事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

史劇を愉しむ 第20章 「ノア 約束の舟」 Noah (2014 パラマウント)

2014-07-22 | 洋画

Noahposterimg01 第19章「英国王のスピーチ」はこちら

わたしはキリスト者ではないし、というより歴史的素養に欠けているので、旧約聖書の世界には暗い。ノアの方舟?うーん、確かいろんな動物を船に乗せて洪水から逃れ、鳥がオリーブだか月桂樹の葉っぱをくわえてきたので……当たってますか。

動物ネタについては、アメリカのひとコマ漫画の定番になっていて、星新一がそれらを編集した「進化した猿たち」でおおいに笑わせてもらったものだった。

が、この映画に笑わせる要素はひとつもない。人間の堕落に神は本気で怒り、人類を完全に抹殺にかかる。ノアの一家が生き延びることができるのは、単に人間以外の動物を救うためにすぎない。

ノアを演ずるのはラッセル・クロウ。奥さんはジェニファー・コネリーだから「ビューティフル・マインド」のコンビ復活。長男と次男はダグラス・ブースとローガン・ラーマンの美形をそろえ、長男の嫁はハーマイオニーのエマ・ワトソン。彼女は意外なほどのサービスショットを見せてくれる。これは、彼女の身体にこの作品の裏テーマである『生殖』を象徴させたのだと思う。

ここが、実はつらい。ある理由でノアは嫁の出産を阻もうとする。すでに顔は狂信者のそれ。家族のだれもが彼を見限り、同時に(よほどの聖書原理主義者でないかぎり)観客もついていけない。

監督のダーレン・アレノフスキーは、徹底したリアリズムでこの展開を強引に押し切る。

・「天地創造」で描かれたゴシックな船を予想していたら、まさしく長方形の船なので驚いた。なるほど、方舟だ。

・最初にやってくるのは鳥たち。次が“地を這うもの”ということで蛇やカエルとかの大群。気の弱い人は失神するんじゃないか。

・それだけの動物を収容したら、餌やりだけでもたいへんなんじゃ?おっと、そんな手を使うのか!

へとへとになって映画館を出る。つくづく思う。ノアをして神がやりたかったこと。それは完全にテロではないか……

第21章「エクソダス:神と王」につづく

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