子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

2007年の10本(映画)

2007年12月23日 22時04分37秒 | 映画(新作レヴュー)
音楽に続いて,今年劇場で観て感銘を受けた外国映画10本を選んでみました。
音楽の時と同様に,順番は付けていません。

1 「ディパーテッド」マーティン・スコセッシ
2 「クイーン」スティーブン・フリアーズ
3 「ボラット 栄光なる国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習」ラリー・チャールズ
4 「ゾディアック」デヴィッド・フィンチャー
5 「リトル・チルドレン」トッド・フィールド
6 「ボルベール〈帰郷〉」ペドロ・アルモドバル
7 「パンズ・ラビリンス」ギジェルモ・デル・トロ
8 「ボーン・アルティメイタム」ポール・グリーングラス
9 「長江哀歌」ジャ・ジャンクー(写真)
10 「アフター・ウェディング」スサンネ・ビア

1は批評面でも興行的にも,日本では全くと言っていいくらい振るわなかったようですが,スコセッシの特質が良く出た佳作だったと思います。少ない出演場面を逆手にとってマーク・ウォルバーグがさらってしまったのは,レオ様にとっては誤算だったかもしれませんが。
2は物語にもヘレン・ミレンにも打ちのめされました。メディアの恐ろしさを,間接話法でえぐり出したフリアーズの手腕も,冴えわたっていました。
私が推薦したがために,3を観に行って,目が点になってしまった長谷川君,御免なさい。でも私にとっては,近年最高のコメディだったのでした。
デビュー作をひっくり返したような作劇で見事復活を果たしたデヴィッド・フィンチャーの4も記憶に残ります。家に帰ってすぐに「ダーティー・ハリー」を見直しました。
夏の暑い最中に観た5は,ケイト・ウィンスレットの重量感とジャッキー・アール・ヘイリーの軽量感の対比が,実に印象的でした。
どんなに経験を重ねても,同じような題材を扱っても,瑞々しい視点で傑作を撮り続けることは可能であるということの生きた見本,アルモドバルの新作である6は,今度も素晴らしい作品でした。
この中で1作を選べと言われたら,今年は7を選びます。「ミミック」を撮った監督が,こんな場所に到達するとは思いもしませんでした。脱帽です。
完璧な撮影プランに基づく,完璧なモンタージュ。8の隙のない佇まいは,アクション映画の長い歴史に燦然と輝く金字塔となりました。
70年代の初めに山田洋次が撮った「家族」の,新世紀版返歌という印象を受けた9は,リンチの「インランド・エンパイア」とは対照的に,デジタル・ヴィデオの質感を最大限に利用した画面の寂寥感が,ずしりと応えました。
10は「死」を題材にしながら,人間の運命と可能性を希望をもって描いた姿勢と,映画の特質を最大限に活かす技術の高さに,感銘を受けました。

その他では,アルトマンの遺作となった「今宵フィッツジェラルド劇場で」,「パリ・ジュテーム」の賑やかさ,「アポカリプト」の疾走シーン,「デス・プルーフinグラインド・ハウス」のとんでもないカーチェイス,「シッコ」の怒り,等々が記憶に残ります。

日本映画では「監督・ばんざい!」の乾いた諦念,「叫」の赤,いなせな「しゃべれども しゃべれども」,「アヒルと鴨とコインロッカー」で描かれた仙台の街,「サイドカーに犬」のチョコ,「人が人を愛することのどうしようもなさ」における喜多嶋舞の覚悟と津田寛治の男気,堤幸彦のベスト「自虐の詩」,とうとう小ネタが「映画」として結実した「転々」,等が1年を彩ってくれました。

そして,ここでは触れなかった怪作も含めて,暗闇で私を慰撫してくれた全ての映画に感謝を。


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