今回の尖閣諸島の問題で、中国は外交戦に勝ったと言われています。日本を経済的に痛めつけて、中国の面子を保ち、しかも尖閣諸島の固有の領土権を国際的に宣言したのです。日本は巡視艇の守りによってかろうじて実効支配の形をとり続けました。しかし日本人の常住していない離れ島は何時、中国側から占領されても抵抗も出来ない危うい状態です。
何故、外交戦で日本が敗れたのか?その理由は民主党政権が相手国、中国の外交上の強みと、日本の弱みを知っていなかったからです。
国際的に見ると中国政府は経済力という外交上の強みを持っています。まだまだ地方の農民は貧しくても、中国政府は多量のアメリカの国債を買い入れ、更にEUの赤字国、ギリシャの国債も買い始めました。これでは、中国がチベットやウイグル地域を占領していても、欧米諸国はあまり露骨な外交上の圧力をかけることが出来ません。
日本は己の弱み、すなわち負の遺産を忘れて外交を進めます。負の遺産とは日清戦争以来、日本が中国を侵略し、残虐行為を続けて来た事実です。中国人も我々と同じ人間ですからその怨念は決して忘れません。我々が原爆投下に対してアメリカを永久に許さないのと全く同じです。
日本と中国は友好平和条約を交わしたので過去は流せたと思うのが日本人の浅墓さです。表面的には水に流しても一旦緩急今回のような問題が起きると、中国政府は人民の日本へ対する怨念を最大限に利用するのです。従って中国は官民一致団結して日本と争います。この負の遺産は未来永劫に日本が背負わなければならない弱みです。政府と国民が一致団結すると外交的に非常に有利な戦いを進めることが出来るのです。
中国が負の遺産を上手に利用するのは日本へ対する場合だけではありません。清時代から中国はイギリス、ポルトガル、フランス、アメリカに租借地や租界を強制的に取られ、彼らの植民地主義の犠牲になってきた歴史を有しています。この歴史的事実によって、欧米諸国は中国へ対して莫大な負の遺産を持っていることになります。
同じように植民地支配の怨念を持っているのはアフリカ諸国です。アフリカ諸国と連帯感情を共有しやすいのです。従って中国はアフリカ諸国へ進出し、経済援助をしてきたのです。冷戦の間はソ連と欧米へ対抗するために、中国はアフリカ外交を推進して来ました。冷戦終了後はEUやNATO軍事同盟へ少しでも影響力を強めるために続けているのです。
冷戦が厳しかった頃に北京へ行きましたが、アフリカからの黒人留学生が北京の風紀を乱すと中国人が騒いでいるのを見聞したことが有ります。その時、中国政府はソ連がアフリカへ浸透しているのを防ぐためだと言って、アフリカからの留学生の受け入れを正当化していました。
このように中国の外交戦では、欧米諸国が嘗ての植民地国故に残した負の遺産を実に巧みに、そして有効に利用しているのです。そのような事を無視しがちな民主党政権を中国人は理解が浅いと冷ややかに見下し、組し易いと判断しています。中国政府のある幹部が「自民党のほうが理解の仕方が深い」と言ったのは彼等の本音です。
「敵を知り、己を知れば百戦危ふからず」とは中国人の考え方です。これは武力を用いた戦争だけでなく、外交戦でも同じなのです。民主党の政治家は理想論だけに目が行って、人間の負の情念を軽視し勝ちです。その結果、中国が外交上で日本の優位に立ってしまうのです。
皆様はどのようにお考えでしょうか?
今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。藤山杜人