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映画「レディ・プレーヤー1」:ここまで来たら次は「AKIRA」実写版を!

2018年05月13日 20時45分29秒 | 映画(新作レヴュー)
劇中で,スティーヴン・キングが自身の小説をスタンリー・キューブリックが監督した映画版の「シャイニング」を嫌っていた,という映画ファンには有名なエピソードが語られるのだが,果たして「レディ・プレーヤー1」を観に来るゲーム好きの少年少女が,どのくらいこの一般的にはマニアックと思われる「枝葉」に食い付くのか,疑問に思っていたのだが,興行収入は公開2週目でも3位をキープ。「シャイニング」のスピルバーグ版完全コピーという,真面目な映画ファンは啞然とするような試みが,広くウケたのかどうかは判然としないものの,傑作「ペンタゴン・ペーパーズ」の公開週末比288%という結果は,興行師スピルバーグの面目躍如と言えるだろう。

基本的にアクションはほとんどがVR(ヴァーチャル・リアリティ)ゲームの中で行われるのだが,冒頭のレースのシークエンスに代表されるように,とにかくそのスピードと物量に圧倒される。最後にラスボスとして登場する「メカゴジラ」を筆頭に,スピルバーグお気に入りの日本のアニメやゲームのキャラクターが,次から次へと画面に現れては消え,消えてはまた新しいキャラクターが現れる,が繰り返される。そのヴォリュームは動体視力が良いことに加え,視野欠損の兆候がない若い人でないと,そのすべてを把握することは不可能ではないかと思われるくらいだ。

ストーリー自体は,前作の「ペンタゴン・ペーパーズ」にあった,自らに課せられた社会的な役割や責任を俯瞰しながら重い決断を行う人間の苦悩,という実にアナログかつアナクロな感動的モチーフを意図的に排除したと思われる,ロール・プレイング・ゲームの王道を行く「宝探し」だ。従って本作を評価するかどうかは,自分もVRの世界に入り込んで,そんなキャラクターたちと同一次元で冒険を楽しめるかどうかにかかっている。
そんな観点から見たら,アバターが体感しているVRにおける疾走感と,ゴーグルを装着して身体を傾けるリアル・ワールドのプレーヤーたちの姿の差を,どうにも「間が抜けている」と感じてしまい,マーク・ライランスとサイモン・ペッグという,近年の「スピルバーグ・ファミリー」が登場してきて(ライランスはアバターだが)ようやくホッとしてしまった私は,フライヤーにある「新世代VRワールド」における「最高の,初体験」をするには,どうにも相応しくない「プレーヤー」だったようだ。せめて底は浅くとも,ロープレの鉄則である「チームの結束と信頼」が一番の武器だ,的なエピソードは,もう少し前面に打ち出しても良かったのでは,という感じだ。

ということで私はノレなかった本作だが,これを70歳を過ぎた監督が撮ったという事実は,劇中のVR世界よりもはるかに「4DX」な衝撃だ。内容はさることながら,「チャレンジに年齢は関係ない」というメッセージの方が,遥かに刺激的だった新作に☆をひとつ追加。
★★☆
(★★★★★が最高)


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