「熱闘」のあとでひといき

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立正大学 vs 拓殖大学(第3回関東大学春季大会-2014.6.1)の感想

2014-06-10 02:24:33 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


今年で3回目を迎える関東大学の春季大会。去年からはA、B、Cの3つのグループにカテゴライズされて総当たりのリーグ戦方式となった。3つのカテゴリーを比較してみると、どうしても話題は帝京や早稲田を中心としたA、そして今年はリーグ戦Gの伝統校(東海、日大、法政)がひしめく形となったBに集中しがち。それに引き替え、リーグ戦Gと対抗戦Gの格差(Aの戦績から考えたら逆格差とも言える)が残酷なくらい明確になっているCは、もともと下部リーグに所属するチームをひとつ含むリーグ戦Gと対抗戦Gの下位校を集めたグループだからどうしても注目度は低くなってしまう。

だからといってCは面白くないだろうか? いやそんなことはけしてない。少なくともリーグ戦G校を中心にラグビーを観ているウォッチャーにとっては、実質的にリーグ戦G3チームに立教を加えた4チームの争いになっている現状でも十分に楽しめる。昨シーズンには入替戦を経験し、上位進出に向けてチームの建て直し(あるいは戦力アップ)を目指す2チームと1部昇格(あるいは復帰)を目指す1チームによる「熱き戦い」が繰り広げられるという点では、AやBより白熱した戦いになる場合もありえる。

ちなみに、一昨年だとチーム改革に成功して3位にまで上り詰めるきっかけを掴んだ拓大の試合(対立教大)、昨年なら、首脳陣交替を機に、革命的とも言えるチーム改革を断行して3位に浮上した大東大(対立正大)の試合は、いずれも私的には強烈なインパクトを残している。試合を観るにあたって、個人としてもチームとしても上を目指して頑張っている選手達の真剣な眼差しから伝わってくるものがたくさんあるのがCの戦いの面白さと言えるのではないだろうか。



◆熱い試合を期待して暑い立正グランドへ

この日は、東海vs法政、流経vs大東といったリーグ戦G所属校同士の直接対決など、観たいカードが目白押しの中でどこに行くか迷う状況だった。しかし、秋のレギュラーシーズンのことを考えると、2部に落ちた拓大の試合を観るチャンスはどうしても減ってしまう。一度は惚れ込んだチームのことを思うと何だか寂しくなり、足は立正グランドに向かった。今回は熊谷駅からバスで行くことにしたのだが、日曜日なのにバスは15分に1本の間隔で運行されている。ちょうど駅の反対側にある熊谷ラグビー場へのアクセスのことを考えたら、大学のキャンパスがあるお陰で地域住民も利便性の面で恩恵を受けているように思ったりもした。

熊谷駅から10分あまりで終点の大学構内にあるバス停に到着。ここからキャンパスの建物を眺めながら真っ直ぐにラグビー場に向かう。ゲスト(拓大サイド)の応援席は手前側だが、スタンドにはいつも熱心に拓大を応援しているご夫妻が来ておられて早速挨拶を交わした。私がこのブログの作者であることを見破って下さったことが縁で、以来拓大の試合観戦の都度にいろいろと情報面でのサポートを頂いている。このご夫妻に限らず、拓大の応援席に座っている方々は、熱心な応援団であることは当然として、過度に熱くなることもなく冷静にラグビーを観ておられる方が多いと常々感じる。私自身も一番気持ちよくラグビーを観ることが出来るのは、実は拓大サイドの応援席に座ったときなのだ。やっぱり来てよかったと思った。



◆真夏を想わせる猛暑の中でメンバーを確認

もはや春シーズンとは言えないような真夏の日差しが照りつけるグラウンド。人工芝の上は照り返しで熱中症が心配されるような状態になっていないだろうか。しかし、両チームの選手達はそんな環境をものともせずアップに励んでいる。ホームの立正大はBKの要だったフンガバカ・ツトネが卒業し、この日出場する留学生はLOプライス・テビタ・エドウィンとFLフィララ・レイモンド(いずれも2年生)のコンビとなった。(ちなみに1年生にもうひとりSOの選手が居る。)

