『抵抗の手引き書』とともにトランプ政権と闘う米国の草の根政治グループから学ぶ
今、米国に来ています。目的は、今、米国でトランプ政権の様々な差別的で独善的な政策に闘いを挑むことを目的に生まれ、ダイナミックに日々進化する市民による草の根からの政治活動について広くヒアリングを行って理解を深めること。さらにそれを安倍政権に抵抗する政治勢力の活動に組み入れていくことです。
私がこのような問題意識を持つに至った直接の理由は、2016年3月に米国ワシントンDCでミャンマーの民主化支援のあり方について講演をしたことがきっかけです。ちょうど民主党の大統領選挙予備選が行われていて、交流会に参加してくださった方々にはバーニー・サンダース大統領候補の若い支援者が沢山いました。草の根からの政治を掲げ、徹底した平和主義、政策を多額の献金で買おうとする大企業の影響の排除、また、公立大学の無償化など、フェアな社会の実現、社会的正義の実現を目指す姿勢は若者たちの圧倒的な支持を得ていました。
ワシントンで感じたバーニー・サンダース現象と、私たちが学ぶべきこと(阪口直人ブログ『心にかける橋』)
ワシントンで講演-日米協力によるミャンマーへの民主化支援を提言(阪口直人ブログ『心にかける橋』)
民主党の大統領予備選は結果的にはヒラリー・クリントンが勝利するのですが、大企業からの献金を拒否し、草の根活動をともに行う人々によって支えられるサンダース候補の闘い方は、私自身が目指している政治と重なりました。また、彼の言葉、そして生き方自体が米国市民の政治的価値観に鮮烈な影響を与えていることを実感しました。
その後、トランプ政権が誕生し、差別的な政策が次々に実行されようとする中で、バーニー・サンダースの政治革命に影響を受けた人々が中心になって立ち上がり、政策の実現を阻止するため様々な草の根の抵抗運動をしています。例えば、オバマケア(医療保険制度改革)の廃止はトランプ大統領の公約の目玉であり、2017年1月20日の大統領就任直後に大統領令に署名しましたが、上院、下院ともに共和党が握っているにもかかわらず一向に進まない状況が続き、最終的には共和党上院議員の一部が造反し、オバマケア見直しは頓挫しました。なぜ上手くいかなかったのか、それはこの法案に反対する市民たちが執拗に抵抗し、共和党議員の考え方を改めさせたからです。
これらのプロセスについて草の根民主主義の視点で研究しているのがワシントンDCのアメリカン大学で教鞭を執る芦澤久仁子氏です。私自身は衆議院議員だった2011年から、自分自身が研究テーマにしてきた世界の民主主義の現状と米国の草の根政治活動について芦澤氏と意見交換をする機会を毎年作ってきました。米国の草の根政治活動について様々な情報を頂く中で、この運動の広がりの大きさ、草の根と科学的分析を融合させた手法に目を奪われました。自分自身が所属していた民進党に対しても、様々な議員を通してこれらのグループと連携し、手法を学ぶべきと再三訴えてきました。
米国の草の根政治活動から学んだ問題意識については何度かに分けて書いていきたいと思いますが、今回は、権力と闘う術としての『抵抗の手引き書』について紹介したいと思います。
抵抗の手引き書―不利な状況でも選挙に勝たせるために市民は何をすべきか
私が今回着目した『抵抗の手引き書』については芦澤氏が朝日新聞の論座(2017年11月)にも投稿しています。30代の元連邦議会スタッフが中心って設立した、インディビジブル(Indivisible)というグループが作成しました。2016年12月、トランプ大統領の就任が決まった直後、これから議会に提案されていく政策の実施をいかに阻止するか、市民行動マニュアルとして作ったものです。民主主義と反する方法で実施されようとする政策を阻止するため、自分たちが応援する候補者を『選挙に勝たせる』ことに絞ったものです。
インディビジブルガイドと名付けてツイッターにアップしたところ大反響を呼び、数日間で数十万の人々にシェアされたとのことです。また、これに反応した市民たちがそれぞれの地元でグループを立ち上げ、その数は瞬く間に全米6000に迫る勢いになったとのことです。
元連邦議員スタッフが書いただけあり、議員心理を見透かした、具体的でわかりやすいもものになっています。
再選のためには有権者に良い人、できる人と思われたい。そのイメージを壊されることを恐れる議員心理を逆手に取り、地元支援者が集まるタウンホールミーティングなどを狙い撃ちにして、彼らが賛成しようとしている政策の問題点を徹底的に質問攻めにする。オバマケア廃止法案への支持を表明していた議員がしどろもどろになる様子をSNSやYouTubeに拡散し、地元メディアを通して全国に拡散していく。このような形でプレッシャーを受けた共和党議員の一部が当初のオバマケア廃止法案に反対し、議決プロセスは混迷。その後の代替案も二転三転して、上院での否決に至ったのです。
