como siempre 遊人庵的日常

見たもの聞いたもの、日常の道楽などなどについて、思いつくままつらつら書いていくblogです。

軍師官兵衛 第30回

2014-07-30 22:41:00 | 過去作倉庫11~14
 はい、去年からあらたに「大河ドラマの出来を占う最初の定点観測ポイント」認定されました、第30回を迎えました。
 っていうか、この定点観測ポイントは、ずっと「第3回」に設定してたんですよ。ご祝儀気分の第1回、そのイケイケムードの流れで見る第2回をおわって、ほんとうに1年見ても大丈夫なドラマかどうかがハッキリするのが、水平飛行にはいる第3回だ、とわたしは長年主張していたんですが、それはホントに自信が無くなってしまいました。
 まあ、「龍馬伝」とか「平清盛」みたいな駄作を見抜けず、第3回あたりでは「いいじゃないですか」などといってはしゃいでた自分の見る目の無さを反省したせいもあるんですが、それにしたって、30回で裏切られた去年はショックでした。さらに今年は、このまま駄作で終わるんだろうと思ってたのが30回近くで急に盛り返す気配を見せてきたので、自信も打ち砕かれました。もう何を信じたらいいんだか。
 でも見極めラインが第30話って、客観的に見て遅すぎませんか。いくらなんでも。30話なんて、ふつうはとっくに見放して見なくなってるか、見てる人は、駄作でもつまんなくても最後まで付き合うつもりで腹をくくってみているはずです。30話からに期待してください!っていくら主役の中の人が力説してもねえ。そういう期待をさせるなら最悪折り返し前、できれば10話台くらいでお願いしたいですね。

 つうことで第30回。前回と前々回がよかったので、この勢いで…と期待しましたけど、うーん、今回はやや息切れ、失速、という感じでした。ドトウの中国大返しで失速してちゃしょうがない。全編のなかでもっとも失速してはいけないところだと思うのですが、どうしてまた、高速道路でブレーキを踏むようなことをやるのかなあ。わからんなあ。
 ということで、大事なところで迷いが出る本作の悪い所が出ちゃいましたが、まあ、それでも本能寺前のチンタラとしょうもない展開よりはだいぶマシには違いないので、いちおう好意的に見守りたいと思います。
 だいたい、この30話以降が劇的に良くなるボーダーラインなのか、それともたまたま体調が良かっただけのまぐれ当たりなのか、今週のを見る限り、ちょっとまだわかんないので……。

第30回 中国大返し

今週のみどころツッコミどころ

○ 中国大返しの途中のご家族サービス。これって不要?必要?

 なんかNHKは主婦層の視聴を意識しすぎてる気がしますが…気のせいですかね。大河ドラマは朝ドラじゃないのですから。なにがなんでも主婦に支持されなくては困る、そのために、まったくベタなどうでもいい愛妻エピソードを、流れを中断してでも挿入するのは、どこかから指令でもでてやっているのでしょうか。
 いくら指令が出ていても、戦国ものの見せ場中の見せ場・中国大返しのスピード感を寸断してそんなもの入れるなんて。まともな脚本家ならできるこっちゃないですし、やむなく入れるにしたって、スピード感をそぐような雑な処理はしないと思います。今回はたまたま良いゴーストライター、悪いゴーストライター、ふつーのゴーストライター、の内の悪い人が回り番になっちゃったのかな。運悪く。せめてこういう回は多少でもマシなゴーストライターに担当させてほしかったですね。
 先週のラストでおっぱじまった中国大返し。官兵衛(岡田准一)の抜かりない手配で、途中の給水ポイントの設営もよろしく、水やバナナに加えて味噌などの手配も抜かりなし。塩分摂取は熱中症予防の基本です。季節柄ちゃんと啓蒙も怠りないのはさすがです。
 それはいいのですが、途中の休憩ポイント・姫路城に入ってからがドカッと中だるみ。こんなにたるんでしまったら、もういちどフンドシをしめなおして残りの道を駆け抜けるなんて無理なんじゃないでしょうか。
 というのは、行程で自宅に寄った官兵衛が、自分ちに泊まってるのに愛する妻・光(中谷美紀)に会わない、気持ちが緩むし士気の低下になるからと頑なになる…というエピソードなのですが、わざわざそんな話入れなきゃべつに緩んで見えないのに。
 またその奥さんサービスがベッタベタ、というか、まるで工夫が無いんですよ。はじめて抱く(長期出張中だったので)赤んぼに頬ずりして、「必ず生きてもどる、この子のためにっ!」とかいって。そして唐紙のむこうでそっと涙する妻。あれだ、大河ドラマ恒例「愛する人を守るためにオレは戦うゥ!」っつうやつだ。旅立つ男の胸にはロマンのかけらが欲しいのさ。るるるるるる~るるる真っ赤なァ スカァアアアアーーーフ
 たのむよひとつ。こういうのは、コッテリ盛るなら盛ってもかまわんから(私は基本的に好きじゃないけど)、べつのところでやってくれ。お願いだから。戦国ものの見せ場、スピード命の中国大返しの間に入れないでもらいたい。
 あと要らんシーンはもういっこありました。官兵衛のムスコが炊き出しの配給所で蜂須賀小六の娘(高畑充希)と出会うシーン。どこの少女マンガから切り張りしてきたんだあれは。こういうのも、べつのところに貼る分には見なかったことにもできるけど、中国大返しの途中のポイントに流れを止めて入れる理由が分からない。あと、その後夫婦になる(のかどうか知らんけど)男女が、無理にでもなんでも結婚前に「偶然の出会い」をしなきゃいけないという約束事に縛られて、見せ場のスピード感をそいでまでこんな不必要なアクセントを入れるセンスが、全くもってわからないです。
 ということで、今週は、この姫路城のご家族サービスを丸っとカットしてゴミに出し、かわりに援軍要請や光秀の三日天下の間に情勢がじんわり変わるところなどを丁寧にやったら、40点が90点になった回だと思います。