立正大も拓大もリーグ戦全体で見れば小柄な選手が多いチームだが、2人の100kg超の選手が居ることで立正大の方がどうしても大きく見えてしまう。また、ファーストジャージがオレンジ色のチーム同士の対戦のため拓大が黒のセカンドジャージを身に纏っているのだが、立正大の鮮やかなオレンジの方が明るい陽光に一際映えて見えることも確か。BKにセブンズで大活躍し、リーグ戦G屈指のエースに成長したWTB早川の名前が(春シーズンはずっとだが)リザーブにも見当たらないのが気になるが、立正大はまずはFWのパワーで勝負ということなのかも知れない。

拓大の新戦力はチームの大黒柱として4年間活躍したウヴェ・タウアテ・ヴァル・ヘルのあとを継ぐ形でチームに加わったシオネ・ラベマイ(190cm, 107kg)。体格面ではガリバーのような存在だったとウヴェと比べても遜色はなく、また、リーグ戦Gセブンズでは強烈なハンドオフでディフェンダーを吹っ飛ばすなどパワーがあるところを見せた。遠目にはウヴェとほとんど変わらない、というか、もし誰かが「ウヴェは留年してもう1年チームで頑張ることにしたそうだ。」とウソの情報を流しても疑う人はほとんど居そうにもないくらいに雰囲気がよく似ている。

拓大のもうひとりの注目選手は、スクラムの強さを評価されてU20メンバーに加わり、JWC昇格に貢献した右PRの具智元(2年)。しかし、具の陰に隠れては居るが左PR岡部、HO川俣主将は2年生からずっと拓大のFW第1列を担ってきた「ベテラン」であり、この3人で組むスクラムはリーグ戦G最強といっても良さそう。BKでは当初SHに茂野が予定されていたが、アクシデントがあったのか大崎が先発した。4年生ながら過去にAで出場したことが記憶にない選手で、BK展開指向の拓大にあってキーポジションとなっているSHとして機能できるかが気になるところ。

さて、拓大は今年も戦力面の上積みが望めない中、リザーブに前節に引き続きパトリック・ステイリンの名前があるのは明るい材料と言える。昨秋末から怪我で長く戦列を離れていたのだが、ずっとリザーブに登録されることもなかったので気を揉んでいた。そんなわけで、拓大の留学生にありがちな「もしや...」ではなくて胸をなで下ろした。そして、実は、スタメンの中に拓大には今後キーマンとしてチームの中心となって活躍することになりそうな選手が潜んでいたのだが、それは試合が始まってからすぐにわかることになる。



◆前半の戦い ~パワフルな留学生2人に翻弄されながらも持ちこたえた拓大~

キックオフ早々から、強力な留学生2人(エドウィンとレイモンド)を軸にした立正大FWのパワーが炸裂する。ある程度予想されたこととはいえ、2人でボールを運ぶだけで拓大はじりじりと後退を余儀なくされる。そこに走力のあるHO増田のタテ突破が絡むアタックはリーグ戦G屈指と言えるくらいパワフル。開始早々の3分、立正大は拓大陣10m付近のラインアウトを起点としてFWで力強くボールを前に運び、絶妙のタイミングでパスを受けたHO増田が一気にゴールラインまで駆け抜けた。GK成功で立正大が幸先良く先制する。続く6分、キックオフからの蹴り合いの後、立正大がカウンターアタックからまたしても「2人」を軸としたFWでボールを強力に前に運ぶ。ここでもHO増田が大きくゲインしLOエドウィンにフィニッシュを託した。おそらく、立正はこの形を武器とすべく準備(練習)を重ねてきたに違いない。わかっていても止められないアタックはリーグ戦Gの他チームも要警戒と言うことになるだろう。開始数分にして14-0とした立正大はこのまま得点を重ねて圧勝してしまいそうな凄みを感じさせた。

