マチンガのノート

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暗闇への探究―循環する闇と光の心理臨床学的研究 竹中菜苗 感想 part?

2020-01-02 00:35:31 | 日記

本書は、ユング派臨床家ギーゲリッヒの「Leap into solid stone」に影響を受けたものと著者はしているが、

硬い石に飛び込むと、飛び込んだほうも元の形を保っていられない事から解るように、

本書の内容も、様々な先行する研究や、著者の研究を通して浮かんできた来たものにより、

著者が変容する過程で生成していったものだろう。

著者が様々な研究や臨床経験の中で浮かんできたものにより、本人もかなり影響を受けて、

もとの本人のあり方も変化して、その中で得たものが本書の成立につながったのだろう。

それについては、ユング派分析家の織田尚生氏の「変容的逆転移」を思い起こさせる。

これまでの臨床で、クライアントが抱えて処理できないものを著者が担い、

クライアントの代わりに著者が変容し、それをクライアントに返して、変容に繫がるということが

起きた過程を描いているという側面も大きいのだろう。

認知行動療法のような、治療者がクライアントに働きかけて、変容を促すというものとは、

根本的に違うことだろう。