como siempre 遊人庵的日常

見たもの聞いたもの、日常の道楽などなどについて、思いつくままつらつら書いていくblogです。

真田丸 第43回

2016-11-04 21:38:14 | 過去作倉庫15~
 今週はなかなか面白かったです。大坂冬の陣を、大坂城に籠城ではなく関西一円を巻き込んでのゲリラ戦みたいにするという企画段階の話で、よく言えば「歴史のイフもの」、悪く言えばホラ話ですね。「実現しなかったこと」に対する計画や準備をこまかく描いて、「ことによったら、こう変わってたかもしれない」と妄想するのは、歴史ドラマの遊びのひとつで、けっこう面白いものです。
 まあ、それならそれでもうちょっと丁寧に、「ほんとにこうだったかもしれない」とうっかり思ってしまうくらいにうまく騙してほしかったですが。幸村のプレゼンした計画が、いくらなんでもぜんぜん成功しそうになく、机上の空論というか、引きこもりのオタクが妄想したことみたいなんですものねえ。いくら結果知ってるとはいえ、「そうなってたらどうなったかな」と想像を誘う以前のレベルなのは感心しません。
 それでも、40話すぎて尺稼ぎじゃなくちゃんと物語が動いたのは、それなりに進展じゃないでしょうか。多少カラ回ってても守りに入られるよりいいので、今週はわりと好意的に見られました。
 んでは第43回「軍議」です。

