ラス5の2です。
1年におよぶ物語がいよいよ畳みに入ったということで、いままでの事件の行間にこめられた意味とかがだんだん明らかになったりして、終盤らしい見ごたえが出てくるのがこのあたりの回の楽しみです。そういうのは、1年間根気よく見てなくては味わえない楽しさですからね。
まあ、ここしばらくの駄作ではそんな楽しみもなく、終わりの方はほんとに回数消化だけという感じでした。真田丸ももうたいして期待もない消化試合にはちがいないけど、それなりに、「ああこれは序盤のあれと結びつくな」「この人のこの行動は、こういう意味で一貫してたんだな」的に発見できるものもあったりして、それだけでも、あの駄作の山と一緒にしては悪いかな、という気持ちにもなりました。
とか思ってたら、油断しちゃいけないですね、「もうこれは見なかったことにしたい」というひでえ粗悪エピソードの挿入でボディブローを食らいました(後述)。ああもう…。というわけで引き続き今週も、ノルマ消化感だけのレビューです。あと3回、なんとか続けばいいと思ってます(それもあまり自信ない…)
そんじゃささっと参ります、第47回「反撃」。
今週のざっくりしたあらすじ
大坂城に大砲が撃ち込まれ、一部が崩落、犠牲者もでたことで大きなショックをうけた茶々(竹内結子)は、徹底抗戦といった言葉をコロッとひっくりかえして和睦に転んでしまいます。いま和睦などしたら徳川の思うつぼだ、だいたい砲弾もたくさんあるわけもなし、続けてうってこないのは弾がないからだと主張する幸村(堺雅人)とも、面談を拒否して引きこもってしまう茶々。「私って経験豊富だから、人が死ぬのは全然こわくないのよね~」とか言ってたくせに。
和睦なんかされたら困るのは、かき集められた非正規労働者の浪人たちです。派遣切りの不安におびえる浪人たちの期待を背負った幸村は、茶々に会いますが、メンタル壊れた彼女は「やっぱり怖くて和睦に転んでしまいました、茶々を叱って♪」などと色っぽくしなだれかかってきて、そうなると幸村は抗戦抗戦と主張もできず。べったり張り付いてくる茶々の背中に回した手にキュッと力を入れるあたりに、なにか幸村の心境の変化を感じますね。毒を食らわば皿までという覚悟なのか。
そんな幸村と茶々が「デキてるんじゃねえか」と疑う者も当然いるわけです。茶々とニャンニャンいい思いをして、おれらはお払い箱って魂胆じゃねえかテメエ。ぶった斬るぞコノヤロ。と殺気立つヤンキー兄さんたちは、作兵衛(藤本隆宏)を取り囲み、真田幸村ってのは正直、信用できる男なのかと問いただします。作兵衛は顔色も変えず、「あの人のことは俺あんまり知らない、ずっと上田にいなかったし。だからわからない」と。
言葉を失うお兄さんたちに、作兵衛は、でもあの人の御父上様は、生涯かけて武田家の旧領奪還のために戦った、それはそれは義に篤いお方であった。あの方にはその御父上の血が流れている!と言います。結局、義理と男気と人情以外のなにも理解できない浪人のおにーさんたちには、これ以上説得力のある話もないわけです。下手に幸村の弁護をするより。正直者の作兵衛の勝ちですね。
で、和睦に転んだものはしかたないから、気持ちを切り替えてできるだけいい手を打つ。そのために動き出した幸村。まずは私がと和睦交渉の代表に立候補した織田有楽斎(井上順)を、鼻で笑ってスルーします。あたりまえだよスパイだとわかってるものを。とは言えないので、有楽斎が行くとなると相手も相応のキャリアの者を出してくる、おそらくは本多佐渡(近藤正臣)を。徳川きっての古だぬきを封印するためには、代表は男では駄目で、いっそのこと女がいい、と。それなら相手もその程度の者を出してくるから、というわけですね。
