映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「ゼロ・グラビティ」 サンドラブロック

2014-01-08 17:10:48 | 映画(洋画:2013年以降主演女性)
映画「ゼロ・グラビティ」ようやく劇場で見に行ってきました。

昨年度№1の呼び声高く、評論家筋の評判もいい。早めに行こうと思っていたが、ホームグラウンドの劇場が吹替しかやっていない。普段ジョージクルーニーとサンドラブロックの声を知り尽くしている自分からすれば、映像美を見るためだけに吹替版は行く気になれなかった。肉声が聞ける3Dの劇場で見た。大正解!
美しい地球から600km離れた場所で、アクシデントに巻き込まれた2人を映す。無重力状態で演じるサンドラブロックには敢闘賞をあげたい。

地球から600kmの上空の宇宙船で2人が作業をしている。メディカル・エンジニアのライアン・ストーン博士(サンドラ・ブロック)とベテラン宇宙飛行士マット・コワルスキー(ジョージ・クルーニー)だ。
そこにヒューストンから連絡が入る。ロシアの宇宙船が爆破したらしい。その破片がものすごいスピードで飛んできているとのことだ。最初は影響ないと聞いたが、二次災害で破片の飛ぶ方向が変わったらしい。

連絡が来るやいなや、まさに破片が飛んでくる。
そしてスペースシャトルが大破する。船外でミッション遂行中の2人は宇宙の無重力空間に放り出されてしまう。仲間の乗組員は全員死んだようだ。宇宙で2人を繋ぐのはたった1本のロープのみ。酸素はわずかしか残っていない。あと10%の分量だ。しかも、ヒューストンとの通信手段も断たれてしまうが。。。

映像は美しい。
「2001年宇宙の旅」から時間がずいぶんたち、映像の技術は格段に進んだ。宇宙船のメカニックな部分や宇宙を映す映像も極めて緻密である。プロ集団による設計がなされていることがよくわかる。3Dも効果的に映し出され、無重力の中で物体が目の前に飛んでくるような感覚がいい。ここまで宇宙遊泳を美しく映した映像は初めてではないだろうか?


ここで踏ん張るのはサンドラブロックである。どのように撮影したのかわからないが、無重力空間の中で身体がくるくる回転する。頭がまわって仕方ないと思う。宇宙服もきている。すごい重装備で普通であればそんなに身軽には動けないだろう。
その後宇宙船の中で宇宙服を脱いでランニングとショートパンツの身軽な格好になる。無重力空間を潜水で泳ぐがごとく船内を動き回る。50歳にあともう一歩というサンドラが極めて身のこなしの良い動きをする。


そうして次から次へと困難が彼女の元を押し寄せる。火事が起きた時はドキドキした。
障害物をかわしていくサンドラを見るのは楽しい。

(無音状態)
見どころはたくさんある。
自分なりに一番ハッとしたシーンは、サンドラがロシアの宇宙船ソユーズに向かい、それを操縦しようとする場面である。いつ死んでもおかしくないような状態から懸命に地球に向けて脱出しようとして宇宙船ソユーズの中に入る。別の国の宇宙船だから、操縦方法はわからない。コントロールピットの操縦ボタンをいくつか押してトライしたが、うまくいかない。

その時、窓外に宇宙飛行士がいるではないか!!!しかも、その宇宙飛行士が船内に入ってくる。
そのあと無音状態がくる。ここがよかった。その瞬間劇場内も完全に無音の沈黙状態になった。
サウンド設計は音楽がガンガン鳴り響くのだけがいいわけではない。
編集の巧みさを示す部分でもある。

宇宙飛行のことはよくわからないが、他の国の宇宙船にこんなに簡単に乗り移れるのであろうか?
などなど、本当にそうなるかなあ?という場面がいくつかあった。フィクションなのにそんなこと気にする必要もないけれど、若干大げさかな?と思わせる部分があったのが気になる。
編集技術も絶妙で、映画技術の究極に挑戦したよくできた映画とは思うが、映画としての感動はピカイチではなかった。
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映画「奇跡のリンゴ」 阿部サダヲ&菅野美穂

2014-01-05 18:30:01 | 映画(日本 2013年以降主演男性)
映画「奇跡のリンゴ」は2013年公開作品

最近あたっている阿部サダヲの主演だ。映画でその力量を発揮する名コメディアンに育ってきた。実際にはシリアスドラマとなってもおかしくないこの題材も彼が主演だと和らいだタッチで映画が流れていく。相手役には菅野美穂をもってきた。表情に大衆的な要素を含んだ彼女の起用も成功である。

