障害年金社労士 吉野千賀 ブログ

障害年金など社労士の仕事を通して感じたこと、知って為になること、面白いことをよしの社労士事務所の代表吉野千賀が綴ります!

長期間病気やケガで働けない方の障害年金~金額編~

2011-11-09 | 社労士の障害年金
こんにちは!社労士の吉野千賀です!

秋も深まってまいりました。お元気でお過ごしですか?
私は北海道出身で寒さはあまり感じませんが、関東育ちの方は寒いのでしょうね。ダウンベストの方をちらほら見かけます。


今日は、障害年金の金額について書いてみます。

なぜかというと、障害年金のことを説明すると、第一声が「それで、いくらもらえるの? 」という現実的な質問が多いからです。

障害年金に限らず、年金は1階部分の基礎年金、2階部分の厚生年金という構成になっていることは、マスコミでもよく報道されていますから、みなさんご承知のことと思います。

それを踏まえて、読んでくださいね。

1F 障害基礎年金には1級と2級
2F 障害厚生年金には1級、2級、3級、障害手当金 があります。


1 障害基礎年金の額

一階部分の基礎年金は、20歳から60歳の日本在住の方は全員加入している部分です。

障害基礎年金の額は等級により決まっています。

1級:986,100円(年額)
2級:788,900円(年額) ← この年金額は、国民年金に40年加入した場合の老齢基礎年金と同額です!

上記に、高校生までのお子さんがいらっしゃる場合は、子の加算があります。

1人目、2人目は、227,000円
3人目は75,600円

一階部分の障害年金は、ここまでです。

配偶者の分は、障害厚生年金で加算されます。


2 障害厚生年金の額

障害年金の額は、それぞれの収入(=保険料)に応じて計算されます。

基本的な計算方法は老齢年金とほぼ同じ です。

ただし、被保険者期間の月数は、300月(25年)未満の場合は300月として計算しますから、若い世代にとっては障害年金の方が高くなります。

平成15年4月1日以降は、

平均標準報酬額 x 5.769/1000 x 被保険者期間の月数 x 1.031 x 0.981

平成15年3月31日までの期間は、

平均標準報酬額 x 7.5/1000 x 被保険者期間の月数 x 1.031 x 0.981

上記の計算は、年金事務所で出してくれます。ねんきん定期便で確認することもできますね。

その額が、障害厚生年金2級の額となります。1.25倍した額が障害厚生年金1級の額です。

そして、配偶者がいる場合は227,000円が加算されます(1・2級とも)


障害年金3級の金額は、配偶者加算のない2級の金額と同じです。ただし、1階はありませんから、2階のみです。

最低保障額が591,700円となっています。

障害手当金の金額は、3級の金額の2倍で一時金として支給されます。


3 どうやって決定するの?

障害年金の等級の決定や受け取れる年金額は、すべて提出書類を審査して決定されます

提出した人は社労士も含めて、これくらいの等級が該当して、このくらいの金額かなと予想はしますが、決定次第です。

不服がある場合は、書類で審査請求を行います。



年金については、計算方法も難しくて、簡単に説明できないのがもどかしく感じられます。

老齢年金もそうなのですが、年金だけでは生活できないのが現状です。

ですが、大きな生活支援にはなります。

個人で保険に加入する際は、公的な社会保障額をざっくり計算したうえで、足りない分を補う形で加入するのがよろしいかと思います。

どうぞ参考にしてください。


See you tomorrow!

Chika Yoshino



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なぜ、職場のメンタルヘルス対策が重要なのか?

2011-11-08 | 社労士のメンタルヘルス対策
こんにちは!社労士の吉野千賀です!