この手法自体は決して新しいものとは思えません。実際に共和党のティーパーティー派がオバマ大統領の政策実現に抵抗したのも同様の方法だったそうです。しかし、多くの人がアクセスできる26ページのわかりやすいマニュアルを作り、市民が連携し、草の根の手法で執拗に繰り返し、またSNSの力を最大限活用することによってこれまでとは違った効果を生み出したそうです。その根底にあるのはトランプ大統領によって破壊されようとしている米国の民主主義に対する危機感でしょう。今回、米国各地でヒアリングした多くの人々も、このような抵抗の有効性について、手応えを感じているようです。
抵抗の手引き書を手に行動する彼らの大きなモティベーションは、11月の中間選挙で民主党による形勢の逆転を果たし、様々なトランプ大統領の政策の実現を阻止すること。そのためには激戦区での勝利とともに、共和党の強い地盤で健闘するマイノリティー候補などへの応援にもさらに力を入れていくようです。
日本では1週間後に沖縄知事選挙が行われます。沖縄の誇り、沖縄の特性を活かした自立した経済、自立した地域を作っていく。札ビラで釣られ脅される、中央服従、基地依存経済をストップする。そのためには米国の市民が活用する『抵抗の手引き書』は沖縄知事選挙、そして今後の日本の選挙にも応用できる点が沢山あるのではないでしょうか。
今回の訪米中、ジョージ・ワシントン大学で立憲民主党・枝野代表の講演があると聞き、参加しました。主に日米関係がテーマでしたが、健全な日米の関係は日本の平和と繁栄の前提であること、米国との信頼関係をさらに構築するためにこそ、基地問題において沖縄の民意を大切にすること、また日米地位協定の不平等・不公正を正すべきとの考えにはとても共感しました。質疑応答の中で、米国の草の根政治グループとの連携・交流や、民主主義を守るために活動する世界各国の市民グループとの連携について質問したところ、大変肯定的な返答でした。米国の市民たちが日々生み出している、草の根の手法と科学的な分析を駆使した権力との闘い。安倍政権と対峙していくためには、この方法を日本に合った形に応用し進化させるしかないと思います。
今、米国に来ています。目的は、今、米国でトランプ政権の様々な差別的で独善的な政策に闘いを挑むことを目的に生まれ、ダイナミックに日々進化する市民による草の根からの政治活動について広くヒアリングを行って理解を深めること。さらにそれを安倍政権に抵抗する政治勢力の活動に組み入れていくことです。
私がこのような問題意識を持つに至った直接の理由は、2016年3月に米国ワシントンDCでミャンマーの民主化支援のあり方について講演をしたことがきっかけです。ちょうど民主党の大統領選挙予備選が行われていて、交流会に参加してくださった方々にはバーニー・サンダース大統領候補の若い支援者が沢山いました。草の根からの政治を掲げ、徹底した平和主義、政策を多額の献金で買おうとする大企業の影響の排除、また、公立大学の無償化など、フェアな社会の実現、社会的正義の実現を目指す姿勢は若者たちの圧倒的な支持を得ていました。
ワシントンで感じたバーニー・サンダース現象と、私たちが学ぶべきこと(阪口直人ブログ『心にかける橋』)
ワシントンで講演-日米協力によるミャンマーへの民主化支援を提言(阪口直人ブログ『心にかける橋』)
民主党の大統領予備選は結果的にはヒラリー・クリントンが勝利するのですが、大企業からの献金を拒否し、草の根活動をともに行う人々によって支えられるサンダース候補の闘い方は、私自身が目指している政治と重なりました。また、彼の言葉、そして生き方自体が米国市民の政治的価値観に鮮烈な影響を与えていることを実感しました。
その後、トランプ政権が誕生し、差別的な政策が次々に実行されようとする中で、バーニー・サンダースの政治革命に影響を受けた人々が中心になって立ち上がり、政策の実現を阻止するため様々な草の根の抵抗運動をしています。例えば、オバマケア(医療保険制度改革)の廃止はトランプ大統領の公約の目玉であり、2017年1月20日の大統領就任直後に大統領令に署名しましたが、上院、下院ともに共和党が握っているにもかかわらず一向に進まない状況が続き、最終的には共和党上院議員の一部が造反し、オバマケア見直しは頓挫しました。なぜ上手くいかなかったのか、それはこの法案に反対する市民たちが執拗に抵抗し、共和党議員の考え方を改めさせたからです。