青森県中津軽郡が舞台だ
この地で生まれた秋則(阿部サダヲ)には、付近一帯を覆うリンゴ畑や農業への関心はなかった。普通に都会に出て勤め人になった。そんな彼に転機が訪れる。リンゴ農家の娘・木村美栄子(菅野美穂)とお見合い結婚して木村家に入ることになったのだ。リンゴ造りは秋則にとっては初めての経験だった。しばらくたって妻の身体に異変が起きることに気づく。リンゴの木は害虫がついてしまうので、農薬なしでは生産不可能な果物である。繰り返し散布する農薬の影響で皮膚がかぶれ、数日間寝込むこともあった。

そんなとき、秋則は無農薬による栽培の本をみつける。本の通りにうまくいけば妻は健康になるはずだ。そう考えて「リンゴの無農薬栽培」への挑戦を決意し、若い仲間の賛同を得た。しかし、木には大量の害虫がついてしまうのだ。最初は関心を示した若手後継者も徐々に離れていった。そんな秋則を美栄子の父・征冶(山崎努)は、私財を投げ打ち応援してくれた。

しかし、うまくいかない。周囲の農家から「カマドケシ」(破産者)とバカにされ、家族は貧困にあえいでいた。およそ10年の間、リンゴ畑に奇跡が起きることはなかった。

追い詰められ、秋則は1人で岩木山を登り、自殺しようとした時、山の中に1本のリンゴの木が目に止まった。その枝には、果実がぶら下がっていた。その樹木に近づき、秋則はあることに気づくが。。。。


「奇跡のリンゴ」という本は本屋でよく見かけた。表紙の写真を見て変なオヤジだなあと思っていた。立ち読みする気にもならなかった。予告編やTVの特集でストーリーの大体の予想はできた。最終的に失敗する話ではないだろうなんて思うと劇場から足が遠のく。見てみると実際予想通りであった。
この話ちょっと出来過ぎかな?といった印象を受ける。バイトなどをやっているとはいえ、いくらなんでも農業従事して10年無収入でいいのかな?ということが気になる。「見切り千両」ではないが、どこかで方向転換しないと破産してしまってもおかしくないはずだ。この映画で語られている以上に親は裕福で援助があったのかもしれない。そうでなかったら、借金したならばとっくにパンクしてもおかしくないはずだ。
ちょっと自分にはあわない話だと感じた。

それでも、山の中でたくましく花を咲かせている木に行き、気づいたことは「なるほどそういうことがあるのか」と感心した。農業の知識はゼロ、植物方面が全くわからない自分なので、雑草や豆の効用ということは知らなかった。自宅に梅の花やらバラやら色々と咲く花がある。そういえば、父母が生きている時よりも死んでからの方がきれいに花が咲くようになった気がする。どちらかというと死んでからちゃんと手入れをしていない。花壇には雑草のようなものも生える。この映画の理論でいうとその方がいいという話になる。なるほどなあ。

阿部サダヲ、菅野美穂いずれも好演である。まわりを固める俳優も上級者だらけで問題なし。山崎努もあの世に行く役を演じることがここにきて出だした。名優まだまだ頑張ってもらいたいけど。。。


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映画「はじまりのみち」 加瀬亮

2014-01-05 08:01:45 | 映画(日本 2013年以降主演男性)
映画「はじまりのみち」は戦後日本映画界を代表する木下恵介監督の若き日を描いたオマージュ映画だ。

これも予想以上にいい映画だ。胸にしみるシーンがいくつかあった。
木下恵介が好き?と言われれば、「それなりに」と答えるしかない。戦後の著名作品はそれなりに見ている方だ。「二十四の瞳」は少年のころ見てすごく感動した。今でも素晴らしいと思う。他はそれほどでもない。そんなこともあり、DVDスルーしていたが、正直この作品にはビックリした。

昭和20年4月の松竹撮影所で木下恵介監督(加瀬亮)と松竹幹部の城戸四郎(大杉)が向かい合う。
木下恵介が監督に昇格して2作目の「陸軍」は陸軍の士気高揚を図るためにつくられた映画であった。しかし、ラストシーンで母親が子を見送るシーンがめめしく、兵隊の士気が上がらないと陸軍から文句をつけられた。それで城戸に注意され、次の作品の話が没となった。木下は辞表を出す。城戸は辞表を預かるといったが木下は故郷の浜松に帰ることになった。

