阪口直人の「心にかける橋」

衆議院議員としての政治活動や、専門分野の平和構築活動、また、趣味や日常生活についてもメッセージを発信します。

パワーゲームに翻弄される国民の気持ち

2006年08月23日 23時23分17秒 | 政治
 Ayuさん、こんにちは。いつもコメントありがとうございます。

 レバノンにおけるヒズボラとイスラエルの停戦について、私もその背景を読み解く努力をしています。状況は単純ではなく、真相はよくわかりません。でも、多くのレバノンの人々は、停戦には一時的には安堵を感じながらも、戦争の再開は規定事実と考えていて、海外への脱出も含めた様々な対応を考えているようです。

 Christianeさんからもメールが届きました。山中に避難し様々な情報収集とメッセージを発する以外何もできなかった停戦前とは違い、今は戦争によって破壊された生活の復旧と、将来への準備に多忙な日々を過ごしているようです。

 彼女がベイルートの友人の家を訪ねたところ、激しい空爆で周辺は全て瓦礫の山になっていました。崩壊した建物に埋もれた死体のにおいが激烈で、さらに、様々な有毒物質を含んだ砂塵が舞い上がり、防毒マスクなしには過ごせなかったそうです。自分の国が周辺国、そして超大国に翻弄されこのような状況になってしまったことを嘆くメールは痛々しいばかりでした。

 また、そんな時にもイスラエル軍の戦闘機が、頭上近くを旋回していたとのこと。今回の国連安保理1701決議は、イスラエル強硬派にとって受け入れ難いものになりました。多くのレバノン人は、これがさらなる戦闘の引き金になると感じているようです。 

 今回の戦争によって最も大きな被害を被ったのはレバノンの人達ですが、ヒズボラと国際世論、そして米国がイスラエルを政治的敗北に追い込んだように思えます。当初の国連決議案は国連軍(およびレバノン軍)がヒズボラを武装解除する権限が付与される内容でしたが、最終的には「米国の不可解な譲歩」で国連の武力行使権が削除されたからです。これではヒズボラの武装解除は不可能で、イスラエルにとって、攻撃の「成果」も撤退の意味も否定された内容に思えます。

 現地の声から推測すると、米国の中枢には、ヒズボラの背後にあるイランを攻撃するするため、この戦争がイランを巻き込んで泥沼化することを望んでいるグループと、それ以外の方法を模索しているグループがあるようです。それぞれのグループが思惑に沿ったストーリーを作るべく、今回の戦争の行方を巡ってせめぎ合っているのでしょうか。

 私はアフガニスタン大統領選挙の監視活動に参加し、イランのアフガン難民キャンプで活動したことがあります。通訳として活動を共にしたイランの人々は、近い将来米国が攻撃してくると覚悟を決めているようでした。米国によるアフガン、そしてイラクへの攻撃も、イランとの最終決戦に備え、攻撃の足場を作ることが目的だと口を揃えました。

 「表向きの理由はその時に作るんだろうけど、本当の理由はひとつだ」「イランには石油があるからさ」

 いつも日本を賞賛し、ありったけの歓待と友情で活動をサポートしてくれた彼らは私に詰め寄りました。「アメリカの攻撃に無条件で賛成する首相はごめんだ。爆撃の下には、俺と家族がいることを忘れないでくれ・・・」


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5 コメント

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Unknown (MW)
2006-08-24 09:14:02


頑張っている人や、弱い立場の人たちに対するやさしい眼差しと、不正や不条理に対する毅然とした態度。そのギャップも阪口さんの魅力だと思います。現場の声やご自分の経験に基づく意見には、読んでいて心が動かされます。
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「本質」はどこにあるのか (阪口直人)
2006-08-25 03:51:44


 コメント、ありがとうございます。



 物事は何でも、それを見る立場、または角度によって見え方は変わると思います。野球の試合のストライクの判定も、阪神ファンと讀賣ファンでは全く違うでしょう。レバノンの戦争も、イスラエルの指導者、ヒズボラの戦士、また、レバノンの国民と違って見えると思います。



 では、より「本質」に近い立場で物事を見るにはどうするべきか。できる限り「当事者」または「現場」に近い場所から見るべきでしょう。必ずしもその場所に立てるとは限りません。また、現場にいることで全体像が見えにくくなることもあるでしょう。しかし、戦争が、どちらにとってより切実かと言えば、自分の政治権力のために攻撃することを指示する人、また、そんな人に気に入られようとプレスリーの物まねをしている人よりも、ミサイルが自分たちの生活の場に落ちてくる音を聞いている人、そして、その爆撃によって殺される人だと思います。



 私自身に戦争経験があるわけではありません。しかし、
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「本質」はどこにあるのか(続き) (阪口直人)
2006-08-25 03:58:47


 (続く)



 私自身に戦争(従軍)経験があるわけではありません。しかし、「平和構築」という専門分野の活動中、爆撃や地雷、また銃撃などを経験した立場から、そんな恐怖に脅える人たちの心を心として状況を見ること、それは自分が果たすべき役割、そして使命だと思っています。

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Unknown (Ayu)
2006-09-01 22:21:18
I have never been entering any battlefield (or war!) in its real term, as far as I recall. But I have been in the middle of riot in Jakarta back in 1998, and though it\'s any comparison with the magnitude a war may have, I can imagine the fear. and I do with all heart hope that war will not happen anywhere in the face of the earth.



But...it seems difficult, isn\'t it?



When I look at Iran, it was the same feeling like looking at Iraq when Saddam still ruling, facing Bush\'s threat to attack.

Looking at the situation now in the Middle East, it\'s undeniably complex, but in my opinion, it matched. Regretfully.



Israeli\'s attack will not be happening without US\'s blessings, so I believe. As it happened for Lebanon (aimed for Hezbollah, they claimed), it is deeply regretted, but nevertheless shows a pattern, so I see, as Middle East seem like forming a kind of new conflict issue within itself about two major currents in Moslem religion existing in Mid East (maybe old issue, but have just broke up after Saddam\'s power collapsed...).



But to steal in the middle of fire, is not really a noble thing to do...isn\'t it. As does making use of religious confrontation between Sunni and Syiah to freely access Iran (oil?), and win public support for its claim that it fights \"evil\" and diminish \"terrorist group\".



If war really happening (and it already..), then how pity, that such large cost of lives should pay for domestic crave for power.



I believe that humanity worth much more than just that.



If only we can do something about it...

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「民主主義」の危うさ (阪口直人)
2006-09-03 20:34:34


 先日、アラバマ州出身の23歳の黒人女性と話をする機会がありました。アラバマ州は典型的な「ディープサウス」。政治的、社会的に非常に保守的で黒人の彼女は様々な差別を感じながら生活してきたそうです。



 米国大統領は、各国への影響力の大きさから、実質世界の大統領と言えるかもしれません。しかし、アラバマ州に住む人々の多くがそうであるように、米国の政策によって左右される世界の動向に全く関心がない人々、あるいは政権の巧妙なプロパガンダによって容易に洗脳されてしまう人々が米国大統領を選出することの危うさに、彼女は大きな危機感を持っているようでした。



 そんな米国の「テロとの闘い」によって生まれた「中東の民主化」も、選挙によってシーア派優位の社会を作り出し、社会のバランスが崩れる様相を見せています。それが新たな紛争の要因になっているようです。



 民主主義という制度は、現有の制度の中ではもっとも優れたものだとは思います。しかし、それが、もっとも優れた社会を生み出すとは限らないこと、そして「民主主義」の外枠だけでなく、中身を充実させなければ健全に機能しないこと、改めて感じます。



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