これらのプロセスについて草の根民主主義の視点で研究しているのがワシントンDCのアメリカン大学で教鞭を執る芦澤久仁子氏です。私自身は衆議院議員だった2011年から、自分自身が研究テーマにしてきた世界の民主主義の現状と米国の草の根政治活動について芦澤氏と意見交換をする機会を毎年作ってきました。米国の草の根政治活動について様々な情報を頂く中で、この運動の広がりの大きさ、草の根と科学的分析を融合させた手法に目を奪われました。自分自身が所属していた民進党に対しても、様々な議員を通してこれらのグループと連携し、手法を学ぶべきと再三訴えてきました。
米国の草の根政治活動から学んだ問題意識については何度かに分けて書いていきたいと思いますが、今回は、権力と闘う術としての『抵抗の手引き書』について紹介したいと思います。
抵抗の手引き書―不利な状況でも選挙に勝たせるために市民は何をすべきか
私が今回着目した『抵抗の手引き書』については芦澤氏が朝日新聞の論座(2017年11月)にも投稿しています。30代の元連邦議会スタッフが中心って設立した、インディビジブル(Indivisible)というグループが作成しました。2016年12月、トランプ大統領の就任が決まった直後、これから議会に提案されていく政策の実施をいかに阻止するか、市民行動マニュアルとして作ったものです。民主主義と反する方法で実施されようとする政策を阻止するため、自分たちが応援する候補者を『選挙に勝たせる』ことに絞ったものです。
インディビジブルガイドと名付けてツイッターにアップしたところ大反響を呼び、数日間で数十万の人々にシェアされたとのことです。また、これに反応した市民たちがそれぞれの地元でグループを立ち上げ、その数は瞬く間に全米6000に迫る勢いになったとのことです。
元連邦議員スタッフが書いただけあり、議員心理を見透かした、具体的でわかりやすいもものになっています。
再選のためには有権者に良い人、できる人と思われたい。そのイメージを壊されることを恐れる議員心理を逆手に取り、地元支援者が集まるタウンホールミーティングなどを狙い撃ちにして、彼らが賛成しようとしている政策の問題点を徹底的に質問攻めにする。オバマケア廃止法案への支持を表明していた議員がしどろもどろになる様子をSNSやYouTubeに拡散し、地元メディアを通して全国に拡散していく。このような形でプレッシャーを受けた共和党議員の一部が当初のオバマケア廃止法案に反対し、議決プロセスは混迷。その後の代替案も二転三転して、上院での否決に至ったのです。
この手法自体は決して新しいものとは思えません。実際に共和党のティーパーティー派がオバマ大統領の政策実現に抵抗したのも同様の方法だったそうです。しかし、多くの人がアクセスできる26ページのわかりやすいマニュアルを作り、市民が連携し、草の根の手法で執拗に繰り返し、またSNSの力を最大限活用することによってこれまでとは違った効果を生み出したそうです。その根底にあるのはトランプ大統領によって破壊されようとしている米国の民主主義に対する危機感でしょう。今回、米国各地でヒアリングした多くの人々も、このような抵抗の有効性について、手応えを感じているようです。
抵抗の手引き書を手に行動する彼らの大きなモティベーションは、11月の中間選挙で民主党による形勢の逆転を果たし、様々なトランプ大統領の政策の実現を阻止すること。そのためには激戦区での勝利とともに、共和党の強い地盤で健闘するマイノリティー候補などへの応援にもさらに力を入れていくようです。
日本では1週間後に沖縄知事選挙が行われます。沖縄の誇り、沖縄の特性を活かした自立した経済、自立した地域を作っていく。札ビラで釣られ脅される、中央服従、基地依存経済をストップする。そのためには米国の市民が活用する『抵抗の手引き書』は沖縄知事選挙、そして今後の日本の選挙にも応用できる点が沢山あるのではないでしょうか。
今回の訪米中、ジョージ・ワシントン大学で立憲民主党・枝野代表の講演があると聞き、参加しました。主に日米関係がテーマでしたが、健全な日米の関係は日本の平和と繁栄の前提であること、米国との信頼関係をさらに構築するためにこそ、基地問題において沖縄の民意を大切にすること、また日米地位協定の不平等・不公正を正すべきとの考えにはとても共感しました。質疑応答の中で、米国の草の根政治グループとの連携・交流や、民主主義を守るために活動する世界各国の市民グループとの連携について質問したところ、大変肯定的な返答でした。米国の市民たちが日々生み出している、草の根の手法と科学的な分析を駆使した権力との闘い。安倍政権と対峙していくためには、この方法を日本に合った形に応用し進化させるしかないと思います。