事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「オリンピックの身代金」 奥田英朗著 角川書店

2009-03-16 | ミステリ

51pzjt3y8ol かつて日本海側が裏日本と呼ばれていた時代(今もそう思っている人は多いんだと思う)。オリンピックを目前にした東京は“外国人たちに恥ずかしい姿を見せないために”急速に戦後から脱却しようとしていた。しかしその復興を支えていた出稼ぎ労働者たちは、重機よりも安い存在として使い捨てられていた……

今年のベストワンもう決定。ストレートをど真ん中に投げ込んだ奥田英朗の心意気がいいし、和製「ジャッカルの日」などという範疇をはるかに超えたできばえ。

東京オリンピックと名乗りながら、実は日本オリンピックであり、その希望の影にあった都市と田舎の差に義憤を感じるという犯人の動機がすばらしい。安っぽい政治テロとはスタート地点からして違っているのだ。

前半の秋田の描写があまりにも屈辱的なので、東北人は読まない方がいいかも(笑)。光の象徴に都心に生まれ育ったテレビ局勤務のキャリア官僚の息子をすえ、影の象徴に貧村に生まれ、誰の子かわからないと陰口をたたかれるテロリスト。

東大に入る学力があったことで、かろうじて貧困を脱却できる機会を得たことに甘んじることができない……こんな彼に感情移入できないはずがない。疑似親子であった相棒の、ラストの慟哭に泣けない人もいないはず。必読!

装幀にも注目。そう来たかぁ☆☆☆☆★

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