古本屋で『ドリトル先生物語』(全十三巻)を見つけた。相当の年代物であるが、比較的安価であった。少年の頃、縮刷版で読んだ記憶がある。買おうかどうか迷ったが、今度にしようと何故か思った。今日買っても、当分は読まないことが分かっているからで、また当分の間売れる心配がないと思ったからである。
「ドリトル」という活字を見て、あ、そうかと気がつきました。今頃気がつくのは遅すぎるのですが、「ドリトル」というのは「do little」ではないかと。そうだとすると、この物語の内容もタイトルに合うのではないかと思った。
Do little先生はほとんど何もしない人というか、控えめに生きる人だ。控えめに!というのが、昔も今も求められているのではないかと僕は考えた。
作者のロフティングは戦場で弾丸に当たって死んでいく人や負傷した人を見てきた人物である。立ち読みしたくだりに次のような話があった。
戦争には馬たちも連れられる。馬も死んだり負傷したりするが、人間と違って馬は負傷したら、その場で射殺されてしまう。古来戦争に馬や牛や、その他幾つかの動物が駆り出されるが、彼ら動物は役に立たなくなれば捨てられか、殺される。それが戦争というものだ。
しかし作者は、こんなおかしなことがあっていい訳ではないと考えた人だった。馬を治療する医者が必要だ、と戦争で馬たちのために心を痛めた人だった。なにより、人間のためにも動物のためにも、戦争が地上からなくならなければならないと痛感した人だった。そういう思いから生まれたのが『ドリトル先生物語』であった。
何をするにせよ、自分の分をわきまえて控えめに! というモットーを掲げるのが良いとも思った。