はなバルーンblog

藤子不二雄や、好きな漫画・アニメの話がメイン(ネタバレもあるので要注意)

『ミクロイドS』『ジェッターマルス』サントラ発売

2009-06-29 02:03:42 | 手塚治虫
 6月24日に、「手塚治虫作品集」の冠を付けてコロムビアより「ミクロイドS ORIJINAL SOUNDTRACK」「ジェッターマルス ORIJINAL SOUNDTRACK」が発売された。
 この2枚のCDは、もともと4月発売予定だったが、6月に延期されていた。コロムビアは以前にアニメ版『どろろ』のサントラを実写映画公開にあわせて発売する予定だったのが発売延期になり、最終的に発売中止になってしまった前科があるので、今回も延期と聞いた時には心配したのだが、無事に発売されて何よりだ。



 2枚とも発売を楽しみに待っていたので、ここ2,3日はヘビーローテーションでずっと聴いている。
 『ミクロイドS』は、ちょうど東映チャンネルでアニメ本編を観ているところなので、すっかり耳に馴染んだ数々のBGMが聴けるのは嬉しい。前番組の『デビルマン』も含めて、三沢郷の音楽には独特の味がある。口で言い表しにくいが、たとえばOP主題歌「ミクロイドS」後半部分のように、非常にスケールが大きく盛り上がる感じが好きだ。

 今回のサントラでは、主題歌のバリエーションが数多く収録されている。中でもボーナストラックとして最後に入っている幻の「ミクロイドZ」バージョンは必聴だ。
 違いはOP・EDの歌詞のうち「ミクロイドS」と歌っている部分が「ミクロイドZ」になっているだけだが、「ミクロイドS」バージョンがすっかり耳に馴染んでいるせいもあってか、今になって「元々はこうでした」と「ミクロイドZ」バージョンを聴かされても、曲の流れに無理を感じてしまう。「エス」と「ゼット」では音が全然違うから当然なのだが。

 『ミクロイドS』が元々『ミクロイドZ』として企画され、アニメ放映開始直前になってタイトルが変更されたのは有名な話だが、『ミクロイドZ』で主題歌のレコーディングまで済んでいたのだから、よほどギリギリの変更だったのだろう。手塚先生も全集あとがきで「「ミクロイドZ」で連載第一回めをかいてしまったこっちにとっては、いい迷惑です」と書いているが、アニメの制作現場もかなり混乱したのではないだろうか。
 同じく全集あとがきによると、最初期に手塚サイドが出したタイトルは『ミクロイド』のみで、「「ミクロイド」だけでは軽い、というわけで、東映はかってに「Z」をつけました」「「なんとかZ」というタイトルのテレビ番組はよくあって、競合する」という理由で最終的に『ミクロイドS』になったそうだが、当時その「なんとかZ」の中で一番有名だった『マジンガーZ』を作っていたのは東映動画なのだから、わざわざ自社作品と競合するタイトルを付けるとは考えにくい。
 手塚先生の自作コメントには、明らかな誤りや矛盾するものも多く、あまり頭から信用すべきではないのだが、この『ミクロイドS』あとがきも、その一つではないだろうか。Wikipediaに記載されている「スポンサーの事情説」の方が、まだあり得そうな感じだ。こちらも確たる情報源はないようだが。

 話を戻すが、とにかく主題歌のバージョン違いが多い。基本は「ミクロイドS」「ヤンマだ、アゲハだ、マメゾウだ」の2曲だけなのに、「Z」バージョンも含めて各4種類、計8曲も入っている。これは、番組にキー局版(26分)とローカル局版(30分)の二種類のフォーマットがあり、それぞれの尺に合わせてテレビサイズが複数存在するためだ。
 ローカル局版のEDに至っては「ヤンマだ、アゲハだ、マメゾウだ」のフルコーラスを丸々流しているが、これは今までCD化されていなかった。多くのオムニバスCDではキー局版OPに合わせて再録音されたアップテンポ版が収録されており、また「TVサイズ!東映アニメーション主題歌集」に入っていたのはテレビサイズより微妙に短い編集版(間奏の一部をカット)だった。
 どうやらローカル局版EDはマスター音源が残っていないらしく、今回のCDでは映像フィルムの音声を使ったようだ。私の安物ラジカセでもはっきりわかるくらいに音質が悪い。これはちょっと残念だが、ようやく正しい「ローカル局版ED・テレビサイズ」がCD化されたのは喜ばしい。



 もう一枚の『ジェッターマルス』は本編は未見だが、主題歌は以前から好きな曲だったので、こちらも楽しみにしていた。
 今回のCDは、前半がソング・コレクション、後半がBGMコレクションで構成されている。本編を観ていないため、BGMは主題歌アレンジ曲以外は今ひとつピンとこないが、前半のソングコレクションは初CD化曲が満載で嬉しい。「メルチバカルチガンバルチ」には、お茶の水博士にしか聞こえないセリフが入っているが、これが川下博士なんだろうな。
 付属のブックレットには、結構詳しい作品解説が載っている。『ジェッターマルス』は以前から気になっていた作品だったが、この解説を読んで、ますます本編が観たくなってしまった。『ミクロイドS』に続けて東映チャンネルで放映してくれたらよかったのだが、『ミクロイドS』の後は『ゲゲゲの鬼太郎』の第1作が予定されている。もちろん大好きな作品だが、DVDを持っているから全然ありがたくない。
 『ジェッターマルス』もDVD-BOXが発売されたが、さすがに全く未見の作品のBOXを買うのはちょっと抵抗がある。懐に余裕があるならともかく、藤子・F・不二雄大全集やアトムのオリジナル版を買うので今は厳しい。『鬼太郎』の後にやってくれれば…と言っても、『鬼太郎』は全65話だから週2話ずつの放送でも半年以上先の話だ。何とかならないものか。



 それはともかく、CDは2枚とも聴き応え十分で満足した。
 コロムビアが音源を持っている作品で、「手塚治虫作品集」のシリーズを、ぜひ続けて欲しい。個人的には『ワンサくん』をお願いしたい。劇中で使われた挿入歌は名曲揃いなので、BGMと上手く組み合わせて本編の流れに沿うような構成でアルバムを出してくれれば非常に嬉しい。DVD-BOXやCS再放送ですらEDの音声が一部カットされるような状況では、難しいのかも知れないが。



7/5 追記

 「ヤンマだ、アゲハだ、マメゾウだ」のフルコーラス(ローカル局版ED)は、CDではすでに「手塚治虫の世界」に収録されていたらしい(私は未確認)。こちらもレコード盤起こしではなくモノラルだそうなので、今回のサントラと同音源の模様。