 
 今週のざっくりしたあらすじ。

 幸村(堺雅人)が大坂城にはいったことで、息子ふたりを徳川軍に出している伊豆守信之(大泉洋)には悩ましい問題が。「戦場で叔父甥が顔を合わせて殺しあうわけにはいかない。なんとか三人が合わないように、息子二人には適当に後方に下がって目立たないようにしていてほしい」と考え、その伝言を、姉の松(木村佳乃)をに依頼します。こんなことは実の姉にしか頼めない、というので。
 そりゃそうだ、そんなの身内の恥だもん。「真田太平記」の伊豆守信之が息子たちに「戦場で手心を加えるなど叔父上への非礼である」といい、全力を尽くしてたたかうよう教え諭したのとはなんというレベルのちがいだと、ドラマ違いを承知で情けなくなるような話で、こんな話聞きたくなかった…と視聴してる方も思います。が、まあ、万感を呑み込んで「戦場では互いに全力を尽くすのがお互いへの礼」という思いを共有するのには、ここまでの積み重ねがあまりにテキトーだったので、ここへきたらテキトーな身内の情に流れるしかしょうがないのでしょう。それでも、「戦場で真田の旗を見た源次郎が怯んだりしないように、全力を尽くさせてやりたい」とか妙なキレイごと言ったりして、なにが信念なのかまったくわかんねえな、この人。
 で、真田家の息子たちが出陣してる徳川の陣には、大坂城から脱北してきた片桐且元(小林隆)が家康(内野聖陽)をたよって亡命してきます。家康はその両手を握って、「そなたは何も悪くない」と慰め、忠義心をほめちぎり、そなたのような家臣がほしかった、とまでいって且元を篭絡。「大坂城には兵はどのくらいいるのか、兵糧の備蓄はどうなのか」といった機密情報を聞き出そうとします。
 ギリギリのところで、豊臣家を裏切ることができなくて、答えられない且元に、「それでいい、それでこそ豊臣の臣」とかいっておだて、答えを焦らず、じわっとプレッシャーをかけていきます。すごい貫禄です。且元は脂汗を流しながら、ついに大坂城の情報を家康に伝えます。
 このふたりの微妙な力加減の心理合戦は、短いけどすごく見ごたえがありました。甘言を弄しながら目が笑ってない家康、苦悩しながらどこかで自分の得を計算している且元と、複雑な腹の内まで微妙な目の動きで表現できる内野さん、小林さん。お二人とも上手だなー。 
 大坂城では、茶々(竹内結子)が幸村を、例の武器庫に誘い込んでいます。「わたしの愛した人はみんなこの世に未練を残して死んでしまったの」…と、お得意のトークで。そういえば前にのこ武器庫で密会したときの話のテーマも、「大切な人はみんな死んでしまう」とうことでしたっけね。
 でも、昔と違って、もうそういうことで誑しこまれる源次郎でもないのでした。茶々が後ろからべったり抱き着いてきて、「わたくしはどうなっても構いません、秀頼のことを守って」とかいっても、そっとその手をはずして「軍議の支度があるので」といって一線を引きます。
 今週は、茶々と、そして大蔵卿局(峯村リエ)がほんとに暗躍するんですが、この二人がなにを企んでいるのか、まったく謎。
 軍議にのぞんだ幸村は、大坂城に籠って籠城戦を戦おうという意見が大勢を占めるなか、ひとりだけ「出戦で」と主張します。それもスケールが大きくて、まず京都を占領して家康の首を取り、そこから関西一円を戦火に巻き込んでゲリラ戦を戦う。そうするうちに豊臣恩顧の大名で寝返るものも増えてくるので、長期戦になるほど有利になる…という壮大なもの。
 はっきり言って、壮大すぎてほかの連中にはついていけません。ほとんどゲームオタクの妄想で、どー考えても実現性に乏しく、誰も乗ってこないのも当然だと思えるんですが、幸村は「はっきりいって負ける気がしません」と、全能感に酔いしれた薬物中毒者みたいなことをいい、大ぶろしきも度が過ぎて周りのみんながドン引き…。
 といっても、一戦もしない前から「じゃ籠城で。籠城籠城」と話がどんどん決まってしまうのも、それはそれで不自然で、そもそも負けモードにはいると決まったわけでもないのに最初っから籠城しなくてもいいじゃないかと、その点だけはゲーヲタの与太話にも理がある。けど、その話にのってきたのは毛利勝永(岡本健一)だけでした。
 休憩中にちょっとくすぐってみると、ヤンキー大将の後藤又兵衛だけは「あいつはあんた(幸村)の言ってることになんでも反対したいだけ」だそうですが、長曾我部盛親(阿南健司)と明石全澄のふたりは事情が違って、よく聞くと、大野修理(今井朋彦)に因果を含まされたらしいんですね。盛親は長曾我部家の再興、全澄は天主教の布教解禁という夢があり、軍議で籠城に票を入れればその夢をかなえてあげるから、と。
「そんなこと言ったって、戦に負けたらお家再興も布教解禁もどっちもパーじゃないですか」と当たり前のことをいう幸村。そりゃそうだ!って、なに今さらそんなことに気づいてるんだ、こいつら。なんか、あまりにもお馬鹿さんだわ…。
 この単純すぎるふたりは、まあどっちでもいいですが、問題は頑なに不承知!不承知!と言い続ける後藤又兵衛のほうです。この人、再開された軍議でいきなりデカい声だして、「だれもこんな戦に勝てるなんて思ってねえっ!日の本じゅうを敵に回して勝てるわけねえじゃねえか。そうだろうみんなっっ!!」などと言いだします。
 そんな大坂城になんで又兵衛が来たのかといえば、「死に場所を探しに来たんでしょう」と幸村は看破します。男の死に場所。クーッかっこいいっっ!!…とまあ、そんなふうに言われるともう悲劇のヒーロー気分もきわまって、又兵衛は陶酔しちゃうわけですが、なんのことはない、黒田家から馘をきられたあと、手をまわされて再士官ができず、放浪してやさぐれた末に、武士らしい最期の地として大坂城に流れ着いた、と。だから又兵衛的には、勝てる戦なんかしてもらっては迷惑というわけなんですが、これって、会社とケンカして解雇されたあと職を転々とし、どんどんやさぐれて、ついに生活に窮し人生をあきらめたコースみたいで、いやに生々しくて笑えないもんがありますよね。そういうリアル・負け犬キャラをのをVシネの帝王が演じてるというシュールさが、なんか悪い冗談みたいだ。
 そーいう又兵衛に源次郎は「私は勝つためにここへ来たっ!負ける気がしないんだ。死にたい奴は出て行ってくれ!」と言い放ちます。すげえ熱血モード。この熱血モードにあてられた又兵衛は、うは・うは・うはははと劇画チックに笑いだし、よっしゃーお前の策にのった!ってなるのですが、このあたりのマンガみたいな展開は、まあどうでもいいや。カッコよかったのはこの場で「何言ってる、籠城ったら籠城なんだ。お前たちは金をもらってここにきてるんだから勝手なこと言うな。雑魚は雑魚らしく言われた通りに戦にでればいいんだ」と言い放つ織田有楽斎(井上順)です(かすれ声はあいかわらず心配だったけど)。
 ようするに、裏の方で大蔵卿の局が台本を書いていて、最初から籠城と決まってるってことなんですが、そんじゃなんのために軍議なんかしたんですかね。それなりに民主的な空気を作って、なけなしの士気をあげるためだったかもしれませんけど、この場合は逆効果になってしまいます。本音が出たなてめえコノヤロ、と非難ごうごう、さらにママ(大蔵卿)のスピーカーだった大野修理も熱血モードに感染してしまい、「有楽様。あんたが決めることじゃない、戦うのはここにいるみんなだ!そして決めるのは右大臣秀頼様ですっ!!」と言い、幸村たちのほうに合流します。なんか、いいやつじゃん修理。今井朋彦サンがいいやつを演じたのって初めて見たし、けっこう実があって素敵じゃないですか。貧乏神なんていって悪かったなあ。
 ともかく、有楽斎への反発も後押しして、もう出戦を戦う気まんまん。秀頼もすっかり感動して、「籠城なんかしない!城を出て戦おうみんな!!」と。
 そしてみんなで大坂城から、みろよ夕日がきれいだぜ、と肩を組んで空を見上げて明日を夢見る、ということになるのですが、こんなにチープな熱血スポ根マンガで締めてもらっては困るわけです。幸村なんか、そういうあんたは何がやりたいんだ、といわれて「実は私にもわからないんです」とかなんとか、例の不思議ちゃん系の微笑みなんか浮かべたりしちゃって。
 んなことやって浮かれてる間に、事態は180度逆回転。茶々が秀頼に、「出戦なんて馬鹿言うんじゃありません。籠城です。籠城しかありません。よいですね」と頭から命令し、秀頼が苦汁を飲んで(ほんとにそんな顔だった)、軍議での民主的決定をチャラにしたからです。ママにそう言われたから、という理由で。
 ここで、イケメンで聡明で生まれながらのプリンスという秀頼王子の致命的な欠点が浮上しました。マザコン。それも病的な。ママがいなければ何もできないと思いこまされて育った類の、マインドコントロール系のマザコン。
 そうして「残念な二世たちの物語」という漠然としたくくりで縛られていた真田丸に、最後の仕上げの花を添えるのでしょうか、マザコン秀頼。そしてマザコン修理という最強のコンビで。
 それより茶々をマインドコントロールする大蔵卿の局が何を企んでいるのか、と、そっちのほうが俄然ミステリアスになってきたんだけど。まさかこのおばさんが最後にラスボスとして立ちはだかるとは思ってなかったから、と意外なオチで、次回に続く。


