映画とライフデザイン

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映画「命をつなぐバイオリン」

2013-10-30 18:09:23 | 映画(欧州映画含むアフリカ除くフランス )
映画「命をつなぐバイオリン」は今年公開のドイツ映画だ。

原題を日本語にすると「神童」である。
第二次大戦初期のソビエト連邦の一部だったウクライナを舞台に、音楽の才能に優れた少年少女と敵国であるドイツ人の女の子との友情を描く。子役の選択が巧みで、実力のあるバイオリンの腕を見せてくれている。


1941年春、ソ連の支配下にあったウクライナが舞台だ。
2人のユダヤ人の子供、アブラーシャという少年はバイオリンで、ラリッサという少女はピアノで、人々を魅了していた。彼らは神童(Wunderkinder)と呼ばれていた。スターリンやソ連の幹部の前で演奏したこともあった。ユダヤ人の音楽教師であるイリーナの指導のもと、アメリカのカーネギー・ホールへのツアーも決定していた。

そんな二人が遊んでいるとドイツ人の少女ハンナが一緒に遊んでくれないかと話しかけてきた。そんなハンナに対して2人は警戒して無視をしていた。そんな時、裕福なハンナの父親がアブラーシャの父親に一緒にレッスンを受けさせることをお願いする。そこには金銭も絡み最初は嫌がるが、「友達になりたかった」というハンナの性格もよく、アブラーシャとラリッサも次第にとけこんでいく。2人が作っている「友情の曲」の譜面をハンナが見て引き込まれる。
しかし、ドイツ軍がソ連に戦争を仕掛けてきた。ドイツ人は一夜にして敵となる。ハンナとその家族は身を隠さなければならなくなった。彼らを救ったのは、アブラーシャとラリッサのユダヤ人家族だった。そして、ドイツ軍がウクライナを占領する。立場が全く逆転して、ドイツ軍将校にハンナの家族が保護される。敵国の将校の前で演奏する機会もでてきた。

そして、ナチスのユダヤ人への迫害が始まった。ユダヤ人2人の祖父母が、強制収容所に送られていく。そして音楽教師イリ―ナも50歳以上ということでドイツ軍から強制招集がかかるのであるが。。。

独ソ戦をとりまく情勢は、世界史の中でも重要な出来事である。
ヒトラーもスターリンもある意味同じような人物だ。ファシズム=全体主義=共産主義だ。ユダヤ人の迫害はドイツの方が極端だが、スターリン主導の粛清はそれに匹敵する。1939年8月両者は独ソ不可侵条約を結び、世界をアッと言わせる。そして翌月ポーランド侵攻で第二次大戦がはじまる。ポーランドはドイツとソビエト両方からの挟み撃ちである。むしろソビエトのポーランド支配の方がえげつなかったというのは映画「エニグマ」でも随分と語られている。ソビエトはフィンランドやバルト三国を占領し、国際連盟を追放されるのだ。

ヒトラーとスターリンの2人似た者同士でお互いのことを信頼していない。ヒトラーは1941年独ソ戦に踏み切るのだ。これ自体がヒトラーの誤りの始まりかもしれない。これには日本の天皇陛下もヤバイと思ったようだ。むしろアフリカの方に目を向けないと「ナポレオン」の二の舞になると、ヒトラーに伝言してくれと東條英機に言ったが全く通じなかった。この映画では、そのナチス占領でウクライナにも大勢いるユダヤ人が迫害を受けるという構図だ。

ユダヤ人迫害の映画は悲劇がほとんどだ。子供を描いたものでは「縞模様のパジャマの少年」がある。結果は別の意味の悲劇ともいえるが、どれもこれも後味はよくない。この映画も同様だ。

でもここでは音楽の素養がある少年少女を起用して、音楽での見せ場を作っているのが若干違うところだろう。
それと、この映画の映像コンテが実に美しい。アングルがよく練られている撮影のうまさが光る。そういう映画としての美しさがあるので映画のレベルが高くなっている。
コメント
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