実家は浜松で食料品店を営んでいた。戦火激しく郊外に疎開していた。母(田中裕子)は脳溢血を患い、満足に話ができない状態になっていた。その母を別の疎開先に移動させることになった。しかし、戦火激しく母を輸送する車を用意できる状況ではない。バスで移動というわけにも行かない。そこで恵介はリアカーで運び込むことにした。距離は60キロに及ぶ。家業を継いでいる兄(ユースケ・サンタマリア)と兄が雇った便利屋(濱田岳)が同行することになった。歩いても歩いても先は遠い。3人とも神経をピリピリしながらの珍道中である。

休憩の時、便利屋が職業を恵介に聞く。映画監(館)とまで言いかけて、今は無職だという。「そうか映画館に勤めていたのか。」と便利屋がひとり合点する。恵介は正体を表わさず、道中は続く。
途中で旅館で休もうとしたが、どこも満室で入れない。病人を抱えて難儀したが、ようやく探しあてた旅館に入って一泊することになった。気を紛らすために、恵介が一人川辺をたたずんでいると、便利屋が近寄ってくる。映画館で働いていたとことを知り、便利屋があの映画よかったなあと話に出したのが「陸軍」だった。知っているか?と聞かれ、恵介はとぼける。
便利屋が熱を込めて、この映画の良い所を力説するにつれて、恵介はあの映画のことを思い出すのであるが。。。。

(陸軍)
このあと映画「陸軍」のラストシーンが流れる。異様なテンションの高さに感動した。背筋がぞくっとしてしまった。映画ファンを自称しながら、この映画を今まで知らなかったことを恥じた。それくらいのすごいシーンである。
ある地方の町で、田中絹代扮する母親が自宅で出征に向かう兵隊の行進する響きを聞きつける。外に飛び出て懸命に街道に向かって走る。街道では陸軍の兵隊が行進している。母親はわが子を探そうとする。大勢いてわからない。カメラがそれを追いかける。そして見つける。

行進とともに母は一緒に駆けていくが、沿道には大勢の人だかりで母親はころんでしまう。何もなかったように行進は進んでいく。最後無事を祈り、母親は手を合わせる。
陸軍の士気高揚を目指した映画だけに、福岡市の目抜き通りがエキストラで一杯になる。陸軍の命令かもしれない。これ自体今ではありえない。実際の行進に合わせてつくられたドキュメンタリーではないかと思ってしまうくらいだ。しかも、田中絹代を追いかけるカメラワークが躍動的だ。彼女が息子を追いかけていく途中で、自分の身体の中でものすごい蒸気が高まる。沸点をこえる。やはり田中絹代は大女優だ。改めて感じる。感動した。

途中で陸軍の1シーンが流れ、いったんこの映画のピークを迎える。
それまでは木下恵介の強情さが鼻についたシーンが多かった。そのなかで暗い戦争の話を茶化すように濱田がうまく使われている。恵介兄弟や旅館の娘たちとのやり取りで笑わせてくれる。やっぱり彼はうまい。昨年の「みなさんさようなら」は年間ベスト3に入る快作だと自分は思っている。同時にクセの強い木下恵介を演じた加瀬亮もうまい。ユースケサンタマリアもいつもより抑えた演技で、家督相続があった時代の長男らしい思いやりのある兄貴を演じる。

(気になるシーン)
監督はいくつかヤマをもってきている。その中でも2つ印象に残るシーンがある。
まずは宮崎あおい扮する女教師が子どもたちを引き連れている場面だ。映画「二十四の瞳」の1シーンを連想させる。それを恵介が手でファインダーを見るように彼女たちの動きを追いかける。もう映画監督を辞めたと言い切った後の恵介が何かを構想したはずだ。いいシーンだ。宮崎あおいのナレーターも実に良かった。

田中裕子扮する母はリアカーで運ばれるが、道中強い雨に降られて、顔には泥が飛んでいる。旅館についた時、恵介は井戸を貸してもらって手拭いに水を付けて、母の顔をふく。女優が映画の撮影の前に化粧をするような雰囲気でふいていく。これが実に美しい。老いた母の顔がきれいになっていく。田中裕子の映画で好きな映画をいくつも取り上げてきた。「天城越え」「夜叉」「いつか読書する日」の3つはいずれも傑作だ。若き日の方が妖艶な魅力をもつが、今の彼女もすばらしい。



