「熱闘」のあとでひといき

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第15回 東日本大学セブンズ選手権大会(2014.4.13)の感想

2014-04-16 23:19:53 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


私的セブンズ三連チャンの第2弾は今回で15回目を迎える東日本大学セブンズ。先週のYC&ACセブンズ大会で圧倒的な力を見せつけて優勝した流経大と、その流経大にチャンピオンシップ準決勝で肉薄(12-19で惜敗)した筑波の2強に他の出場校がどこまで迫るか、あるいは下馬評(流経と筑波が2強を形成)を翻すような活躍を見せるチームは表れるのかを楽しみに秩父宮に向かった。

朝の8時50分から第1試合が始まり、熱戦が続いた後、31試合目のチャンピオンシップ・ファイナルは予想通り流経大と筑波の2強の激突となった。ちなみに、昨シーズンは両チームが準決勝で相まみえ、緊迫した戦いの末、筑波大が10-7で流経大を振り切っている。今回は昨シーズンを上回るような死闘となったが、今年も栄冠は筑波に輝いた。見事3連覇を達成した筑波を筆頭として、関東リーグ戦G各校の戦いぶりを中心に感想を記す。

[筑波大学]
○54- 0 立教大学(1回戦)
○42- 5 明治学院大学(チャンピオンシップ2回戦)
○21-17 大東文化大学(チャンピオンシップ準決勝)
○21-17 流通経済大学(チャンピオンシップ決勝)

筑波は1回戦で立教を一蹴し、十分な準備を経て戦いを挑んできたと思われる明治学院も圧倒して順当にチャンピオンシップの準決勝にコマを進めた。昨年と一昨年にこの大会で優勝を果たしているとは言え、筑波はセブンズに特化したチーム作りは行っていないと思われる。しかしながら、毎年個々の強さが活きた組織的なチームで戦いに臨んでくる。とくに精神的なタフネスの面では、大学でも随一の強さを持っているチームではないかという想いがより強くなった。

準決勝の大東大戦、決勝の流経大戦のいずれも接戦となったが、タフな試合に勝ち抜くことができたのは、筑波がファイナルまでの4試合をどう戦えばよいかを過去の経験を通じて学び取っているからだと思う。一例を挙げると、チャンピオンシップ準決勝からの登場となった山下一の起用法。山下は福岡や竹中と言った看板スターにも負けない走力を持った選手だが、序盤の2試合には出ていなかったので怪我かと思った。しかし、後半の重要な2試合に出場してゴールキックをすべて決めたことが3連覇に繋がったといえる。最初から出ている選手達の消耗への備えもさることながら、接戦でのキックの重要性を加味しての温存(満を持しての登場)だったのかも知れない。

筑波の戦いぶりでもうひとつ強く印象に残ったのは、先週のYC&ACセブンズでもそうだったように、人数をかけて強力な選手を捕まえてもディフェンスの組織に綻びが出ないこと。とくに圧倒的な攻撃力を誇る流経大の猛攻を身体を張った防御で凌ぎきった点は特筆に値する。おそらく日本の大学生で一番パワフルな選手と言えそうなリサレ・ジョージを低いタックル一発!で倒した場面が(なかなか観ることができないだけに)強く瞼に焼き付いている。



[流通経済大学]
○73- 0 東北学院大学(1回戦)
○31-12 慶應義塾大学(チャンピオンシップ2回戦)
○26-17 法政大学(チャンピオンシップ準決勝)
●17-21 筑波大学(チャンピオンシップ決勝)

先週のYC&ACセブンズでは、ピッチ上にリサレ・ジョージ、リリダム・ジョセファ、シオネ・テアウパの強力な3人のうちの2人が常に立っているというワールドクラスの陣容で他を寄せ付けずに優勝を果たした流経大。とくに、1対1になったら誰も止められないリサレと、2対2になったら外についたフォロワーは必ずラストパスをプレゼントしてもらえるというリリダムのコンビは超強力。ただ、大学生のセブンズは留学生の出場が1人に制限されることから今回はパワーダウンが予想された。しかしながら、それを補って余りある運動量で勝負に挑み、ファイナルまで到達したのがこの日の流経大だったと思う。

