いくやの斬鉄日記

オープンソースからハイスクールフリート、The Beatlesまで何でもありの自称エンターテインメント日記。

少なくともLibreOfficeでは、使うだけだと貢献にはならないという話。

2013年12月05日 00時00分00秒 | LibreOffice/AOO
皆さんOracle好きですか?
私は好きじゃないどころかわりと積極的に嫌いですし、Oracleのことを好きだという人には今のところ会ったことがありません。
まぁそんなことはどうでもよくって、あなたや私が望もうが望むまいが、Oracleという企業は存在しています。

OracleはSun Microsystemsを買収した時に運営していたFLOSSプロジェクトの多くを引き継いでいます。中には戦略的に積極的になっているものもありますし(MySQLとか)、ポイチョと捨てたものもあります(OOoとか)。VirtualBoxやNetbeansは、なぜ今でも維持しているのか良くわかりません。利益を生んでいるようには見えないのです。
Netbeansに関してはよくわからない(判断するだけの材料がない)ので置いとくとして、VirtualBoxはVMwareに顧客を奪われないように継続しているのかなーとも思いましたが、そんな悠長なことを言っている企業とも思えないのです。
驚いたことに、VirtualBoxにもpaid customerがいるそうです。paid customerって日本語でなんて言うんですかね。有料顧客? いやいや、客はお金払いますよね。
それはさておき、VirtualBoxはそれ自体はGPLで、Extension Packはプロプライエタリなライセンスです。とはいえ大規模運用でもしていない限りは無償で利用してもいいというかなり緩いライセンスです。それでもpaid customerになるということは、それなりの大口顧客なのでしょう。
VirtualBoxを担当している社員数は公開しているのかどうかは知りませんが、あまり多くなさそうです。ドイツを中心としてインドやロシアにもいて、数は多くても数十名、20~30人ぐらいではないかと思います。表に出てくるのは5人程度でしょうか。

じゃあOOoはどうだったのかというと、社員数は120名前後だったと言われています。paid customerは当然いました。というか私もそうでした。StarOffice/StarSuiteをパッケージ販売していましたしね。Sunの末期にはOOoの直接サポートもしていました。
それでも捨てられたということは、パッケージ販売がうまく行ってなかったのかもしれません。Oracleの既存ビジネスとは相性が良くなかったのかもしれません。社員をクビにすることはなかったんじゃないかと思いますが、担当社員の多くはOfficeスイート一筋20年という人がザラにいましたし、配置転換をしたとしてもうまくいかなかったんじゃないかとも思います。他社への部門売却も、おそらく買い手はなかったでしょう。IBMは個人向けソフトからは撤退していますし(ホームページビルダーはジャストシステムに売却しました)、世界レベルで個人向けソフトの販売大手といえばMicrosoftを除くとCorelぐらいしか思いつきませんが、ここはすでにオフィススイートを持っています。しかもみんな忘れているかも知れませんがNovellから買収したものです。

確かにOOoのコミュニティは硬直化してどうにもならないところまで来ていましたし、LibreOfficeの離脱によってそれがさらに鮮明になりました。もう少しコミュニティというかSun/Oracle以外の人も巻き込める仕組みになっていれば、社員数を半分にして継続とかもできたかも知れませんが、完全に後の祭りです。

OOoのユーザーは少なかったのかというと、まったくそんなことはありません。今回は数字出すのが面倒なので出しませんけど、名前を引き継いだApache OpenOfficeの知名度からもそれが伺えます。窓の杜のランキングを見てみてくださいな。窓の杜で触れられることは殆ど無いのも関わらず、この数ですよ。
そのような理由から、ただ使うことが貢献になるのであればOOoはなくならなかったのではないかと思うのです。

ユーザーが集まると何とかなるのではないか、と思われがちかも知れません。何とかなるってどういうことかというと、例えば潜在的な顧客が見込めるとかそういうことです。
じゃあLibOよりユーザーの多いAOOで何とかなっているかと言われれば、全然なっていません。Webサイトは長らく放置したままですし、日本人開発者も増えたという話を聞いていません(少なくともコミット権を得た日本人開発者は今年の段階では出てきていません)。開発も翻訳も1名で行われていますし、それどころか解説書ですら販売されていません。結構売れるかも知れませんよ。
やはりこの現状を見ても、ただ使う人が増えてどうにかなるとは思えないのです。