最後にはオマージュのように戦後の木下恵介の代表作が映される。見たことある映画も多い。まだ見ていない「破れ太鼓」で主演の阪東妻三郎の顔を見て、つい数年前に亡くなった息子の田村高廣に瓜二つなのに驚いた。ここでは流れないが、弟の木下忠司の音楽はちょっとしつこい。「喜びも悲しみも幾年月」のように音楽と情景が合わないで映画のムードをぶち壊すこともあった。逆にこの映画の音楽はよかった。ロードムービーであるデイヴィッド・リンチ監督「ストレイトストーリー」や「パリテキサス」の匂いを感じさせる。「パリテキサス」のライクーダのギターを思わせるアコースティックギターの使い方は絶妙であった。

以前お世話になった人で、少年時代木下恵介作品に出演した方がいた。話を聞くと木下監督はかなりの完全主義だったそうだ。自分が思う青空が映し出されるまで、撮影はストップになったとおっしゃっていた。この映画でも木下恵介はかなり偏屈だったというイメージを醸し出す。独身で潔癖症の気難しい男だったのであろう。
木下作品を流す時間のウェイトが意外に長く、しつこい印象も持ったが仕方ないだろう。

いずれにせよ、この映画にはビックリした。
「陸軍」はさっそく探り当ててみる。
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映画「箱入り息子の恋」

2014-01-04 04:35:40 | 映画(日本 2013年以降主演男性)
映画「箱入り息子の恋」は2013年公開の日本映画

評判の割には期待外れの映画だった。
恋に不器用な男女って多いかもしれない。
それを描くのはいいが、設定が何か不自然で今一つしっくりこない。

市役所に勤める天雫健太郎(星野源)は、内気な性格が災いしてか、35歳にもなって女性と付き合ったことが一度もなかった。家と職場を往復するだけの日々で、ペットのカエルが唯一の癒しという健太郎を見かねて、健太郎の両親は親同士が子どもの結婚相手を探す代理お見合いに参加。今井家の一人娘・奈穂子(夏帆)とのお見合いを決めてくる。
お見合い当日、緊張する中、清楚で美しい奈穂子を見て、健太郎は生まれて初めて恋に落ちる。奈穂子の目が見えないことはものともせず、好きという感情を爆発させる健太郎。しかし二人の行く手には幾多の壁が立ちふさがっていた……。

公務員で毎日決まった時間に出て、決まった仕事をしてという人は割といるかもしれない。でもここまで内向性の強い人っているのかしら?という疑問と盲目の女性とのお付き合いという設定がどうも不自然に思える。
超エリート官僚は別として、どちらかというと、公務員の人って周辺にいる公務員同士と結婚して、共稼ぎして、しっかり収入を得てという人も多い。ちゃっかりとした人が多い個人的印象を持つ。確かにそういう人物像も映画の中には出てくるけど、この人ちょっと違いすぎる。しかも、この主人公の設定で「箱入り息子」という題名もおかしい。

だからと言って、主演2人の演技に問題があるわけではない。よくやっていると思う。脇を固める両親も一流どころで固めている。当然無難にこなす。吉野家デートなんて発想も悪くないのだけれど、のれないままに映画が終わってしまった。
今一つの映画だった。
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映画「バービー」 キム・セロン

2014-01-03 11:12:52 | 映画(韓国映画)
映画「バービー」は韓国のシリアスドラマだ。

極めて重い映画である。でも心に響く。
冬の小鳥」「アジョシ」で子供ながらに演技力を評価されたキムセロンという少女は気になる存在だ。日本人好みの可愛い顔立ちだと思う。DVDジャケットで彼女の顔をみると、見てみたくなる。前2作で韓国映画ファンにはおなじみの存在になった彼女なのにどうして評判になっていないと思っていた。先入観なしに映画を見てみたらその理由はよくわかった。日本人感覚にはえげつないのだろう。
冬の小鳥」同様、韓国から外国への養子問題がテーマであることはすぐわかる。韓国社会特有の底辺を彷徨う人物たちをここでも映す。でもそれだけではなかった。もっと重い話がそこにはあった。。。。



海辺の町が舞台だ。主人公スニョン(キム・セロン)は小学生、ソーセージの好きな知的障害者の父と、アメリカかぶれの体の弱い妹スンジャ(キム・アロン)、チンピラのような遊び人である叔父のマンテク(イ・チョニ)と暮らしている。スニョンは父がそんな状態なので、家事を賄うばかりでなく、小学生なのに民泊宿を切り盛りし、手作りの携帯ストラップを売って生計を支えている。子供にそうさせているのは叔父で、母親はソウルにいる時交通事故で亡くなっている。

