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大東文化大学 vs 慶應義塾大学(第3回関東大学春季大会-2014.5.25)の感想

2014-06-01 19:39:48 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


関東大学のリーグ戦グループを中心に大学ラグビーを観るようになって今年で18シーズン目。秋にはラグビーマガジンの選手名鑑の18冊目が本棚に加わるはず。ちょっとタイムスリップして1997シーズンの頃のことを振り返ってみた。今から思えば、当時のリーグ戦グループは関東学院、法政、日大と個性派チームが鎬を削り、そこに中央や専修が割って入るような形で活気に溢れていた。ちょうど流経大が1部昇格を果たし、緻密なサインプレーを特徴とした組織的なラグビーで大学ラグビーに新風を吹き込んだのもこのシーズン。

そんな中にあって、大学選手権優勝3回を誇る大東大は長い低迷状態の入り口付近に居るような状態だった。強力なトンガ出身の選手達を中心に、FW、BK関係なく自由奔放にボールを繋ぎまくるプレースタイルは魅力十分だったものの、むらっ気の多い選手達によるラグビーは安定感を欠いていた。今でもはっきり覚えているショッキングなシーンがある。スクラムからボールが出た後、フロントローの3人が「俺たちの仕事は終わり」と言わんばかりに次のポイントに向かって悠然と歩くのを見たときは、正直このチーム、大丈夫なんだろうかと思った。

現在とは違い、FWの第1列には運動量が求められていなかったとはいえ、流経大の選手達は第1列の選手も(パワー不足をカバーする形で)例外なく必死に走っていた。当時、「大東大のFWはバックギアが付いていない。」と言われていたし、首脳からして「ウチのFWは寝たら豚になる。」と公言してはばからなかったくらいだから、とても彼らにディフェンスは期待出来ない。そんな選手達も、いざアタック!となるとスイッチが入ったように急に元気になるから見ていて何だが可笑しかった。はっきり言ってしまうと、ハマれば面白い反面、勢いがあった関東学院や法政や日大と並べてみると、「昔の名前で」的なチームになっていたのが当時の大東大だったと思う。

下克上もある戦国リーグと言われながらも、いつも観客で溢れている対抗戦Gの試合会場とは違ったどこか牧歌的なムードが漂っていたのが、廻りに田園風景が拡がる熊谷ラグビー場を主戦場としていた当時の関東リーグ戦G。そんな中で気を吐いていた選手の1人が現在の大東大で唯1人コーチの肩書きを持って奮闘している山内氏だった。サイズはなくてもボールをもらったら高い確率でディフェンダーをかわしてゴールラインまで駆け抜ける力を持った大学生屈指のWTBは、斜め後方からFWの選手達のプレーをどんな気持ちで見ていたのだろうか。



◆強豪チームをホームに迎えて/不安の中に期待も抱かせたキックオフ前のひととき

本日の試合は大東大が東松山のホームグランドに慶應義塾大学を迎える。そして、その慶應は、相手の中央大のディフェンスに大きな問題があったとは言え、昨年度のリーグ戦G2位チームを撃破して乗り込んできた。慶應も万全の状態ではないように見えたのだが、CTBコンビを中心とした大型の選手達が並ぶBKラインのアタックは威圧感がある。この日は左CTBが中央戦の石橋から下川に代わったが184cm、86kgだからサイズはさらに大きくなっている。サウマキを除けば小柄な選手が多い大東大のBK陣は耐えられるのだろうか?と戦う前から不安を抱いてしまう。選手達のアップの表情を見ても余裕が感じられるのは慶應の方。

しかし、大東大にもそんな不安を打ち消しそうなメンバーが新たに参加/復帰を果たしている。復帰組は昨シーズン、SH小山、SO川向とともに驚異のルーキーとしてリーグ戦G関係者をアッと言わせたFB大道。でも、この日最大のトピックスは11番を付けて颯爽と登場してきたクルーガー・ラトゥその人をおいていない。そう、大東大OBで日本代表としても大活躍し、2002年から2008年まで6シーズンに渡って母校の監督を務めていたシナリ・ラトゥの息子さん。4月に東日本大学セブンズでデビューを果たし、大器の片鱗を見せたクルーガーではあるが、本格デビューとなるこの試合ではどんなプレーを見せてくれるのだろうか。FWは左LO(本日は1年生の大島が先発)を除きほぼ盤石。春からレギュラーがほぼ固定できる点は大東大が大きな進化を遂げた点と言える。とくに今季はテビタが足を引きずるシーンがないのは大東ファンにとって明るい材料だ。