今日は立冬です。
東京は暖かですが、だんだん冬の寒さになっていきますね。
それにしても、あっという間に暗くなってしまい、一日が短く感じます。
ちょっと打ち合わせやセミナーに出席して外に出ると、もう真っ暗。
時間はまだ5時前後なのに・・・

昨日と今日は、大崎の労政会館で、東京都主催の労働セミナーに出席してきました。
両日のテーマは「職場のメンタルヘルス対策」です。

11/7は、臨床心理士の野原蓉子さんの講義でした。
野原さんは、日本産業カウンセリングセンターの代表取締役理事長で、厚生労働省の調査研究会委員でもあるそうです。
企業の産業カウンセラーとしてご活躍されています。

11/8は、小笠原六川国際総合法律事務所の小笠原耕司弁護士による「職場のメンタルヘルス対策をめぐる法的諸問題」でした。
配布資料も分厚くて内容がみっちり詰まっているセミナーでした。
理論的な説明に集中して聴いていたので、2時間でしたが、終わったらとても脳疲労を感じました。


1 うつ病による経済的損失

9月から東京都主催のメンタルヘルス対策セミナー等に、吉野は社会保険労務士として10回以上は出席しています。全て無料で、講師は弁護士・精神科医・臨床心理士・産業カウンセラーなどです。

国も東京都も、メンタルヘルス対策にかなり力を入れていることがわかります。
そして、会場も企業の人事担当者などでいつも満席です。

なぜかというと、うつ病などのメンタルヘルス不調者による経済的損失を試算すると非常に大きいのですね。

今日の小笠原弁護士の資料によると、厚生労働省の発表で「自殺やうつ病がなくなった場合、
経済的便益の推計額は単年で2兆7千億円」だそうです。

内訳は、

稼働所得の増加   1兆9028億円
労災補償給付の減少    456億円
賃金所得の増加     1094億円
失業給付の減少      187億円
生活保護給付の減少   3046億円
医療費の減少      2971億円  

単年の数字ですから、相当大きな損失ですね。

うつ病の発症原因が、すべて会社にあるわけではありません。

でも、職場でメンタルヘルス不調者と思われる社員がいたら、早期に気づいて何らかの対策をとること が会社に求められていることは確かですね。 


2 日本の傾向

欧米と比較すると、メンタルヘルス対策上の日本の傾向は、

自殺者が多い
うつ病などの休職期間が長い   → 重症化している   ことにあるのではないかと思います。

日本人元来のまじめに働く気質、会社一筋の生活、宗教観 などがあるのかもしれませんね。

それにしても、毎年の自殺者が3万人以上というのは、昨年度に交通事故で亡くなられた方が約5000人と比較しても、6倍も多いのです。

精神科医の松崎一葉先生は、「毎年何らかの理由で死亡する人の中で、自殺で亡くなる人は30人に1人です」と言っておられ、その率の高さに驚きました。

国際比較すると、自殺率の高さでは、日本は6位・韓国9位・フランス19位・中国26位・アメリカ43位・イギリス67位などで、先進国では一番の高さです。

この国際比較はWHOデータですが、
上位の国は、旧ソ連諸国や北欧などの寒い国が集中しているんですよね。
下位の国は、イスラム圏の国が集中しています。
 
いろいろな背景がありそうですが、経済も豊かで穏やかな国民性の日本が上位に入っているのは、何らかのメンタルヘルス対策が喫緊の課題ということはわかります。



これからもメンタルヘルス対策に関しては、書いていきたいと思っています。


東京や京都は、これからが紅葉の季節ですよね。
2年前に京都へ紅葉を見に出かけましたが、創り込んだお庭の真っ赤なもみじは本当に綺麗でした。
毎年行きたい!と勢い込みましたが、なかなか行けないんですね~。
近いようで遠い京都です。


See you tomorrow!

Chika Yoshino


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うつ病と障害年金

2011-11-07 | 社労士の障害年金
こんにちは!社労士の吉野千賀です!

週末はいかがお過ごしでしたか? 
少し雨も降ってくれたおかげで、風邪気味の吉野にとっては、少しノドが楽に感じましたよ。

今日は、うつ病と障害年金について書いてみます。


1 うつ病でも障害年金はもらえるの?