そこで幸村が指名したのが茶々の妹の常高院こと初(はいだしょうこ)なのですが、政治経験ゼロの出家奥様です。常に平常心で曇り無き目をお持ち、ってだけではスキルとして弱すぎる、そこで、われこそはと手を上げた大蔵卿局(峯村リエ)が同行することに。いや、むしろヤバすぎるだろうこのババア。と不安に思った幸村が繰り出したのが、きりちゃん(長澤まさみ)で、彼女へのミッションは「風向きがおかしくなったら、その場をかき回せ」ということでした。
いや、いくらなんでも、上高院様や大蔵卿よりはマシな頭と行動力をもってるだろうきりちゃんならば、と思うのですが、基本的に幸村はきりちゃんをバカにしているので(というかこの人女性全般を、茶々様も大蔵卿も、自分の奥さんも含めてなめているよね)、あまり大した働きは期待していないわけです。
ただ、この場合は、徳川の代表できた阿茶様(斉藤由貴)のスキルを、源次郎がなめきっていたのがすべての敗因ですね。あたりまえだよ、相手は天下人・家康を調教した女なんですぜ。常に平常心で曇り亡き目ですべてをみておられる、なーんてだけの歌のおねえさんに太刀打ちできるわけないじゃんか。
初様の義理の息子の家という、いわばホームで行った会談は「戦を始めるのは男の勝手、その後始末を私たち女がするというのも面白うございますわね」と和やかな阿茶様の仕切りではじまります。感じがよく、かつ聡明そうな阿茶様に、完全に巻き込まれた大蔵卿。そう、にこやかで適度に強引、深く考えるすきを与えないという、熟練の生保レディーみたいな笑顔に転がされた大蔵卿は、徳川に都合のよい向きにどんどん同意をしてしまいます。
そのうち、臨時雇いの浪人たちは全員解雇、リストラに応じないなら、戦はもう無いのだと思い知らせるために、真田丸を解体してしまいましょう、というふうに話は展開していきます。完全に武装解除して、堀も埋めるのですわ。あんなもの、ラブ&ピースの世の中に似合いませんもの。これからは物騒なものは必要ない、豊かでしあわせな世界平和の時代がくるのですわ。
っと、さすがにバカではない初様も、これはおかしいと気づきます。でも、彼女には相手の言葉尻を捉えたり、話をさえぎって口を挟むというディベートの技術がない。そこできりちゃんが、「あ、ああ足が攣りましたーーーっっ!!」とかいって唐突に床をローリングしたりして空気をかき混ぜ、初様に反論のチャンスをつくるわけなんですが、ほんと、彼女に口を挟む資格があったら一番簡単だったのにね。そういうチャンスさえうまくつかめない、てってー的にテンポのわるい初様と、生保レディーに転がされたおばちゃん状態の大蔵卿。このふたりによって、世にも愚劣な大坂冬の陣の戦後処理は、右から左になされてしまいます。
そんな女性陣のはたらきを「祈りましょう…」とか無責任なことをいってる幸村&秀頼。この秀頼って信じられないおバカさんで、自分がグダグダ腰が据わらないためにまわりの意思が一貫せず、こういう結果を招いたのだと全然理解していない。イケメンで気品あふれる生まれながらの王子様…とみえてとんでもないバカだったという見掛け倒しの底が割れてきました。みためが無駄に良いだけに、単純に頭が悪いという現実は、ありがちなバカ殿より残酷ですなあ。
さてそんなころ伊豆守信之(大泉洋)はというと、…えーっと、このくだり思い出すのもむかつくんですがしかたない、淡々とやりますね。信之は何をやってるかというと、小野のお通(八木亜希子)のところに入り浸り、「弟が今も戦っていると思うと胸が張り裂けそうにつらい…」とか言いながら膝枕で耳掃除をしてもらっています。耳かきリフレかよ。そんでお通が「(話聞くだけなら)一晩中でもええんどすえ」とか言って、信之が鼻の下を思いっきり伸ばしているところに、稲(吉田羊)とおこう(長野里美)が突入してきます。不倫現場を押さえられた伊豆守。