その家族のもとにスニョンを養子にしたいというアメリカ人スティーブと、その娘バービーが訪ねてきた。叔父のマンテクが金目当てに養子縁組を進めている。バービーはスニョンの素朴さが気にいり、彼女なら姉妹として暮らしていけると思った。その動きを察して、アメリカかぶれの妹スンジャは、姉スニョンの代わりに自分が養子になりたいと邪魔をしだす。そもそもアメリカ行きの願望がないスニョンは、自分の代わりにスンジャを養子にしてあげてほしいと叔父に頼む。叔父は身体が弱いことを理由にスンジャではダメだという。それでも、積極的なスンジャはアメリカ人家族に入り込もうと行動を起こすのであるが。。。

養子にしようとしているアメリカ人の父親が子供に対してそっけない。新しいわが子を探しに来ているのに変だな?しかも、娘のバービーが姉妹になるスニョンを気にいる。それをも父親が嫌がる。それと同時に主人公のチンピラじみた叔父が、妹の方がアメリカにどうしても行きたいという願望を懸命にさえぎろうとする。病弱だからだ。そうしているうちに父親と叔父のたくらみが自分にもわかってきた。臓器売買がからんでいるなって。。。

韓国と養子問題
冬の小鳥」は自分にとって衝撃的だった。孤児院が舞台で、外国から子供のいない夫婦が来て自分好みの子供を引き取っていくのだ。監督をした韓国系フランス人は幼少時の実体験をもとにつくったという。孤児院では、外人たちに受けを良くしようと振る舞う少年少女たちも映し出されていた。
韓国から子供たちが外国へ養子縁組で大勢連れだされる事実は「冬の小鳥」を見るまで知らなかった。一時期は年間一万人近く海外へ養子に行った子供がいた時期もあったようだ。日本でも家系を閉ざさないためや相続税をにらんだ養子縁組は今でもあるが、幼少時での子供のいない夫婦への養子縁組は戦前戦後まもなくから比較すると減っている気がする。背景としては、韓国の方が日本よりも正統な家系への執着心が強いのと、片親が暮らしていける社会保障制度がないからだそうだ。ただ、この映画のテーマはそれ以上の問題を含んでいる。

韓国の下流社会
イ・サンウ監督はキムギドク監督のもとで助監督をしていたという。キムギドクは韓国の下流社会のギリギリのところで生き抜く暴力的でハチャメチャな男たちを描きだしたら天下一品だ。ここで描かれる叔父がまさにその典型的な男だ。「嘆きのピエタ」「息もできない」の主人公なども連想させるが、そこまで人物に凄味はない。ただのチンピラの延長で、こんな奴韓国に大勢いるのかもしれない。ここでは、夜の飲み屋で子供に携帯ストラップを売り歩かせたりしている。しばらくすれば、女の子に男の客を呼んだりすることもいとわないような奴だ。あくまで一部のこととは思うが、韓国はやっぱり怖い。

臓器売買
臓器売買を題材にした映画というとキャリーマリガン主演「わたしを離さないで」と佐藤浩市主演「闇の子供たち」が脳裏に浮かぶ。両方ともかなり衝撃だが、この話も重い。しかも、子供がアメリカに行けば夢のような生活が待っていると強く願望している。それなのに金に目がくらんで叔父が自分の姪を売り飛ばす。でもこの話って氷山の一角なのかもしれない。韓国映画を見ていると、格差社会と言われる日本の数十倍もすごい下流社会が存在しているような印象を受ける。

性格の悪い女
今回キムセロンの実妹キム・アロンが出演する。姉と違って目が細い典型的韓国人という顔立ちで、この映画の中ではきつめの女の子を演じている。途中までなんて嫌な女だと思っていた。おまえなんかアメリカに行く資格ないよとまで思っていたが、途中で事情がわかるとこれはやばいなと思いだす。子供に性格の悪い女を演じさせる方がむしろ酷だが、韓国映画の場合この手の俳優は絶対に必要となる存在だけに、逆にイジメ女優として将来を期待されると言ってもいい。最終場面の細い目に上手にメイクした時の顔はよくいる高級韓国クラブのケバイ美人ホステスの顔に見える。

(参考作品)

冬の小鳥
韓国孤児院からフランスに渡った著者の実体験。キムセロンの出世作(参考記事)


アジョシ
韓国版レオン、キムセロンがかわいい


バービー
韓国人身売買の実態


私の少女
キムセロン主演いじめられっ子と女性警察署長の友情(参考記事)
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映画「ナタリー」 オドレイ・トトゥ