◆前半の戦い ~序盤から白熱した攻防戦となるも、冴えを見せる大東大のアタック~

メインストリートの道路から見下ろす形になる大東大グランド。折りたたみ式のベンチを並べて試合開始を待つ多くの大東大ファンが見守る中、慶應のキックオフで試合が始まった。ここで慶應にノックオンがあり、大東大ボールスクラム。大東大は左オープンに展開して(背番号は11だがポジションはアウトサイドのCTBの)クルーガーからパスを受けたSH小山がボールを前に運び慶應ゴールに迫る。しかしここは慶應が持ち前のディフェンスで一端ボールを押し戻すが、大東大がリセットの形でボールをオープンに展開し今度は右WTBに位置したクルーガーにパスが渡る。

大東大の11番といえばホセア(サウマキ)の番号なのだが、サウマキは22番を付けてベンチスタート。なのに、なぜかサウマキにボールが渡ったかのような錯覚を起こしてしまう。クルーガーはサウマキと身長が殆ど変わらないのだが、体重が10kgほど軽いためスリムに見える。CTBというよりもウィンガーのような軽やかにステップを刻んで慶應DFを翻弄し、2人を抜いてゴールポスト直下まで到達。やはりこの選手は「持っている」というべきか。デビュー早々にして、名刺代わりに鮮やかなトライを記録してしまった。GKも成功し、2分にして大東大が7点を先制した。

しかし、慶應にとっては開始直後の一瞬の隙を突かれたような失点。気を取り直してリスタートのキックオフに臨む。実は大東大にとって相手ボールキックオフが鬼門だった。浅めに高く蹴り込まれたボールに対して慶應FWがチャレンジのため走り込んできてことごとく奪取に成功。この日は大東大がトライを重ねたため慶應キックオフでのリスタートが多かったのだが、大東大のボール獲得率は3割にも達していなかったはずだ。慶應としては、この試合のために特別に用意したプレーではなかったと思うが、マイボール獲得の有効な手段となっていたことは確か。もっとも、相手にボールをプレゼントしてもらっても、これだけキックオフの機会(失トライを重ねる)があること自体が不思議ではあるのだが。

話が逸れるが、この点で帝京のFWの立ち位置は絶妙と言える。少し深めの位置取りで相手に深く蹴り込まざるを得ない状況をうまく作っている。浅めに蹴ればボールを取られた時にFWで一気にボールを前に持って行かれる。FWがイージーに取れる位置ならチャレンジは難しく確実にボールキープされてしまう。ならばFWの後ろに深めにとなるのだが、ここが帝京の狙い所。素早いカウンターアタックで強力にボールを前に運び、そのまま継続してノーホイッスルトライまで持ち込むことができる。大東大も秋のシーズンまでにボール獲得率を上げるような対策を考える必要がある。

慶應と大東大はタイプこそ違え、前に出て勝負することをモットーとするチーム。ディフェンス面では低いタックルで前進を許さない慶應に対し、昨シーズンからの大東大は青柳監督の意向(タックルできる選手を選ぶ)で守備の堅いチームへと変貌を遂げている。そんな2チームが、自陣からはエリアを取る必要がある場合を除きキックを封印して攻め合う。時計が進むのを忘れて白熱した攻防に見入っているうちに、ちょうど1週間前に日吉グランドで観た試合とは明らかに空気が違うということに気付いた。端的に言ってしまうと、キックオフからまったくといっていいくらいディフェンスが機能しなかった中央は何かがおかしかったと結論づけざるを得ない。

