子供はかまってくれない

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京都サンガVSサンフレッチェ広島【0:0】佐藤寿人の涙

2007年12月09日 23時49分39秒 | サッカーあれこれ
アウェーながら,基本的に引き分け以上で昇格が決まる京都が優位に立って行われた入れ替え戦の第2戦は,序盤から広島の豪華なラインナップに見合った攻撃力が,京都の守備を圧倒し続ける展開となった。

未見の第1戦ではホームの京都に中盤を制圧されたこともあってか,この試合では現J1チームとしての意地を見せるべく,ボランチの柏木が豊富な運動量で中盤の底からボールに絡み,主に右サイドの駒野とのコンビで攻撃の形を作ることに成功していた。
特に,佐藤寿人のヘッドにピタリと合わせたクロスは見事だった。言わずもがなだが,もしあのシュートがバーに嫌われなければ,京都も極端に低かったプレスの位置を変えざるを得なかったはずで,試合の展開は大きく変わっていただろう。

更に第1戦で,高さを活かしたヘッドを2発決められた田原対策として,森田をマークに付けたディフェンスも集中力が切れることはなかった。花道を飾るべくロスタイムに出てきた京都の秋田と違って,最後まで出番を得られなかった戸田は悔しかっただろうが,後半に決定的なシュートをゴールライン上で弾き返したストヤノフのファインプレーも含めて,守備は予想どおりの応対が出来ていたように思う。

問題はやはり攻撃だった。後半に入って右の駒野を左に移して,リ・ハンジェを右に入れた采配には,結果論ながら疑問符が付くが,それよりミスも多く,下がってボールを受けても殆ど全く機能していなかったウエズレイの替え時こそが,キーポイントだったという気がする。
場数を踏んだヴェテランの底力に期待したい気持ちと,目の前の試合で如実に示されていたコンディションとを秤にかけて決断しなければならなかったペトロビッチ監督が下した苦汁の選択は,結果的に時機を失した,と評されても仕方がないだろう。

更に言えば,交替で入れる選手が,たとえ第1戦で貴重なアウェイゴールを入れていたとしても,ユース上がりの1年目の若手しかいなかったというFWの手薄い陣容に責を求めることも可能だ。
入れ替え戦が現実のものとなる前に,FWの緊急補強が出来なかった理由を,ウエズレイの失速だけに求めてもサポーターは納得しないはずだ。昇格を決めた札幌において,シーズン途中で横浜FCから獲得したチョンが,最終局面で重要な役割を果たしたことと対比すると,危機管理という側面における強化担当の判断の大きさを改めて感じさせる試合でもあった。

その札幌の昇格決定試合時にも感じたが,試合を支配していた刺すような空気は,J1に上がるかJ2に留まるかの差の大きさを痛感させるものだった。
それ故,降格に責任を感じた佐藤寿人が,サポーターに向かって「一緒に1年でJ1に戻ろう」と呼びかけていた姿には胸を衝かれるものがあった。日程的に早まったW杯最終予選を控えて,代表に呼ばれることを自らの出処進退を決める際の最優先事項とはしない,という主将の意思表明は尊く重い。駒野や柏木はどういう思いで,寿人の姿を見ていたのだろうか。
嬉し涙が溢れていた京都の選手達の姿は美しかった。対照的な敗者の哀しみが1年後,ビッグアーチを歓びに染める歓喜の声に変わることを祈りたい。


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