強烈な先制パンチを2発浴びてしまい0-14といきなり劣勢に立たされた拓大。だが、12月に再戦することになるかも知れないチームを相手として、このまま引き下がるわけにはいかない。リスタートのキックオフで立正が反則を犯したところをすかさずタップキックで攻め上がる。ウヴェの番号だった7番を引き継いだFLシオネが強力にボールを前に運び、前が開いて自分でも行けそうな状況が生まれる。しかしシオネは外側にフォローした左WTB林謙太に慎重にパスを渡してフィニッシュを託す。林は相手ディフェンダーをかわしながら左サイドを駆け抜けてゴールラインを越えた。GKは失敗するが、5-14と拓大が一矢報い、反撃への足がかりをつかむ。実はこの11番を付けた選手こそが、拓大のキーマンになることを確信させた選手だったのだ。

話をキックオフ前に戻す。拓大の応援席からは、ちょうど左サイドに位置した11番の選手(林謙太)が目の前に見えた。林はピッチに登場したときからチームメイトに指示を与えるなど、ひとかどの存在感を示していた。メンバー表を確認したら日大高校出身の2年生。ジャージがはち切れそうな引き締まった肉体を持ち、とても2年生とは思えない立ち居振る舞いに「どこか違う」と予感させるものが確かにあった。ちなみに、林は昨年もSOやFBでスタメン出場しているし、その試合は観ているのだがプレーは印象に残っていない。1年間で急成長を遂げたのかも知れない。

拓大が早い段階で1トライを返したことで(2発被弾して浮き足だってもおかしくなかった)拓大に落ち着きがでてくる。と同時になぜか血気盛んだった立正大も落ち着いてしまう。その原因として考えられるのが、11分に組まれたファーストスクラム。ここで拓大が立正大FWを電車道で押し込む。(もちろん立正も押されることは予想していて球出しには工夫をしていた。) 両チームとも体勢が崩れない中で真っ直ぐに押し込まれるスクラムにはなかなかお目にかかれない。それだけに強烈な印象が残った。普通ならスクラムは押し込む方が無理をして体勢を崩しがちなのだが、8人が1枚岩となって押し込んでしまったところに拓大のスクラムに対するこだわりを感じた。こんなきれいなスクラムを見たのは、リーグ戦Gでは阿多監督の日大以来だろうか。関西リーグなら全盛期の京産大のスクラムが思い浮かぶ。

教科書にもあるが、「自分の体重は自分で支えること」がスクラムの基本のはず。だが、最近のスクラムの傾向は、むしろ相手に寄りかかる形で、いかに自分達が有利な体勢で組めるかが勝負のようになっていると感じる。大きな事故に繋がりかねない危険と紙一重のスクラムとも言えそうなのだが、崩れても大事に至らないのは鍛えられたもの同士が組み合っているから。また、スクラムが強い方のチームが相手に差し込まれたときには、必ずと言っていいほど組み直しになることも不思議。相手に有利な状況が生じたら組み直しになるようにすることも高度な駆け引きになるのだろうか。そう考えると、スクラムの組み方のルール改正は、拓大のように8人で低くパックを固めて1枚岩で組む練習を積んでいるチームには有利に作用するものと考えたい。