慶應はFWのタテとBKへの展開の組立で堅実にボールを前に運ぶのに対し、大東大はSH小山がまず後方に陣取ったFWの選手達にボールを渡してからオープンに展開するスタイル。どちらも組織的にボールを動かすことを目指しているチームだが(突破役の鈴木、長谷川、テビタではなく)、FW第1列の選手が前線で積極的にボールを持つ機会を増やすことで徹底されている大東大の方が攻撃の意図が明確な印象を受ける。ただ、慶應もフェイズを重ねて前にボールを運ぶ面では鍛えられているチーム。とくにWTBに決定力があるため、大東大はしばしば背走を余儀なくされる展開となる。しかし、ここは大東大の伝統技とも言える懐の深いディフェンスで後一歩の手前で止める。あるいは大きくボールを動かされる前にブレイクダウンで絡んで慶應の反則を誘う。中央大戦でも課題のひとつになっていたが、慶應は1人が抜けた後にノットリリースなどの反則が多いのはこの試合も同じ。そういった意味では大東大は助かった面が大きかったと言える。

慶應に反則が多ければ必然的に大東大にラインアウトのチャンスが増える。しかしながら、このラインアウトも大東大には鬼門だった。長谷川へのスローをことごとく慶應の長身LO大塚(190cm)にはたかれてなかなかマイボールが確保出来ない。もちろんスローイングの問題もあるのだろうが、相手キックオフの処理も含めてハイボールをイーブンボールにしない対策を徹底することが大東大にとって今後取り組むべき課題。逆に言うと、慶應はFWのハイボールに対する強さが強力な武器ということになる。通常なら、これだけFWのイーブンボールに対する獲得率が違ったら慶應がどんどん得点を重ねる展開になってもおかしくない。

しかし、大東大には慶應にはない強力な武器がある。身体は小さくても相手にタックルの間合いを与えずに抜き去る力がある選手が2人(SH小山とFB大道)居ること。とくに大道は前に2人居ても指一本触らせずに抜ける切れ味鋭いステップの持ち主。慶應がやや押し気味の拮抗した展開の中で16分の大東大の追加点はその大道の持ち味が活きたk形で記録された。起点は慶應陣22m手前のラインアウトだったが、ここでも大東大にミス。しかしボールが後ろにこぼれたことがフェイントのような状態になり、オープン展開からライン参加した大道がパスを受けてゴールラインを越えた。GK成功で大東大のリードは14点に拡がる。直後の17分にも大東大はキックオフのリターンから長谷川の突破を起点として大きく前進し、PR3の江口に確実にパスが渡ればトライという場面があったが絵に描いたようなPRのノックオン...。場内はため息に包まれるがこの日のFW1列3人の奮闘を象徴するようなランニングだった。

大東大はリードを拡げてから徐々にペースを掴む。慶應はブレイクダウンで反則を犯す悪い流れを止めることが出来ない。27分には大道が正面約20mのPGを決めて大東大はさらに3点を追加した。その後、前半終了までの時間帯は大東大が殆ど慶應陣22m内で攻め続ける一方的な展開となる。ただ、大東大はラインアウトの不調が響き、なかなかゴール前に迫ってもタイガージャージの厚い壁を越えることができない。SH小山を起点としてボールを停滞させることなく動かし続けるラグビーは見応えがあるものの肝心なところでミスが出るのが残念。38分のラインアウトを起点としたオープン展開での「決まれば100%トライ」のロングパスは惜しくもスローフォワードとなる。終盤は慶應が殆ど自陣か22m付近から脱出することができない状態だったものの17-0の大東大リードのまま前半が終了した。内容から見たら、よく慶應は17失点に留まったといえる前半の戦いぶりだった。



◆後半の戦い ~大東大のパスラグビーが全開となる中で反撃の糸口が掴めなかった慶應~

対抗戦Gの強豪チームの強みは、前半が不調でも後半にしっかり立て直してくること。リーグ戦G校が対抗戦G校と戦うときに一番畏れている部分でもある。しかしながら、後半開始早々にそんな慶應の心意気を挫くようなトライがあっけなく記録される。大東大がカウンターアタックを起点としてSH小山がウラに抜ける。前半は自嘲気味?でステディにボールをFWに渡していた感が強い小山だったが、前方に開いた穴は絶体に見逃さない。こんなに簡単に抜けていいのかというくらいに2人以上いたディフェンダーを手玉に取る形で小山は一気にゴールラインまで到達。もっとも警戒すべき選手に決められてしまった慶應のショックは大きかったに違いない。

