大劇場に続き、東京でも正直チケットの売れ行きがいいとはいえなかった公演ですが、その分熱狂的なファンとOGに支えられたのかな。
まるで同窓会?と思う程、あっちこっちでかなり高齢の方々の集団が挨拶とお話に花を咲かせ、
ショーなどでは芹香斗亜が登場すると「きゃーー」と黄色い声も。
宝塚110年の恋のうた
これは大野拓史作・演出による和物ショーです。
しかも平安時代から始まるもので、雅でした。
主人公は藤原定家(芹香斗亜)が式子内親王の死に耐えられず歌が詠めなくなった所からはじまります。
この銀橋で一人歌う歌詞がものすごく今の芹香斗亜にとってリアルな恨み節で、思わず真顔になってしまいました。
余談ですけど式子内親王と言えば愛子内親王のテーマじゃなかったっけ?
確かに彼女は有名な歌人ですが、内親王としてはなかなか不幸な人生を歩んだ人です。
この人と定家の関係には言及しなかったんだろうかと。
そこに現れたのが装束姿の八千代・・つまりか春日野八千代(桜木みなと)で衣通姫(京三紗)
と一緒になんとか定家を元気づけようと、様々な歌を聞かせる。
その曲というのが、何と宝塚歌劇で歌われた名曲の数々であり、リクエストによって決まったもののようです。
お披露目の「グランエスカリエ」も同じようなショーでしたが、あの退屈さに比べたらこちらは天下一品。ストーリー性のある所に、ごく自然に曲が登場し、きちんと題名まで教えてくれる。
「恋の辻占」とか「この恋は雲の果てまで」とか・・合間合間に式子内親王(春乃さくら)との別れが描かれるのです。
私が感動したのは、5場の「色のゆかり」で、ここは主に新選組が描かれるので、「誠の群像」と「星影の人」の場面が出てくるのですが、冒頭の天彩峰里演じる芸妓の美しいこと、色気のある事と言ったら!
私がお客で大金持ちなら延々と彼女を指名し続け、存分にお座敷遊びに興じるなあと思った程でした。
彼女の芸はもう宙組のてっぺんを飛び越えているようで。1場でも主役を抑えてその美しさと所作の素晴らしさを発揮しました。
ラストはテイカカズラに囚われる式子内親王を助ける定家。
これがテイカカズラというのですが、謡曲「定家」の演目で成就しなかった恋の執心で蔦葛となり、恋人である式子内親王の墓に絡みついたという伝説そのままに、蔦がぐるぐると式子内親王を縛り付けます。
定家はその蔦を切り「お逃げ下さい」というのですが、内親王は逃げない。
実は「恋の執心」を持っていたのは式子内親王も同じで、ここで大団円となります。
余談ですが、私もこのかずらの一種、ハツユキカズラを二度ほど植木鉢で育てようとしたんですけど、執心が足りないのか夏越ししてくれませんでした。
はたと気づいたのは・・・どういうわけか主役の芹香斗亜がわき役に見えてしまう事。
それは春乃さくらも同じで、むしろ桜木みなとと天彩峰里がとてもいいコンビとして華やかな舞台を作り出していた事です。
下級生らが演じる義経や武蔵や新選組メンバーらがとても生き生きと歌って踊り、イケメンも何人か発見。以前よりは個性を出せるような環境になったんだろうかと。
つまり、芹香斗亜と下級生の場面が別々に作られているような印象を受けたんですね。
間を取り持っているのが桜木みなとや鷹翔千空らだったって事ですかね。
このショーで最も楽しくさせてくれたのが京三紗で、年老いた衣通姫が八千代と丁々発止のギャグを見せ、結ばれた定家と式子内親王の早口の歌を最初はちゃんと現代語にしていたけど、次第いスピードが追い付かなくなって「うんうん」「そうそう」「わかるわ」とまるで少女のようにきゃっきゃっと騒ぐ様は「可愛い」の一言。
定家の事を「うちの御曹司」と呼んで、一々ほわんとする姿も本当に少女のようでした。
彼女がいなかったらこのショーの楽しさも半減した事でしょう。
