子供はかまってくれない

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映画「のんちゃんのり弁」:女優になった小西真奈美

2010年04月17日 17時35分06秒 | 映画(新作レヴュー)
確かに顔が小さくて,測ってみれば八頭身なのかもしれない。でもあどけなくはあっても,そもそも「表情」に現れる「感情」というものが,あるのかないのか定かではなかった小西真奈美。
しかし緒方明の「のんちゃんのり弁」の中盤で,突如料理に自らが進むべき道を見出したヒロインの小巻(小西真奈美)が,岸部一徳演ずる居酒屋の主人に向かって自分の決意を絶叫するシーンには,確かに映画女優がいた。

原作は人気コミックということだが,30女の自活物語という随分と地味な題材が,テンポの良いコメディに昇華した一番の原動力は,女優として開眼した感のある小西を筆頭に,下町の生活感を湛えた役者を揃えたキャスティングなのかもしれない。
中でも「下町人情劇一座」の座長を務めた小西のはじけ振りは,観ていて気持ちが良かった。社会のことを何も知らず,何も出来ないことを認識した後の落ち込みから,「弁当屋を開く」という啓示を受けて一気に沸騰するまでの振幅には,演じている側の開放感までもが伝わってくるような熱い血がたぎっていた。小西真奈美は,もう監督の緒方に足を向けて寝ることは出来ないはずだ。

小巻を囲む役者連もそれぞれ良い味を出していた。小巻を巡って争う岡田義徳と村上淳は,結局好きになる男のタイプは同じかよ,と突っ込みたくなるくらい顔の造作の根本が似ていたし,岸部は「不毛地帯」の里井副社長役とは別人としか思えない生粋の「職人」になりきっていた。だが最も「いるいる」と思わせられたのは,お水上がりの保育士の山口紗弥加。昔は優等生だった小巻に対する複雑な気持ちを秘めつつ,ちゃきちゃきのヤンキー特有の柔らかな包容力で小巻親子を包む描写こそが,物語に安定感を与えていたと言える。
「TVドラマ」サイズのストーリーを,スクリーンのサイズに負けずに(しかし,決して力むことなく)展開して見せようというチャレンジこそ,普遍的な物語に通じる王道なのかもしれない,と考えさせられたジャストサイズの107分。
★★★☆
(★★★★★が最高)


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