翻ってLibOを見ると、とにかく特定の一社がコントロールしないようにすることと、とにかく手を動かしやすい仕組みを作ることに腐心していますし、現状それがうまく回っています。少なくともグローバルでは。
現在開発中の4.2は、AOOからのソース取り込みはあまり多くありません。しかし、多数の魅力的な新機能が実装されていることがその証左です。
ポイントは、グローバルでもユーザー数はAOOのほうが多いです。それでも積極的に開発が進んでいるのはLibOです。それが純然たる事実なのです。

国内でのLibOの現状はどうかというと、まずは絶対的に知名度が不足しています。じゃあ知名度を上げる活動している人は貢献していることになるじゃないかと言わると、確かにそのとおりです。私は知名度が上がりユーザーが増えることを否定しているのではありません。なんであれ自由なソフトウェアのユーザーが増えることはいいことです。
ただ、ユーザーばかりが増えてもLibOの品質は良くならないという話をしているのです。

LibOには多数の問題があります。ルビや縦書きといった実装の問題もありますし、ヘルプの未訳という翻訳の問題もあります。これらはお金で解決する以外に方法が思いつかないのですが、今のところそのような動きはありません。
OOo日本ユーザー会(名称変更手続き中)は特定非営利活動法人なので、法的にお金を集めることはできます。例えば100万円/年を複数年継続して寄付してくれる企業を10社集めれば人を雇えるかも知れませんが、誰がどう考えたって非現実的です。
じゃあ開発をやってくれそうな会社を見つければいいじゃんとか、篤志家を見つければいいじゃんとか、今はまだパイが小さいので見つかっていないだけじゃんとか、いろんなことが可能性としてはありますけど、私はそういうのは否定的です。
救世主を待つよりもほかにできることはあるはずなのです。

具体的に何をすれば貢献になるのかというと、方法はいろいろあります。
まず手っ取り早く確実なのは寄付することです。寄付が多数集まればフルタイムの開発者をたくさん雇えるかも知れませんん。それ以前にインフラの維持に多数のお金がかかっています。日本からだとPayPalで寄付できないのが面倒ですが、これは法律で決まっているので仕方がありません。
お金がない場合はどうすればいいでしょうか。テンプレートを公開するというのもいいかも知れません。テンプレートが少ないのはLibOのネックのひとつであるのもまた事実です。
デザインセンスがない場合はどうすればいいでしょうか。一番いいのは、メーリングリストに登録することです。登録するメールアドレスはそのへんのWebサービスのものでいいですし、匿名でも構いません。あなたが誰かなんて気にしません。あなたが正しい意見を主張すれば、それは通ります。
メーリングリストに登録して、例えばCalcの関数ウィザードの説明の意味がわからないとか、Microsoft Officeだとこういう文言になっているけどLibreOfficeではこういう文言になっており、差異がある。どうにかならないかとか(たいていの場合どうにもなりませんが、検討する余地はあります)、こんなつまらないtypoがあるとか、そんなことでいいので投稿して欲しいのです。特に翻訳に関することであれば、即座にLibOの品質を向上させることができます。

メーリングリストは嫌だ、フォーラムがいいという場合はそれでもいいですけど、フォーラムからメーリングリストにエスカレーションする人になってください。あるいは見つけてください。それはブログやtwitterや2chでも同じです。でも面倒ですよね。それでメーリングリストでいいのではないかと思うのです。

なんだそんなこと!? と思うかも知れませんが、そんなことなんです。そんなことですら人材が不足しているのが現状です。
誰もコード書けとも翻訳しろとも言ってません。救世主になれとも言ってません。小さい力でも集まれば力になるのです。ただ使っているだけでは力にならないんです。そういうシンプルな話なのです。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« Ubuntu Weekly Recipe 第301... | トップ | ダミーテキストを簡単に挿入する »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

LibreOffice/AOO」カテゴリの最新記事