旦那様を癒してあげるのはわたくしの役目なのに!と激昂したおこうがつかみかかると、さっと慣れた様子でいなしたお通は、「これ有料なんどす」と言い出します。そろそろお次のかたのお時間ですから、と予約台帳をめくりつつ、そういえばいつもご家来が精算してくれはりますけど、ここしばらくお支払いがたまってますねといって、おもむろに請求書をさしだすお通。「たっ、高くないか!」と狼狽する信之に、「わたしを誰やと思うてはるんどす」と凄みをきかせる。
もう愕然として声も出ない信之は、稲とおこうに引きずられるようにして帰路につきます。耳かきリフレ、どころかプロの風俗嬢だった小野のお通とは、かくして永の別れとなるのですが……まあ、これシロートさんには面白くて、さぞかし絵を描くネタになったりしてよかったんでしょうけど、真田太平記のファンから見ると激怒を通り越して永久凍土にいたるような心境ですよね。よりにもよって信之とお通を、こんな寒すぎるギャグのネタに、するかーーっっ!?(この件についてはあとでまとめて文句言います)。
さて、ほとんど労せず大坂城を丸裸にする契約に、まんまとハンコをおさせた家康。総攻め、総攻めと暴れ足りない秀忠に、こーやって防衛能力をうばい、城を無防備にしてから総攻めすればほとんどコストがかかんないだろ?と。これってすごい、底意地の悪い平和主義です。
で、全権委任された女たちの一行は大坂城に帰ってきます。城もとられず、国替えもされず、淀殿を人質になどと無体もいわない。いままでどおりなにも変わりませんという、けっこうずくめの待遇のようですが、「真田丸の破却」と「堀を埋める」という、事実上の完全無力化。なんという愚かなことを…と激昂する幸村。愚かも何も、そーゆー人たちを指名して派遣したあんたが悪いんだがな。
浪人たちの待遇については特に言及がなく、それはおいおい順を追って…というのですが、そーゆーファジーな取り決めがいちばんこわいということを、世間知らずなおばさんは知りません。もう戦はないんだから堀などいらない、戦闘員も用済みじゃと。そうして、どんどん乗り込んできた徳川軍によって真田丸が破壊され、堀が埋められていくのを見てもなすすべもなく、言っても何も理解できないおばさんを責めることもできないという…。まあ、ようするに自業自得なんですが。女をバカにして、女のバカさの破壊力を甘く見てきたツケだよね。
まあ、それも自分の身から出た錆とはいえ、家族を巻き込むのは忍びない。幸村は妻の春(松岡茉優)に、子供たちを連れてすぐに城を出よ、上田にいくのだ、と指示します。そして幸村一家が夜逃げの支度を始めたところに、武装解除されても行くところのないホームレス状態の非正規のめんめんがわーっと集まってきて、「勝つためにここへ来たっていったじゃねえか、はやいとこ勝つための策を立ててくれよ」などといいます。
完全に目が泳いでいる幸村のところに、非正規連中の間を割って秀頼王子が降臨し、「望みを捨てぬ者に道は開けるとそなたは言った!」とかいって駄目押し。ってかこれは第一回で亡き昌幸が、亡き武田勝頼に言った言葉を幸村が受け売りして秀頼に言ったわけなんですが、めぐりめぐって幸村の身に帰ってきて、おかげで完全な自縄自縛です。しかも、いわれた武田勝頼の末路がどうだったか考えると、呪いのワードとしか思えませんけどねえ。
それをなにか未来への希望の一筋の光のように誤解して、問題はなに一つ解決してないのにとりあえず力技で団結し、空を見上げる秀頼王子&ザ・ローニン‘Sの末路には……嗚呼。あとラスト3回で、わたしを悲惨な結末につれてってちょーだい、というところで、以下次回。
