渥美清篇はこちら。
三國連太郎の、もうなにも怖くない暴露話はつづく。今回は鶴田浩二篇。
三國に「本日休診」の役を奪われたと感じた鶴田は
三國:鶴田くんは、それ以来道で会っても三年ぐらい口をききませんでした。
-ええっ、それはすごい話だ(笑)。
三國:鶴田くんが二階でお芝居をしているとき、僕は急いでいて、その辺に脱いである靴を踏んづけて二階にあがったことがあったんです。あとになって、「あの男は人の顔を土足で踏みつけやがって」と言っていたそうです。
鶴田浩二の三國に対する敵視は最後まで続き、鶴田の遺作となったNHKテレビドラマの『シャツの店』(脚本・山田太一、演出・深町幸男、1986年)で佐藤浩市と共演したとき、佐藤に向かって
「とんでもないおまえの親父に比べれば、おまえはまだちゃんとしているな」
と言ったという。
……鶴田浩二については丹波哲郎の号でもお伝えしたように、ほんとにむずかしい人だったようだ。誰一人として彼のことをフレンドリーに語る人がいないのである。
確かに、自らの戦時体験にこだわり、弱い男を演じようとしなかった彼は(だからこそ融通のきかない古臭い男を演じた「男たちの旅路」や「シャツの店」は名作たりえた)、つき合いにくかったろう。
でもね、女優にたいしては違う側面があったようで、佐久間良子が日経で衝撃の告白をしている。22才の佐久間が14才上の鶴田浩二と出会い……
《「怖い…」というのが初対面の印象》
で、共演中も雑談にも応じてくれず、佐久間はノイローゼ気味だったという。ところが共演2作目の撮影中に突然、鶴田さんから「お茶でも飲まないか」とさわやかな笑顔で誘われる。
《今から思えば、これが「大人の恋の駆け引き」だったのかもしれない》
《私は「不倫」という言葉は好きではない。だがふたりはもはや誰も止めることができない「灼熱の恋」に駆り立てられていた》
恋愛関係は数年間続いたが、
《私の若い恋心は、湖に浮かぶ木の葉のように激しく揺れ動いていた》
やるなあ鶴田!っていうかそれ以前に、佐久間良子ももう怖いものはないんですね。画像に岸恵子が入っているのは偶然です。偶然ですとも。
次回は三船敏郎篇。
怪優伝――三國連太郎・死ぬまで演じつづけること 価格:¥ 1,785(税込) 発売日:2011-11-16 |