その立役者は、ディフェンダー達をパス、ラン、キックを駆使して縦横無尽に切り裂く合谷和弘といって間違いない。そして、この日は絶妙のパス(時にはキックパス)の受け手がいた。兄の合谷明弘をフィニッシャーにする心憎い演出も光った。流経大は緒戦で東北学院を粉砕し、2戦目も慶應を寄せ付けず圧勝。準決勝では法政の攻撃力に手こずったものの貫禄を見せてファイナルへ。リサレとリリダムの揃い踏みとはならなくても、やはり攻撃力は圧倒的だった。しかしながら、決勝戦では筑波の粘り強いディフェンスの前にあと1本が決められずに涙を呑んだ。しかし、大学レベルを超えたと言ってもいいファイナルの熾烈な戦いは今シーズンのベストゲームのひとつとして観た者の記憶に残ることだろう。

[中央大学]
●21-32 東海大学(1回戦)
○17-12 帝京大学(コンソレーション2回戦)
○24-17 早稲田大学(コンソレーション準決勝)
●21-31 山梨学院大学(コンソレーション決勝)

中央大にとってセブンズの緒戦はなぜか鬼門のようだ。YC&ACは2年連続で相手が筑波だったので不運だったと言ってしまえばそれまでだが、コンソレになると息を吹き返したように元気になるから不思議。ただ、来シーズンこそは「コンソレの中央」を脱して欲しいと思う。そのコンソレで見応えがあったのは、準決勝の早稲田戦。YC&ACと同じく、先制しながら追い付かれ、さらにリズムを崩しかけた悪い流れだった。しかしながら、今度はチームの建て直しに成功し、勝利を掴み取ったことは大きい。

今シーズンの中央だが、羽野や山北といった強力な選手達が抜けても基本的に黄金のBK陣で戦えそうなことに変わりはない。とくに再三鋭い走りを見せてフィニッシャーとなった高はリーグ戦G各校にとって要注意選手であることがはっきりした。また、YC&ACではやや精彩を欠いた感のある住吉もスピードスターとしての本領発揮で攻守に活躍。今シーズンも長谷川との併用で後半からの登場となりそうだが楽しみが増した感がある。中央大が昨シーズン以上の成績(優勝しかない)を挙げられるかはやはりFW次第といったところだろうか。

[大東文化大学]
○17-12 帝京大学(1回戦)
○29-17 立正大学(チャンピオンシップ1回戦)
○27-19 東海大学(チャンピオンシップ2回戦)
●21-17 筑波大学(チャンピオンシップ準決勝)

特別にセブンズの練習はしていないという情報もあったが、やはり大東大にはセブンズ向きの勝負出来る人材が揃っていることを実感した。恐るべきルーキーだったサウマキ、小山に大道の3人は期待通りの活躍で、さらにこの日がデビュー戦となり話題を独り占めしたクルーガー・ラトゥ(ラトゥ氏の息子さん)も楽しみな逸材。新たな新人の登場だけでなく、上級生の巻き返しもありそうな状況で大東大のレギュラー争いは熾烈を極めそうだ。

しかしながら、大東で一番印象に残った選手は一回り大きくなった長谷川だった。運動能力の高さは日本人離れしていて、サウマキも霞むような感じだった。テビタが万全の状態ならエイトに据え、この日も力強いランを見せた鈴木と篠原主将をFLに配置した3人を第3列とし、長谷川をLOに据えることで最強の2、3列ができあがる。ファイナルには進めなかったが、1回戦の帝京を始め、立正、東海に筑波とパワフルな相手に対しての3勝1敗は明るい材料。15人で戦う大東は、セブンズの拡大バージョンとも言えそうなパスと個人突破を主体としたランニングラグビーを展開してくれることを期待したい。

[東海大学]
○32-21 中央大学(1回戦)
●19-27 大東文化大学(チャンピオンシップ2回戦)

緒戦は中央大を圧倒したものの、大東大に苦杯を喫した東海大。石井塊が欠けても誰も止めることができない小原や近藤が居るので厄介だ。選手達の分厚い胸板やパワフルなアタックを見ている限り、東海大の覇権奪還への期待が高まる。しかしながら、ディフェンスが相変わらず泣き所であることが露呈され、チーム作りに対する不安を抱いてしまうことも事実。あっさりと抜かれる場面が目立つのは、1人1人の技術が不足しているからと言うよりも、選手間のコミュニケーションが上手く取れていないことに原因があるのではないだろうか。高速バックスリーにいかにいい形でボールを渡すかという攻撃のことはさておき、やはり覇権奪還の鍵を握るのは組織的なディフェンスをいかに整備するかではないかと思った。



[日本大学]
● 7-29 慶應義塾大学(1回戦)
○63- 0 道都大学(コンソレーション1回戦)
○48- 0 東北学院大学(コンソレーション2回戦)
●17-19 山梨学院大学(コンソレーション準決勝)