今週のざっくりした感想
いやあ、真田太平記のファンはもう、本気で怒っていいと思う。いくらなんでもガチでバカにして、ふざけた冗談をやってるわけじゃないよね? ものすごい低レベルでバカみたいにみえるけど、それも計算上のことで、きっと最終的には救済されるんだよね…??っとわずかに期待を繋いでいたのが、思いっきり踏みにじられました。
あの、小野のお通と信之。ほんとうにあんなもの見たくなかったですよ。あんなの見た後では、真田太平記のお通と信之の美しいエピソード……特に遺髪のくだりなど……もう情けなくて情けなくて、思い出すのもつらいです。わたし、スカパーを契約してなくて時専の真田太平記再放送を見られなくて、むしろよかったと思う。
過去作を踏襲する必要はもちろんないし、リスペクトだってしたくなければしなくていいですが、バカにして悪ふざけのネタにするというのは、いったいどういう了見なんでしょうか。このドラマ、最初から大河ドラマのオールドファンをくすぐるような小ネタを連打してきましたが、はじめのうちは喜んでましたけど、一抹、「こんなことに一生懸命になってなくていいよ…」という気持ちがあって、嬉しがらせもちょっと小出しにしたらどうか、とはごく初期のころからわたくし、言っておりました。
結局そんなウケ狙いばっかり連打しすぎて、劣化も極まったということなんでしょうが、真田太平記の最高に美しいエピソードの一つを、ここまで趣味の悪いお笑いにするほど腐ってるとは思いたくなかったですね。
まあ、あと3回で救済されるかどうかわかりませんが、犬伏の陣の回で草刈j昌幸に感激しまくったのも相殺するほどですからね、よっぽどでないと黒字にはできないと思いますよ。
なんか、あと3回をのこしてこれで最終回でもいいやと思えてきましたけど、とりあえず、また来週(たぶん)お目にかかります。ではっ。
1年におよぶ物語がいよいよ畳みに入ったということで、いままでの事件の行間にこめられた意味とかがだんだん明らかになったりして、終盤らしい見ごたえが出てくるのがこのあたりの回の楽しみです。そういうのは、1年間根気よく見てなくては味わえない楽しさですからね。
まあ、ここしばらくの駄作ではそんな楽しみもなく、終わりの方はほんとに回数消化だけという感じでした。真田丸ももうたいして期待もない消化試合にはちがいないけど、それなりに、「ああこれは序盤のあれと結びつくな」「この人のこの行動は、こういう意味で一貫してたんだな」的に発見できるものもあったりして、それだけでも、あの駄作の山と一緒にしては悪いかな、という気持ちにもなりました。
とか思ってたら、油断しちゃいけないですね、「もうこれは見なかったことにしたい」というひでえ粗悪エピソードの挿入でボディブローを食らいました(後述)。ああもう…。というわけで引き続き今週も、ノルマ消化感だけのレビューです。あと3回、なんとか続けばいいと思ってます(それもあまり自信ない…)
そんじゃささっと参ります、第47回「反撃」。
今週のざっくりしたあらすじ
大坂城に大砲が撃ち込まれ、一部が崩落、犠牲者もでたことで大きなショックをうけた茶々(竹内結子)は、徹底抗戦といった言葉をコロッとひっくりかえして和睦に転んでしまいます。いま和睦などしたら徳川の思うつぼだ、だいたい砲弾もたくさんあるわけもなし、続けてうってこないのは弾がないからだと主張する幸村(堺雅人)とも、面談を拒否して引きこもってしまう茶々。「私って経験豊富だから、人が死ぬのは全然こわくないのよね~」とか言ってたくせに。