2014-01-03 00:02:11 | 映画(フランス映画 )
映画「ナタリー 原題La délicatesse」は「アメリ」のオドレイ・トトゥ主演のフランス映画だ

ツタヤで何げなくこのdvdをみつけた。「アメリ」は大好きな映画である。目で楽しまさせてくれる要素が強く、お茶目な主人公の振る舞いがかわいかった。あれから随分とたつが、オドレイは健在である。今回は未亡人役である。それでも手にとるときに「アメリ」のような匂いを感じ見てみた。アメリで演じた夢想する女の要素を持つ。

ナタリー(オドレイ・トトゥ)はカフェで出会ったフランソワと恋に落ち、幸せな日々を送っていた。しかし、突然の事故で彼を失ってしまう。夫を亡くし、3年間恋愛から離れ仕事一筋の生活を送っていた。ナタリーは夫以降、誰も好きになれないと思っていたある日、かっこいいとは言えない同僚、マーカス(ランソワ・ダミアン)に突然キスをしてしまう。そして、マーカスは魅力的な彼女に惹かれ、ナタリーも素朴な彼に惹かれ始める。しかし、ナタリーに一方的に好意をいだいている会社の社長シャルル(ブリュノ・トデスキーニ)や、噂好きの同僚たち、ナタリーの友人によって二人は騒がれるようになり…。

最初にざっと主人公の人物像を紹介してくれるのは、アメリと同じだ。幸せな結婚に至る過程とあっけなく旦那が死んでしまう流れが語られる。そのあと、就職活動して会社に就職する。そこでバリバリのキャリアレディとして活躍する。リーダーとして部下を持つようになる。そこに部下として入ってくるスウェーデン人男性がいた。ハゲかかっていて見栄えはしない。それまで社長に口説かれていたナタリーだが、突然その中年男にキスをしてしまうのだ。

しかし、そのあと急激に2人の関係が進展するわけではない。彼女は恋におびえている。
ここではキスの後意外にそっけない。これでは男性の方がまいってしまうよ。
一気に相手に入りこめないのだ。
その不器用さがかわいい。オドレイ・トトゥの演技には好感を持てた。

自分は女性の上司というのにはまだ出会っていない。いや、大学生でバイトをしている時女社長っていたなあ。
いずれにせよ、いきなり上司にキスをされたらどんな気持ちになるだろう。別に上司でなくても呼び出されていきなりキスされると想像するだけで不思議な気分にさせられる。マイケルダグラスとデミムーアの「ディスクロージャー」は女性上司による不倫話だったが、それとこの映画では意味合いが全く違う。
逆に女性の場合、セクハラ的にこういう場面はあるだろうなあ。嫌なんだろうけど、好意を抱いている相手だったらいっきに不倫のドツボにはまるパターンかもしれない。

ストーリー的には少し盛り上がりに欠けるかな?もう少しヒネリが欲しかったという印象を受けた。

ナタリー
もし女性の上司に突然キスされたらどうする?


ムード・インディゴ~うたかたの日々~
夢想するオドレイ


アメリ
何度見てもすばらしい不朽の名作、色彩設計がすばらしい。
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映画「25年目の弦楽四重奏」

2014-01-02 06:08:23 | 映画(洋画 2013年以降主演男性)
映画「25年目の弦楽四重奏」は2013年日本公開のアメリカ映画だ。

正月一本目にこの映画を見た。予想を上回るいい映画に出会った気分でいる。すばらしい!
見せ場が多い映画である。ベテラン4人の演技合戦だけではない。じっくり練られた脚本と逸話が見事で、寒波で強烈な雪景色となったニューヨークの風景と合わさりしっとりとした気持ちにさせる。バックに流れる音楽も素晴らしい。
上質な映画に出会えた喜びを感じさせる傑作である。

25年目の極めて精巧な演奏で魅了する第1バイオリンのダニエル(マーク・イヴァニール)、彩りを与える第2バイオリンのロバート(フィリップ・シーモア・ホフマン)、深みをもたらすビオラのレイチェル(キャサリン・キーナー)、チェロのピーター(クリストファー・ウォーケン)から成るフーガ弦楽四重奏団。結成25周年を間近に控え、ピーターがパーキンソン病と診断され、今季限りで引退したいと申し出る。カルテットの一角が崩れることを突き付けられた他のメンバーは動揺。嫉妬やライバル意識、プライベート面での秘密など、それまでに蓋をしてきた感情や葛藤が一気に噴出し、カルテット内に不協和音が響き出す……。