日大も中央大同様、セブンズは緒戦が鬼門のようだ。YC&ACでの戦いぶりを観ても、慶應は準備したチームと見なされただけに(怪我でなければ)マイケルを温存したように見えたことが疑問に残る。コンソレに入って、道都大と東北学院大に対しては貫禄を示してトライを量産できたが、山梨学院に競り負けてしまったことが不安材料。YC&ACでの戦いぶりを観ても、BKのコンビネーションはうまくいっていそうなのだが、やはりどうしても気になるのはFW。ずっと課題として残っているセットプレーが安定しないようだと今シーズンも苦しい戦いを強いられそうだ。

[法政大学]
○22-12 山梨学院大学(1回戦)
○29-19 明治大学(チャンピオンシップ2回戦)
●17-26 流通経済大学(チャンピオンシップ準決勝)

法政は、セブンズの練習を殆どしていなかったと思われるものの、BK選手のランニング能力の高さがよくわかる戦いぶりを示した。SOを誰が務めるのかは不明だが、この日ピッチに立ったSH大政、CTBに金、両WTBに今橋と半井と並べてみても強力なBKラインになる。ここにFWとして西内、小池、牧野内らが加われば強力な15人のチームができあがりそう。セブンズだけで判断するのは早計かもしれないが、今シーズンの法政はまずまずのスタートが切れたのではないだろうか。

[立正大学]
○55- 0 新潟大学(1回戦)
●17-29 大東文化大学(チャンピオンシップ1回戦)

立正大は、チャンピオンシップの1回戦で大東大とあたったこともあり早々とトーナメントから姿を消すことになってしまった。ただ、今シーズンの立正大は昨シーズンよりも確実にパワーアップしたラグビーを見せてくれそうだ。注目選手はやはりスピーディーなランが光る早川。今シーズンもWTBとしてトライの山を築くことになりそうだ。一方、期待を集めていた新潟大だったが、立正大との個々の力の差は如何ともしがたく、大敗を喫してしまった。

[山梨学院大学]
●12-22 法政大学(1回戦)
○63- 0 道都大学(コンソレーション1回戦)
○31-12 成蹊大学(コンソレーション2回戦)
○19-17 日本大学(コンソレーション準決勝)
○31-21 中央大学(コンソレーション決勝)

山梨学院は、緒戦で法政の個人能力の高さに翻弄されてしまった感があったが、コンソレーションで建て直しに成功して見事優勝を果たした。ティモシー・ラファエラの卒業でパワーダウンが心配されたが、3年生のソシセニ・トコキオと新人のパウロ・バベリの活躍を見る限り杞憂に終わりそう。拓大を撃破して1部返り咲きを果たした昨年末の入替戦でも、その時点で十分1部で戦えそうな感触だったが、その印象は間違っていなかったようだ。悲願の初勝利はもちろんのこと、台風の目となって上位陣を攪乱することも十分に考えられる。おそらくリーグ戦Gの各チームも山梨学院に要注意マークを付けたものと思われる。

余談ながら、全試合が終わってバックスタンドからメインスタンドに向かって引き上げる途中、山梨学院の選手達が陣取ったゴール裏のスタンドから鼻歌交じりの陽気な選手が2人出てきた。視線が合ったのでスマイル混じりに「コングラチュレーション!」と声をかけたら、彼らもにっこりと拳固で軽くゴッチンコしてくれた。本当に楽しい選手達だなぁと感じるとともに、この明るさが山梨学院を変える(変えている)かも知れないと思った。ここで、山梨学院に付いた要注意マークが少し大きくなった。

[拓殖大学]
●24-33 明治学院大学(1回戦)
●26-31 早稲田大学(コンソレーション1回戦)

昨年末の入替戦で山梨学院に完敗して2部降格となった拓大。チーム建て直しの足がかりが掴めたかどうかが気がかりだったのだが、2連敗と前途多難を思わせる船出となってしまった。緒戦の相手が明治学院だったことで多少油断した部分があったのかも知れないが、相手が十分に準備をしてきていると気がついた時点で「とき既に遅し」だったことが悔やまれる。ウヴェが卒業してパワーダウンが避けられない中で、1部復帰を目指してどのようにチームを作り上げていくのか気がかり。ただ、幸いにも春季大会で立正や山梨学院と戦うチャンスがあるので、その辺りをじっくりと見極めていきたい。