障害年金について説明していると、多くの方はそう聞いてきます。

あるいは、健康保険の傷病手当金の話をしているときも、「うつ病でももらえるの?」と聞かれます。

うつ病は症状の程度に個人差があり、個人でも症状の程度が毎日変化する病気です。傍目からみたら、うつ病でも社会保障は出るの?と疑問に思う方が多くいらっしゃるのでしょう。

健康保険の傷病手当金も障害年金も、この病気だから出る・出ないという判断基準でなく、病気のために働けなくなった場合の生活保障という観点から支給されるものです。

ですから、当然のことながら、うつ病が酷くて働けない状態で休職や退職せざるをえない場合には、支給されます


2 うつ病で障害年金をもらうには?

うつ病に限りませんが、障害年金の申請(請求)手続きは難しいと感じる方が多いと思います。

年金事務所へ相談に行って、すぐにできるというものではありません。何度も年金事務所へ足を運ぶ必要があり、途中であきらめてしまう方が大変多いのが現状です。

実際に揃える書類はそれなりですが、一番難しいのは、どの時点の診断書を用意するか、ということかと思われます。

私たち社労士も、そこを考えてから、書類の準備にとりかかるところです。

いずれにしても、障害年金をもらう上での大前提として、国民年金保険料をきちんと納めていること が最も重要です。会社員などの厚生年金の方は、納付忘れや未納状態が続いていたということはほとんどないかと思われますが。

初めて病院へ行った日の前日までに、その2か月前から直近1年間は納付忘れがないことをチェックしてください。

例えば、今日11月7日に病院へ初めて行ったとすると、11月6日までに2010年10月~2011年9月までの保険料を支払っていたかどうか、をチェックされます。

病院へ行った日に慌てて保険料を支払った場合、老齢年金にはもちろん反映されますが、障害年金は難しくなります。


3 診断書

障害年金申請(請求)の提出書類で、最も重要で受給の可否を分けるのは診断書です。

そうですよね。病気やケガで働けない状態の方への生活保障ですから、病気やケガの程度を審査する診断書が重要なのはあたり前ですね。

そして、診断書を書いてもらう医師にも、そこのところを説明して理解してもらうことが必要です。

単純な日付の間違い(初診日)などで、受給の可否が分かれることもあります。

私たち社労士は、病気やケガの程度は医師の判断にすべておまかせですが、日付などのチェックは必ずお願いしています。



いずれにしても、一度提出してしまった申請書類は、訂正がききません。書類不備のため、後に不服申し立てをしても却下されることが多いです。

障害年金の申請(請求)は、老齢年金のように提出すれば自動的にもらえるものではありません。審査に耐えられるような書類を提出するためにも、社会保険労務士などの専門家を活用してくださいね。



今日の午後は、東京都産業労働局が主催しているメンタルヘルス対策セミナーに出席する予定です。

多くの企業でうつ病による休職者が増加しているため、適切な対策(悪化させたり長期化させない)が喫緊の課題なので、情報収集してきまーす!

See you tomorrow!

Chika Yoshino


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安全衛生法改正の動き メンタルヘルスと受動喫煙対策

2011-11-04 | 社労士の労務管理
こんにちは!社労士の吉野千賀です!

昨日は、来年1月29日開催予定の「江東FPフォーラム」の第一回打ち合わせに参加しました。
江東FPフォーラムは、日本FP協会主催の催しで、目的は「FPの認知度アップ」です。大田FPフォーラム、大江戸FPフォーラム、など各地で同様の広報活動を行っているものです。

江東FPフォーラムでは、セミナーや無料相談会を行うことになっており、吉野は相談員として参加します。
他の相談員とも初顔合わせでしたが、金融・証券・保険・税理士・社労士・弁護士などの顔ぶれで、いろいろ教えてもらうことも多そうで楽しみになりました。


今日は、安全衛生法の改正 です。

10月24日に発表されましたが、安全衛生法の一部が改正される動きがあります。ポイントは3つありますが、一般の企業に関係ありそうなのは、「メンタルヘルス対策」と「受動喫煙防止対策」の2点かと思われます。


