映画「IMMACULATE 聖なる胎動」を映画館で観てきました。
映画「IMMACULATE 聖なる胎動」はアメリカからイタリアに渡った修道女をめぐるホラー映画。「鬼滅の刃」に映画館が占領されてたいした新作もなくお休みしようかと考えている矢先に、日経新聞の映画評で名著「批評の教室」の北村紗衣が5つ星をつけている。通常であれば絶対スルーの映画なのになぜか気になる。
北村によれば、清純なはずのキリスト教の修道女が悪徳にふけったり、悪魔に取り憑かれたりする様子を描いたエクスプロイテーション映画(センセーショナルできわどい題材を扱う低予算映画)だそうだ。東映のエロ路線で1974年の「聖獣学園」という多岐川裕美が唯一脱いだ映画があったのを思い出す。なんとなくアナロジーを感じて、気がつくと映画館に足が向く。
イタリアの修道院へとアメリカから招待された敬虔な修道⼥・セシリア(シドニー・スウィーニー)が修道⽣活に慣れた頃、セシリアが処⼥であるにも関わらず妊娠していることが発覚する。ショックを受けるセシリアに対し、彼⼥を次の聖⺟マリアとして崇め、妊娠を祝福する同僚たち。
しかし、⾚いフードを被った謎の集団が現れるようになると、修道⼥の⾃殺や拷問を⽬撃するなどセシリアの周囲では奇妙なことが起こり始める。⾝の危険を感じたセシリアは、頑なに外出を許可しない神⽗たちの⽬を盗んで修道院を抜け出そうとするのだが…。(作品情報引用)
途中から自分にはついていけないホラーの展開になっていった。
多岐川裕美のデビュー作で美乳をさらけ出した「聖獣学園」とこの映画にアナロジーを感じる。修道院内の怪しげな雰囲気はいかにも禁断の女の園を匂わせる。厳格な掟や沈黙のルールは「性的抑圧」がメインだ。「聖獣学園」のように純潔や神への信仰が歪められて支配と暴力に転化する構造はおなじである。カトリック教会が聖母マリア崇拝を通じて女性へ母性や処女性の押しつけていることに対する反逆が主人公の狂気につながっている。怖い!
いきなりホラームードで飛ばしていくというより、ジワリジワリ修道院内の不穏な雰囲気を出していき、ホラー映画独特のドキッとさせるシーンも控えめながら出てくる。その後で「処女懐胎」の場面になっていく。信仰心が厚い修道女が妊娠するのだ。何それ?!と思いつつ映画を観終わっても父親のヒントはない。今まで一度も男性と接したことがない処女であるのにイエスを妊娠したマリアと同じように主人公が修道院でもてはやされるようになる。子どもは人工的に造られた存在なのであろうか?よくわからない。
その後で修道女の粛清が起きる。修道院が行っているのは、宗教という仮面をかぶった極秘の人体実験としか思えない。この実験の成否に関するリスク要因は即排除対象になるのか?まったく意味不明でこのあたりからついていけなくなる。最終局面のスプラッター的転調が異質で完全なホラー展開、女性の身体を使って理想を実現しようとする冷酷な支配者たちを敵視する。お腹が大きい主人公は耐えられなくなっていく。
ネタバレなので言えないがクライマックスはすごい衝撃だ。ホラー好きな人にはいいだろうが自分には無理。シドニー・スウィーニーは狂気の熱演だった。これまでと違う路線で製作にも加わる。もともとホラー好きなのかな?