◆気になった格差

東日本大学セブンズは、関東大学ラグビーのリーグ戦Gと対抗戦Gからの9校ずつに、北海道と東北の代表、地区対抗の代表2校の計22校が参加する。過去の大会ではリーグ戦G校と対抗戦G校を除いた4校の頑張りが大会を盛り上げる要素となっていた。しかしながら、73-0、68-0、63-0といった7分ハーフの試合とは思えないような記録的なスコアが続出したことでもわかるように、関東大学のリーグ戦G・対抗戦Gの18校と残り4校の間の力の差は年々拡がっているように感じる。個々の力は劣っていても、セブンズの戦術に磨きをかけることで何とかパワフルなチームに対抗できていた時代は終わったと言ってもよさそう。短時間で大量得点差が付いてしまう試合が多くなり、また闘志を失ったかのような選手達が増えれば大会の盛り上がりを欠くことになる。今年で15回を迎えた大会も対策を考える必要に迫られているように感じた。

◆セブンズに取り組む意義

もうひとつ思ったことは、対抗戦Gの4強がひとつもファイナルまで進めなかったこと。さらに言うと、帝京と早稲田は緒戦で敗れてコンソレーションに回っている。リーグ戦G校はレギュラークラスで固めた陣容ということもあり、早慶明帝のファンからは「その気になれば勝てる」という声も聞こえてきそうだ。早稲田の選手達は総じて小さく、また、明治の選手達はどうしてもスリムに見えてしまうのはベストの選手達ではないからかもしれない。しかし、仮にベストの陣容で戦いに臨んでも筑波や流経に勝てるかどうかは疑問。それは、筑波も流経もベストメンバーで死闘を繰り広げることで肉体面だけでなく、精神面でも確実に強くなってきていると感じるから。

筑波の場合は、チームのメンタル面の強化のためにあえてタフな戦いを挑んでいるとすら感じる。早慶明帝が必ずしもベストの陣容ではなく、また準備不足で大会に臨むことで、せっかくの強化のチャンスを逃しているとしたら残念に思う。セブンズに取り組む意義は、パスやランなどのスキルアップもさることながら、長距離走ではなく、短距離を1日に何度も走るような体験を経て、選手達の精神面の強化を図ることにもあるような気もする。ファイナルの筑波と流経が演じたタフな戦いを観るにつけ、そんな想いが強くなった。

だからという訳ではないが、ファイナルに近づくにつれてスタンドからどんどん観客が減っていく現状に一抹の寂しさを感じる。とくに敗退したチームの選手達は他のチームの選手達の戦いぶりを観るせっかくのチャンスを活かしていないように思えてしまうのだ。(もちろん、最後まで試合を観ていたチームがなかった訳ではないが)。普段見る機会のないチームの選手達の戦いぶりから得られるものはけして少なくはないはずだ。

◆4月20日はセブンズ・ア・サイド(リーグ戦Gセブンズ)だが...

私的セブンズ3連チャンのファイナルは今度の日曜日に町田市立野津田公園内の陸上競技場で開催される「セブンズ・ア・サイド」。今回で28回目を数え、東日本セブンズのほぼ倍の歴史を持ったリーグ戦Gのお祭りとも言える大会。しかしながら、リーグ戦G所属校のファンでさえ、この大会に関心を持っている人は少ないのではないだろうか。そのひとつの要因として、関東大学フットボール連盟の告知が遅いことが挙げられる。関東協会のHPでもこの大会の紹介はなく、代わりにあるのは全早慶明の試合と関東春季大会の開幕戦となる帝京大と中央大の試合。

ここで、リーグ戦G校のファンの方々にはひとつの疑問が湧いてくるのではないだろうか。リーグ戦Gのお祭りがある日になぜ所属校の公式戦が別途組まれているのか。さらに連盟のHPには不可解な情報が載っている。発表になっているセブンズ・ア・サイドのスケジュール表を見ると、明らかに中央大が不戦敗(関東学院が不戦勝)と読み取れるのだが、そのような説明は一切ない。これをどう捉えればいいのだろうか。

今年のセブンズ・ア・サイドはコンソレーション方式が復活し、また、先だってのYC&ACセブンズで専修大が準優勝に輝いたこともあり白熱した戦いとなることが予想される。セブンズでは2部チームと1部チームの力の差が縮まるため、コンソレーションに回る1部のチームがいくつか出てくることが予想される。一方で、帝京に挑む中央大の戦いも観たい。そんな1ファンにとって今回のようなダブルブッキングは残念で仕方がない。来年度は同じようなことが起こらないことを強く望みたい。

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