さて、ファーストスクラムで「圧勝」したことが、拓大のFWだけでなくBKメンバーに安心感をもたらしたに違いない。序盤にペースを握られたとはいえ、拓大のビハインドは9点に過ぎない。ここから拓大のBK展開指向の早いテンポのアタックが機能するようになる。そのキープレーヤーとなったのはSHの大崎。ブレイクダウンの局面では相手に絡まれる前に素早くボールをBKに供給し続ける。自身で突破することはあまり考えず、ボールを捌くことに徹している感があるが、これが「シンプル・イズ・ベスト」を信条とする拓大の攻撃のリズムを生み出している。また、拓大では小柄(163cm)ながら、しばしば重心の低いランでビッグゲインを見せたCTB松崎もアタックにアクセントをもたらす。パトリックが完全復帰を果たしたら、拓大の攻撃力は去年よりも確実に上がるはず。ボールがテンポ良く動く中で、立正大はディフェンスに追われる展開となり、攻勢から一転して守勢の受け身に立たされることになってしまった。

ゲームの流れが拓大ペースに傾く中で、20分には拓大に伝統を受け継ぐようなトライが生まれる。立正陣ゴール前でのラインアウトから拓大はモールを形成。その最後尾にはボールを持ったシオネが前を伺いながら位置する。そのままゴールまでモールが押し込まれるかと思わせた瞬間、シオネがモールから離れてゴールラインへ。飛び出しのタイミングといい、走るコース(少しヨコに開いてからタテを突く)といい、まるでウヴェがシオネに乗り移ったかのようなトライだった。風貌だけでなく、性格的にもシオネはウヴェと似たところがありそうだ。少なくとも、むらっ気が多くて自滅と隣り合わせのタイプではなさそう。拓大の得意とする形はさらに4年間継承されることになった。

GK成功で12-14と拓大のビハインドは2点に縮まる。守勢に立たされたとはいえ、ホームの立正大もこのままずるずると失点を重ねるわけには行かない。真夏を想わせる日差しの中で、両チームがそれぞれ持ち味を活かした一進一退の攻防が繰り広げられる。25分、立正大は拓大陣22m付近でのラインアウトを起点としてオープン展開で攻めるもののノットリリースの反則。テンポ良くボールを展開する拓大に対し、立正大はブレイクダウンでプレッシャーを受けて反則を犯す場面が目立つようになってくる。

時計が30分を回る頃からは拓大の時間帯。立正大は自陣ゴールを背に耐える状況となるが、拓大も決め手を欠きなかなか逆転のためのトライが奪えない。逆に35分を過ぎると、追加点を奪って突き放したい立正大が猛攻を仕掛け、拓大は自陣ゴールを背にひたすら耐える展開となる。ここは拓大が粘り強いディフェンスで凌ぎきった。2トライを先行した立正大が一方的に押し切るかと思わせた序盤戦だったが、拓大が2トライを返して巻き返しに成功。以後は拮抗した展開となるものの、拓大がやや優位に立つ形で前半が終了した。



◆後半の戦い ~パトリックが復帰し、新エースが活躍した拓大が逆転で勝利を掴む~

僅か2点とは言え、リードしているのは立正大。後半も先に得点して試合を優位に進めたいところ。だが、拓大は後半からCTB具智允に代えてパト(パトリック・ステイリン)を投入し反撃体制を整える。キックオフから蹴り合いとなる中でそのパトがカウンターアタックから力強くボールを前に運ぶ。そしてボールは左サイドに位置した林に渡る。林はそのまま立正大のディフェンダーをかわしてゴールラインまでボールを運びノーホイッスルトライが成立。前半とは違ってスタンドからは遠いサイドでのプレーだが、林が自信を持って走っている様子はよくわかる。GKは失敗するが拓大が17-12と遂に逆転に成功。

時計の針が1分を指す前に拓大に逆転を許したことで立正大がヒートアップし、暑さを忘れさせるような激しいバトルとなる。3分、拓大が立正陣10mでのスクラムを起点としてオープン展開で攻め上がるも22mまで前進したところでノットロールアウェイ。立正大がPKで拓大陣に入ってラインアウトからBKでアタックを試みるがノックオン。拓大が自陣でのスクラムからNo.8に位置したシオネがウラに抜けるもラックでターンオーバー。立正大のエリア獲得を目指したキックがゴールラインを越えてドロップアウト、と攻守がめまぐるしく変わりボールが右に左にと大きく動く。