さて、後半から大東大はクルーガーと岡を下げてCTBに梶本、WTBにホセアを投入する。また、前半はFWへの供給が主だったSH小山からのパスが、同じタイミングでダイレクトにBKに渡る形も混じるようになる。もちろん最終ターゲットは大外で待ち構えるリーグ戦G最強WTBの1人サウマキなのだが、無理に外まで展開することはせず、CTBでFWにボールを渡すオプションも加わる。ディフェンス側の慶應にとっては同時にFWとBKを見なければならなくなり、この時点で徐々にターゲットが絞りづらくなって戸惑いが増えてきたはず。小山はFW、BKどちらを選択しても良い形になっている。

もちろん、小山は自分でも行けるし、廻りには長谷川、テビタにLO鈴木を加えた強力なランナー達が控える。どうやら大東大はSH小山を起点としたパスの受け手が何人もいる攻撃スタイルを完成しつつあるように見える。もし、エキストラでパスの受ける選手が(帝京のように)トップスピードになれば攻撃の破壊力はさらに上がるだろう。(スピードは80%くらいと言った感じでタイミングも完全には合っていない。)ディフェンスに戸惑い始めた慶應を尻目に、いろいろなバリエーションを見せてくれたのが後半の大東大だった。4分のトライはLO鈴木の強力なタテ突破により生まれた。あっと言う間に大東大のリードは29点に拡がる。

相手に翻弄されつつ点差を広げられていく慶應に焦りが出てくる。せっかくFW並の大型BKラインを持ちながら、パスミスなどで反撃の糸口すら掴めない状態。小山の球裁きが(ちょっと浮き気味だったものの)冴え渡り、FWもBKも活き活きとパス主体で攻める大東大のラグビーは本当に見ていて楽しい。20分にはカウンターアタックからサウマキが大きくゲイン。そのまま1人でも行ける状態だが十分に間合いを見計らってディフェンダーを引きつけ、慎重にラストパスを梶本に送る。パスを受けた梶本はゴールを目指して真っ直ぐ走るだけで良かった。

大東大は26分にPGで3点を加点(39-0)した後、いよいよサウマキのトライショーが始まる。29分、スクラムからのオープン展開で大東大が珍しく飛ばしパス(それも2連発)を使い、2パスでボールはWTBのサウマキへ。こうなれば大学生レベルではもう誰も止められない。スピードに乗った相手にタックルを挑んでも強烈なハンドオフで弾かれるだけだ。32分にもさらにサウマキ。今度ははラインアウトからのオープン展開でゴールラインを駆け抜ける。大東大の得点はいつの間にか51点に達していた。あとは無失点で戦い終えることができれば最高の幕切れとなる。

36分、大東大は慶應陣22m内で相手ボールのターンオーバーに成功し、パスを受けたSO川向がゴールラインを越えた。タックルでの貢献度は高いものの、アタックでは突破役達に活躍の場を譲っているような感がある川向だが、決めるべき時は決める。大東大の得点は56点となり、このまま残り時間をうまく使えばゼロ封も達成というところだったが、終了間際にアクシデントが起こる。残り時間を確認した上で篠原主将が自信を持ってタッチにボールを蹴りだし、そこで終了のホイッスルと誰もが思った。しかしながら、レフリーは慶應ボールのラインアウトを指示。あと1プレーの時間が残っていた。大東大は一端切れた緊張の糸を繋ぎ直す訳にもいかず、ラインアウトから慶應はゴールを目指して怒涛のアタックを見せ1トライをねじ込むことに成功する。ちょっと気に抜けた終わり方になってしまったが、大東大がファンの期待をも裏切るような圧勝劇を演じる形で試合が終わった。



◆慶應の敗因/重なった3つのアンラッキー

大東大ファンですら信じられないようなスコアでの圧勝劇。試合を観ていない慶應ファンにとってはショック以外の何物でもないはずだ。力の差を超えた、しかも大東大にラインアウトなどのミスがなければさらに点差が開いた可能性がある試合になってしまったのは何故か? 単に強い方が勝っただけでは説明が付かないので、自分なりに慶應の敗因(大東の勝因)を振り返ってみた。そこには慶應にとって3つのアンラッキーがあったとみる。