○裏切者たちの挽歌

 摂津地方で光秀討伐の義軍をつのる秀吉の許に、池田恒興、中川清秀と高山右近(生田斗真)の三人がやってきて合流を申し出ます。
 オイ高山右近。
 美人妻のだし様が公開処刑されてあんなに嘆き悲しんでいたのに、なんなんでしょうか。「主君を裏切った光秀の行いはデウスもお許しになりません」だと。イケシャアシャアとどの口が言うんだそういうことを、って感じですが、イケメンだから許されるんですかそうですか。
 でも、イケメンでもないのになんで、となるのが中川清秀。生きとったんかわれ。高山右近と二人で荒木村重を二階にあげて梯子をはずし、無責任に信長に寝返ったこの二人が涼しい顔して「裏切り者の光秀は許せません」って。
 これでいよいよもって、荒木村重があんなに苛烈な制裁を受けた理由が「裏切りの代償」ってのがナンセンスになってきますよね。というか、このドラマにおける「裏切り」「寝返り」の定義がいいかげんなのが問題で、なんか現代的なフラットな善悪観念で解釈しちゃってるのか、戦国時代の生き残りの方便として描いているのか、その場その場でどっちつかずなのでまことに気持ち悪いんですよ。まあ、「生き残りのの方便」という解釈でやりとおせるくらいタフな脚本と人物描写ができてればいいけど、それが無理なので、とりあえずイケメンのイメージ温存のためにフラットなきれいごとを適当にしゃべらせちゃう。「命は大切に」とか「愛する者を守るウ」とか。そういうのが整合性を欠いた結果をうみ、言行不一致な残念なことになってしまう…ということだと思います。

