阪口直人の「心にかける橋」

衆議院議員としての政治活動や、専門分野の平和構築活動、また、趣味や日常生活についてもメッセージを発信します。

サンクト・ペテルブルグで見たG8サミット

2006年07月27日 01時02分54秒 | 政治
 今回、私がサンクト・ペテルブルグ滞在中にG8サミットが行われた。

 サミットについて現地の学生を含む多くの人々と対話する機会があったので、ロシアの人々、特にサンクト・ペテルブルグ市民がこのサミットをどのように見ていたのか、現地での対話やインタビューをもとに一端を紹介したいと思う。

 まず、国家の威信を賭けて絶対に成功させなければとの政府の並々ならぬ決意が町にあふれていた。何とサミット開催中、空港が閉鎖され、街中に警察官が配置されていた。従って、私などは度々パスポートチェックを受ける羽目になった。終了後には、政府が「議長国」として大きな達成感を得ている様子が伺えたが、サンクト・ペテルブルグの人々は、空港の閉鎖や、外国人が通りそうなところがこれまでなかったほど美しく清掃され飾り付けられていること、つまり、サミット自体の議題よりもセレモニーとしてのサミット運営にまつわることに興味を持っているようにも感じられた。そこにはサミット実施のために多額の予算が使われたことを批判的に指摘する雰囲気もあった。

 そもそも、エリツィン大統領時代にはロシアは先進国とは見なされておらず、G7+1扱いだった。しかし、プーチン大統領になって経済、社会は安定し、大国としての威信を取り戻しつつある。また、エネルギーや安全保障といった問題については大きな影響力を持っている。

 しかし、この影響力は、例えば隣国のウクライナなどから見れば、「エネルギーを武器にした恫喝外交」のために行使されているとしか見えないかもしれない。経済の安定と社会秩序の回復には最大の戦略資源であるエネルギーを管理しなければならないこと、また、その価値を最大化する必要があることは当然である。しかし、他のG8メンバーや隣国がロシアに対して抱く不信感を払拭するためには、ロシアの産業構造を資源輸出依存型から脱却させ、より付加価値を生む産業構造に転換させること、同時に、大国として、自分たちの利益を人類の普遍的な価値のために費やす決意を見せなくてはならないのだと思う。つまり、ロシアが他の「先進国」と異質な部分は、環境や人権など、人類の普遍的な価値の創造のため何を為すべきかという意識がまだまだ希薄な点なのだ。しかし、そのあたりは、他の参加国もわかっていて、今回、ホスト国であるロシア、そしてプーチン大統領を困らす事態をあえて生み出すことはなかった。

 ロシアの人々の「無関心」も、G8サミットはあくまでセレモニーであり、国の存亡を賭けるような政策論議を行う場所ではないことを理解しているからかもしれない。

 私が訪ねたのはモスクワとサンクト・ペテルブルグのみだが、例えば同じく今年訪ねた中国と比べた時、経済のダイナミズムには大きな差があると感じた。モノやお金、そして人の流通が中国の方が遥かに活発なのである。しかし、ロシア人が持っている潜在的な能力は、科学技術や芸術、スポーツ等での成果を見れば明らかであり、魅力ある隣人としての要素にもあふれている。ロシアとのより良いパートナーシップの構築に、もっと目を向けなくてはならないことを痛感した。

 プーチン大統領の人気は非常に高く、今回のサミット「成功」で、その権威、人気はさらにアップしたものと思われる。彼が強いリーダーシップを持って引き続き政権運営を行うことは、政治的混乱を避ける上である意味必要なようにさえ感じたが、一貫して3選を否定しているプーチンがどのような後継者を指名するのか、そして、どのような形でその後の政権に関わっていくのか、非常に興味がある。

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