しかし、8分のリスタートで拓大に痛恨のミス。ドロップアウトからのキックがダイレクトタッチとなり、立正大は拓大陣22mでスクラムの絶好のチャンスを掴む。スクラムは劣勢だった立正大だが、ボールは失わず、FWでタテ攻撃を2回繰り返して最後はFLレイモンドがゴールにボールをねじ込む。GKも成功し21-17と立正大が再逆転に成功し試合の行方はわからなくなる。再びゲームは膠着状態となるが、暑さもあり、拓大の素早い展開に振り回された形の立正大選手の足が止まり始める。14分、拓大は立正陣22m付近のラインアウトからモールを形成し、シオネがゴールを目指すも一歩届かず。リスタートのドロップアウトからボールの確保に成功したレイモンドが左タッチライン沿いを力強く前進するもののHWL付近でタッチに押し出された。

拓大はHWL付近でのラインアウトからオープン展開で攻め上がり、フォローしたシオネがトライ。GKは失敗するが22-21と再々逆転に成功。リスタートのキックオフからカウンターアタックでボールを繋ぎ、またも林が左サイドを駆け抜け、この日3つめトライを奪いハットトリックを達成。頼りがいのあるエースの活躍で29-21(GK成功)と、拓大が一気にスパートする。拓大はオープン展開でボールを細かく繋ぎ、最後は左ストレート(WTB林のラン)で決めるという得点パターンを完成させた。立正も直後にSO原嶋主将が正面約30mのPGを決めて24-29と食い下がりを見せるがここまでだった。見た目にもFWの選手達の足が止まってきているのがわかる。リスタートのキックオフで林に4トライ目が生まれ、34-24と拓大のリードが10点に拡がった。せっかく得点しても、直後に失点、しかもノーホイッスルトライを奪われてしまうことで立正は波に乗れない。

残り時間が少なくなっていく中で、立正大に疲労の色が濃くなっていく。自陣での戦いを強いられ、反撃の糸口を掴めないまま時計が進む。そして迎えた39分、立正大が自陣10m/22mでのラインアウトからのオープン展開でミスを犯し、こぼれたボールを拾った拓大が逆襲。最後はステイリンがゴールまでボールを持ち込み、これがとどめのトライとなる。GKも成功し、41-24で拓大が勝利を掴み取った。とくに前半は立正大の2人の留学生らを軸としたパワフルなアタックが目立ったものの、全般的にゲームを支配したのはキックをほぼ封印してシンプルに素速くパスを繋ぐラグビーに徹した拓大。戦力が拮抗する中で勝敗を分けたのは、終始一貫した形で攻め続けることができたかどうかだったような印象を受けた。



◆幸先良くスタートを切った立正大だったが

立正大の協力かつ鮮やかな1、2パンチは見事だった。さらに連続でもう一発決めることができれば立正大が勝利を掴むことができたかも知れない。もちろん、本日はエースのWTB早川が不在だったこともあり、BKで取る形が作れなかったこともFW戦以外に攻め手を欠いた理由となりそう。しかしながら、根本的な問題として、立正大の積年の課題はゲームコントロールにあることをこの日も感じた。相手に攻め込まれると受けてしまいがちになるということ。過去のチーム比べれば立正大は積極的にアタックが仕掛けられるチームにはなっている。あとは、前後半の計80分をどう戦い抜くかをピッチ上に立つ選手達が全員で共有することが重要と思われる。あと、この試合の反省点はノーホイッスルトライを4つ献上したこと。とくに前後半にひとつずつ、得点を挙げた直後に失点したことが大きな反省点。集中力を切らさないことも上位浮上を果たす上での目標となるだろう。