和睦なんかされたら困るのは、かき集められた非正規労働者の浪人たちです。派遣切りの不安におびえる浪人たちの期待を背負った幸村は、茶々に会いますが、メンタル壊れた彼女は「やっぱり怖くて和睦に転んでしまいました、茶々を叱って♪」などと色っぽくしなだれかかってきて、そうなると幸村は抗戦抗戦と主張もできず。べったり張り付いてくる茶々の背中に回した手にキュッと力を入れるあたりに、なにか幸村の心境の変化を感じますね。毒を食らわば皿までという覚悟なのか。
そんな幸村と茶々が「デキてるんじゃねえか」と疑う者も当然いるわけです。茶々とニャンニャンいい思いをして、おれらはお払い箱って魂胆じゃねえかテメエ。ぶった斬るぞコノヤロ。と殺気立つヤンキー兄さんたちは、作兵衛(藤本隆宏)を取り囲み、真田幸村ってのは正直、信用できる男なのかと問いただします。作兵衛は顔色も変えず、「あの人のことは俺あんまり知らない、ずっと上田にいなかったし。だからわからない」と。
言葉を失うお兄さんたちに、作兵衛は、でもあの人の御父上様は、生涯かけて武田家の旧領奪還のために戦った、それはそれは義に篤いお方であった。あの方にはその御父上の血が流れている!と言います。結局、義理と男気と人情以外のなにも理解できない浪人のおにーさんたちには、これ以上説得力のある話もないわけです。下手に幸村の弁護をするより。正直者の作兵衛の勝ちですね。
で、和睦に転んだものはしかたないから、気持ちを切り替えてできるだけいい手を打つ。そのために動き出した幸村。まずは私がと和睦交渉の代表に立候補した織田有楽斎(井上順)を、鼻で笑ってスルーします。あたりまえだよスパイだとわかってるものを。とは言えないので、有楽斎が行くとなると相手も相応のキャリアの者を出してくる、おそらくは本多佐渡(近藤正臣)を。徳川きっての古だぬきを封印するためには、代表は男では駄目で、いっそのこと女がいい、と。それなら相手もその程度の者を出してくるから、というわけですね。
そこで幸村が指名したのが茶々の妹の常高院こと初(はいだしょうこ)なのですが、政治経験ゼロの出家奥様です。常に平常心で曇り無き目をお持ち、ってだけではスキルとして弱すぎる、そこで、われこそはと手を上げた大蔵卿局(峯村リエ)が同行することに。いや、むしろヤバすぎるだろうこのババア。と不安に思った幸村が繰り出したのが、きりちゃん(長澤まさみ)で、彼女へのミッションは「風向きがおかしくなったら、その場をかき回せ」ということでした。
いや、いくらなんでも、上高院様や大蔵卿よりはマシな頭と行動力をもってるだろうきりちゃんならば、と思うのですが、基本的に幸村はきりちゃんをバカにしているので(というかこの人女性全般を、茶々様も大蔵卿も、自分の奥さんも含めてなめているよね)、あまり大した働きは期待していないわけです。
ただ、この場合は、徳川の代表できた阿茶様(斉藤由貴)のスキルを、源次郎がなめきっていたのがすべての敗因ですね。あたりまえだよ、相手は天下人・家康を調教した女なんですぜ。常に平常心で曇り亡き目ですべてをみておられる、なーんてだけの歌のおねえさんに太刀打ちできるわけないじゃんか。
初様の義理の息子の家という、いわばホームで行った会談は「戦を始めるのは男の勝手、その後始末を私たち女がするというのも面白うございますわね」と和やかな阿茶様の仕切りではじまります。感じがよく、かつ聡明そうな阿茶様に、完全に巻き込まれた大蔵卿。そう、にこやかで適度に強引、深く考えるすきを与えないという、熟練の生保レディーみたいな笑顔に転がされた大蔵卿は、徳川に都合のよい向きにどんどん同意をしてしまいます。
そのうち、臨時雇いの浪人たちは全員解雇、リストラに応じないなら、戦はもう無いのだと思い知らせるために、真田丸を解体してしまいましょう、というふうに話は展開していきます。完全に武装解除して、堀も埋めるのですわ。あんなもの、ラブ&ピースの世の中に似合いませんもの。これからは物騒なものは必要ない、豊かでしあわせな世界平和の時代がくるのですわ。