1 メンタルヘルス対策の充実・強化


・医師または保健師による労働者の精神的健康の状況を把握するための検査を行うこと を事業者に義務付けます

検査の結果は、検査を行った医師または保健師から労働者に直接通知されます。医師または保健師は労働者の同意を得ずに検査結果を事業者に提供することはできませんん。

・検査結果を通知された労働者が面接指導を申し出たときは、事業者は医師による面接指導を実施しなければなりません。なお、面接指導の申し出をしたことを理由に、労働者に不利益な取り扱いをすることはできません。

・事業者は、面接指導の結果、医師の意見を聴き、必要な場合には、作業の転換、労働時間の短縮など、適切な就業上の措置をしなければなりません。


一般の企業では、年に一度の定期健康診断を行うことが義務付けられています。

その一般定期健康診断の「自覚症状・他覚症状の有無の検査」に併せて、下記のようなメンタルヘルス状況のチェックを行うものです。

・ひどく疲れた
・憂鬱だ
・不安だ  など

メンタルヘルスチェックを健康診断と同時に行うことで、「気づきの促進」効果が期待でき、専門機関へ受診することにつなぎやすくする狙い があります。

企業側の対応としては、メンタルヘルスチェックを行う義務だけでなく、その後のフォローアップ体制を整えておく必要があろうかと思われます。

例えば、精神科医・専門の相談機関・公共の精神保健福祉センターなどとの連携体制を整えて、専門家のアドバイスを受けながら、必要な場合には、作業の転換、労働時間の短縮などの措置を行う必要があります。


2 受動喫煙防止対策の充実・強化

・受動喫煙防止のため、職場の全面禁煙、空間分煙を事業者に義務付け ます。

・ただし、当面の間は、飲食店や措置が困難な職場については、受動喫煙の程度を抑えるために、一定の濃度または換気の基準を守ることを義務付け ます。


ある程度の規模の企業は、職場での禁煙や分煙は行われていることと思います。全体の人数少なく喫煙者が多い職場では、まだこれからというところでしょうが、企業の規模に関係なく義務化されることとなります。


16年前に、前職の会社(外資系)に入社した時、人事部のデスクからタバコの煙がモクモクと上がっていました。

毎日、午後あたりからノドが痛くなり人事に相談したら、「喫煙者のxxさんは、タバコの煙がないと安心できない人なの。我慢してあげて」と言われてガッカリの対応でした。そのxxさんをよく観察すると、ほとんどのタバコは吸わずに、火をつけたまま灰皿においたままにしてあるんです。入社したばかりだと、それ以上は言えず、納得いかなかったことを覚えています。

その頃から比べると、10年前くらいからは分煙→禁煙となり、職場環境は少しずつ改善されていきました。

いまでは、会社を訪問してタバコの煙が充満している職場はほとんどありません。休憩室も職場とするならば、そのあたりは改善の余地がありそうです。

この改正法と同時に、病院の禁煙外来の広報などで、喫煙者の数を相対的に減らせればいいですね。



安全衛生法は、労働基準法と同じく強行法規です。義務付けられたことは実施しなければなりません。

コンプライアンス順守は、ビジネス契約するうえでのチェック項目に入れている会社も多いので、きちんと守っていきましょう。



おかげさまで風邪はかなり良くなってきました。昨夜は会合があったのですが、居酒屋は今風の個室タイプでその中の数名がチェーンスモーカーだったため、タバコの煙が充満してかなり辛かったです。それほど親しい関係ではない場合、お互いに気を使うことの大切さを身にしみて感じました。

基本的な立ち位置は、法律で義務化されたからという理由ではなく、お互いの健康を気遣うことではないかと思います。メンタルヘルス対策も受動喫煙対策も同じですね。


See you tomorrow!

