『魂の兄弟達』で無意識のうちにジャズの洗礼を受けた形になったのだが、そのままコルトレーンに向かうことはなく、マクラフリンの音楽にとくに関心を抱くこともなかった。ジャズとの本当の出逢いはもう少し先のことになる。
そんなイメージチェンジしたサンタナに対して?マークが点灯し始めた頃、タイミングよくリリースされたのが『ウェルカム』だった。純白無垢のジャケットに筆記体でしたためられた「Welcome」の文字が立体的に浮かび上がるといったシンプルの極みといったような装丁が話題を呼んだ(という話はつと聞かないが)レコード。
同じ頃行われた日本でのライブを記録した『ロータスの伝説』の22面体ジャケットに代表されるように、サンタナのレコード会社泣かせはここから始まったと言っていいのかもしれない。いくらドル箱アーティストの要望とはいえ、お店でディスプレイしても「白い壁」にしかならない代物ならぬ白物だから。
でも音楽の内容は違う。「ソウサリートのサンバ」や「マザー・アフリカ」などでさらにサンタナワールドが拡がりを見せ、コルトレーンから当時人気を博したマッコイ・タイナーを彷彿とさせる熱い音楽までとフルコースメニューが詰まっている充実した作品に仕上がっていた。ゲストボーカリストにレオン・トーマスを迎えたことも話題を呼んだ。
そして、ここでも新たな出逢いがあった。ブラジル出身の歌姫フローラ・プリン(プリム)がその人。チック・コリア&リターン・トゥ・フォーエヴァーへの参加で名を知られることになるものの、当時はまだ無名の存在。”Yours Is The Light” での神秘性も漂うボーカルにすっかりやられてしまったのだった。フローラの音楽とは、その後数年を隔てての偶然の出逢いが決定打となり、現在に至るまでも親密なおつきあいが続いている。
さて、この『ウェルカム』の位置づけだが、『キャラヴァンサライ』の世界をさらに発展させたと言って間違いないと思う。ただ、参加メンバーがチーム一丸となってゴールを目指した前作に比べると、焦点が定まっていない感があるのも否めない。サンタナの多面性が楽しめる反面とやや統一感に欠けて全体的にはパワー不足を感じさせる部分もあるかもしれない。プロデュースにも苦労があったのではないだろうか。
そうはいっても、このアルバムも何度も針を下ろして慣れ親しんでいることは『キャラヴァンサライ』と何ら変わるところがない。この『ウェルカム』のおかげで、まだ、しばらくはサンタナ熱が冷めることもなく、また、そこから新しい出逢いが生まれたことも確かだ。
◆Santana “Welcome” (1973)
1) Going Home (arranged by Alice Coltrane & New Santana Band)
2) Love Devotion & Surrender (C.Santana – R.Kermode)
3) Samba de Sausalito (J.C.Areas)
4) When I Look Into Your Eyes (M.Shrieve – T.Coster)
5) Yours Is The Light (R.Kermode – M.Shrieve)
6) Mother Africa (Herbie Mann – T.Coster – C.Santane)
7) Light of Life (C.Santana – R.Kermode – T.Coster)
8) Flame Sky (C.Santana – J.McLaughlin)
9) Welcome (John Coltrane)
Carlos Santana : Guitar, Vocal, Percussion
Tom Coster : Keyboards
Richard Kermode : Keyboards
Doug Rouch : Bass
Michael Shrieve : Drums, Percussion
Armand Peraza : Conga, Percussion
Jose Chepito Areas : Timbales, Percussion
Wendy Haas : Vocal
<guest>
John McLaughlin : Guitar
Leon Thomas : Vocal
Flora Purim : Vocal
Joe Farrel : Flute
Jules Brossard : Soprano Sax
Tony Smith : Drums