○エア山崎の戦…

 まあ、なんつっても今週一番の脱力物件は、「エア山崎の戦」。これに尽きるでしょう。
 三日天下を満喫した光秀(春風亭小朝)は、次期将軍とかいわれて満更でもないのですが、肝心の味方がなかなか増えない。ちょっと焦り始めたけど、秀吉や柴田勝家、丹羽長秀などはそれぞれの戦場にくぎ付けで、とうぶん大丈夫、と思ってるわけです。
 そんなところへ、特命をおびた井上九郎衛門(高橋一生)が遣わされてきます。官兵衛が小早川隆景(鶴見辰吾)から借りてきた一文字三ツ星の軍旗をもって。
 ババーン、と毛利家の旗をみせられて、おもむろに「毛利と和議しましたっ!」と宣言された光秀は大ショック。そして、秀吉軍が超スピードで兵庫辺りまできているという。それが姫路あたりで女房子供とスキンシップをしてダレているなんて知らないので、パニクッた光秀は、「官兵衛か!あの男か!!あの男がやりおったのか!!」と、なんでそう思ったのか何の根拠もなく主人公をマンセーし倒します。この人、いつからそんなに官兵衛を高く評価してたのか、ちょっと記憶にないのだけど。
 毛利・羽柴の和睦は、例によってあっというまに拡散し、RTを繰り返されるうちに「毛利と和議した」が「毛利と合流した」っつう話になって独り歩きして、羽柴・毛利連合軍という妄想上の最強軍団が各地の大名をビビらせることになります。光秀に手なづけられていた大名たちもどんどん秀吉に合流。有名な「洞が峠を決め込」んだ筒井順慶も。この人も、この「洞が峠」だけで後世に名前が独り歩きしてしまって、多少不本意なところもあるでしょうね…。
 そしていよいよ天下分け目の天王山。山崎合戦になるのですが…これがまあ、まことに斬新な天王山でした(笑)。
 冒頭、天王山で対峙した羽柴・明智の両軍が、VFXで数秒映っただけで、合戦モブシーンなどはただの1シーンもなし。過去大河の使い回し映像すらもなく、山崎合戦の主な舞台は光秀の陣営で、駆け込んでくる伝令が「申し上げます!○○○様お討ち死に!」「なんとっ!」「申し上げます!○○○様お討ち死に!」「なんとっっ!!」と、このラリーだけで合戦の模様が実況されるんですよ。超ミニマム。シンプルイズベスト。
 そんでその3、4回めだかに「申し上げます!斎藤利三様お討ち死に!!」「とと利三が…」と、ここで光秀のココロが折れます(言うまでもないでしょうが主に別名「春日局のお父さん」で知られてる人ね)。
 そして次なるシーンは、再起を期して近江坂本へ撤退途上の光秀。「この国を思ってやったことは間違いであったのか…」。そうですね、本能寺の前の週の信長の口パク+光秀大ショック、のくだりのネタバレを、なんとかここまで引っ張れたら良かったのに…と思いました。
 そのくらいできれば、光秀の死もこんなに残念でサビシー感じにならなくて済んだのに。いや、べつに長澤まさみとかが出てきて必殺仕事人の山田五十鈴みたいにやる必要もないけど、こんなに花の無い光秀の死も、なんかかわいそうです。
 せっかく、使い古されたパワハラネタや虐めエピソードなんかをあえて入れず、細川ガラシャなんかもからませず、光秀なりの世界観と正義感を匂わせていい線までいったのに。未消化で終わってしまった感じでとても残念です。この線の解釈の光秀で、いずれもっとちゃんと練った脚本の「三日天下」が見たいなあ。

○でも官兵衛は悪くなかったです。

 って散々悪くいっといてなんですが(笑)。
 とくに、丹羽長秀(勝野洋)を説得して織田信孝(中山麻聖)を担ぎ出すくだりは良かったです。本能寺のあと脱走者が多くて陣営が貧弱になってしまい、このまま秀吉に合流すると、なんか傘下に入ったみたいで恰好がつかない、とグズグズ逡巡する長秀と、とりあえず「羽柴軍=織田正規軍」の広告塔として信孝さまの顏が欲しい官兵衛。この人たちが汚い本音を隠さずに手を握るシーンは、なかなか見ごたえがありました。なにより、勝野洋さんのムダ遣いに終わらなくてよかったです。あと、中山麻聖さんってお父様の三田村邦彦さんに声がそっくりで驚きました。
 このまま現場の男たちのダークサイドを露出させて、清州会議に突入してほしいです。ガキや女は不要(あ、三法師さまだけはいないと困るが)。面白いと思うよ。官兵衛がこのまま黒光りさせて、女子供やキレイゴトをいったん捨てて突き進んでくれたら、清州会議以降の流れはきっと見ごたえがあるものになるでしょう。
 せっかく大河見てるんだから、そういうの希望。というか、世間はそういうのを見たがってるはずだと思うんですが。
 これで視聴率が順調に良くなれば、大河ドラマの流れも、スイーツやマンガ志向を見直して、昔ながらの濃くて硬派なのが復活するんじゃないかとウッスラ期待してるので、がんばってください。


8 コメント

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歴史ドラマで見たくないもの (小紫)
2014-08-01 12:00:08
「裏切り、寝返り」に対する扱いの一貫性のなさはそれこそ変節的。無責任な主人公賛美と並んで、御都合主義で気持ち悪いですね。これに加えて「戦乱の世を終わらせるため」とかのどう考えても現代人の解釈や、恋人・家族ベッタリのシーンでがっかりさせられ、毎年のように、どこか途中でドラマから気持ちが離れていくのを感じていました。

人間の欲望がぶつかり合い、時代が動いていくときのゾクゾクする高揚感こそが、歴史ドラマの醍醐味ではないでしょうか。その点では、ここ最近の官兵衛氏、グッドです。

清水宗治の切腹直前に言わせた、主人公に「会えてよかった」が、光秀では「あの男がやりおったか」に。さすが庵主さまです。この上は、関ヶ原後、六条河原で石田三成、安国寺恵瓊、小西行長の3人が斬首されるときに、AKがやり出すのでは……と私は想像しますが、いかがでしょう。
暑いですね~ (SFurrow)
2014-08-01 19:49:55
連日の猛暑に加え、朝ドラで松本明子さんのティアラドヤ顔「似合う~?」に脳内スクリーンを占拠されていたため、官兵衛のほうは、さっぱり記憶に残りませんでした。
中谷美紀さんは、素で見るとキレイで感じのよい人ですが(NHK土曜スタパで見た)、ドラマの中ではあんまり魅力的に見えないのは脚本のせいなのかな~(映画『利休』でも、今いちピンと来なかったんですよね~海老蔵さんは良かったと思うけども)。
次回の予習を兼ねて三谷幸喜の『清須会議』を読んでいるところですが、映画は未見です。
キレイごととヨイショの大河史 (庵主)
2014-08-02 20:09:34
>小紫さん