Chika Yoshino


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労基署の是正勧告 不払い残業代

2011-11-02 | 社労士の労務管理
こんにちは!社労士の吉野千賀です!

すっかり風邪でダウンしてしまい、咳が止まりません。
風邪が流行っていますから、皆さんもお気をつけください。私もうつさないで早く治るように気をつけます!

さて、今日は労働基準監督署の是正勧告のお話です。

今月から厚労省も不払い残業代について、力を入れていくとのことですから、労働時間の適正な管理と未払い残業代についてはしっかり管理していきましょう。

厚労省が発表している最近の是正勧告を紹介します。


事例1 <小売業、約200人、北海道・東北>

・賃金不払残業の状況

会社は、始業・終業時刻をタイムカードにより確認しているとしていたが、監督署が会社の機械警備記録等を調査したところ、タイムカードの最終打刻者の退勤時刻と警備開始時刻に大幅な相違が生じていた。そこで、会社からの事情聴取などの結果、所定労働時間終了後に、労働者にタイムカードを打刻させた後で時間外労働を行わせていた ことが確認された。

・監督署の指導内容

監督署は、確認した賃金不払残業について是正勧告するとともに、①全社的な実態調査を行い、賃金不払残業が明らかになった場合には適正な割増賃金を支払うこと、②賃金不払残業の再発防止対策を確立し実施すること を指導した。

・事業場が講じた改善の方法

会社は、機械警備記録をセットした労働者だけでなく、全労働者に対して労働時間調査票を配布し、タイムカード打刻後の時間外労働の実績を改めて申告させ、不払になっていた割増賃金を支払う とともに、再発防止のため、本社が、全労働者に文書で賃金不払残業の存在を前提とした会社の収益などは根本的に誤っていることを宣言した。

そして、具体的対策として、①毎日の機械警備記録の開始時刻を入手して、本社で退勤の遅い店舗を把握し、その業務内容を点検する体制を確立する、②毎月、タイムカードの最終打刻時刻と警備開始時刻の相違を検証する、③本社役員による巡回指導を行うといった改善を図った。さらに、各事業所長の自覚を促すため、今後賃金不払残業を発生させない旨の誓約書を徴した。


事例2 <旅館業、約800人、関東>

・賃金不払残業の状況

会社は、始業・終業時刻をIDカードにより把握している一方で、時間外労働の時間数の把握については、労働者による自主申告書の提出によることとしており、双方の時間数に大きな相違が生じていた。

そこで、会社からの事情聴取などの結果、時間外労働手当の支払を免れようとして、管理者がその自主申告書の用紙交付を抑制していたため、時間外労働を行った労働者が適正に自己申告することができず、時間外労働手当の不払が生じていたことが確認された。

・監督署の指導内容

監督署は、確認した賃金不払残業について是正勧告するとともに、①これまでの時間外労働の実態調査を行い、賃金不払残業が明らかになった場合には適正な割増賃金を支払うこと、②始業・終業時刻はIDカードの記録で把握している状況を踏まえ、客観的な記録を基礎として確認、記録すること、今後も自己申告とする場合には、適正な申告が行われているかについて実態調査を実施することなどについて指導した。

・事業場が講じた改善の方法

会社は、IDカードにより確認した終業時刻をもとに時間外労働の実態調査を行い、不払になっていた割増賃金を支払うとともに、自己申告による時間外労働の時間数の把握を廃止した。その上で、始業・終業時刻、時間外労働等の時間数をIDカードを基礎として把握し、休憩時間を控除した時間数を実労働時間として把握・管理する手法を取り入れるといった改善を図った。


事例3(病院、約150人、中国・四国)

・賃金不払残業の状況

病院は、始業・終業時刻をタイムカードを基礎として確認することとし、時間外労働を行う場合には労働者から残業申請書を提出させることとしていたが、多くの労働者について、残業申請書による時間外労働の時間数に比べ、タイムカードにより把握している時間外労働の時間数が数時間から数十時間多かった