寒波で雪景色になったニューヨークが舞台だ。最初目が慣れるまでは、ここがどこかはわからない。カナダ辺りかと思っていたら、どうもNYセントラルパーク横にあるビルが雪景色の借景になって映し出される。ものすごく寒々しい風景がバックだ。そこに流れるのがベートーベンの弦楽四重奏である。これも暗い雰囲気が漂う。
タイトルからいって、演奏が中心の映画に思えてしまうが、実際には4人の演奏家と取り巻く人たちを中心にした人間ドラマである。プロ演奏家同士の葛藤と嫉妬のせめぎ合いだ。

(若手美女の活躍)
4人のベテラン俳優による演技合戦の様相が強い映画だが、その中に若い女優を2人放つ。これでこの映画では非常に効果的に化学反応がおきる。2人とも25年良好だった4人の関係をおかしくしてしまう魔女のような存在だ。そのうち1人(イモージェン・プーツ)はカルテットの中の夫婦の娘だ。

独身でバイオリンの技巧を究めるダニエルにレッスンを受けている。元々は単なる師弟関係でそっけない間柄が徐々に急接近する。彼女も非常に魅力的だ。

もう一人はロバートのジョギング仲間のフランメンコダンサーだ。エキゾティックな容姿にはドキドキする。魔性の女というわけではないが、この2人を映画に放つだけで最近よくある老人映画にさせない。


(TSエリオット)
この映画の主題曲ベートーベン作品弦楽四重奏曲第14番作品131を愛する人物として大物の名前が出てくる。「20世紀最大の知性」と言うべきTSエリオットだ。ウディアレンの「ミッドナイト・イン・パリ」にも彼の名前が出てきて、ドキッとしたが、今回は彼の詩が紹介される。大学受験の時、駿台予備校英語科に奥井潔というすごい英語教師がいた。構文主義の伊藤和夫に対して、高尚な雑談を中心として、自分ではこういう風には訳せないだろうなあという美しい訳語を用いて英文解釈をしてくれた先生だ。その奥井先生がよく雑談に出していたのがTSエリオットだ。当然のことながら、そんな名前は知らない。懸命に調べた。いくつか読んだが確かに難解だ。今もって理解に至らない。でもこの詩英語で読むほうがしっくりくる。へたに日本語訳しない方がいい。
Time present and time past
Are both perhaps present in time future,
And time future contained in time past.
If all time is eternally present
All time is unredeemable.

Or say that the end precedes the beginning,
And the end and the beginning were always there
Before the beginning and after the end.
And all is always now.

(ウォーレス・ショーン)
チェロのピーターがパーキーソン病になり、自分の後継チェリストを探そうとする。ピーターから依頼を受ける男を見て、「オ~!」とうなった。ウォーレス・ショーンだ。久々に見た。

「死刑台のエレベーター」で有名なフランスのルイマル監督による日本未公開だけど、隠れた名作がある。「my dinner with andre」だ。アメリカのインテリには受けている映画だ。それ自体は2人のトークだけで、観念的、抽象的な哲学的会話が交わされる。その1人がウォーレスショーンである。ウディアレンの初期の作品あたりではよく見る顔であったが、今は「トイストーリー」の吹き替えくらいだ。その彼が登場する。昔のいかにもダメ男風の風貌から若干貫禄がついてきた。教養人でもあり適役である。

(カザルスの余談)
クリストファーウォーケン扮するピーターが音楽学校で弦楽を教えている時に、チェロの巨匠パブロ・カザルスのパフォーマンスを取り上げる。

学生たちが一緒に演奏している時に、一人の学生がチョンボをする。それに対して別の学生が強く誤りを指摘する。そのしぐさをみたピーターはカザルスの前で演奏した時の経験を話す。巨匠の前で演奏する時、緊張していい演奏ができなかった。でもカザルスは良かったと言ってくれた。もう一度演奏したらもっと出来が悪かった。それでも「すばらしい、見事だ」と言ってくれる。自分はむしろカザルスは不誠実だと思ったくらいだった。その後プロになりカザルスと一緒に演奏する機会があった。あのときの出来の悪さを自戒し、パブロに対する自分の気持ちを告白した。するとカザルスに怒られた。カザルスはチェロを弾きだした。あの時こういう風に演奏したよねとあるフレーズを再現してくれた。一瞬でもいい演奏を聴かせてくれたことに感謝すると励ましてくれた。
すなわち、悪いところばかりを見ているだけでなく、良い所に着目するということだ。
なるほどと感じた。奥が深い。

