映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

いつか読書する日  田中裕子

2009-06-22 05:08:20 | 映画(自分好みベスト100)
ここ10年の邦画では間違いなくベスト5に入る傑作だ。

田中裕子が50歳の独身女性を演じる。青春時代に想いあっていた二人が、知らん顔をしながらずっと同じ街で暮らしていく。明るい笑顔をいつも振りまく田中裕子が能面のような無機質な顔をする。脚本がよく、坂の多い街並みを映す撮影も美しい。田中裕子の動きも躍動的で映画を盛り上げる。

田中裕子スーパーで働く独身女性。朝の牛乳配達を16年以上も続けている。坂の多い街なので普通よりもたいへんだ。町を出て行く人たちが多いが、一生この町で暮らしていきたいと思っている。岸部一徳はその町の児童課の課長。妻仁科亜希子末期がんにかかり、もう長くない状態である。田中と岸部は学生時代付き合ってお互い思いを寄せていた。ところが、未亡人であった田中の母と岸部の父が不倫をしていた。二人は自転車の二人乗りをしているときに交通事故にあい亡くなった。それを機として、お互い口を利かなくなっていたが。。。。。


実にうまいストーリー立てだ。それに加えて映像が素晴らしい。架空の街西東市とするが、道が細い坂の画像から最初から長崎がロケ地と想像できた。ただ、このカメラワークはこの街を熟知していないと映せない高度なカメラワークだと思う。ルーティーンのような牛乳配達のシーンも坂道を走る田中裕子の軽快な動きを絶妙に映す


田中裕子しけた女を好演する。色気はない。スーパーのレジ係と牛乳配達をずっと続ける単調な日々だ。村上春樹の小説「ノルウェイの森」「国境の南太陽の西」無表情の女性というのがでてくる。村上のイメージした無機質な顔ってこの映画の田中裕子の顔のようなのじゃないであろうか?そんな彼女が突然表情を変える。映画がスタートして1時間半たったときだ。これは田中裕子の顔だ。たとえば高倉健主演「夜叉」あたりと比較するとおもしろい。

田中裕子の旦那ジュリーの昔の仲間岸部一徳も俳優業が板についてきた。この役も実にうまい。市役所の児童課職員の仕事も適任。小さい街だけにすべてがつながっている。彼の存在が二人を取り巻くコミュニティを結びつける。脇を固める渡辺美佐子がずいぶん年取ったなあと思った。仁科亜希子も病弱の役がいい。伊丹十三映画に欠かせない脇役上田耕一が痴呆症をうまく演じる。

ともかくすごくレベルの高い作品だ。


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