そこで、病院からの事情聴取などの結果、当初、資格取得や趣味のため自習で残っている者がいる等申し立てたが、1ヶ月で30時間以上の相違がある労働者も認められ、その理由だけで状況を説明することができず、残業申請とその承認の手続が確実に行われていなかったことが確認された。

・監督署の指導内容

監督署は、確認した賃金不払残業について是正勧告するとともに、労働時間管理が不十分であると判断し、①労働時間の適正な把握と②長時間労働の削減を指導した。

・事業場が講じた改善の方法

病院は、タイムカードの打刻時刻と超過勤務命令簿等から実態調査を行い、不払となっている割増賃金を支払う とともに、労働時間の管理について、①超過勤務を行う場合には、責任者が必要性や緊急性があるか等を判断し、超過勤務命令簿に業務内容や終了予定時間を記入する、②管理者は、部署により、毎日または一定期間ごとに、タイムカードの打刻時刻の記録を超過勤務命令簿と突合することにより、申請漏れがないかを点検する、③月の時間外労働は30時間までに終われるよう、業務を平準化する、部門間の協力体制を構築する等の改善を図った。


4 労基署の是正勧告があったら

上記の事例を読むと理解できると思うのですが、まず労基署の監督官は事実確認を行います。会社としては就業規則、賃金台帳、労働者名簿、タイムカードなど事実確認に必要な書類はすべて出さなければなりません

この事実確認の段階で、印象を悪くしないように、包み隠さず協力しましょう。(もう監督官が来ているので、協力するしかありません)

指導内容に対して、改善策を提出するのですが、ここでは一生懸命考えましょう。社労士などの専門家に相談するのもいいかもしれません。

そもそも、どうして労働時間管理がずさんだったのか、原因をしっかり把握したうえでの改善策を出すことが重要ですね。



もうすぐ今年も終了すると思うと、焦っていろいろやらなくては!と思ってしまいます。
あれもこれも、と思わずに的を絞って!とアドバイスを受けるのですが、どうしても捨てきれずに手を広げてしまいます。
ひとつひとつ、できるところからやっていって、結果的にまとまってできていた!というのが理想ですね。頑張りましょう!

See you tomorrow!

Chika Yoshino


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サービス残業などの労基署申告がメールで24時間可能に!

2011-11-01 | 社労士の労務管理
こんにちは!社労士の吉野千賀です!

昨日は風邪でダウンしていました。ノドと鼻の調子が悪いなぁと思っていたら、頭痛と発熱もでてきて、完全にダウンです。
気温の寒暖の差もあるし、空気も乾燥しているので、みなさんもお気をつけくださいね!

今日から11月になりました。今年も残すところあと2カ月。ラストスパートの時期ですね。

さて、厚生労働省は、11月を「労働時間適正化キャンペーン」期間とし、長時間労働やこれに伴う問題を解消するための取り組みを集中的に実施するそうです。


1「労働基準関係情報メール窓口」の設置

従来は、違法なサービス残業や長時間労働がある場合、従業員が労働基準監督署へ電話するか直接行って申告することになっていました。

でも、なかなか労基署へ足を運ぶのは、心理的にも物理的にも敷居が高いものでした。

そこで、厚生労働省は24時間受付が可能なメール窓口(「労働基準関係情報メール窓口」)を設けることになりました。

~労働基準関係情報メール窓口~
実施時期:平成23年11月1日(火)から
URL:http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/mail_madoguchi.html

「労働基準関係情報メール窓口では、職場での長時間労働、賃金不払残業(サービス残業)をはじめとする労働基準法などに関係する問題がある場合に、電子メールで情報を受け付けます。

受け付けた情報は、関係する労働基準監督署へ情報提供し、監督指導業務の参考として、役立てます。」と公表しています。

労働基準監督署が労働時間や賃金の問題について監督指導すべき事業場を的確に把握し、適切な指導を行うためには、労働者やご家族の方などから多くの情報を得ることが大変重要になっています。

メールで申告できると、かなりの数が上がってきそうですね。コンプライアンス遵守は、企業の規模に限らず、すべての企業に求められています。御社は大丈夫ですか?

