Il film del sogno

現実逃避の夢日記

煙突の見える町/軍旗はためく下に

2006-03-09 01:51:00 | 日記
3/8(水)
快晴、暖かい。
群馬の太田へゆく。17号線を北上し殺風景な窓外を眺め、うたた寝をする。

夕刻、池袋の新文芸坐にて【煙突の見える町】【軍旗はためく下に】を鑑賞。
同劇場では《日本映画監督協会 創立70周年記念 映画監督が愛した監督 日本映画監督協会70年の70本+1》という長いタイトルの特集が組まれており日替わりで古い邦画を上映している。
いずれも再見であるが、いま観ても、全く色あせることがない傑作である。

煙突~は1953年新東宝製作。
見る場所によって4本にも3本にも、あるいは1本にも見えることで有名なお化け煙突がある東京の下町・北千住。田中絹代演じるヒロイン弘子は、戦争で行方知れずになってしまった夫との婚姻籍を残しながらも、足袋問屋に勤める隆吉(上原謙)と同棲生活を送っている。そんな2人の家の前に、ある日赤ん坊が捨てられて…。
原作は昭和27年に椎名麟三が「文学界」に発表した小説「無邪気な人々」。
監督は五所平之助。
舞台を昭和初期の下町に変え、そこに暮らす人々の哀歓を温かく、ユーモアを交えて描き出し、'53年ベルリン国際映画祭で国際平和賞を受賞した。
16ミリフィルム、当然モノクロであるが、細部の作り込みが凄い。
田中・上原は戦前のメロドラマ【愛染かつら】のコンビでもあり、高峰秀子、芥川也寸志を加えた名優達の味のある演技が堪能できた。

軍旗~は1972年、東宝製作。
これは後世に残る戦争映画の古典でありましょう。
原作はハードボイルドもので60年代の文学をリードした結城昌治の70年度直木賞受賞作品。
映画もドライなタッチをそのまま活かして謎解きの面白さで見る者をグイグイと結末へと導いていく。
監督は翌年『仁義なき戦い』でブレイクする深作欣ニ。
のちに実録もののトレードマークとなるスチール構成はこの映画のおよそ半分以上を占めていて、所謂深作スタイルが確立された作品としても興味深い。
シナリオは新藤兼人。

ヒロイン(左幸子)の夫(丹波哲郎)は戦死しており、戦友たちが主人公の真実の姿を語っていく、という構成は珍しいものではないが、敵前逃亡、上官殺し、果てはカーニバリズムと極限状況下の南方戦線での真実が明らかになってゆく。

軍隊という組織の不条理、戦犯責任、遺族保障問題、そして最後に「天皇の戦争責任」についてまで言及しようとしている。

平和ボケしている現代だからこそ見るべき作品。
コメント
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