もう何度も言っていることだけど(ということはつまり更新されていないということだけど)、わたしのオールタイムベスト3は
だ。実は次点も決まっていて、それが是枝裕和の「ワンダフルライフ」だったの。
是枝はあのファンタジー映画から、「誰も知らない」「歩いても歩いても」「奇跡」と傑作を連発している。でも見逃していたのがこの「空気人形」。業田良家の漫画が原作。「リンダリンダリンダ」で圧倒的な存在感を示したペ・ドゥナが主演。
どうして見逃していたかというと、ペ・ドゥナが演じるのはダッチワイフ。つまり男の性処理のためにつくられた人形。その人形が心を持ち、持ち主(板尾創路)がいないときに街を彷徨する……どう考えてもハッピーエンドにならないでしょ。かなり悲しいエンディングが待っているような。わたし、アンハッピーエンドが苦手なんですよ。根性なし。
その予想はある程度的中し、はずれもした。近所のレンタルビデオ屋で働くことになった彼女は、店員のARATAに心を寄せる。この純愛がまず泣かせる。店長が岩松了なのもいい。ちかごろブリヂストンのCMで、長瀬智也と石原さとみがダブル店長ってやってるでしょ。でも印象として残るのは店の奥で体をゆらしている岩松なのよね。
それはともかく、代用品であることの悲しさは全篇にわたって強調される。
「わたしでなければならないことは何か」
を求めて彼女は、そして他の登場人物たちも苦しむ。なにより、純愛に身悶えしながら他の男に抱かれなければならない設定は椿姫ですか。
でもこの映画がすばらしいのは、ペ・ドゥナの裸身を中心にした画面の弾みだ。日本映画の傑作は「仁義なき戦い」だ、というアドバイスを真っ正直に受けとめ、あのテーマソングを口ずさみながら(!)ビデオ屋に出勤し、ある不幸な事態にいきなり陥ってしまうあたりの転調がもう……
自分が文字通り虚ろな存在であると自覚しながら(それが日本人の現状だというのが伏線)、体から失せていく空気を、愛する男に補充される……これ以上にエロティックなファックシーンがあるだろうか。そしてそれからの展開はまるで「愛のコリーダ」で……あわわネタバレ。
見終わって、用もないのに部屋を歩き回る。この映画を見逃さないでよかった。そしてしみじみ思う。ベスト3を久々に更新する時期が来たのかなと。