事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「極楽征夷大将軍」垣根涼介著 文藝春秋

2024-03-07 | 本と雑誌

足利尊氏と足利直義の兄弟、そして高師直、後醍醐天皇、楠木正成のお話とくれば、これはもう「太平記」だ。面白くないわけがない。わたしにとってのベスト大河ドラマは真田広之が尊氏を演じた「太平記」だし。

おかげでわたしはこの直木賞受賞作を、あの大河のキャストを思い出しながら読んだ。高師直に柄本明、後醍醐天皇に片岡孝夫(今の仁左衛門)、佐々木道誉が陣内孝則なのはイメージどおりなのだけれど、この小説の尊氏に真田広之はどうにもそぐわない。

めんどくさいことが大嫌いで、およそ自分の意思というものを持たない極楽とんぼ……そう、ぴったりなのは「鎌倉殿の13人」で源頼朝を演じた大泉洋です!そう感じた人はきっと多かったと思う。

話の中心は足利兄弟。語り手は直義で、自分よりもはるかにいいかげんな兄が、なぜいくさに強いのか、なぜまつりごとをうまく回していけるのか、と考えこむ。

この兄弟は次第に離反していく。それでもなお兄弟愛を最後まで失わないあたりの運びは読ませます。

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「頬に哀しみを刻め」S.A.コスビー著 ハーパーBOOKS

2024-03-07 | ミステリ

このミステリーがすごい!ベストワン作品。子どもを惨殺された二人の父親の復讐の物語。と聞けばありきたりに思えるでしょうが、殺された二人がゲイで同性婚していたあたりが現代。人種差別、同性愛者差別を次第に克服していく父親たち。

しかしミステリーとしては少し不満が残る。“真の悪役”が判明する経緯が弱いし、父親たちはストレートな暴力で危機を脱してばかりいる。

そうは言ってもタイトルの意味(涙のこと)や「復讐は憎しみに上等な服を着せただけだ」というセリフなど、滋味深い作品ではある。

これを、医者の待合室で延々と読み続けるわたしも渋い(T_T)

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