サービス残業や長時間労働の管理は、労務管理の中でも最も重要です。

残業しなければならない仕事量なのか?
ダラダラ残業をさせないように、個人の能力や時間管理能力を上げるにはどうしたらいいのか?

どうしても残業しなければならない時期が定期的にある場合は、変形労働時間制度を設けると解決できる場合もあります。


2 平成22年度サービス残業の是正指導は13.5%増加

労働時間適正化キャンペーンに先立ち、厚生労働省は、下記をまとめて10月19にに発表しました。

全国の労働基準監督署が、平成22年4月から平成23年3月までの1年間に、残業に対する割増賃金が不払になっているとして労働基準法違反で是正指導した事案のうち、1企業当たり100万円以上の割増賃金が支払われた事案の状況を取りまとめました。

・是正企業数         1,386企業      (前年度比 165企業の増)
・支払われた割増賃金合計額   123億2,358万円   (同 7億2,060万円の増)
・対象労働者数       11万5,231人      (同   3,342人の増)
・支払われた割増賃金の平均額は1企業当たり889万円労働者1人当たり11万円

・割増賃金を1,000万円以上支払ったのは200企業で全体の14.4%、その合計額は88億5,305万円で全体の71.8%
・1企業での最高支払額は「3億9,409万円」(旅館業)、次いで「3億8,546万円」(卸売業)、「3億5,700万円」(電気通信工事業)の順


残業代を支払っていないとして労働基準監督署の是正指導を受け、2010年度に100万円以上の未払い残業代を支払った企業は1386社で、前年度より165社(13.5%)増えたことが20日、厚生労働省のまとめで分かりました。

厚労省は「景気が持ち直し、残業自体が増えていた影響ではないか」とみています。これまではリーマンショックの影響もあり、2年連続で減少しましたが、10年度は増加に転じました。

是正指導後に支払われた割増賃金は、1社あたり平均約889万円です。1000万円以上支払った企業も200社あります。

889万円、大きい額ですね。サービス残業は、本人が「いりません。好きで残業しているのですから」と仮に言ったとしても、会社は支払わなければなりません。残業の在り方など、根本的に考える必要があるでしょう。


3 労働時間の適正把握は重要

まず、会社がやらなければならない対策は、

・労働者の労働時間を使用者が適正に把握管理すること
・労働時間を適正に把握したら、残業に対する考え方を見直すこと   ではないか、と考えます。

労基署が勧める適正な労働時間把握方法は、タイムカードによる管理です。

個人的には、タイムカードによる管理は好きではありません。が、是正勧告対策には、タイムカードを入れざるをえないと思っています。

適正に管理した上で、超過勤務した分の賃金を支払うことになります。

なぜ、割増賃金を支払うか、というと、元々法定労働時間以上働かせることは違法です。違法に対するペナルティとして支払う、という構図です。

ところが、働く人にとっては、残業代がないと生活できないなどの事情により、自ら残業したい、という方も多くいます。

その場合は、残業の必要性を会社が判断することになります。支払う会社側も都度適正に判断して、必要な残業代のみを支払う労働時間管理が求められます。

私が以前勤めていた会社は、外資系企業で、外国人もたくさんいました。彼らはまず残業はしません。時間になったら即刻帰ります。
暗黙の了解として、ダラダラ仕事をする人は仕事ができない、と判断されてしまうので、私も常に時間をみながら、定刻に帰るように集中して仕事をしていました。

それぞれの企業で文化というか、風土というか、考え方は違うと思います。

が、共通しているのは、残業代は支払わなければならない、ということと、その前に適正な労働時間管理を行うこと。これだけはきちんとしておいて、ある日突然、労基署から指導が入っても対処できるようにしておきましょう

明日は、労基署から是正指導が入った場合の対策について書いてみます。


See you tomorrow!

Chika Yoshino


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