子羊の「軽い」夕食のあくる日のことに移る。
このカップルのアパルトマンから100メートルも行かないところで、大きな骨董市が開かれていた。
その日に合わせて泊まりに来たわけではなく、たまたま市の開かれている時に運よく行ったわけだが、後で調べてみると[
Porte de Vanves(ポルト・ドゥ・ヴァンヴ)の骨董市は、パリでもクリニャンクールに次ぐ有名な市であった。
やはり日本の市とは並べてある物が当然違っていて、フランスの古き時代の暮らしが判るようなものも沢山あった。
この市を目指してやってきたらしい若い女性の日本人観光客も見かけた。
見て行く中で、一つだけ目についたものがあった。
それはのソーサー付きのデミタスのコーヒーカップで、なかなか綺麗だったが、他にもほしい物が現れるかもしれないと、その時は買わずに通り越した。
あちこち見たあと途中で折り返し、引き返してきて「さてあのカップは?」とみるともう無かった。「縁がなかったんだ」と諦め彼らと一緒に家に戻った。
昼食はマグロだったが、大きな塊の外側に、いろんな香辛料を一杯振りかけ、タタキみたいに焼いてあった。
どこから手に入れてくれたのか、わさびも醤油もあるではないか。
欲を言えばタタキのようにしないで、かつ香辛料も振りかけないで、わさびと醤油だけで刺身として食べたかったが、そこは郷に入っては郷に従えで黙
って有り難く頂いた。
食事後、骨董市で見たコーヒーカップが、帰りにもう無かったと話した。
すると彼女は「何故なかったか知っている。」という。「えぇ?」と私
そして何と、どこからか例のカップを持ってきて、私へのプレゼントだと差し出した。
私が熱心にそのカップを見ながら結局買わなかったのを見ていて、二人でプレゼントしようと決めたらしい。
このサプライズは私を甚く感激させた。今もその二つのカップは我が家の棚の奥に宝物として大切に仕舞ってある。
彼等は今度はもっと長く泊まりに来てほしいと言ってくれた。その上、次の泊まり予定の別の友人宅まで車で送ってくれたのだった。
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