外国でビジネスを展開する場合色々な方法がある。ビジネスの種類によってもその始め方や展開の方法が違う。しかし、どんな種類のビジネスでも事前調査が重要である。事前調査を正確に実行するには現地の人と契約してインターネットで、日本からの「指示」と現地からの「報告書」の交換の積み重ねによって精度の高い事前調査が出来る。
私はアメリカの国防省の基礎研究部門のウオルフ博士と契約して日本の基礎研究の実態調査を行ったことがある。その時、インターネットを用いて外国の実態調査はどうすれば成功するか?の秘訣を学んだ。その秘訣とは次の4項目である。
(1)初めはあまり細かな指示を出さず、現地から来る短い報告書を徹底的に褒め上げる。
(2)現地の調査担当者の個人的な意見や感想を重視すると言ってあげる。
(3)次第に調査の範囲や取材方法を具体的に、厳しく指示する。
(4)ある時点で現地を訪問し、調査担当者と2人だけで調査先を訪問し、取材する。その旅行中に、2人の間の人間的信頼を築く。
以下は1998年から2000年の3年間の私の経験です。ご参考になれば嬉しく思います。
◎アメリカ流情報の分析の仕方
私は米政府が莫大な研究費を出している役所の仕事を三年契約でしたことがある。あるプロジェクトに関する日本の研究の現状を取材してメールで報告書を毎月提出する仕事だ。
大学や民間機関の卓越した研究者から話を聞き、その報告書をその研究者に送って間違いを訂正してもらう。了解を取った後に、米国の研究プロジェクト・マネージャーのウオルフ博士へ報告書を送る(日本のことを自慢したいので研究者を高く評価した報告書を送っていた)。マネージャーのウオルフ博士は直ぐ返事をくれ、報告書の内容を褒める。あまり褒めるので、私も本気で仕事へ打ち込んだ。
以下、ウオルフ博士が来日した際のやり取り。「こちらから送る報告書をなぜ褒めるのですか?」「米国では外部の人に働いてもらう時に褒めるのが普通で、特に変わったことではない」「私も訪問先を無責任にいろいろ褒めているが、そんな報告書でも役に立ちますか?」「すごく役に立っている。君の褒め方にはいくつかのパターンがあって、研究のレベルや内容が自ずと見えてくる。君は最後に感想を一、二行書いて来るが、それが報告書全体の半分以上の価値になっている」
@取材のときの質問の順序が重要!
日本の企業でも情報収集に外部の人を使う。私も日本の会社の仕事を何度もしたことがあるが、日本の会社は外部の人間の使い方を知らない。硬い表紙を付けた分厚い報告書の体裁を気にし過ぎて、調査中の感想や細切れの評価・意見の活用方法が分かっていない。米国ではその分析と活用方法が確立していて、外部の人間の能力を120%引き出すノウハウが存在する。
日本では専門外の人が高度な研究者を取材しても、内容が理解できないので無駄と考えられている。自分が一度も研究したことがない分野の、しかも先端的な研究をしている人を訪問しても、報告書が書けるだろうか、と。
ウオルフ博士は「質問の順序が重要」と言う。
① 素人に研究内容を説明してください。自分の研究のどこが独創的ですか。
② 競争相手を国内と外国に分けてそれぞれ三人挙げてください。
③ その六人の研究者はどうして競争者と見なしていますか。
④ 現在している研究はいつ止めますか。
⑤ 現在している研究の実用的な価値をどう考えていますか。
「先ず五つの質問をして、全体の答えを六十分でお願いしますと言いなさい」「①が説明できなかったら、それ以上取材する必要はない」「これまで付き合ってきた日本人の優秀な研究者でも、不思議と④と⑤に答えられない人が多い。なぜそうなのか、君の意見を送ってくれ」
④と⑤は難問であり、三年間の契約期間、自分も訪問先の研究者も苦しんだ。日米の研究に対する価値観の相違を浮き彫りにしている質問内容ではないだろうか。話はこれでお終いです。この経験から冒頭の4項目の秘訣を導きだしました。
ビジネスで外国人を使っている皆様はいかがお考えでしょうか?ご感想をお聞かせ頂ければ嬉しくおもいます。(終わり)