っと、さすがにバカではない初様も、これはおかしいと気づきます。でも、彼女には相手の言葉尻を捉えたり、話をさえぎって口を挟むというディベートの技術がない。そこできりちゃんが、「あ、ああ足が攣りましたーーーっっ!!」とかいって唐突に床をローリングしたりして空気をかき混ぜ、初様に反論のチャンスをつくるわけなんですが、ほんと、彼女に口を挟む資格があったら一番簡単だったのにね。そういうチャンスさえうまくつかめない、てってー的にテンポのわるい初様と、生保レディーに転がされたおばちゃん状態の大蔵卿。このふたりによって、世にも愚劣な大坂冬の陣の戦後処理は、右から左になされてしまいます。
そんな女性陣のはたらきを「祈りましょう…」とか無責任なことをいってる幸村&秀頼。この秀頼って信じられないおバカさんで、自分がグダグダ腰が据わらないためにまわりの意思が一貫せず、こういう結果を招いたのだと全然理解していない。イケメンで気品あふれる生まれながらの王子様…とみえてとんでもないバカだったという見掛け倒しの底が割れてきました。みためが無駄に良いだけに、単純に頭が悪いという現実は、ありがちなバカ殿より残酷ですなあ。
さてそんなころ伊豆守信之(大泉洋)はというと、…えーっと、このくだり思い出すのもむかつくんですがしかたない、淡々とやりますね。信之は何をやってるかというと、小野のお通(八木亜希子)のところに入り浸り、「弟が今も戦っていると思うと胸が張り裂けそうにつらい…」とか言いながら膝枕で耳掃除をしてもらっています。耳かきリフレかよ。そんでお通が「(話聞くだけなら)一晩中でもええんどすえ」とか言って、信之が鼻の下を思いっきり伸ばしているところに、稲(吉田羊)とおこう(長野里美)が突入してきます。不倫現場を押さえられた伊豆守。
旦那様を癒してあげるのはわたくしの役目なのに!と激昂したおこうがつかみかかると、さっと慣れた様子でいなしたお通は、「これ有料なんどす」と言い出します。そろそろお次のかたのお時間ですから、と予約台帳をめくりつつ、そういえばいつもご家来が精算してくれはりますけど、ここしばらくお支払いがたまってますねといって、おもむろに請求書をさしだすお通。「たっ、高くないか!」と狼狽する信之に、「わたしを誰やと思うてはるんどす」と凄みをきかせる。
もう愕然として声も出ない信之は、稲とおこうに引きずられるようにして帰路につきます。耳かきリフレ、どころかプロの風俗嬢だった小野のお通とは、かくして永の別れとなるのですが……まあ、これシロートさんには面白くて、さぞかし絵を描くネタになったりしてよかったんでしょうけど、真田太平記のファンから見ると激怒を通り越して永久凍土にいたるような心境ですよね。よりにもよって信之とお通を、こんな寒すぎるギャグのネタに、するかーーっっ!?(この件についてはあとでまとめて文句言います)。
さて、ほとんど労せず大坂城を丸裸にする契約に、まんまとハンコをおさせた家康。総攻め、総攻めと暴れ足りない秀忠に、こーやって防衛能力をうばい、城を無防備にしてから総攻めすればほとんどコストがかかんないだろ?と。これってすごい、底意地の悪い平和主義です。
で、全権委任された女たちの一行は大坂城に帰ってきます。城もとられず、国替えもされず、淀殿を人質になどと無体もいわない。いままでどおりなにも変わりませんという、けっこうずくめの待遇のようですが、「真田丸の破却」と「堀を埋める」という、事実上の完全無力化。なんという愚かなことを…と激昂する幸村。愚かも何も、そーゆー人たちを指名して派遣したあんたが悪いんだがな。