◆ゼロ・リグレッツ~拓大は「後悔しない」~

今シーズンは1部復帰を目指して戦うことになった拓大が掲げるスローガンは「ゼロ・リグレッツ」(後悔しない)。逆に言えば、昨シーズンは悔やんでも悔やみきれないシーズンになってしまったということ。去年も春の段階ではチームの調子は悪くなかった。主力が欠けていたとはいえ帝京をあわやと言うところまで追い詰め、明治にも惜敗。その拓大が、よもやレギュラーシーズン中に1勝も挙げることができず、2部に降格するとは誰も思わなかったはず。原因として考えられることは、戦力の上積みが殆どない中でひとつ上のラグビーにチャレンジしたことだと思う。その過程で、一昨年のシーズンに1試合ごとに丁寧に積み上げていったものが殆ど失われてしまったように見えたのだ。昨年は「畏れを知らない挑戦」よりも「我慢」が必要だったのではないだろうか。今更言っても仕方ないが、そんな気がしてならない。

ただ、拓大は一昨年以前までのチームと比べて着実に進化したところがあるし、そのことは(幸いにも)去年も失われることはなかった。拓大は、80分間集中を切らさずに全員が一丸となって戦えるチームになっている。かつての拓大と言えば、横山兄弟や茂野、大松といった強力なトライゲッター達による得点力を持ち味とするチームだった。しかしながら、個の得点力に頼ったラグビーは安定性に欠けたことも事実。そして、試合中には必ずエアポケットに落ちて凡ミスを犯し、そのことが原因で勝てる試合を落としたことも多かった。個に頼るラグビーと決別し、全員ラグビーへの転換を図ったのが2012シーズンだったと言える。

昨シーズンの拓大の不振の要因としては、上の話と矛盾するかも知れないが、絶対的なエースが不在だったことも挙げられる。この「エース」が意味するところは、卓越した個人能力で局面の打開を図る選手という意味ではなく、決めるべきところで確実に決められる信頼度の高い選手ということ。そういった意味で、今シーズンの拓大は待望のエースを得たと言えそうだ。何度も書いているように、この日4トライを挙げて逆転勝利に貢献したWTBの林謙太がその人。奪った4つのトライはいずれも踏ん張りどころ(5分5分の勝負)で頑張り、気迫でディフェンダーを振り切って奪い取った価値あるトライだったように見えた。この活躍でチームメイトの信頼はより厚くなったことだろう。後で日大ファンの方に教えて頂いたのだが、彼は2年生まで日大に所属していた選手だった。だから今年は年齢的には4年生ということになる。リーダーシップがありそうなこととプレーの落ち着きの理由もよくわかった。私的なラグビーを観る楽しみ方のひとつは、試合会場で予期せぬ形でいい選手を発見することなのだが、この日の最大の発見は拓大の11番を付けた選手で間違いない。

この日立正大を破り、あとは山梨学院に勝てば拓大にとって1部復帰に向けての大きな励みになる。しかしながら、今年の2部リーグは復活基調の関東学院やセブンズでの好成績で自信を掴んだ専修、そして昨シーズンは入替戦まであと一歩だった國學院、さらには虎視眈々と上位を狙う東洋大など難敵がひしめいている状況にある。拓大といえども2位以内になれる保証は何処にもない。ただ、順位(1位か2位か)は関係なく、入替戦出場を果たせば、1部リーグのチームにとってもっとも怖い相手は拓大と言って間違いない。スクラムは強力でウヴェの後継者も居るし、パトリックが中心となるBKの得点力も確実にアップ。さらには頼りがいのあるエースが誕生。早過ぎるかも知れないが、拓大とあたることになったチームは泣きを見ることになりそうな予感がする。

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1 コメント

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観察力 (マイケル主将)
2014-06-10 22:29:00
プログを拝見し、観察力の秀逸さと文章の切れ味に感心いたしました。拓殖大学は、中一年で一部に復帰すると思います。観ましたが、質が高いラグビーですね。
http://blog.livedoor.jp/swkumi66/

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