そうなんですよね、根拠もなく主人公をヨイショし倒すのは、ここ何年も大河ドラマの定番のイベントになってしまって。
ほんとにAKが言いそうだなあ、といまから不安、と言うか楽しみになってきました。
まあ、そこまでに主役が、おだて倒されても不自然でないくらい大きく成長していれば言うことないんですけどね。

>人間の欲望がぶつかり合い、時代が動いていくときのゾクゾクする高揚感こそが、歴史ドラマの醍醐味

ほんとそうですよね。
そういう欲望や打算でドラマが回っていくのが面白いので、根拠のないきれいごとや誉め倒しなどは勘弁してほしいのですが、官兵衛が、いまさらですが黒っぽくなって、人の欲望を回す役の貫録を見せ始めたので、少し期待をしています。このまま踏みとどまって、頑張ってほしいですよね。
中谷さんの魅力は… (庵主)
2014-08-02 20:16:16
>SFurrowさん

わたしも清須会議見逃しちゃったんです。
なので、直近の記憶が「江」の、「なんであんたがそこにいる」という清須会議だったりしますので(笑)。今回は新鮮な気持ちで見られればいいと思います。

中谷美紀さんはですね、いずれ記事で書こうと思ってたんですが、今回は最初から出来上がっちゃってる完ぺきな人にしてしまったのが、魅力が生きない一番の原因ではないかと見ています。
利休の妻も、そういえばよくわかんなかったですね。きれいでしたけど(まあ、あれは物語のキーになる朝鮮の女もよくわかんなかったから…)。
中谷さんて、「嫌われ松子の一生」という映画で、なんて魅力的な女優さんなんだろうと衝撃を受け、それから白洲正子も素晴らしかったし、やっぱり、ちょっと普通でない不完全な女性の役のほうが輝いて見えるのではないでしょうか。

ほんと暑くて参っちゃいますが、お体に気をつけて…。
官兵衛讃歌 (もも)
2014-08-03 17:45:50
光秀が言いましたねえ「官兵衛か、あの男がやったのか」。
これは、形を変えた官兵衛讃歌(=会えて嬉しかった)と見ていいような気が。
光秀は途中から、官兵衛に「ワシの軍師になれ」と言い寄っていて、官兵衛にご執心でした。
官兵衛をリスペクトし過ぎていたので、「思いがけないことをした秀吉軍」イコール「官兵衛の仕業」となったのでしょうけど、光秀ほどの武将が、何の証拠もないのに合戦前にそんな弱気なことを口走っていいのか。

あと、やはり右近の「裏切りはデウスの教えに背く」などと十字架を持って言われても「え!・・・・あなたが言いますか」って感じで、面の皮が厚くなったというかしたたかになった右近様で、見ていて複雑な気分でした。
スタジオパークを見ましたが、この人、最後は海外に行くみたいですねえ。
描かれるかどうかはわかりませんが。

中川清秀、まだ生きてましたねえ。
村重に、ギリギリまで織田と敵対することを反対していた右近より罪が大きいです。
道糞と会わせてみたい。
次は誰? (庵主)
2014-08-03 21:20:03
>ももさん

あー、光秀が官兵衛をハンティングしようとしてたの、完全に忘れてました(笑)。
まあ、あれはライバルの家来をヘッドハンティングできちゃったりする自分に酔ってる感じでしたから…。
というか、光秀が認めるような官兵衛の実力そのものが、あの辺では全然描かれてなかったんですけど。

やっぱり「あの男か!」は「会えてうれしかった」の変形バージョンでしょうね(笑)。
次は誰が言いますでしょう。柴田勝家は言わなかったので(当たり前だw)、三成かなあ。となると、当分先ですね。
Unknown (かぽ)
2014-08-10 07:03:52
庵主様

とうとう31回の感想はなかったですね・・
ぶち切れてしまいましたでしょうか?
私もガックリです。
せっかく盛り上がったのに、一回だけなんて・・・
今日見るのも、怖いような。
頑張って見ますけど、これ以上期待を裏切られたら、どうしよう・・5096
こんなコメントでご免なさいm(__)m
細かいとこはどうでも (かくちん)
2014-09-02 21:29:55
お疲れさまです
はやくブログ復活してほしい
純粋に大河好きなので、
このブログも好きです

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