マチンガのノート

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トラウマ (岩波新書) 宮地尚子

2015-01-07 00:26:04 | 日記
著者によると、本人が「~がトラウマになっていて」と言えるのは
トラウマではないとの事だ。
本人が言語化出来ないほど、本人に侵襲的、破壊的なまま留まっていて、
凍り付いているものが臨床家から見たトラウマとの事だ。
ハリウッド映画なので、主人公が過去の出来事が原因で何かをできず、
同僚などを死なせてしまい、自責の念に駆られながら、
物語の最後でそれを克服して、事件などを解決するなどの映画がよくあるが、
その様な物語などでは、原因は本人のメンタルな問題に還元されてしまい、
様々な事の、社会的背景、歴史的背景などを無視することで、
観客は社会的に何もせず、主人公を映画の鑑賞中に心の中で
応援するだけで済むことになる。
実際のトラウマ的な出来事、震災、差別、犯罪、紛争、などは、
周囲の人の生活、歴史観、更に社会の在り方にまで関わっている。
それらの社会全体の在り方から切り離して「トラウマ」のみを
扱う事自体が不可能だろう。