 今週のざっくりした感想


 加藤清正とかもそうだったんだけど、この後藤又兵衛も、脳筋ヤンキー兄ちゃん系のキャラって、みんなほんと残念な描かれ方をされますよね。なんか、かわいそうなくらい頭が悪くて。
 まあ別にいいですけど、よくもわるくも、整地した場を無造作にバーーッと荒らすような哀川翔サンの存在感って、やっぱり凄いと思いました。ここまでの流れに全然調和してないですが、違和感も突き抜けるとドラマに妙なドライブ感を生むんですね。この人がアイキャッチャーになって、なんとなく散漫にダラダラしそうな「開戦前夜」を、特異な高いテンションでまとめ上げたように思います。
 あと、今週ちょっとよかったのが大野修理。この役、真田太平記では故・細川俊之さんが演じてたんだけど、ありがちな折目ただしい、正しすぎて慇懃無礼みたいな人だったのが、最後の最後で急にはじけて、私は総大将じゃないんだ、あんたらと違って派手に討ち死にすりゃいいってもんじゃないんだ、やることあるんだ、だからわかってください、みたいなことを言い放つのが非常に鮮烈でしてね。なんとなく、今回の修理にもそういう独特なポテンシャルを感じます。
 まあ、あと8回でどうなるかわかりませんけど、役者はそろった感じなので、できるだけ面白くしてくれたらいいなあと思います。ここでとっても大事な信之・幸村の兄弟のきずなが、どっかで自然消滅みたいにキレちゃって、ぜんぜん盛り上がってないという残念要素を忘れさせるくらいには。…って望みすぎか?

また来週っ!