ラストの大団円は「花吹雪恋吹雪」で、盛大に盛り上がりました。(ほんとあれは作品はダメダメだったけどポスターと曲は最高だったよね)
久々にショーで感動させて頂いて嬉しかったです。
RazzleDazzle
田淵大輔先生の作ですが、一言で言うと「ち~~~~~~~~~~~ぷ」の一言でしかなかったんです。
「ハリウッド最大の財産家である孤児」と呼ばれるレイモンド(芹香斗亜)
両親が亡くなり年金で暮らしているけど、お金を使いたい放題。
今回も潰れたパブを買い取って新規オープン。
彼には他にも莫大な財産があるんですがそれを受け取る条件として、アビゲイル(天彩峰里)と結婚しなくてはいけない。
レイモンドはそうしたくなくて逃げ回る。
そこに、田舎から女優を夢見て出てきたドロシー(春乃さくら)登場。
彼女は自分をだました男に一発食らわせて、逃げる。その時にバッグを落とす。
そこでアビゲイルは「あの子を落としたら諦めて上げる」と賭けを持ち出し。友人でスター俳優のトニーも巻き込んでまずは映画の撮影所に潜り込む。
そして壮大なバビロンの場面が描かれるのですが、さすがにここは素晴らしい出来で、王役の桜木みなとと、王妃の瑠風輝の迫力に「おおっ!」と思い・・・その頃主役コンビはなんとエキストラだった。
でも全然違和感ないわけですよ。
トップスターをエキストラにするって、結構やるなあと思います。
しかも壮大な場面で荷物運びしているんですからねえ。
でもそのエキストラ体験で仲間を作ったレイモンドが純粋にドロシーに惹かれ、そしてエキストラを救う為に潰れかけた撮影所を買い取って大団円。
ここでも存在感を発揮したのは桜木みなとと天彩峰里で、この二人、今後もコンビでいてくれないかなと思いました。
芹香斗亜はもう退団するのであえて何も言う事はないんですけど、しいて言えば、トップになると言う事は今まで隠していた部分が露呈される事なんだなと再認識しました。
というのも、二番手の頃の輝きに比べると、欠点ばかりが目立つようになってしまっているからです。個性はどこに?随分長い間星・花・宙と渡り歩いてきて「これぞ芹香斗亜」を作り上げられなかった事が残念ですよね。新人公演の時とあまり顔も芸風も変わっていないというか、成長してなかったんだなと。
春乃さくらは、前回は舞台度胸のある子だと認識したのですが、化粧のせいなのか、本人の顔なのかとにかく平凡すぎて、他の娘役の中に埋もれてしまうんですね。
特に歌が・・とかダンスが・・というものもないし。
だから余計に天彩峰里の個性が際立ち、欠かせない存在に見えるのでは。
瑠風輝は、今回はキワモノの女優役で、昔の男役が女装するとこんなだったよねと。
確かに桜木を支える二番手として必要な存在だとは思うけど何で組替えなのか。
背は高いし、歌唱力もあるけど、どこまで星組になじめるかはわかりません。
鷹翔千空、風色日向、亜音有星はいつも3人一緒にされていて、鷹翔千空が頭一つ出て来たようですが、ここでも個性はあまり見られません。
むしろ、ロケットをやってる子達の方が、個性的なんじゃないかな?と希望的観測。
個性って、例えば同じような役3人だった時に、それぞれ「この人はこんな性格で過去にはこんな事があって」と役作りして演技をする事で、3人3様の個性が出て来ると言う事。
エキストラでも、そうなった経緯とか野心とかある筈でみんながみんな明るくて仲間ですって感じではないと思うんですけどね。
そして芝居でも、やっぱり主要キャストと下級生が区別されているような気がして。
別々に稽古して繋ぎ合わせてる感半端なかったな。
間を取り持つ桜木みなとは大変でしたね。
でもこれで一区切りついたんじゃないかなと私は思います。
いつまでもああだこうだ言ってる下級生がいるとしたらそこまでの人間ですから。
それと衣装がチープでした。
これじゃ近いうち、OSKになるな。
歌劇団は気づいているのかしらね。