俳人の正岡子規は、昭和28年秋無理を押して奈良に立ち寄った。
宿は老舗の「對山楼」。そこで詠んだのが
秋暮るる 奈良の旅籠や 柿の味
評価は様々だが、私は好きだ。
侘しさ募らせる晩秋のひと時、鮮やかに熟した名産の柿が振舞われた。
病苦をおしての旅だけに、温かいおもてなしは嬉しかったろう。
情景がくっきりと浮かび、身にしみる想いが伝わってくる。
柿くへえば 鐘が鳴るなり
こちらはあまりにもよく知られている
いずれも奈良において詠まれた柿を題材にした名句だ。
柿と奈良はどうにも切り離せないようだ。
この子規ゆかりの地に、「子規の庭」が整備され、誰でも訪ねることができる。
青石の句碑が立てられ、柿の古木が実をつけていた。
若草山や大仏殿を借景にした庭で、
句の題材となる季節の花も咲いていた。
なお入り口は分かりにくいが、
日本料理「天平倶楽部」の奥まったところにある。