ワーナー版のときに特集したように、わたしが生まれて初めて見た映画は「ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘」で、初代スーツアクター中島春雄さんは酒田の人だった。映画といえばゴジラである。
だから何度も何度もこれが最後のゴジラ、と東宝があおっても、そんなはずないといつも確信していた。だって東宝は基本的に「青い山脈」と「ゴジラ」をくり返しつくっていればいいと思っている会社だからだ。
しかしハリウッド版が大ヒットして様子はちょっと変わった。あちらもシリーズ化されるとなれば、本家としてどうふるまえばいいか東宝だってちょっと考えるだろうから。
杞憂でした。向こうだけを儲けさせてなるものかという映画屋の根性は健在(笑)。しかも、「ヱヴァンゲリオン」の庵野秀明を総監督&脚本、平成ガメラシリーズのプラズマ火球でゴジラのスタッフたちをあわてさせた(確実に、負けたと思ったはず)樋口真嗣を監督に起用する狂いっぷり。ほぼ無音の予告篇が傑作を予感させて……
その予想よりもはるかに“狂った”映画でした。すばらしい。
まず、東宝がよくこの脚本にOKを出したものだと思う。だってこれはすでに“怪獣映画”というより、ポリティカルディスカッションドラマだからだ。ゴジラという災厄が現実に登場したときに、日本は、アメリカをはじめとした大国はどう動くかが徹底してシミュレーションしてあり(災厄であると同時に福音でもあるゴジラの争奪戦になるあたり、うまい)、説得力がある。
特に日本政府の対応は見応えがあった。省庁間で連携がとれず、首相(大杉漣)は威勢はいいが危機に対応できず、防衛大臣(余貴美子)はむしろチャンス到来と意気込む……ってこれはもう現内閣そのものとしか。
そんなリアルな展開のなかで、ゴジラの登場以上に現実離れしているのは、有能な内閣官房副長官(長谷川博己)と首相補佐官(竹野内豊)が前面に出て活躍することかもしれません(笑)。以下次号。