まず1つめは対戦相手が早明帝筑といった戦い慣れた対抗戦Gの強豪チームではなかったこと。普段、大東大のラグビーを観ることはないだろうし、また、研究する必要もない。去年の大東大の躍進にしても殆どノーマークのルーキー達の活躍によってもたらされたものだから、強力な留学生達がいたころのような名前負けもないはず。そして2つめは、1週間前に昨年度リーグ戦G2位の中央大と対戦して撃破していること。中央に元気がなかったにせよ、リーグ戦Gの2位チームの力から3位チームの力を推し量ってしまうことになった可能性が高いと見る。

しかし、もっと重要だと思う要因(3つめ)として別の要因を挙げたい。それは慶應のディフェンスが大東の戦術に翻弄され対応できなかったこと。後半の戦いのところでも書いたように、大東大はこの試合でSH小山を軸にした選択肢の多いアタック、言い換えればディフェンス側には的を絞りにくいアタックで慶應のディフェンスを攪乱することに成功したというのがこの試合を観た1ファンの感想ということになる。慶應はディフェンスがしっかりしたチーム。それだけに、FWで来るのか、BK展開なのか、あるいはSH自身なのかといった同時多発的な対応を迫られるアタックに対応仕切れなくなったのではないだろうか。そうでなければこんなに点差が付く一方的な試合にはならなかったはず。

もちろん、大東のアタックは帝京のより組織化されパターン化されたアタックに比べたら、完成度もスピードもまだまだ十分とは言えない。ただ、大東のアタックには帝京にはない個人の閃きと能力に根ざした柔軟性があり、精度とスピードが上がったら面白いアタックになるだろう。この試合も、帝京や早稲田と言った強豪との戦いを経て、満を持して大東大が戦術を試すことになったのではないかと思う。だから、もし慶應が大学選手権で大東大と再戦することになったら、大東大は苦戦することになるかもしれない。おそらく慶應はこのまま終わらないはずで、自分達の持ち味を存分に発揮したラグビーで対抗してくることになるだろう。



◆大東大の勝因/戦術が大学ラグビーを変える、そして救う

昨年出版された『ラグビー「観戦力」が高まる』は、日本のラグビーファンにとってエポックメイキングな観戦本だと思う。ただ、そこで語られる世界はトップリーグレベルのものだと思っていた。もちろん、大学レベルでも「戦術」の考え方を取り入れているチームはあると思うが、まだまだ中途半端という印象をぬぐえない。そういった意味では、この試合は「戦術ありき」を意識させてくれた点でしっかりと記憶に残ることになりそうだ。「大東大の勝因は実は戦術にあった。」と声を大にして言いたいところなのだが、まだまだ「シェイプ」や「ポッド」という言葉を使って大東大が用いた(意図した)戦術をうまく説明する自信がない。ただ、ひとつ想うことだが、FWのボールキープ/サイドアタックをシェイプに置き換え、BKのオープン展開をポッドに置き換えれば、戦術に対する理解はかなり進むように思う。

さて、大東大の勝因としてもうひとつ挙げたいのは、FW第1列3人の攻守にわたる頑張り。最前線で常に身体を張り続け、自分達のやれる方法でチームの勝利に貢献したと言えるだろう。昨シーズンまでは第1列は高橋の孤軍奮闘の感もあったが、今年は3人が1枚岩になって戦える体制が整ったと言えそう。もちろん、大東大がほぼ自分達の思い通りのラグビーができたのは、FW戦で互角以上に戦えたことが大きい。そしてひとつ気がついた事がある。チームが戦術的に鍛えられているかを判断したいと思ったら、FW第1列の選手がどんな動きをしているかを見ることがいいのではないかということ。必要なスペースを迷いなく埋めているか、それともどう動いていいか迷っているか。些細なことかも知れないが、戦術という切り口でラグビーを観る場合には重要なファクターになると思う。

今後のことだが、FWが強力で小山がプレッシャーを受ける中で同じラグビーが出来るかが大東大のさらなる躍進に向けてのポイントになると思う。そのような場合には、SH(9)だけが起点ではなく、SO(10)、あるいはCTB(12)が起点となるようなアタックを仕掛けることになるかも知れない。そこでキーマンとなるのは、おそらくこの日に地味ながらも堅実なプレーを見せた4年生の久保田。大東大の戦術がどのような形で進化していくのかに注目していきたい。

余談ながら...もし、この試合を10数年前にインプレー中でも歩いていたOBのFW第1列の選手達が見ていたらどんな感想を漏らしただろうか。ふと、そんなことも考えてしまった。

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