩き道は相当な短絡路になっている。その分勾配もかなりなもの、ひざに負担がかかってくる。


 14:50
小橋を渡る。この渓流はなべいわからずっと県道沿いに流れて神山の町に入る所で鮎喰川に合流する。


 14:53
三度県道に合流する。下りきった所に山門の下ですれちがった男の人がいた。携帯でお話中だったので、声もかけず遍路宿情報を突き出して無理矢理受け取って貰った。何のことか判らないだろうけれど、じっくり見てもらえば必ず重宝して貰えると確信している。

今度はしばらく県道を歩く。県道は勾配も緩やかで足元もしっかりしているけれど、思ったほど調子は出ない。


 14:56
県道を250mほど歩くと杖杉庵に着く。焼山寺から1.8kmを19分、悪くない数字だけどいつもならもう2分は早く来ていただろう。へんろみち保存協力会の地図には何度改訂されても「じょうさんあん」と書かれているけれど、「じょうしんあん」が正解。杉の音読みは「しん」であって「さん」という読みはない。

杖杉庵の前から県道を離れ歩き道短絡路に入る。最初は背の低い果樹園の中を行く。


 14:59
果樹園を抜けるとかなり急な山道が待っている。足元は安定していないので足首に負担がかかる。ここまで急な下り坂が続いたので、ひざの周りの筋肉や筋もかなりダメージを受けている。三坂峠や横峰寺の下りでは同じような痛みを感じたこともあるけれど、この下りでこれだけの負担を感じたのは初めてかもしれない。


 15:09
県道に合流、これで短絡山道は終わり。ここからゴールまでずっと県道を行く。


 15:14
すだち館はネットでの情報しか持っていなかったので、詳細な位置は知らなかった。バスターミナルの公衆トイレの向かい側にあった。お接待所では男性が一人休んでいた。焼山寺からここまで3.4kmを37分で下りてきた。昨年より3分の遅れ、バス停までまだ4.1kmあるからこの調子で行くと微妙な感じ。


 15:48
すだち館から左右内谷川を右に見ながら県道43号を歩く。鮎喰川に架かる寄井喜多橋が神山の町の入口。3.3kmを33分でやってきた。時速は6km出たけれど、やはり思ったような感じでは歩けなかったし、昨年のように楽しくもなかった。昨年はこの道は初めてで、1日の最後の部分で、本当にリラックスして歩けたのを覚えている。その時の時速は5.5km、全然速くなかったけれど、天気が良くなって、心地よいなだらかな下りで、初めて見る景色で、開放感に満ちていた。今日追い抜いてきたお遍路さんを見ていても思ったけれど、速ければよいというものではないと、改めて身に沁みた。ゆっくりと、時間をたっぷりかけて歩くということは、それだけ深く豊かにへんろ道を味わえるということだ。足を痛めたりしていれば、苦しくて辛いだけの道のりになるかもしれないけれど、それでもぼくのような歩き方よりも得るものは確実に大きいものがあるはずだ。


 15:50
橋を渡って突き当たりにバス停があった。時刻表を見ると、ぼくの乗るべき時刻がなかったので一瞬驚いたけど、考えてみればこれは下りのバス停で、上りのバス停はもう少し先にあるのだった。


 15:55
下りのバス停から100m先、スーパーの前で高校生3人と年輩の男性がバスを待っている。ただしバス停の印はなくて心許ないのでもう一つ先のバス停まで歩くことにする。本当はもう二つ先の寄井中(400m東)まで歩く予定(次回乗るバスは寄井中が終点なので)だったけれど、時間がかなり微妙になったのと、心身共に相当疲れてしまったので、二つのバス停の中間にある寄井を本日のゴールにすることにした。バスの時間は59分なので余裕は4分しかなかった。でもこのバスの時間に間に合ったことで、今回の旅は100点満点だといえる。確かに、柳水庵からの後半は不本意極まりない歩きだったけれど、これだけ多くの制約がある中で歩くわけだからそれは仕方のない所。足の怪我は治りきっていないし、そのせいで練習は不十分で山登りの練習も全くできていない。季節は夏に近いし、限られた時間もある。本当なら完全に無理なことに違いない。山を登りながら、初めて、無理なことをしているのではないかという疑問が何度も頭をかすめた。
 でも今回も、無理してもやって良かったと心から思った。前2回とは全く違う部分が鍛えられた。アキレス腱の上の部分の筋肉がかなり痛んだ、帰って4日くらい張りが残るくらい。焼山寺を越えなければなかなか強くすることができなかっただろう。それでも、その上のふくらはぎの筋肉はまだフニャフニャで右足よりよりも1cm細い。まだ100%には時間がかかりそうだ。