自 遊 想

ジャンルを特定しないで、その日その日に思ったことを徒然なるままに記しています。

陜川

2009年05月22日 | Weblog
 数年前に見たテレビ・ドラマ『されどわが愛・広島から韓国へ』に出て来た地名が気になっていた。被爆後遺症患者の専門医が、広島で被爆した朝鮮人の行方を追って韓国のある地方を訪問する。その地方の名前が分からなかったのだが、ある雑誌を読んでいたら、そこが陜川という所であることが分かった。陜川はハプチョンと読む。ドラマではその発音が聞き取れず、韓国からの在外研究者に「ハクチョイという所がありますか。」と訊ねたこともあった。
 記憶を辿ると、ドラマでは、陜川から約6000人の男が強制連行され、多くは広島で軍需産業に就いた。その内約4000人が被爆して亡くなった。陜川に赴いた専門医が資料館を訪れて被爆者名簿を見せてもらうと、およそ2000人の名簿しかない。「おかしいですね。後約2000人の名簿がありませんが・・・」と言うと、資料館の人が「2000人では不足ですか!? 日本人が被爆したのと朝鮮人が被爆したのとでは意味が違うんです。日本こそが我々の同族の名前を明らかにすべきではないのですか。」と応える。良心的な専門医はこの言葉の重みに気がつく。
 実はこの専門医の父親が朝鮮総督府の役人で、陜川で朝鮮人連行の任についていたことをも、彼は明白にしたかったのだが、父親との確執で真相が分からず、父親が留めるのを振り切って陜川に来たのであった。途中、朝鮮総督府を訪れ、帰途に就こうとした時、父親が土下座して「私は朝鮮総督府の役人をしておりました。」と告白する姿を見る。そしてドラマは終わる。
 このドラマのすべてがフィクションではないことが判明した。