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映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

甘苦上海3

2009-11-25 21:25:20 | 
もう一度甘苦上海読み直している。

1年少し連載されていたわけだが、読み直して見ると4冊は割とあっさり読める。前回指摘したように、自分の同級生に照らし合わせて、読んでみたりもした。その友人にかかわりのある会社名や地名も出てくる。いずれにせよ、上海は街路に名前があるのが素敵だ。

図書館で上海の写真集を借りた。買うほどのものではないからね。時代は小平が復活して統治しているころの上海だ。光景が若干違う。外灘の由緒ある建物だけでなく、街中の建物がみな戦前から残っておるもののようだ。今でも貧しそうな人はいるが、このころはもっと多そうだ。なんせ文化大革命や四人組の粛清など大事件が次から次へとおきた訳である。このころフランス租界の大邸宅は紅衛兵によって人民に解放なんていっていたのであろうか?

甘苦上海3で衡山路とクロスする東平路の光景が出てくる。このあたりは日本で言うと、麻布~六本木に向けてといったところか?香港の中環セントラルにも素敵なエリアがある。でも東平路のあたりの方が素敵だ。時代を経て残っている古い洋館が多いせいであろう。しかし、ランカイフォンなんて素敵なバー街が香港のセントラルに接してある。猥雑な感じで、セントラルで働く欧米のエリートたちがお酒を楽しんでいる。上海の「新天地」は作られた空間といった印象が強い。猥雑な感じが少し薄れると、楽しくはない。むしろ観光地に近いのではないか?文中に出てくる四川料理俏江南はたくさん支店がある。安定した良い味を出してくる。新天地に近いランドマークにある店が良い。夜のイルミネーションも美しく街並みもきれいだ。

そういったエリアが次から次へと甘苦上海には出てくる。作者はきっと違うというだろうが、私はその昔の田中康夫「なんとなくクリスタル」を連想させる。あの作品でも次から次へと当時の東京の最先端スポットが出ていた。年齢は大学生たちと、中年の遊び人たちと設定は違う。でも主人公紅子ときっと成長したであろう「なんとなくクリスタル」の主人公の年は一緒のはずだ。こんな風に成長してしまうということかもしれない。京との関係にさまよう激しい官能的な表現は、クリスタルの主人公が感じていたそれと似かよっている印象だ。

作者はきれいなところだけを見せるのではなく、中国の真実のようなところに入っていく。カラオケ嬢を作品の中で登場させる。しかも、彼女たちのルーツ、田舎まで追いかけていく。そこには都市部との落差が激しいものが存在する。彼らの顔を見ると、そこに住む人たちの年齢は、明らかに今の日本人よりも10歳はふけていると思う。紅子は運転手と一緒にそこへ向かう。作者は取材で当然田舎の方も行ったはずだがタイムマシーンに乗ったような錯覚に陥ったのだと思う。いかにも中国は奥が深い。
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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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狭間という虚構の時代なのだろうか (村石太の証明)
2012-10-04 21:25:15
田中康夫 プログで 検索中です
なんとなくクリスタル 流行りましたね
まだ 私は 読んでいません。
田中康夫さんの 講演会を ある学園祭で 聴いたことあります。ちょうど 長野の県知事になるぐらいの時期かなぁ?よく思いだせない。超満員でした。(その教室は 後ろの方だと 声しか 聞けない状態 廊下に あふれるぐらいの人)
小説家研究会(名前検討中
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田中康夫 (wangchai)
2012-10-07 10:11:13
突然の田中康夫コメントには驚きます。

戦後高度成長時代には、学生運動にうつつをぬかすバカな時代がありました。単純なことを妙に難しく言うことがよいとされた時代があった。そんなことへの疲れが出たころに登場したのが、矢沢永吉がつくったキャロルであった。しかし、当時の矢沢永吉には世界を変えるほどの影響力はなかった。
しかし、その転換期はアメリカで生まれた。ベトナム戦争時期は反体制で進んだアメリカも、大統領選でのマクガバン候補の敗戦でようやく目が覚めた。ディスコブームがはじまる。そしてトラボルタ主演「サタデイナイトフィーバー」でブームが頂点になる。日本も学生運動をやりながら、左翼系の難しいことを言う奴がバカだということがわかってきた。そんな時登場した田中康夫の「なんとなくクリスタル」はお見事だったと思う。六本木、青山での遊び方を端的に文章に織り込んだのが巧みだった。みんな目が覚めた。そして狂騒のバブル時代に進んでいくのである。
そう言った意味でのこの作品の意義は大きいと思う。

私が甘苦上海で田中康夫の「なんとなくクリスタル」の話をしたのは、あの主人公の女性が50代になったら、きっと甘苦上海の主人公みたいになったろうなあと思うからでした。
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