自 遊 想

ジャンルを特定しないで、その日その日に思ったことを徒然なるままに記しています。

ショパン「二十四の前奏曲」

2009年05月01日 | Weblog
 さて、五月。世間では、特に若者の間では五月病というのがあるらしいが、僕は四月より五月の方が余程好きだ。五月にはショパンの「二十四の前奏曲」が似合うからだ。と言っても、これは僕の気分でしかないのだけれど。とりわけ第8番嬰ヘ短調が五月に似合う。3部の歌謡形式で、主旋律は全曲を通じて右手親指で弾かれる。32音符の音群がそれを美しく装飾する。音型の独創性と和声の変化。見事に五月の風を表出していると思う。何度聴いても飽きることはない。
 24曲は、ハ長調からニ短調まで、24の異なる調性で作曲され、その配列は5度循環(つまり第1曲がハ長調、第2番がその関係短調のイ短調であるため、第3番はハ長調より5度上のト長調、第4番はその関係短調のホ短調となり、更にその後は同じように5度ずつ上の調子が採用される方法)に依って全24曲が配置されている。だから、各々は全体としての構成からみて、所を得て相互の調和を保っている。各々は断片的ではあるが、内面的楽想は断片でも未完成でもなく、むしろ完全に練磨されている。全24曲をまとめて聴くのが妥当であろう。そこにはショパンの哀愁と憧れと喜びと、ポーランド国民としての悲憤までもが表現されている。
 僕はショパンが好きだが、特に「二十四の前奏曲」が好きだ。僕の五月はショパンとともに始まった。