パブロカザルスの名前を聞き、高校生の時に読んだ五木寛之「戒厳令の夜」を思い出した。この物語には4人のパブロが登場する。それはパブロ・ピカソ(画家)、パブロ・カザルス(音楽家)、パブロ・ネルーダ(詩人)の実在した3人のパブロと架空のもう一人のパブロである。彼らは1934年のスペイン内戦に関わっている。当時この小説のスケールに感動したものだった。38年ぶりに再読してみたい。
  
(ニナ・リー)
クリストファーウォーケンが自分の後継のチェリストとして、ニナ・リーという女性が推薦される。彼女は後半その姿を現す。彼女自体本物のチェロのプロだ。チェロを演奏するシーンでは、真剣に弦をあてがう姿が映し出される。表情が違う。おっとすごいや。リーという名のごとく東洋系だ。中国系かな?これも見モノだ。

4人はそれぞれの楽器のレッスンを受けたという。そうでないと弦の使い方など不自然すぎてしまうだろう。特に第1バイオリンのダニエルのプロっぽいしぐさがいい。今回は監督の力量が光る。
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映画「探偵はBARにいる2」 大泉洋

2014-01-01 12:47:25 | 映画(日本 2013年以降主演男性)
映画「探偵はBARにいる2」は好評だった第1作に続いて2013年に公開された作品だ。

前作同様札幌が舞台で、地元大泉洋と松田龍平のデコボココンビが主演である。
タッチは前作同様で、「フィルムノワール」のように美女に依頼された探偵が事件に巻き込まれるという構図だ。ススキノに本拠地を持つ遊び人探偵大泉洋のキャラで成り立っているような映画に、売れ筋作品への出演が目立つ尾野真千子がからんでくる。
映画としては普通かな?

札幌ススキノ。探偵(大泉洋)行きつけのショーパブの従業員で友達のオカマのマサコちゃん(ゴリ)が殺害された。マサコちゃんは手品が得意で、マジックコンテストの全国大会に出場。二日前にその祝賀会を探偵の相棒・高田(松田龍平)や仲間の皆で祝ったばかりだった。捜査が一向に進まない状況の中、「マサコちゃんは政界の闇に触れたから殺された」という噂が探偵の耳に入る。時を同じくして、探偵を尾行してきたという女(尾野真千子)から事件究明の依頼が舞い込む。女は有名バイオリニストだ。友達の死の真相を探るため、再び探偵と高田は疾走する……。

友人なので犯人を突き止めようとするが、地元選出の政治家橡脇(渡部篤郎)がからんでいるという。その政治家は反原発の論陣にたった男だ。橡脇はその昔マサコちゃんと愛人関係にあったそうだ。手品の全国大会に出場したおかげで、マサコちゃんが一躍有名人になったため、選挙直前の大事な時期に過去の関係がバレるのではないかと恐れた橡脇がマサコちゃんを闇に葬ったに違いないというわけだ。さらに、マサコちゃんが弟のように可愛がっていた元ホステスのトオル(冨田佳輔)が事件以来行方不明になってるようだ。そこで探偵は相棒が運転するオンボロ車に河島弓子を同乗させトオルの出身地だという室蘭まで調査に出かける。どうも政治家が死ぬ寸前にオカマに会っているのは間違いないようだ。探偵は追いかけるが、政治家のしっぽをつかもうとするとすると邪魔が入る。

この映画では怪しいとされている政治家がなかなか出てこない。顔写真は何度も出てくるのであるが、大泉、松田コンビにからまない。これはある意味うまいやり方かもしれない。映画「ジョーズ」でサメが出てくるのに1時間20分程度かかるのと同じようなものだ。そうやって犯人を政治家に絞らせるような印象を観客に与える。
このコンビが接近しようとすると、この政治家に近い筋とそうでない筋の両方から罠にはめられていく。難儀する2人だ。

うまいと思わせる部分もあるが、最後にかけては若干疑問な?展開
でもこの探偵のキャラはいい加減で好きだ。日本を代表する繁華街ススキノが舞台になっているだけあって、思いっきり遊び人の探偵に仕立てられる。最近はつき合うことすらダメ出しをくらうヤクザと関わりを持つところなんかも悪くない。最初に出てくる美人AV女優麻美ゆま嬢とのからみはうらやましいくらいだ。ドタバタしたカーチェイスや乱闘劇は前回同様で笑えるシーンが続く。このシリーズしばらくは続くだろう。


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