浪人たちの待遇については特に言及がなく、それはおいおい順を追って…というのですが、そーゆーファジーな取り決めがいちばんこわいということを、世間知らずなおばさんは知りません。もう戦はないんだから堀などいらない、戦闘員も用済みじゃと。そうして、どんどん乗り込んできた徳川軍によって真田丸が破壊され、堀が埋められていくのを見てもなすすべもなく、言っても何も理解できないおばさんを責めることもできないという…。まあ、ようするに自業自得なんですが。女をバカにして、女のバカさの破壊力を甘く見てきたツケだよね。
まあ、それも自分の身から出た錆とはいえ、家族を巻き込むのは忍びない。幸村は妻の春(松岡茉優)に、子供たちを連れてすぐに城を出よ、上田にいくのだ、と指示します。そして幸村一家が夜逃げの支度を始めたところに、武装解除されても行くところのないホームレス状態の非正規のめんめんがわーっと集まってきて、「勝つためにここへ来たっていったじゃねえか、はやいとこ勝つための策を立ててくれよ」などといいます。
完全に目が泳いでいる幸村のところに、非正規連中の間を割って秀頼王子が降臨し、「望みを捨てぬ者に道は開けるとそなたは言った!」とかいって駄目押し。ってかこれは第一回で亡き昌幸が、亡き武田勝頼に言った言葉を幸村が受け売りして秀頼に言ったわけなんですが、めぐりめぐって幸村の身に帰ってきて、おかげで完全な自縄自縛です。しかも、いわれた武田勝頼の末路がどうだったか考えると、呪いのワードとしか思えませんけどねえ。
それをなにか未来への希望の一筋の光のように誤解して、問題はなに一つ解決してないのにとりあえず力技で団結し、空を見上げる秀頼王子&ザ・ローニン‘Sの末路には……嗚呼。あとラスト3回で、わたしを悲惨な結末につれてってちょーだい、というところで、以下次回。
今週のざっくりした感想
いやあ、真田太平記のファンはもう、本気で怒っていいと思う。いくらなんでもガチでバカにして、ふざけた冗談をやってるわけじゃないよね? ものすごい低レベルでバカみたいにみえるけど、それも計算上のことで、きっと最終的には救済されるんだよね…??っとわずかに期待を繋いでいたのが、思いっきり踏みにじられました。
あの、小野のお通と信之。ほんとうにあんなもの見たくなかったですよ。あんなの見た後では、真田太平記のお通と信之の美しいエピソード……特に遺髪のくだりなど……もう情けなくて情けなくて、思い出すのもつらいです。わたし、スカパーを契約してなくて時専の真田太平記再放送を見られなくて、むしろよかったと思う。
過去作を踏襲する必要はもちろんないし、リスペクトだってしたくなければしなくていいですが、バカにして悪ふざけのネタにするというのは、いったいどういう了見なんでしょうか。このドラマ、最初から大河ドラマのオールドファンをくすぐるような小ネタを連打してきましたが、はじめのうちは喜んでましたけど、一抹、「こんなことに一生懸命になってなくていいよ…」という気持ちがあって、嬉しがらせもちょっと小出しにしたらどうか、とはごく初期のころからわたくし、言っておりました。
結局そんなウケ狙いばっかり連打しすぎて、劣化も極まったということなんでしょうが、真田太平記の最高に美しいエピソードの一つを、ここまで趣味の悪いお笑いにするほど腐ってるとは思いたくなかったですね。
まあ、あと3回で救済されるかどうかわかりませんが、犬伏の陣の回で草刈j昌幸に感激しまくったのも相殺するほどですからね、よっぽどでないと黒字にはできないと思いますよ。
なんか、あと3回をのこしてこれで最終回でもいいやと思えてきましたけど、とりあえず、また来週(たぶん)お目にかかります。ではっ。