映画とライフデザイン

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映画「夜明けのすべて」 松村北斗&上白石萌音&三宅唱

2024-02-18 08:22:04 | 映画(日本 2019年以降)
映画「夜明けのすべて」を映画館で観てきました。


映画「夜明けのすべて」は、「ケイコ目を澄ませて」で映画界の各種賞を総なめした三宅唱監督瀬尾まいこの原作を映画化した作品である。病気系の話で暗いかなと思ったけど、妙に評判のいい映画で気になってしまう。軽い障がいを持った役柄を演じる主演の2人は松村北斗と上白石萌音である。上白石萌音の顔を見て、主演作を観るのは吹替えの「君の名は」はあっても「舞妓はレディ」以来10年ぶりだということに気づく。光石研、渋川清彦、最近注目の若手芋生悠といったメンバーが脇を固める。

月に一度、PMS(月経前症候群)イライラが抑えられなくなる藤沢(上白石萌音)は新卒で入社した会社を発作によるトラブルで辞めた。結局子ども向けの理科実験道具などの科学グッズをつくる栗田科学で商品管理をする。転職で入社してきた山添(松村北斗)が周囲に挨拶もせずに炭酸水をガブガブ飲むのを見て、いつものように必要以上に癇癪を起こしてしまう。

注意された山添もまたパニック障害を抱えていて、定期的に通院していた。恋人(芋生悠)がいるにもかかわらず、電車にも乗れない状況になっていた。最初はぎくしゃくしていた2人の関係も,病気持ちはお互い様と面倒見の良い藤沢から接近して,お互いのアパートへ訪れるようにもなる。栗田社長(光石研)をはじめとした職場の人たちも2人の病気を理解して、移動プラネタリウムのプロジェクトに取り組んでいる。


柔らかいムードが流れる障がいを持った人の成長物語だ。
2人の障がいの発作を示すシーンはあっても,血生臭い暴力シーンは一切ない。ベタベタした恋愛シーンや濡れ場もない。不快に思うシーンはない。2人が周囲の理解のもと徐々に自らの障がいを克服していく姿が映される。恋愛か友情かのようなコメントも目立つけど,そんな事は言ってられない事情が2人にはある。いかにも文化庁からの支援を受けている映画らしい健全さが売りだ。カーネギーの「人を動かす」の実例みたいな逸話も多い。

PMSという障がいがあることを人生で初めて知った。毎月1度の生理に付き合わざるを得ない女性は誰もが知っているのかもしれない。若い頃、私は生理がキツイと言ってピルを飲んでいる女の子と付き合ったことがある。こちらはラッキーと思っていたが、もしかしてPMSだったのか?確かに癇癪持ちだった。

主人公藤沢は普段はおせっかいで,周囲に気を使いすぎる位の女性である。ところが発作を起こすと,二重人格のように豹変する。周囲に起きるちょっとむかついたことにあからさまに憤慨するのだ。新卒で勤めた会社でも,先輩社員のコピー機の扱いに尋常じゃない怒りを表して周囲をびっくりさせる。自分でも気がついて薬を飲むと睡眠薬の効果が強く寝過ごしてしまう。ある意味不器用だ。

上白石萌音二重人格的な藤沢のパフォーマンスを巧みに演じた。藤沢の山添のアパートに乗り込んでいく積極性は単なるおせっかいだけではなく恋愛の要素が全然なかったとは言えないと感じる。積極的な女の子の一面を持つ。


パニック障害はよく聞くが,具体的な症状については知らない。電車に乗れない位の状況になっているとは思わない。2年前にラーメンを食べているときに突然発作を起こしてから、前の会社も辞めた。映画では, 会社内で薬をなくしてパニックを起こす山添のシーンがある。もともと転職した仕事に関心を持っているわけではなかった。やる気なく働いていた。ところが,病名は違っても障がいを持つ仲間として藤沢と接しているうちにお互いのことを思いやる気持ちが芽生えてきた。

PMS障害を起こしそうになった藤沢を会社の外に連れて行って,深呼吸をさせたり、体調の悪い藤沢の家まで届け物をしたり気配りもできるようになった。脳の中の配線がつながったような変貌を見せるようになる。会社のプロジェクトにも積極的に参画するようになる。パニック障害になった山添の症状が大幅に改善して成長している。普段はモテモテの松村北斗も好演である。髪を切られるシーンが笑える。


脇を固める光石研や渋川清彦の役も心に闇を抱えている。親族をなくして精神的に参っている人たちのサークルに2人とも入っている。そこで自分の悩みを語り合うのだ。この映画ではその部分についての深いツッコミはなかったが,そのシーンがあるだけに障がいを持つ2人を支えていく姿がよくわかる。それにしても、光石研は適役だ。最近はキャノンのCMで課長役を演じているけど、誰もが好感を持つと思われる笑顔が素晴らしい


原作と違う仕事の内容にして、移動プラネタリウムを題材にするのは三宅唱監督としては会心の出来だったに違いない。上白石萌音の朗読も良かった。藤沢が母親の介護のために転職しようとリクルーターと会っている場面など,現代若者事情もよくわかるように映画に盛り込まれている感じがした。

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